農産品のLCIの不確実性の問題と食品の廃棄の考え方 について
3月20日(木) 10:00-12:00 於:工学院大学
東京理科大学理工学部経営工学科 教授 堂脇 清志
食品研究会Part2
→H25年度 農林水産省「欧米の農業・食品業界及び流通業界におけるウォーターフットプリントの国際 規格の活用戦略の調査分析(一般社団法人産業環境管理協会)
関税に代わる参入障壁にならないのか(ISO化の動き)?
来年夏頃を目途にWFの国際規格が承認される見込み
欧米では商品の生産プロセスにおける環境配慮の状況に関心が高い
欧米の食品事業者の中には、既に商品の生産プロセスにおける水の利用量等を 算定
欧州委員会ではWFを含む総合的環境情報表示(環境フットプリント)の導入を 目指し試行事業の開始アジアでの導入の有無とその影響は?
農業製品(1次品や2次品)のフットプリントの整合的な算出の確立は?
LCAにおける不確実なデータの扱いや評価パスの整理が必要ではないのか?
図
CFP
の比較(大井隆史,東京理科大学理工学部経営工学科卒業論文 (2014))【評価方法の違いに伴う不確実性】(積み上げ法による算出)
積み上げ法…固有の技術のみを反映することができる。
但し、パスや条件の設定の仕方により、数値が異なり、一般データとしての 扱いが難しい。
1.504 1.506
1.580
1.450 1.555
1.260
1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7
0 2 4 6 8 10 12 14 16
GHG
排出量kg -CO
2e q /kg
その他カーボンフット 鉄コーティング湛水直播
ha
移植栽培※各生産者のデータの管理も重要である(日本では、この種のデータの管理は未整備である。)
生産条件の明示をしなければなら ない?
産業連関分析による結果との比較 も必要?
【評価方法の違いに伴う不確実性①】(ご飯のCO2原単位の違い)
ケース1:CFP(宮城県産ひとめぼれ(タカラ米穀)5kg)
店頭までのCO2原単位:2.30kg-CO2/kg
ケース2:CFP(千葉県産コシヒカリ(安藤2011))1kg)
店頭までのCO2原単位:1.68kg-CO2/kg
図 炊飯時のCO2原単位の比較
ケースA:1.0L 0.5~5.5合 電子ジャー炊飯器 SR-NF101(3合調理)
ケースB:0.54L 0.5~3合 電子ジャー炊飯器 SR-MZ051(3合調理)
同じデータベースによるシナリオ 分析のみ有効?
他のデータベースでも同じような 傾向が ある の か →他 のコ ミ ュニ ケーションラベルの明示化?
【評価方法の違いに伴う不確実性②】(産業連関分析との比較)
産業連関分析での懸念
平均財としての扱い
1等米や2等米といったグレードによる価格決定→生産者の努力が反 映されない?
技術の消失の懸念(林ら,第9回日本LCA学会研究発表会(2014))図 炊飯時のCO2原単位の比較
積み上げ:1×Bのケース,産業連関:精米(味の素データベース)×ケースB
【これまでのCFPの考え方】
これまでのCFPは、ある仮定に基づいてロスを内生的に考慮し、そのあ との製品は100%消費されるという仮定
ロスの概念にも、ある程度、特定されるものとそうでないものとがあり そう(冷凍食品のように品質が固定されているものは扱いやすい。)
事例分析(小柳津,第9回日本LCA学会研究発表会(2014))図 フードロスの概念図(農林水産省)
各部分での対応策や不確実性、及びロスの影響をどのようにLCAに反映させるのか?
【内食(品質の特定が難しい)におけるロスの考え方】
1. 考慮すべき事項
家族構成(年齢,人数)→調理量に影響
メニューサイクルを考慮し、メニューベースで考える 等対策 不確実な要因
1.収穫高の把握 天候による被害予測
2.サプライチェーンのデータベース化 提供されるデータの精度による。
3.需給バランスの調整のシステム(just-in-time) 植物工場等では対応が可能でないか。露地物は困難?
1.買い過ぎ(使い忘れ)による廃棄 メニューサイクルと調理素材の関係が必要?
2.味が良くないための廃棄
各家庭に依存するものであり、予測は困難?但し、レ シピによる食育(インセンティブとして健康)による 調理の失敗をなくすことはできるかもしれない。
3.作り過ぎによる廃棄 適正な分量の把握が必要。但し、家族構成による部分 が大きいかもしれない?
4.作り置き(保存)の消費しない場合の廃棄
特に、高齢者で多いかもしれない。これは、製品の ロットが大きく、一旦、調理し保存するが、消費し忘 れるということがある。
減耗量
食品使用量
表 想定される要因(私案)
時間的な要素 ダイナミックな機 能単位の導入
食することができ る品質の定義
【ロスを考慮したLCAとは】
1. 考慮すべき事項
ロスの概念は、各家庭あるいは個人 が、ある効用を満たすまで食の行動 が続くと考えるべき。
メニューで考える場合は、「他の料 理で補う」ことを前提とする。
この場合、効用とは、“カロリー”、“栄養価”、“分量”などであり、
時間的に変化するものをどのように 組み入れるかが課題である。
代替される料理は、1:1だとは限 らないことも視野に入れる。図 カロリーベースのLCI比較
(西本圭佑,東京理科大学理工学部経営工学科卒業論文 (2014))
0 25.000 50.000 75.000 100.000 125.000 150.000 175.000 200.000 225.000 250.000 275.000 300.000
不足分(廃棄) 不足分(調理) 不足分(生産) 食べ残し(廃棄) 食べ残し(調理) 食べ残し(生産) 廃棄 調理 生産
黒枠が廃棄段階
100kcal摂取する 時のCO2排出量
100kcal摂取する 時のCO2排出量 (半分残した場合) CO2排出量[g-CO2]
左側:食品廃棄CO2原単位0.162g-CO2/g
(国際資源活用協会 (産業連関ベース))
右側:摂取カロリーを満たすために追加分のメ ニューを新たに調理及び素材のCO2を追加する。
<事例分析>