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Academic year: 2023

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(1)

微生物による有用物質生産を実現するには,代謝を効率よく 改良する必要がある.宿主の選定,異なる生物からの遺伝子 獲得および導入,不要な遺伝子や代謝経路の削除による生産 収率や生産性の変化などについて,予測するための計算機プ ラットフォームがあれば有意義であろう.また,デザイン指 針に基づいて構築した細胞が望みどおりのパフォーマンスを 示すかどうか,代謝の流れが達成さているかを実験的に評価 することも重要である.13C同位体を標識した化合物を炭素 源として細胞内に取り込ませ,13C標識の代謝物質中の濃縮 度を観測することで,どの代謝反応が実際に活性化している かを決定することが可能である.本稿では,このような代謝 デザインと13C代謝フラックス解析法の解説とその物質生産 への応用について述べる.

はじめに

微生物発酵で生産可能な物質の範囲を拡大し,収率や 生産速度を向上させていく重要性は論を俟たない.今ま で,どちらかというと優れた機能をもつ微生物を天然よ

り見いだし,理解し,応用することで多大な成果が積み 重ねられてきた.代謝工学分野では,細胞内の代謝を多 段階反応プロセスとして捉え,大腸菌や出芽酵母など知 識やノウハウが集積された工業有用微生物を合理的に改 良する方法論の開発とその応用を目指してきた.細胞内 の代謝の流れ(代謝フラックス:Metabolic flux)を統 一的に計算機で扱えるよう情報を整理し,目的物質を高 収率で生産可能な代謝経路をデザインできないか? あ るいは,実際に細胞内で起こっている代謝フラックスを 精度よく捉えられないか? というような問題設定を行 い,多くの成果が生まれている.今後,発見的手法と工 学研究の統合により,有用微生物の創製が,大きく発展 していくと考えられる.本稿では,われわれがこれまで フラックスレベルでの代謝の理解に向けて取り組んでき た代謝シミュレーション法および13C代謝フラックス解 析法の原理を概説し,代謝改変への応用例や,得られた 知見について紹介する.

代謝フラックス

代謝物質が細胞内で変換される速度をモル基準で,時

【解説】

 Metabolic Pathway Design and 13C-Based Metabolic  Flux Analysis for Bio-Production

Hiroshi SHIMIZU, Fumio MATSUDA, Yoshihiro TOYA, 大阪大 学大学院情報科学研究科

代謝デザインと 13 C同位体標識を用いた 代謝フラックス解析の物質生産への応用

清水 浩,松田史生,戸谷吉博

(2)

間当たり細胞当たりに表現したものを代謝フラックス

(mol/h/cell)という.栄養源からどれだけ高収率,高 速度で標的の物質を生産するかを議論するために,代謝 フラックスという量を用いれば便利である.代謝経路 は,複雑に入り組んでおり,同じ物質に到達するにも異 なる経路が存在したり,逆反応が存在し,生成したもの が反応物に戻されたりする.また,目的物質を生成する ために必要なエネルギー物質(ATP)や還元力(NADH,  NADPH)は生成や消費がうまくバランスされていない と定常的な細胞の生産能力につながらず,注意する必要 がある.これらのことを統一的,かつ,効果的に検討で きる計算プラットフォームの開発が望まれている.

化学量論による代謝の理解

化学量論とは,代謝マップに集約された反応式(たと えば,ヘキソキナーゼ:グルコース+ATP→グルコース-6-  リン酸+ADP)で反応物と生成物の量的な関係である.

生成したグルコース-6-リン酸は次の反応により直ちに フルクトース-6-リン酸に変換される.多段ステップの 反応からなる解糖系において,連続的に反応が起こるこ とを考えるとグルコースは2分子のピルビン酸に変換さ れ,次式のように2分子のATPとNADHを生成する. 

2ADP 2NAD 2 2ATP 2NADH グルコース+ +

ピルビン酸+ +

酵母はATPを増殖のエネルギー源として利用しつつ,

ピルビン酸を脱炭酸し,さらにNADHを用いてエタ ノールへと還元してから,菌体外へ排出している. 

2

NADH NAD

ピルビン酸+ エタノール+CO +

2つを合わせると,酵母における嫌気発酵を表す化学 量論式となる. 

2

2ADP 2 ATP

グルコース+ エタノール+2CO +2

このように,酵母のエタノール発酵は基質レベルで も,酸化還元バランスのレベルでも全体として収支が合 い,かつ菌体維持のためのエネルギーも確保できるたい へん都合がよい状態である.グルコース消費フラックス の2倍のエタノールとCO2の排出フラックスをもってい ることがわかる.

ゲノムスケール代謝モデルと代謝デザイン

Flux Balance Analysis (FBA)は,上に述べたように,

化学量論だけに着目し,代謝全般にわたって解析する方 法である(1)

.代謝モデルには酸素や栄養源の取り込みフ

ラックスや発酵産物の培地への排出フラックスも扱うこ とができるので,炭素源や窒素源の違い,通気条件,代 謝反応の有無が,目的化合物の生産収率に及ぼす影響を 解析できる.一方で,代謝の動的な解析や代謝物質濃度 と反応速度の関係などは扱えない.たとえば,フィード バック制御の影響,発酵の時間的変化などは予測できな い.このような制約はあるが,FBAができることを最 大限に生かすことで,さまざまな応用が行われている.

代謝反応を化学量論式で記述することで代謝フラック ス間の関係を線形代数方程式で記述することができる.

上の例では解糖経路とエタノール生成経路のみを考えた が,細胞内に存在する代謝反応を全般的に集めてくれ ば,ゲノムワイドな代謝モデルとなる.図

1

に代謝モデ ルの構築についてイメージを示す.

このモデルでは,フラックスを決定するには情報が足 りないことが問題となるが,「細胞は,与えられた環境 下で細胞増殖を最大とするように代謝フラックスを調整 する」という大胆な仮定をおくことによって線形最適化 問題となって代謝フラックスを決定することができる.

ゲノムスケール代謝再構築とフラックス予測 われわれは,この方法の予測の有効性を検証するため に,コリネ型細菌のゲノムスケール代謝モデルを構築す るとともにグルコースの取り込みフラックスに対して酸 素の供給をさまざまに変化させた実験を行って,計算機 で予測された乳酸,酢酸,コハク酸などの有機酸の生成 フラックスが各実験データをよく説明することを見いだ した(2)

.すなわち,与えられた環境状態に対して細胞の

図1ゲノム情報からの代謝モデルの構築の概要

(3)

代謝フラックスがどのようになるかを計算予測すること が可能となったと言える.図

2

に計算により求められた 炭素中心代謝の代謝フラックスを示す.グルコースを炭 素源とした場合,酸素供給が十分な場合は解糖経路や TCAサイクルが活性化され,細胞は盛んに増殖する.

これに比較して酸素供給がグルコース消費に対して小さ くなると,生成したNADHをNADに戻すための酸化 的リン酸化反応において酸素消費が十分でないため,有 機酸生成経路を使って細胞はNADH/NADバランスを 保とうとする.シミュレーションではこのようなことが 表現され,実験データを説明可能であることがわかる.

この方法を用いることにより,目的物質を最大生産する ための遺伝子削除について,計算機上でデザインするこ とが可能となる.ゲノムスケールの代謝モデルはゲノム が明らかになった生物数の上昇とともに多くなってお り,多くの生物のゲノムスケールの代謝モデルの利用が 可能である(3)

遺伝子削除については,計算機プラットフォーム上で は,その遺伝子が関与する代謝のフラックスを強制的に ゼロにすることで設定が可能である.このような制約を 設定したうえで同じように計算を行うことにより遺伝子 削除がもたらす代謝状態を知ることができる.すべての 遺伝子を対象に削除を行うこと,多重に遺伝子の削除を 行うことなど,実験では多くの労力や時間がかかる多く のケースについて計算することが可能となる.また,代 謝データベースを探索して宿主には本来ない遺伝子を獲 得・導入することも,反応を計算機プラットフォーム上 に加えることで容易に実現され,細胞が元来作れない物 質の生産可能性を考えてみることも可能である.

3ヒドロキシプロピオン酸(3HP)の生産性向上の 代謝デザイン

この方法を利用して,大腸菌による3ヒドロキシプロ ピオン酸(3HP)の生産性向上のデザインを試みた例に ついて述べる.  MG1655 (DE3)株を宿

主とし, の と の導入

と,大腸菌の を過剰発現することで,グリセロー ルを基質とした大腸菌3HP生産株を構築した.M9合成 培地にて培養を行った結果,3HP生産収率は5%となっ た.次に,大腸菌の代謝モデルに対し,FBAを用いた 遺伝子破壊シミュレーションを行い,生産収率の向上が 期待できる遺伝子破壊を探索した.図

3

に示すように探 索結果に基づいて と の二重遺伝子破壊を行った 結果,収率は20%に増加した.さらに,主な副生産物 である1,3-プロパンジオールの生合成にかかわる を破壊すると収率を34%に向上させることに成功し た(4)

.このように,

プラットフォーム上の遺伝 子破壊シミュレーションによる標的化合物の生産性の向 上が実際の遺伝子破壊によって有効であることが確認さ れた.

この方法は,さらに,10を超える多重遺伝子削除の 高速探索法(FastPros)の開発(5)やさまざまな異種生物 の生合成経路を探索,獲得し,本来,宿主が生産し得な い物質の生産を新規にデザインする方法(ArtPathDe- sign)(6)の開発へと発展し,その応用範囲を拡大している.

13C代謝フラックス解析

次に,実際に遺伝子改変された細胞の代謝状態がどの ようになったかを評価する方法について述べる.代謝反

NADP NADPH

Cit/ IsoCIT

SUC MAL/ FUM

OXA

AcCoA G6P

PEP GLC

Pyr LAC

ACE GAP

NADNADH NADH NAD NADHNAD

NAD

Re_Mq Ox_Mq

NAD NADH

R5P

αKG NADP

ATPADP

Extra Cellular

Extra Cellular NADPH

NADH Cit/ IsoCIT

SUC MAL/ FUM

OXA

AcCoA G6P

PEP GLC

Pyr LAC

ACE GAP

NADNADH NADH NAD NADHNAD

NAD

Re_Mq Ox_Mq

NAD NADH

R5P

αKG NADP

NADP

ATPADP

NADPH

Extra Cellular

Extra Cellular NADPH

NADH

酸素供給が高い場合 酸素供給が低い場合

図2コリネ型細菌における異なる酸 素条件下の代謝フラックスのシミュ レーション

太い矢印は大きいフラックスをもつ代謝 反応であることを示している.

(4)

応は複雑であり,可逆反応が存在したり,同じ代謝物質 に到達するにもいろいろな経路が存在したりする.たと えば,グルコースが解糖経路を通ってグリセルアルデヒ ド-3-リン酸(GAP)になったのか,ペントースリン酸 経路を経由して同じ物質に到達したのかは細胞が細胞の 外から消費したり,外へ排出したりする代謝物質の増減 や変化を観察しているだけではわからない.しかし,1 位に安定同位体13Cで標識されたグルコース([1-13C]

グルコース)を細胞に取り込ませ,その13C標識がどの ような代謝物にどの程度濃縮されているかを測定するこ とで,どの経路が活性化されているかを知ることができ る.

4

に原理を示す.ゲノムスケール代謝モデルの項で 示したようにグルコース-6-リン酸(G6P)

,グリセルア

ルデヒド-3-リン酸(GAP)分子を考え,G6P分岐で解 糖経路への代謝フラックスとペントースリン酸経路への フラックスの比が求まるかを考えてみる.取り込まれた グルコースの1位にある炭素原子は,ペントースリン酸 経路を通って代謝された場合は6炭糖から5炭糖に変換 される際に,CO2として分子の炭素骨格から離脱するこ とがわかっている.したがって,[1-13C]グルコースを 細胞に取り込ませながら培養した後,GAPに含まれる

13C標識割合を観測すれば,その値から解糖系とペン トースリン酸系に流れたフラックス割合を決定すること ができる.定量性の良さからタンパク質中に取り込まれ たアミノ酸の13C標識割合を測定することで代謝フラッ クスを決定することが多く行われてきた.最近では,さ まざまな代謝物質の13C標識割合に基づいて代謝フラッ クスの分布を決定することが可能になってきている.

この方法の概要を示したものが図

5

である.13C標識 された化合物を取り込ませて培養を行い,濃縮度が定常 に落ち着いたところで,細胞から代謝物質を抽出し,そ の13C標識濃縮度をガスクロマトグラフ質量分析計(GC- MS)

,キャピラリー電気泳動質量分析計(CE-MS) ,液

体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)など,分離装 置と質量分析装置を用いて定量する.得られた13C標識 割合のデータを最もよく説明する代謝フラックス量をコ ンピュータで決定する(7)

この方法を中心炭素代謝全体で行うためには,各反応 における反応物と生成物の原子の移動を表すモデルが必 要である.代謝物質の質量分析においては,13C同位体 を含む分子の標識割合が測定できる.代謝フラックスの 決定においては,代謝フラックスを仮定し,そこから得 られる各代謝分子の濃縮度を計算して実測値と比較して 仮定が正しかったかを検証する.実測と計算がずれてい る場合は代謝フラックスを仮定し直し,ずれが十分小さ くなるまで計算を繰り返す.このようにして観測値と計 算値の残差が小さく質量分析データをよく説明するフ ラックス分布を決定することが可能となる.このような 実験データを説明する代謝モデルの手動での構築や代謝 フラックスの決定は,繰り返し計算も含めていろいろな 図3大腸菌による3HP生産性向上のた めの遺伝子削除デザイン

ペントース リン酸経路 フラックス 解糖経路

フラックス [1-13C ]Glucose

GAP

13CO2

グルコース消費 G6P

G6P

分岐におけるフラックス比

GAP

13

C

濃縮割合に等しい

標識の無い分子が 到達する 標識が入った 分子が到達す

図4解糖経路とペントースリン酸経路の代謝フラックス量比 の実験的決定の原理

(5)

作業が必要となる.われわれは,13C代謝フラックス解 析のためのオープンソフトウェアOpenMebiusを開発し た(8)

.このOpenMebiusの主な機能を示すと以下のよう

になる.

1)代謝反応における分子間の原子移動などの情報から の解析用モデルの自動構築

2)シミュレーションによる代謝フラックスからの質量 分析データを計算する仮想実験

3)精度の高いフラックス解析結果を得るための実験の デザイン(13C標識化合物の取り込ませ方など)

4)実験データを用いた代謝フラックス解析

5)得られた代謝フラックスの統計的な信頼区間の推定 6)13C濃縮度の時間変化(動的)データを用いた代謝フ

ラックス解析

大腸菌,枯草菌,コリネ型細菌,出芽酵母,シアノバク テリアなどの微生物に利用可能であることを確認してい る.最近では,医学分野の研究者にも注目され,がん細 胞の代謝フラックス解析の研究も行われるようになって きており,さまざまな細胞への応用展開が今後,期待さ れる.

定量メタボロームや定量プロテオミクスと代謝フ ラックス解析の統合

上述のように細胞内の代謝フラックスを定量的に得る 技術が開発されてきた一方,代謝物質濃度やタンパク質 濃度の定量が行えれば,従来は,試験管の中で酵素反応 として見ていた現象を細胞内の情報に基づいて解析でき るようになることが期待される.最近,液体クロマトグ

ラフィー・タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用い たメタボローム分析手法が発展し,代謝物質の定量的分 析の精度が向上している.LC-MSでは,異なる溶離時 間の分析機器内におけるイオン化状態が異なるイオンサ プレッション効果があり,絶対定量が難しいとされてき た.最近,非標識,または,すべての炭素を標識したユ ニフォーム標識炭素源([U-13C]炭素源)を含む培地で 細胞を培養し,LC-MS/MSの多種の代謝物を同時測定 可能なMultiple reactions monitoring (MRM)モードで 各代謝物質の非標識体と[U-13C]標識体を別個に測定 し,そのピーク面積比から代謝物濃度を求めることに よって中心代謝物の絶対定量法を構築する試みが行われ ている.この方法では,絶対定量に必要な内部標準物質 として,[U-13C]標識炭素源で培養した細胞から抽出し た同位体標識化合物を利用することで,各代謝物質の絶 対濃度定量が可能となる(9)

また,ナノLC-MS分析を用いることにより,また,

上記と同様に,非標識,または,[U-13C]炭素源を含む 培地で細胞を培養し,中心代謝のタンパク質のトリプシ ン消化物の非標識体と[U-13C]標識体を別個に測定し,

そのピーク面積比を求めることで定量プロテオーム解析 を行うことができる.われわれは,出芽酵母の中心代謝 の野生株と一遺伝子破壊株において定量プロテオーム解 析を行い,酵素の発現変動と代謝状態,増殖活性などを 定量的に解析しようと試みている(10)(図

6

図513C代謝フラックス解析方法の概要

(6)

代謝フラックス解析の応用例

最後に13C代謝フラックス解析の一例を示す.シアノ バクテリアは,CO2と光エネルギーから有用物質生産を 行うことができ,将来の物質生産に有望な微生物であ る.昼夜のサイクルにおいて,光独立的にCO2を固定 し,夜間は貯蔵したグリコーゲンなどを使って活動する ため,異なる栄養条件における代謝状態を詳細に解析す ることは物質生産にとって非常に重要な情報基盤とな る.われわれは,  sp. PCC6803の異なる栄 養条件における精密な代謝フラックス解析を決定するこ とを目標に研究を行った.図

7

に,混合栄養条件(左 図)と従属条件(右図)下における代謝フラックスの解 析結果を示す.従属栄養条件は,光化学系IIに競合的に 結合することで光合成電子伝達を阻害するアトラジンを 添加することで人為的に作成した.図7左図のように混 合栄養条件では,炭素源としてCO2のみならず,グル コースを資化するので,13C標識グルコースを用いて代

図6酵母中心代謝の定量プロテオーム 解析の例

 S288C 株,

破壊株(Δ ), 破壊株(Δ ), 破壊株(Δ )株の解糖経路,ペントー スリン酸経路,グリセロール合成経路,エ タノール合成経路,TCAサイクル,グリオ キシル酸経路,補充経路のタンパク質量の 比較(10)

図7  sp. PCC6803における混合栄養条件(左)

と従属栄養条件(右)における代謝フラックス解析の結果 数字はフラックスの大きさを示す.

(7)

謝解析を行っている.RuBisCO反応が中心代謝系で最 も大きなフラックスをもっており,ペントースリン酸経 路が還元的な方向に流れをもってカルビンサイクルとし て機能していることがわかる.一方,図7右図のように 従属栄養条件では,光合成を阻害されているので主にグ ルコースを炭素源として利用しているが,この条件で は,酸化的ペントースリン酸経路が顕著に活性化してお り,混合条件下では光合成で得られていたNADPH生成 がこの経路によって補われることがわかった(11)

.この

ように細胞の代謝フラックスをさまざまな条件で解析す ることが可能となってきており,今後,代謝物質濃度,

タンパク質濃度,代謝フラックスの詳細なデータをセッ トで得られることとなり,よりシステム的な解析を可能 とする土台が整いつつあると考えている.

文献

  1)  B.  Ø.  Palsson:  Systems  Biology:  Properties  of  Recon- structed Networks,  Cambridge University Press, 2006.

  2)  Y.  Shinfuku,  N.  Sorpitiporn,  M.  Sono,  C.  Furusawa,  T. 

Hira sawa & H. Shimizu:  , 8, 43 (2009).

  3)  A.  M.  Feist  &  B.  Ø.  Palsson:  , 26,  659  (2008).

  4)  K.  Tokuyama,  S.  Ohno,  K.  Yoshikawa,  T.  Hirasawa,  S. 

Tanaka, C. Furusawa & H. Shimizu:  ,  13, 64 (2014).

  5)  S. Ohno, H. Shimizu & C. Furusawa:  , 30,  981 (2014).

  6)  S. Chatsurachai, C. Furusawa & H. Shimizu: 

13, 93 (2012).

  7)  Y. Toya & H. Shimizu:  , 31, 818 (2013).

  8)  S.  Kajihata,  C.  Furusawa,  F.  Matsuda  &  H.  Shimizu: 

2014, 627014 (2014).

  9)  S.  Nishino,  N.  Okahashi,  F.  Matsuda  &  H.  Shimizu: 

, in press (2015).

10)  F. Matsuda, T. Ogura, A. Tomita, I. Hirano & H. Shimizu: 

119, 117 (2015).

11)  T.  Nakajima,  S. Kajihata, K.  Yoshikawa,  F. Matsuda,  C. 

Furusawa, T. Hirasawa & H. Shimizu: 

55, 1605 (2014).

プロフィル

清 水  浩(Hiroshi SHIMIZU)

<略歴>1990年京都大学大学院工学研究 科博士後期課程化学工学専攻修了/同年大 阪大学工学部醗酵工学科助手/1995年同 大学大学院工学研究科応用生物工学専攻助 教授/1996〜1997年MIT化学工学専攻客員 研究員(Gregory Stephanopoulos教授)/

2003年大阪大学大学院情報科学研究科バイ オ情報工学専攻教授<研究テーマと抱負>

代謝工学・生命システム解析・生物化学工 学・バイオインフォマティクス,代謝工学 による物質生産を進めたいと思っている

<趣味>読書・スポーツ観戦・散歩<所属 研究室ホームページ>http://www-shimizu.

ist.osaka-u.ac.jp/hp/

松田 史生(Fumio MATSUDA)

<略歴>1997年京都大学農学部農芸化学 科卒業/1999年同大学大学院農学研究科 修士課程修了/2002年同大学大学院農学 研究科博士課程修了,CREST研究員,理 化学研究所植物科学研究センター研究員を 経て,2009年神戸大学大学院自然科学系 先端融合研究環准教授/2012年大阪大学 大学院情報科学研究科准教授,理化学研究 所環境資源科学研究センター客員研究員兼 務<研究テーマと抱負>植物,微生物のメ タボロミクスと代謝工学への応用,酵母を 用いた有用物質生産

戸谷 吉博(Yoshihiro TOYA)

<略歴>2010年慶應義塾大学大学院政策・

メディア研究科博士後期課程修了/同年同 大学大学院政策・メディア研究科特任助 教/2011年大阪大学大学院情報科学研究 科特任助教を経て,2015年同助教<研究 テーマと抱負>代謝工学・代謝フラックス 解析・代謝シミュレーション,増殖停止期 の微生物細胞を利用した有用物質生産<趣 味>読書

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.455

Referensi

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