解析学 B 演習問題 (No. 11)
6/July/2005
1
C :z(t) = 3eit (t∈[0,2π]), C1 :z(t) = eit+ 1 (t∈[0,2π]), C−1 :z(t) = eit−1 (t∈[0,2π]), Ce:z(t) = eit/2 (t ∈[0,2π]) とする。(1) Z
e C
1
z2−1dz の値を求めよ。
(2) Z
C1
1
z2−1dz および Z
C−1
1
z2−1dz の値を求めよ。
(3) C,C1,C−1で囲まれた領域でCauchyの積分定理を適用することにより、
Z
C
1 z2−1dz の値を求めよ。
(4) 1
z2−1 の部分分数を考えることにより、
Z
C
1
z2 −1dz の値を求めよ。
板書用問題
56.
Cr を原点中心半径r の円とする。f(z) = 1z2−(2 + 3i)z+ 6i とするとき、つぎの 線積分の値を求めよ。但し、Crは反時計回りに向き付けられているとする。
(1) Z
C1
f(z)dz (2) Z
C5/2
f(z)dz (3) Z
C4
f(z)dz
57.
Z
C
ez
z dz を計算することにより、
Z 2π
0
ecosθcos(sinθ)dθ の値を求めよ。但し、C は 原点中心の単位円で、反時計回りに向き付けられているとする。
58.
D = {z | |z| < R} とし、 f(z) を D 上正則な関数とする。u(z) = <f(z), v(z) ==f(z) と表したとき、∀r∈(0, R) に対して、
1 2π
Z 2π 0
u(reiθ)dθ=u(0), 1 2π
Z 2π 0
v(reiθ)dθ =v(0)
が成り立つことを示せ。
59.
(1) f を Da={z | |z−a| ≤r} を含む領域において正則な関数とする。このと き、Z 2π 0
f(a+reiθ)dθ の値を求めよ。
(2) ZZ
D0
f(z)dx dy の値を求めよ。(a= 0の場合を考えていることに注意。)
60.
ρ >0, |a| 6=ρ とする。このとき、Z
C
|dz|
|z−a|2 の値を求めよ。但し、C は原点中 心、半径ρの円で反時計回りに向きつけられているとする。
ヒント:zがC上の点だから、|dz|=−iρdz
z , ¯z= ρ2
z と書ける。
61.
C を滑らかな曲線、ϕ をC上の連続関数とし、C 上にない点z に対して、F(z) = ZC
ϕ(ζ)
ζ−z dζ とおく。z0をC 上にない点とする。
(1) F(z0+h)−F(z0)
h =
Z
C
ϕ(ζ)
(ζ−z0)2dζ + Z
C
g(ζ)dζ と表したときのg を求めよ。
(2) M = sup{|ϕ(ζ)|:ζ ∈C}、` を曲線 C の長さとし、ρ=d(z0, C) (z0とCとの距 離)とおく。このとき、|h| ≤ρ/2 をみたす hとC上の点ζに対して、|g(ζ)| ≤ 2M|h|
ρ3 が 成立つことを示せ。
(3) z0 においてF は微分可能で、F0(z0) = Z
C
ϕ(ζ)
(ζ−z0)2 dζ が成立つことを示せ。
62.
f をD={z :|z|< R} で正則で、|f(z)| ≤M (∀z ∈D)をみたす関数とする。(1) ∀ρ∈(0, R) と|z|, |a| ≤ρ をみたす ∀z, ∀a に対して、
¯¯¯¯f(z)−f(a)
z−a −f0(a)¯¯
¯¯≤ M R
(R−ρ)3|z−a| が成立つことを示せ。
(2) ∀ρ∈(0, R) に対して、f はBρ ={z :|z| ≤ρ}において一様に微分可能、すなわち
h→0lim
f(z+h)−f(z)
h =f0(z) はz ∈Bρ に関して一様収束であることを示せ。
✎ ヒント:Cauchyの積分公式を用いて、f(z),f(a),f0(a) を表す。
63.
Γ :γ(t) (t∈[a, b]) を点c を通らない、単純とは限らないC1級の閉曲線とする。h(t) = Z t
a
γ0(t)
γ(t)−cdt とおく。
(1) d dt
¡e−h(t)(γ(t)−c)¢
を求めよ。
(2) Z
Γ
dz
z−c は 2πi の整数倍に等しいことを示せ。
解析学 B 演習問題 (No. 11) 解答
6/July/2005
1
(1) 1z2−1 は、Ceおよび Ceの内部を含む領域{z :|z|<1} において正則だから、
Cauchyの積分定理により、
Z
Ce
1
z2−1dz = 0 (2) g(z) = 1
z+ 1 は、C1およびC1の内部を含む領域{z :|z−1|<2} において正則だ から、Cauchyの積分公式により、
Z
C1
1
z2−1dz = Z
C1
g(z)
z−1dz = 2πi·g(1) =πi.
同様に、h(z) = 1
z−1 は、C−1および C−1の内部を含む領域{z :|z+ 1|<2} において 正則だから、Cauchyの積分公式により、
Z
C−1
1
z2−1dz = Z
C−1
h(z)
z+ 1dz = 2πi·h(−1) = −πi.
(3) C,C1,C−1で囲まれた領域Dにおいて 1
z2−1 は正則だから、Cauchyの積分定理に より、(C,C1, C−1には正の向きが入っている。D の境界の正の向きに注意。)
Z
C
1
z2−1dz+ Z
−C1
1
z2−1dz+ Z
−C−1
1
z2−1dz = 0.
Z
−C1
1
z2−1dz =− Z
C1
1 z2−1dz,
Z
−C−1
1
z2−1dz =− Z
C−1
1
z2−1dzに注意すれば、(2) の結果より Z
C
1
z2−1dz = Z
C1
1
z2−1dz+ Z
C−1
1
z2−1dz = 0.
(4) 1
z2−1 = 1 2
µ 1
z−1 − 1 z+ 1
¶
より、
Z
C
1
z2−1dz = 1 2
µZ
C
1
z−1dz− Z
C
1 z+ 1dz
¶
(†) と書ける。±1 は曲線C で囲まれた領域 {z :|z|<3} に含まれていて、f(z) = 1 はCで 正則な関数だから、Cauchyの積分公式により
Z
C
1
z−1dz = 2πif(1) = 2πi, Z
C
1
z+ 1dz = 2πif(1) = 2πi.
これらを(†)に代入して Z
C
1
z2−1dz = 0.
感想. 解答例を見ても解るようにCauchyの積分定理・積分公式を使えば、今回の問題は ほとんど計算しなくてもできるものであったのだが、曲線の式 (z(t) = 3eitなど) を代入 して線積分の値を計算しようとした答案がほとんどだった。積分定理・積分公式の使い方 になれていないので当然の結果ではあるが、非常に出来ていなかった。
間違いで目立ったのは、logz を使った答案である。例えば、以下のような計算 Z
C1
1
z+ 1dz = Z 2π
0
ieit eit+ 2 dt
µ
= Z
|z|=1
1 z+ 2dz
¶
= [log(eit+ 2)]2π0 = 0
の問題点は、log(z+ 2)の分枝を考えていない、もしくは適切な分枝を選んでいないこと である。−2は原点中心の単位円の外側にあるので、arg(z+ 2)∈(−π, π]となる分枝を選 んでおけば、原点中心の単位円を含む領域 {z :z 6=−2, arg(z+ 2)∈ (−π, π)}において
log(z+ 2)は正則となる。従って、線積分の値は曲線の始点と終点での値で定まる(演習問
題No.9
2
参照)ので、正しい計算の結果として結局0が得られる。arg(z+ 2)∈[0,2π) となる分枝を選んだのでは、log(z+ 2)が正則でない部分 z ∈[−2,∞) が積分路である原 点中心の単位円と交わってしまうので、前述のような計算は出来ない。また、以下のような計算 Z
C
1
z−1dz = Z 2π
0
3ieit 3eit−1dt
µ
= Z
|z|=1
3 3z−1dz
¶
= [log(3eit−1)]2π0 = 0
では、z = 1/3が単位円内部に入ってしまっているため、log(3z−1)の分枝をどのように
選んでも、単位円周を含む領域で正則にはならない。従って、線積分の値は曲線の始点と 終点での値だけでは定まらないので、この計算は誤りである。
1/zの原始関数はz 6= 0で(つねに)存在してlogzであると思っているかもしれない が、考えている領域によっては存在しないこともある。1/zはC\ {0}において正則であ るが、D={z : 0< r <|z|< R}のような原点を取り囲むような領域では、1/zの原始関 数は存在しない。(logzのどのような分枝も D全体では正則にならない。) logzのような 多価関数を扱う場合は分枝に注意しよう。
これら以外で多かった間違いは、eit =s とおいて、t : 0→2π から s: 1 →1として 実数の積分のように思って計算したものである。s = eitは単位円周上を動くことに注意 しよう。
解説. (1)の解答では、{z :|z|<1} という集合以外を考えても良い。Ce で囲まれた領域 の閉包{z :|z| ≤1/2} を含む領域で、z =±1を含まないものであれば何でも良い。同様 に、(2) の解答においても、それぞれ、C1 の閉包を含むが−1を含まない領域、C−1の閉 包を含むが1を含まない領域であれば{z :|z−1|<2}, {z :|z+ 1|<2} でなくても良い。
1
z2−2が微分できない点(特異点という)z =±1が閉曲線で囲まれた領域の外にあ るか内にあるかで、状況が変わってくることが判るだろう。今回の問題ような場合、被積 分関数が正則でない点と積分路を複素平面に描いてみると解り易いだろう。