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2000年度上智大学経済学部経営学科網倉ゼミ卒業論文

「集団極化現象と先行優位喪失」

提出先 網倉久永教授 提出日 2001年1月10日

上智大学経済学部経営学科4年 榎本 悠介

(A9742304)

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1 はじめに(問題意識)

 企業間の競争戦略における先行者優位と後発者優位性の問題においては、技術的要因の影響が大きいとさ れる。しかし、先発企業と後発企業との逆転現象において集団極化現象のような数々の意思決定バイアスも 影響をもっているのではないだろうか。競争優位の逆転は、通常と異なった混乱や問題を発生させているは ずである。

 これは、先行者優位性の諸要因と後発優位性の外的要因・内的要因を検討したところで、生じた疑問であ る。数々の選択の結果としての競争構造が強く作用し、先発企業と後発企業との逆転が必然的に生じること も多い。しかし、新技術の採用や投資を決定しているのは組織や人間である。新技術の台頭や後発企業の追 い上げに際して、優位にある先行企業の意思決定のプロセスで、バイアスがかかり集団としての意思が極大 化する傾向にあるのではないかと思われる。

 したがって、本稿はそのような問題意識に基づき、まず始めに先行者優位性(first-mover advantage)と後 発者の逆転(先発者不利益:first-mover disadvantage)の議論を整理する。そして、社会心理学や企業 ガバナンスの観点から集団の意思決定が極大化もしくは歪曲する要因を分析していく。全体として、今後の 研究を視野に入れた、この問題に関する先行研究のサーベイのようになりがちであったが、戦略や競争構造 を含めた企業における意思決定の極大化の問題と小集団論的な同調行動の分析の接近を試みたつもりであ る。最後には、詳細なものではないがケースの分析を加えている。

2 先行者の優位性

 企業間の競争を観察していると先行者優位性(first-mover advantage)という、先に市場に参入した企業が 有利な地位を築く現象を確認できる。ウォークマンやコカ・コーラなどが代表的な事例として挙げられる。

 イノベーションや競争で先行者になれるか否かは、先を見越して需要のあるものを開発するR&D部門の 能力や洞察力、乃至は運といったものによる(Lieberman & Montgomery, 1988)。しかし、そうして一旦先 行者優位性が得られれば、経済的利益を得られる。その先行者優位性とは具体的に、技術上のリーダーシッ プ、稀省資源の先取・専有、マーケティング上での要因のことを指す。

 技術上のリーダーシップとは、経験効果の先取りによってコストリーダーシップを掌握することである。

また、製品技術やその製造技術そのものも企業秘密や特許の形で保護される限りでは、他社への参入障壁と して機能するといえる。

 稀省資源の先取あるいは専有は更に、インプット要因の先取り、「空間(space)」の専有、工場設備へ の先行投資に分けられる。インプット要因の先取りとは、製品の生産や流通に必要な天然資源や土地を先に 確保することである。資源や土地の絶対量は限られている上に、先行企業は市場の発展した後の価格よりも 低価格でインプット要素を購入できる。空間の専有とは、製品差別化での製品特徴やニッチ、小売でのシェ ルフスペースを先に確保することである。工場設備への先行投資は、より大きな産出量を競合社よりも先に 達成して、規模の経済性を実現することである。

 マーケティング上の要因としては、スウィッチングコストの発生によるロックインや業界標準規格の決定 等が挙げられる。先行者はイノベーターとして製品カテゴリーと連想する自社イメージを顧客側に認識さ せ、ブランドイメージを構築できる。買い手は新規や次回の購入に際し、不確実性を回避する為にブランド イメージのある商品を選択する可能性がある。そして、先行者以外の企業は、顧客を引き込む為に多くの投 資が必要になる。業界標準規格を決定することができれば、ネットワーク外部性の恩恵をうけられる。ネッ トワーク外部性とは、製品自体の性能だけではなく、その財と補完財の数によって市場価値が変化する性質 のことである。また、先行者は開発段階では分からない市場の顧客ニーズの情報を、商品化を通じて知るこ とができる。(Lieberman & Montgomery, 1988; 山田・遠藤, 1998)

 こうして、先行者である先発企業は以上の点で競争上の優位をもっていると考えることができる。しか し、現実には極端な逆転現象も存在する。

3 逆転現象

 例えば、パーソナルコンピューターの世界市場が挙げられる。アップルコンピューターは、1977年に

「アップルⅡ」を発売し、その後「マッキントッシュ」によって急速に成長した。しかし、IBMが1981年 に「IBM-PC」を発売、後発企業としてパソコン市場に参入した。IBMはOSやMPUを外注し、イ ンターフェイス仕様を公開した。よって、サードパーティー等が互換機や補完財の生産・販売を行えるよう になった。その結果、ビジネス用途でのIBM-PCの価値は高まり、IBM機は1983年にアップルがトッ

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プであったシェアを逆転した。

 また、日本の家庭用ゲーム機市場では、16ビットマシンからの世代交代に際して逆転が起きている。そ れまで、任天堂はセガやNEC等に対して「ファミリーコンピューター」(8ビット、1983年発売)、

「スーパーファミコン」(16ビット、1991年発売)による圧倒的なシェアをもっていた。任天堂の優位 はゲームソフト供給の徹底管理にあったのだが、ソフトメーカーはそれに不満を募らせていた。それまで家 庭用ゲーム機市場には関与していなかったソニーはここに着目した。ソフトメーカーにCD-ROMを製造す る権限を与えたことで、ソニーの「プレイステーション」(32ビット、1994年発売)は有力なソフトメ ーカーを自社側につけることに成功した。それまで、プレイステーションか任天堂の次世代機かで迷ってい たゲームユーザーは、「ファイナルファンタジー」シリーズを製作してきたスクウェア(当時同社の株式の 25%を任天堂が保有)がプレイステーション用に次回作を製作することになって、選択を決めたとされて いる。結果として、「NINTENDO 64」(64ビット、1996年)を発売したものの任天堂は自らが確立 し、拡大したゲーム機市場でソニーコンピューターエンターテインメントに逆転されることとなった。

 かつての家庭用VTRの規格をめぐっての「ベータ」と「VHS」の対決では、ビクターを中心とする後 発の「VHS」陣営が逆転を果した。その理由としては、OEM供給や技術供与を盛んに行ったことが挙げ られる。そして、優位に立ち、ネットワーク外部性が作用しはじめたことで、その勝利が決定的になったと される(山田・遠藤, 1998)。

 戦後の日本のビール市場では、キリンが市場の6割を「ラガー」ビールで制していた。これは、戦後唯一 の全国規模のビールメーカーとして家庭用の市場とその流通を制したことによるものである。また、積極的 に設備投資を行ったことも優位へとつながっている。だが、長期にわたる安定した優位によって、キリンは 成熟した市場での競争に追随しない方針を選択していた。パッケージや広告への投資、そして生ビールへの 本格参入は見送っていた。そこで、1987年に当時はマイナー視されていたアサヒビールが「アサヒスーパー ドライ」を市場に導入し、競争構造が変化した。アサヒがキリンのシェアを奪っていく側で、キリンは有効 な反撃を迅速に行うことができず、また主力であるラガービールとのバランスにも苦慮し戦略の不整合性が 目についた。この「ドライ戦争」を経た後、1997年には発泡酒を含まない市場シェアにおいてアサヒがキリ ンに逆転している(生島, 近刊; 慶応ビジネススクール, 1997)。しかし、その後の発泡酒市場の成長と「麒 麟淡麗」の健闘でキリンは、総合シェアでは首位を守っている。これに対し、アサヒビールは、スーパード ライ一本体制の不安から、2001年2月に「アサヒ本生」を発売する予定であり、総合ビール市場での競争に 参入すると、2000年後半に発表した。

 逆転によって、先行者が撤退に追い込まれる事例もある。日本において大学受験対策用の模擬試験の市場 でも逆転が起きている。全国規模の模試の草分け的な存在は旺文社模試(1948年)であり、最盛期の1967 年には受験生の75%にあたる42万人が利用していた。しかし、1979年の共通一次導入を切っ掛けに、

予備校が模擬試験の市場に参入し、競争が激化した。しかも少子化の影響もあり市場が縮小しするにつれ、

同社の模擬試験の参加人数が8万人(大学進学希望者の10%)に迄減少し、学力偏差値等の信頼性も低下 した。この為、営業赤字が続き、とうとう小論文や基礎学力試験といったニッチセグメントを残して、所謂

「学力模擬試験」の中心的なセグメントからは、2000年度を最後として撤退するようである。この逆転に おいては、河合塾やベネッセ(旧福武書店)といった、予備校や通信添削をコアとする企業が模擬試験業務 にシナジー等の多角化のメリットをもたらすことができた点に重要性があると思われる。顧客である高校の

「データをクラス別に分けてほしい」といったニーズには旺文社は、コストの問題から対応できなかったと いう。通信添削は古くから「one to oneマーケティング」を行っており、その程度のデータ処理に関して コストに問題がでるとは考えにくい。また、大手の予備校であれば、大きなインストールベールを有してお り、利益を確保しやすい。

 これらの逆転現象を説明する、先発者の不利益(first-mover disadvantage)や後発者の優位性と呼ばれる要 因は様々であるが、概ね外的要因と内的要因とに分けられる。

4 後発優位性の外的要因

 外的要因としてまず、クリステンセンの唱えた破壊的技術革新(Disruptive Innovation)が挙げられる。新 技術の殆どは、漸進的な技術であれ抜本的な技術であれ、既存製品の性能を高める「持続的技術」である。

しかし、短期的には製品の性能を引き下げるものの、市場に新規の価値基準をもたらす「破壊的技術」が存 在する。しかも「破壊的技術」は、その技術自体の持続的な技術進歩によって旧技術の水準に追いつき、代 替を果すのである。

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 「破壊的技術」のもたらす市場は当初、小規模である。しかも企業にとって利益率の高い顧客は「破壊的 技術」の製品ではなく、既存の製品を求める。したがって、先行した大企業は、投資を積極的に行えない。

また、「バリューネットワーク」と呼ばれる、企業と製品を最終利用形態に至る流れの中の一構成要素と位 置付ける枠の存在も企業行動を左右する。企業はそのバリューネットワークの中で、顧客のニーズを認識 し、資源を調達し問題を解決している。そして企業の関わるバリューネットワークが企業にうつる新技術の 経済的価値を決定する(Christensen, 1997)。この意味で、先行企業は市場で、既存の顧客らとの関係に束 縛されているともいえる。

 「生産性のジレンマ」も先行者不利益として作用している。生産性のジレンマは、経験効果を多く得る為 に生産性の向上に努める程、その製品の生産に特化し、イノベーションが困難になることである。そして、

技術革新や市場ニーズの変化に対応できなくなる。

 市場ニーズ構造の変化も先行者優位を崩す。かつてのフォード「モデルT」は単一モデルの大量生産でコ ストダウンを図り、市場シェアの半分を握った。しかしその優位は、GMのフルライン戦略にとって代わら れた。これは消費者の選好とニーズが実用性と経済性だけでは満たされなくなった市場構造変化の事例であ る。また、家庭用VTRの事例では、当初のテレビ放送の録画再生というニーズが変化している。レンタル ビデオの登場で、ソフトを貸し借りして視聴するというニーズが発生し、画像で勝るβより、多く普及しは じめていた規格であるVHSが有利になったともみられる。

 この市場構造の変化では、「間接経営戦略」の介在する余地が大きい。相互に影響を及ぼす行為者間の

「意図せざる結果」という間接性を意図的にとりこんだ戦略が沼上の掲げた間接経営戦略である(沼上, 2000a)。その中で特に、現代社会の相互作用・相互依存関係を利用した「環境メカニズムの論理」によっ て、市場構造の変化を捉えることができる思われる。先行企業の活動が市場の性質を変化させるために、後 発企業は先行者の「意図せざる結果」を利用できる。逆転には至っていないが、沼上に依ればモスバーガー の躍進をニッチャーとしてのマーケティングミックスの成功だけで説明することは出来ない。先行者である 日本マクドナルドは、積極的なマーケティング等を通じて日本人、得に子供にファーストフードとしてハン バーガーを食べる習慣を与えた。しかし、その層が年齢的に成長したとき、そのセグメントを潜在的顧客層 としてモスが取り込むのに成功したという。

 クリステンセンの破壊的技術革新の説明と多少重複するが、投資のインセンティブの低さからも代替的技 術や市場ニーズの変化への対応が困難になる。既存製品の生産に関して特定性の高い資産を多くかかえてい れば、それはサンクコストと化す。また、既存製品と新製品とのカニバリゼーションが発生する恐れから も、投資誘因が減少する。先の任天堂の例で、任天堂がソフトの徹底管理を行っていたと言及したが、同社 はソフトを記憶したゲームカートリッジの受託生産も行っていた。ゲーム機本体だけではなく、カートリッ ジの生産からも利益を得ておりこの収益構造は、戦略の転換を困難にしたと考えられる。

 これら以外にも先行者不利益の外部要因として、不確実性の回避やフリーライダーの存在が挙げられる。

後発企業にとって、特にドミナント・デザインが確立された後では、技術や市場の不確実性を著しく低めら れる。研究開発や経験効果の蓄積も、リバースエンジニアリングや労働力の流出によって、後発企業に吸収 され、フリーライドされる可能性がある。

 しかし、以上の外的な要因だけではなく、先発企業の内部要因も逆転を発生させる。

5 後発優位性の内的要因

 マーケティング戦略としてみた場合に、リーダー企業とチャレンジャー企業が対決する際にも組織の事情 が関わることがある。マーケティングミックスでのチャレンジャーの「差別化」戦略がリーダーの「同質 化」戦略に勝てるか否かは、独自の資源に裏打ちされ、なおかつ相手が抱える事情から模倣できない差別化 を実現できるかにかかっている(沼上, 2000b)。ここで、リーダーは組織の機動力でチャレンジャーに劣 り、対応が遅れ、脅威にさらされたり、逆転を許すことがある。先行企業、後発企業の逆転でも、しばしば この組織的要因が先発優位を減少させている。

 先行企業では、その技術に適した組織構造によって運営がなされている。ここで、将来的に代替の可能性 のある新技術や市場のニーズの変化があらわれても、その情報にフィルターをかけてしまうことがある。な お、情報の取捨選択を自分の持っている仮説に基づいて行ってしまう思考の傾向は確証ヒューリスティック もしくは確証バイアスと呼ばれる(上田, 1997;印南1997)。情報の選択にバイアスのかかった結果、状 況を見誤るもしくは迅速な対応ができず、先行企業が逆転を許すことがある。なお、ヒューリスティックと は、人間やその集団の意思決定の際に見られる情報処理の「くせ」のようなものである。複雑な状況を整理

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するときに、意思決定主体は限られた情報処理能力を節約して分析にあたるが、その傾向を指す。すなわ ち、それまでの意思決定での経験によって単純化された決定方法であり、複雑で多岐にわたる多くの決定を しなくてはならないときに意識的であろうと無意識であろうと用いる直感である。しかし、この意思決定の 便方には、副作用として「バイアス」がかかる。(上田、1997:印南、1997)

 また、組織の発展過程において漸次的進化過程は強い慣性を持っている。その一方で非連続的な革新的組 織変革は非常に困難になる。これも組織の構造を硬直化させ、戦略の転換を難しくしている(桑田・田尾,  1998)。

 これらの新技術への転換を困難にする組織論的説明として、企業のパラダイムの問題が挙げられる。企業 におけるパラダイムとは、ある集団の内部で日常の問題に対処し解決案を示すための統一的な思考様式であ る。共有された世界観としての側面や、集団の中での価値観、規範、範例を示すものである。そしてパラダ イムが固定観念の実体であり、時として意思決定の中枢において創造性を妨げている(加護野, 1988)。

 このパラダイムの性質として加護野は更に共約不可能性を挙げている。共役不可能性とは、異なったパラ ダイムの間の説得はデータだけではできないことである。同一の事象を説明するための理論体系が複数存在 する為に反証が困難になる。むしろ、異なったパラダイムの間では、人々の嗜好によってパラダイムの選定 がなされているようである。このため、企業の意思決定レベルにおいて、パラダイムの交替に際して政治的 混乱が発生する。

 しかも、市場の変化といっても、情報は一貫して新しい徴候を示すわけではなく、変化の過程では現行の パラダイムを支持する情報も得られる。例えば販売数が減少傾向を見せている中で、一時的にでも若干販売 が回復することがある。その時、社内で戦略の転換に関する議論がおきていても、既存の戦略的視座で情報 を過大評価してしまいかねない。そして結果として技術転換が困難になってしまう。

 ところで、このような状況で意思決定グループとしての判断が極端になっていることはないだろうか。あ るいは、組織の凝集性などによって意思決定にバイアスがかかって、客観的には、適切といえない判断をし ていることはないだろうか。

6 集団意思決定の極大化

 そもそも、企業組織等の集団の意思決定の極大化を引き起こすような要因は何であろうか。なお、先発後 発逆転における組織の意思決定を説明するにあたり、本稿でも集団や組織を、(Allison,1971)の官僚政治モ デルに倣った視座で捉える。すなわち、企業等の組織をあたかも合理的な意思決定を行う一個の統一した行 動主体としてみなすのでない。組織や集団は人の集まりであり、その中で下部の構成要素によって社会的・

政治的作用が行われているという視点をとる。

 『決定の本質』(Allison,1971)の研究は、1962年のキューバミサイル危機における最高意思決定の様子を 観察したものである。「なぜソ連はキューバにミサイルを持ち込んだか」、「なぜ合衆国は海上封鎖で対処 したのか」、「なぜソ連はミサイルを撤去したか」という3つの疑問それぞれに、異なる三つの国際政治学 上の3つの分析パラダイムを摘要し、合理的観点だけでは説明しきれない事象を観察している。その3つの パラダイムとは、意思決定が「合理的行為者」、「組織過程」、「政府内政治」によって行われる、という ものである。はじめは政府の意思決定を「合理的行為者」モデルの下、考えられる状況に合致した統一され た、且つ行動と一致した合目的決定として捉える。そして大概の事象は説明できるものの、残された一見合 理的とは思えない行動を、「組織過程」モデルや「政府内政治」モデルで説明していく。この二つのモデル については後述する。

 アリソン(Allison,1971)によれば、組織の行動を統一された、中央によって統制された個人のような合理 的な行動をみなすのは有益な簡便法であるが、同時に多くの明らかにならなかった部分を曖昧にしてしまう という。また、組織を個人の意思決定に見立てる古くからの意思決定モデルはメタファーに過ぎないとの立 場もある。(印南,1997)

 企業間競争の先発企業と後発企業の逆転現象において、競争構造だけが決定的なのではなく、企業内部の 意思決定が先行者優位の逆転に繋がっているケースもあるのではないかと思われる。したがって、意思決定 の極大化の傾向とその要因を挙げてみる。

7 集団(分)極化現象等の社会心理学的要因

 通常、集団での意思決定は、中和され構成メンバーの認識の平均的なところに落ち着くと考えられる。社 会心理学等の学問領域においても、1960年頃までは、中間的な意思決定路線が普通であり、それが安全な

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企業の決定に繋がると考えられていた。

 しかし、ワラック(Wallach, M. A)らによって、集団の意思決定が個人の意思決定よりもリスクの高い決 定をする現象が実験的に検証されている。よりリスクが大きく、より望ましい結果となる選択肢を含む二つ の選択肢を検討する際、個人で検討した後に、その問題を集団で検討したところ、その決定は個人の決定の 平均よりもリスキーになっていたのである。すなわち、リスクテイキング(Risk-Taking)の程度と集団討議 の影響力との間に正の相関が確認されている。しかも、集団討議後の個人の意見を調べると、やはりリスキ ーなものになっており、内在化も確認されている。この集団内影響過程を経た現象は、リスキー・シフト

(Risky Shift)現象と呼ばれている。なお、この現象はストーナー(Stoner)によって1961年初めて提唱さ れた。それを、ワラックらが追試する形となった。

 なぜ、リスキーな方向に決定が傾くのか。この現象を発生させる理由がいくつか挙げられている。ひとつ は責任分散説である。集団であることで、個人であれば感じるであろう結果に伴う責任意識が薄れるという ものである。しかし、誰かが責任を持つ仕組みにした実験でも、必ずしもリスクテイキングの程度が低くな ることはなかったという。そのリーダーシップ自体が理由であるとする説もある。リスクテイキングの高い 人がリーダーになり、議論をリードしていくからであると考えられるのである。だが、人気度の高いメンバ ーをリーダーとした場合でも、必ずしもリーダーの発言内容がリスキーで影響を持ったわけではない。これ らの二つの理由は完全に否定されるわけではないが、リスキー・シフト現象の側面を反映している。

 他には、不安を軽減するために情報の選択にバイアスをかけるからだという考え方がある。これは確証 ヒューリスティックの、情報選択に際して抱く仮説に不安が影響した形態とも思われる。集団になり個人で は持ち得なかった多くの視点から、問題に対してより情報を持つことができ、リスクを低く感じるという熟 知説もある。

 また、その社会において一歩進むことはよいことだと考えられている場合に、議論がリスキーな方向へと シフトするとも考えられる。他人が同種の考えを持っていることを知ると、自分の考えを確信するという説 明である。

 なお、この観点からは意思決定がより慎重な方向にシフトする現象(Cautious Shift)も説明できる。集団 の意思決定がより危険な方向、もしくはより慎重な方向にシフトする傾向の両方が存在する。この個人の意 思決定よりも集団による意思決定は極端な方向へ動く傾向を、集団(分)極化現象 (Group Polarization)と いう。(印南, 1997)

 モスコビッチ(Moscovici, S.)らは、実験によってリスキーシフトが集団極化現象として説明できるとし た。モスコビッチらの実験結果では、集団討議の結果、意思決定が個人の判断よりも極端な方向に変化する 傾向を明らかにしている。この集団極化現象は、選択肢の問題だけでなく、普遍的な集団相互作用の結果で あると示す実験もなされている。(齋藤, 1987;Brown,1988)

 このような集団極化現象(選択シフト、集団分極化)に関する研究は多く行われたが、その現象を理由を 説明する諸説のうち、十分に説得力のあるものは現れていない。なお、経営学の実験経営学という命題の再 現性と統計的検証に長ける立場から、集団極化現象に対して、より企業経営の状況に即した言及がなされて いる。(長瀬;1999)によると、リスキー・シフトは損失状況に固有の現象であり、利得状況では発生し ないという。また、競争的環境下ではフィードバックに対し個人よりも集団の合議意思決定の方が、単純に 反応し、それも2人よりも4人のチームにおいて顕著であったという。

 集団極化現象と関連した集団の意思決定の傾向として、集団浅慮(groupthink;集団愚考、病理的集団思 考)も挙げられる。これは、ジャニス(Janis, I. L.)が、アメリカ合衆国の外交政策の失敗の事例から、意 思決定における要因を導出したものである。事例として、ケネディーのピッグス湾侵攻作戦失敗、ジョンソ ンのベトナム戦争拡大、ニクソンのウォーターゲート事件等での意思決定が研究されている。ジャニスは、

「なぜ賢明な大統領とその優秀なスタッフが愚かな決定をしたのか」という点に着目した(Janis, 1972)。

 集団浅慮とは、そのメンバーのポテンシャルの高さにも関わらず、集団の意思決定が愚か結論にいたる現 象である。ジャニスはその要因として次のようなものを挙げている。ひとつは当該集団のリーダーシップス タイルである。メンバーは情報の収集・処理において、カリスマ性の高いリーダーの方向性に逆らわないよ うになる。また、意思決定集団が外部の情報から隔離されていることや、問題の緊急性によってストレス状 況で決定を迫られていたということも挙あげられている。情報を専門組織や専門家で審議しないという傾向 も存在する。そして何よりも集団の凝集性の高さが集団浅慮を発生させていると考えられている(上田、

1997)。国家戦略を担うエリート集団の凝集性の高さが、コンセンサスへの幻想を高める一方で、メンバ

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ーに逸脱しないよう同調圧力を加えたとされる。

 このような意思決定集団では、メンバーにコンセンサスへの圧力がかかっている。したがって、自分の見 解を抑制する服従の作用もあるのではないかと思われる。ミルグラム(Milgram,1974)のアイヒマン実験 からは、人間は持っている道徳的観念や価値観とは別に、強制されれば簡単に権威に服従することが述べら れている。カリスマ性の高いリーダが存在し、集団の合意を強制させる要素があれば、服従が発生し、集団 浅慮に繋がるとも考えられる。

 印南(印南、1997)は、集団浅慮のような集団の凝集性を高め、価値観や規範の統一を高めようとする 傾向は、日本等の儒教文化圏に顕著であり、重要な経営手段にもなっているが、意思決定の質とはトレード オフにあると言及している。

 また、意思決定状況が逼迫していれば、それだけ集団の凝集性を高めて困難にあたろうとする傾向も少な からず存在する。それも意思決定の極大化を導くと思われる。

 ところで、集団極化現象や集団浅慮の要因として現れた同調とは、最も普遍的な集団内の相互影響作用で あり、集団内の他人と同じような行動をとるよう個人に要求する作用を指す。同調を研究した社会心理学の 初めの実験は、アッシュ(Asch)の暗室におけるサクラの実験である。暗室内において被験者が一緒にい る一致したサクラにあわせて、自分の言動を変えるという結果から、人は多数派と仲良くする為に、明らか な判断をも歪める意志を持つことが証明された。なお、同調の最たる要因は、多数派の人数とされる。

 他者の意見への同調の根拠としては、集団内で他者との社会的比較によって世界に対する認識を構築・維 持するため斉一性を強める、不確かな状況、重要な集団目標の存在といったことがフェスティンガー

(Festinger)によって挙げられている。

 企業の意思決定集団であれば、自社の競争状況について位置を確認できる場に該当するであろうし、不確 実性も存在し、成長や存続の為の意思決定をするという集団目標も存在する。この集団としての実存性を維 持する欲求が同調を発生させるということは、先述した企業のパラダイムとも関係すると考えられる。自分 や自社の競争上の地位やその中でとるべき方針といった認識の根本をパラダイムがなすとすれば、意思決定 の場においてメンバーの同調を成すのも、パラダイムと思われる。

 パラダイムが創造性をさまたげると(加護野, 1988)は言及するが、同時に意思決定において過度の同調 も誘発しているのではないだろうか。アッシュやフェスティンガーらの実験に基づいた知見からすると、企 業の意思決定においても同調が起こることは極めて多いと思われる。

 パラダイムによって世界観と組織目標が維持されている状況では、例えば、既存の戦略ではいずれ後発企 業等に逆転されるという徴候に意思決定メンバーの内の誰かが気づいたとしても、意見を表明するなどする ことは難しいと想像される。「ユリーカ問題」のように誰かが解答に気がつけば他の誰もが納得するといっ たものでなければ、既存の戦略(既存の戦略にかぎらず集団でコンセンサスのとれている選択肢)に異を唱 えれば、逸脱者として圧力が加わるのではないかと思われる。

 これを実際に確認する術はあまり存在しないが、公表された、経営者の後日談のような記事で、このよう な意思決定の場における圧力を知ることはできる。例えば、樋口廣太郎氏は住友銀行時代に、イトマン関連 の石油部門への出資に担当副頭取として反対した際、「銀行の方針に反対するつもりか、辞めるつもりか」

と言われ、結局銀行からアサヒビールに出向することとなったという。(2001年1月1日以降の日本経済新 聞「私の履歴書」) この例からは、少なくとも意思決定機関において、反対意見にはかなりの圧力がか かっていることが想像される。

 ところで、多数派の側からみた同調作用に対立するのが、マイノリティーインフルエンス(minority  influence)である。同調の影響力そのものは、通常の多数派による同調圧力に比べて統計的にも大きくは ないが、それでも少数者が何らかの特徴をもって主張を行えば、多数派の側であっても影響を受けるとされ ている。これは前出のモスコビッチらによってなされた実験結果から発展した議論である。モスコビッチの 主張は、完全に同質の集団はあり得ず、集団は常に意見の相違を潜在的に有している、したがって逸脱者が 自信をもって一貫した主張を行えば、葛藤が生じ新しい規範が生まれるであろうというものである。

 マイノリティーインフルエンスの発生する重要な要因としては、一貫性、投資、自律性、交渉力が挙げら れている。一貫性は、意見と情報を時間を通じて同じものに維持することである。また、少数者同士でも態 度を統一しておくことも、主張が気紛れでなく、多数派にとってクレディブルであるとの印象を与える。投 資とは、いかに少数派がその意見に真剣にコミットメントしているかを示すものであり、自律性とはその主 張がその意思決定とは関係のない動機や要因によって影響されていないことである。交渉力、これは少数派

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としての意見を、一貫性を持って主張する一方で、異端と思われないように振る舞うことを指す。

(Brown,1988) また、集団から排除されない程度の器用さも求められるのではないか。

 マイノリティーインフルエンスの観点からは、自社への脅威を認識した者が意思決定集団において既存の パラダイムに該当する戦略方針に対して修正の意見をいい、競争優位の逆転などを未然に阻止することは可 能であると思われる。しかし、マイノリティーインフルエンスの要因をみると、多数派に影響を与えるには 時間とコストがかかることが予想される。

 つまり、多数派からの同調圧力は社会心理学の議論からみて強いものであることと併せると、企業の意思 決定において、既存の戦略が行き詰まったとき、場合によっては新規参入業者や後発企業による逆転を許す ような人為的要因があるのではないかと考えられる。すなわち、市場の変化、新技術の登場、エントリーバ リアの無力化等といった情報に気づいた意思決定メンバーが存在したとしても、多数派の圧力によって、脅 威が組織レベルで認識されることは少ないであろう。したがって、大きな変化に実際に直面してから、自社 にとっての脅威に気づいたり、少数派の主張が受け入れられたときには既に、競争構造が変化しており手後 れになっているといった可能性も無視できないのではないかと思われる。この同調圧力は集団の同質性に比 例する傾向にあり、集団極化現象や集団浅慮といった現象と関係するものである。

 心理学的な意思決定の極大化要因として、エスカレーティング・コミットメントの問題も大きな影響を持 つ。これは、自己の過去の意思決定がもたらしても、同じ意思決定を更に繰り返そうとする心理的傾向であ る。具体的には、赤字となった投資への再投資等をさす。その現象の理由は、自己正当化、サンクコストの 問題、プロスペクト理論に基づいた損失的状況におけるリスク志向的態度である(長瀬、1999)。(印 南、1999)では、北海道拓殖銀行が破綻に至ったリゾートホテルへの過剰投資が事例として引用されてい る。当初からリスキーシフトの傾向がみられ、またサンクコストも大きなものとなり、損失的状況において 意思決定が歪んでいった様子が想像される。

 なお、この現象も企業経営に限らない領域でもしばしば確認される。例えば、大平洋戦争において日本軍 は、ガダルカナル等の戦場で、戦略方針を再考しない兵力の逐次投入を行っている。同軍では中央レベルか ら前線レベルまでにわたり、指揮官や幕僚などの意思決定グループの責任を監督する体制が、不十分であっ たとされる。(戸部・野中他、1991)

8 実験的状況による知見の制約

 しかし、集団極化現象や集団浅慮等の社会心理学的な現象を論じるにあたっては、大きな制約に直面す る。それらの現象はその場限りの集団で行う実験的状況でのみはっきり観察されるものである。ワラックら を先行研究として、その後行われてた数多くの研究の中では、企業や裁判などの実際の事例において、現実 に選択シフトが起きていると示唆するものもあれば、起きていないとするものもある。

 またジャニスの研究作業は国家の情報公開義務による情報アクセスの確保を前提としている。これは私的 企業の事例研究には当てはまらない。よって、求める先行者不利益の事例から意思決定が歪曲する様子を窺 うことは極めて困難である。

 したがって、私はひとたび先行企業後発企業逆転から離れて、意思決定へバイアスのかかる状況を考えて みたい。集団極化現象等の意思決定の極大化の要因には、リーダーシップスタイル、メンバーの属性、集団 を覆う価値観、凝集性、処理すべき問題の性質が深く関与していることが実験から述べられている。これら と企業における意思決定の問題との接点としては何が考えられるだろうか。

 ひとつは先述したとおり、企業パラダイムの問題であろう。企業パラダイムは情報の選別を行い、メンバ ーにある程度パターン化した思考を強いる。また、行動様式にも干渉する。そのとき、意思決定を一定方向 へと導く力が発生すると予想される。

 だが、企業ガバナンスの問題も接点として考えらるのではないだろうか。企業ガバナンスの議論では、経 営者の資質や関心、利害関係者のプレゼンスといったことが関心領域とされている。これは、集団極化現 象、集団浅慮の発生の要件とも共通する。よって、企業ガバナンスの観点からも、意思決定の極大化を検討 する。

9 ガバナンスと意思決定の極大化

 現在の日本のトップマネジメントについては、どのような問題が挙げられるであろうか。(伊丹、

1995)は、優秀なトップマネジメントが日本企業で育っていないと言及する。日本企業が低迷しているの

(9)

は、日本型経営に限界が訪れたのではなく、そのシステムのオーバーランに伴い発生した問題のひとつに、

トップマネジメントの能力不足があるという。これは、日本が戦後急激に成長し、またアメリカにも追付い たことで、日本国内だけではなく、国際的分野において人材とトップマネジメントに対する需要が急激に増 えたことによる。また、トップマネジメントの供給を不足させるような要因があると言及している。それ は、かつて高度経済成長期を支えてきたトップマネジメントは、戦争などの大きな変化を体験した人々であ り、その後のアメリカに追随することが当然であった人々とは世代経験に差があるとする要因。現在のトッ プマネジメントは、前の世代のように戦後の公職追放によって若い時から、大きな仕事を与えられてきた訳 ではなく、機会平等・年功序列の下で細分化された仕事をしてきたという要因でシステム疲労がおきている とするもの。そして、社長がポスト化し、役員経験期間が短縮しているといった要因が、トップマネジメン トの能力の減少させているとしている。

 こうした状況を踏まえて、現在もパージによって若返りの効果を期待し、トップマネジメントを入れ換え ることを提言している。そして、戦後の企業内への民主主義の導入とトップリーダー育成の問題はジレンマ であったとし、民主的コンセンサス社会でのリーダー育成の問題が、歴史的状況と経営システムの疲労に よって厳しく問われているとしている。

 この(伊丹、1995)の指摘からは、現実にトップマネジメントの意思決定の質が低下している原因の傾 向が明かとなる。(伊丹、2000b)によると、現に社長になってはいけない人が社長となり企業に危機をも たらしているようである。最近のモラルを含めた企業の失態からは、深刻な人的問題がうかがえる。先の理 由によりトップマネジメントが不足しているとされるが、その能力がない者が社長となり、自己有能感から 錯覚を起こし、外部の情報を鵜呑みにし、そして自社の現場から遊離してしまう。その自己強化的な悪循環 の中で、責任感もなく基本的な判断を誤りを起こすというのである。

 さらに(伊丹、2000a)では、社長のリストラの必要性に加えて、社長(トップマネジメント)のチェッ クメカニズムを再考すべきとしている。現在はチェックが空洞化しており、実質的にはトップの自覚に大い に依存している指摘し、従業員主権の副作用として、株主のサイレント化や監査役・取締役会を内部出身者 で占めることが、「社長の独裁」に繋がっているとしている。なお、集団浅慮の枠組みを述べたジャニス

(Janis, 1972)は、集団浅慮をとめる最大の方法は、1人に決定を任せないことだと指摘している。逆に 言えば、現行のチェックの空洞化は、十分に意思決定の極大化や質の低下を招くおそれがあると考えられ る。

 現在の日本のトップマネジメント経営陣の制度の問題に関しては、(深尾・森田、1997)に依ると、ま ず取締役や監査役の任免権は事実上、代表取締役にあるとされている。それは、以上と重複するが、株主総 会では会社があらかじめ議案と過半数の委任状を用意しており、社長の意向によって取締役会の候補者がき められるからである。ただ、代表取締役の任免権に関しては、任命における取締役の権限は有名無実化して いても、解任に関しては極度にパフォーマンスが下がれば取締役会が解任の代表取締役の解任の手続きを とった事例がいくつもあると指摘している。業務の監督権限の機能状況については、取締役会、監査役の構 成者の、第三者性、独立性、および情報収集能力のどの観点からみても、十分なものではないとされる。重 要な業務執行決定も、取締役会ではなく現実は常務会で行われ、開催頻度も常務会の方が多い傾向にある。

取締役会は、常務会の決定を受け入れるだけとなっており、監査役は常務会に参加することが少ない。会社 の規模が大きくなれば、必然的に取締役の人数も増加し、意思決定を行うことが困難になるようである。

 なお、取締役会の構成人数は年々増加傾向にあり、資本金が500億以上の大企業では、数十人という数に なっている。先述した社会心理学上の同調行動の実験では、同調の程度はその場の人数に比例すると結果が 出ている。それだけ、大規模組織になれば、常務会の意思決定が通り易くなり、チェック機能が作用しにく くなっているとも考えれられる。また、それだけ、現場との階層が増えるのであれば、競争戦略上の意思決 定の判断にもバイアスがかかり易くなる。(印南、1999)も取締役会が事後承認機関となり、株主総会が 形骸化しており、外部からのチェックは株価といった一般的評価でしかないとしている。

実験経営学の立場から(長瀬、1999)は、仲間どうしの合議決定では、個人決定よりも自己に甘くなる

「お手盛りシフト」の発生を実験から述べている。常務会ようにより同質的な集団になれば、ガバナンスと 競争戦略の両面で、判断が歪む恐れもある。

10 集団意思決定と組織

  ガバナンスと意思決定の問題を議論すると、組織の中で権限・権力(パワー)を誰が実際に掌握してい るのかという問題が想起される。(本章では、コーポレートガバナンスと組織論との区分が微妙な問題につ

(10)

いて議論する。)

 組織内の意思決定等の行為では、公式に定められた権限以外にもパワーの源となるものがある。(印南、

1999)の分類によれば、それらの源泉は公式の権威・権限の他に、資源のコントロール、情報のコントロ ール・専門知識・代替不可能性、不確実性への対処能力、同盟関係と意思決定前提の操作、といったもので ある。これらは、必要性に即して配分される正常な状態で機能すれば問題ないとされる。しかし組織政治の 局面では意思決定の質に影響を与えることもある。公式な権限体系の中でも、中央集権的な組織構造では権 限を与えられた個人の周りにイエスマンが集まり、情報も歪曲され意思決定の質が下がりかねない。分権構 造でも下位階層で権力と情報の奪い合いが発生することもあるという。

 また実績や競争上の要請、乃至は人格的な魅力意外にも影響力や権力の源泉があるという。それは、(沼 上、2000c)が、組織疲労をもたらすものと言及する「厄介物の権力」と「キツネの権力」である。前者 は、会議の場で喚くなどし大人気ない行為で有望な案件を潰して、一方で理不尽な案件を通し、企業の意思 決定を歪めるものである。一流企業であれば厄介物に対抗することのできない優等生タイプの社員が多く、

その温床となりやすいという。また、厄介者に根回したりと組織疲労にも繋がる。後者は、伝達調整の任に ある者が、会社、顧客、社長といった、社員にとって恐い存在のイメージを誇大化して、権力を行使するも のである。それらが本当に何を求めているか、社員には知られていないという点に問題があるという。本当 は誰の指示のものか分からない状態で、意思決定が歪んでいくとされる。

 意思決定へのバイアスの源となるパワーであるが、以上からも組織は合目的な行動や公式の組織構造だけ で動いているわけではないことが分かる。先述したアリソンの官僚政治モデルは、意思決定を合目的観点だ けでは説明できないとし、意思決定が「組織過程」と「政府内政治」によって大きく影響をうけるとした。

アリソンの「組織過程」モデルは、経営学の組織論の領域におけるサイモン(Simon,H.A.)以降のモデル を援用したものであり、意思決定と行動は、その政府を構成する下部組織の部門目標やルーティンによって 影響を受けるという視座を提供している。「政府内政治」モデルは、、国際政治を分析する際、国家を唯一 のアクターとして考えるという標準的であったモデルと異なるものであり、政府の中でも利害関係とパワー に基づいて駆け引きが行われているという視座である。(Allison,1971)のこの第3の「政府内政治」モデ ルの章で、アリソンは「問題については何をなすべきかについては合意があても、それだけで行為が保証さ れるわけではない。」と述べている。そういった枠組みで、政府のトップが各プレーヤーに、政府の結果

(output)に対してインパクトを与えられるように、パワーを行使するというのである。

 このように組織の成果に権限といったパワーが不可欠であることが分かるが、このパワーの存在があるか ら「集団意思決定」が行われるのである。すなわち、集団の意思決定は決定内容を実行に移してからの組織 成員の動員を実現する「実行可能性」を高めるために行われるのである。他には集団の意思決定の利点とし ては、情報の多角化・多量化が臨める点や何度か集団としていくつかの決定を繰り返せば枠組みが形成され 決定にかかる時間が短縮できる点が挙げられる(印南、1997)。だが、組織内のパワーを制御する機能と して集団で意思決定をすることも重要なのであろう。

 集団で意思決定をすることに社会的相互作用が大きく介在することは先に述べた通りである。また、企業 の最高意思決定機関のメンバーは、大概販売や事業管理等に貢献した人物であることが多く、企業内の下部 組織の代表であり、しばしば組織のライン上に存在する。よって、様々な拘束が彼等に課されていると考え られる。

 以上より集団の意思決定は、組織内の権力構造と集団内相互作用によって大きく影響をうけ、バイアスが かかることが分かる。だから、集団内影響過程を排することも目的として数々の発想法(KJ法、NM法)が 考案され、また権力の拘束と責任から解放された状態で分析立案に務める目的もあってラインに対するス タッフ組織(ドイツ参謀本部等)が作られたということを付して、本章を終える。

11 事例

 ここでいくつかの事例のうち、戦略への固執と思われる特徴的なものを挙げる。

-事例1 ソニーの映画製作所買収

 この事例は、先発後発逆転の事象とは関係ないが、企業内部の意思決定集団の状況がよく記述されている ので、引用した。(Nathan,1999)の『ソニー デジタルドリームキッズ伝説』では、ソニーの栄光と、そし て例外的に失敗の事例についても当事者のインタビュー等を踏まえ記述されている。この為、本稿のような 意思決定の研究にとっても分析上有用であり、また大変貴重である。

(11)

 ソニーがかつて、アメリカのハリウッドのコロンビア社とグーバー・ピーターズ社を買収したときには、

その法外な取得株価が話題となった。同書は、ソニーが買収に至った過程が交渉の主要人物達の人間関係に よって深く影響を受けていたと指摘している。

 そもそも、ソニーが映画コンテンツの分野に乗り出すのには、ベータの敗北によって、ソフトの重要性を 認識していたと解釈される。また、既にCBSレコードの買収で手に入れた音楽ソフトとのシナジーを活か すといった意図もあったようである。

 だが、買収を検討して行く段階で、外部のアクターにあたる、CBSレコードの買収を仲介したブラック ストーンズの社長やコロンビア者の大株主の影響を受け、ソニーは1989年8月に経営会議で、買収を検討す ることとなった。この会議には、6人の最高経営幹部が出席し、合図と応答の微妙なやりとりが行われてい たという。6人の出席者とは、盛田と大賀をはじめとする、盛田の弟や大賀の腹心、ポスト大賀とされるメ ンバーであった。会議では、特に会長盛田と社長大賀のやりとりが議論の方向をきめたと記述されている。

 会議は、コロンビアの買収は見合わせるとの方向で一旦纏まった。しかし、そのメンバーがともに夕食を とった際、盛田が「ハリウッドの撮影所を持つのが夢だった」と偶然発言した。それには、誰も何も言わな かったと記述されている。その後、再開された会議では、その会長盛田の発言に基づいて買収を進めること が決定されたという。なお、この場には、映画の専門家は参加しておらず、誰もコロンビアの正確な評価を 行えなかったとされている。

 その後、取締役会では、経営会議の買収の決定を承認することとなった。この取締役会には、30人の役 員が出席したが全員が社員であった。そのうち26人は出世段階にある「平取締役」であり、残りは先の経 営会議のメンバーであって、はっきりとした序列構造があった。ソニーでは最高意思決定機関は経営会議で あり、取締役会はその承認機関となっていたのである。同書もこれが日本の取締役会に固有の葛藤であると 明確に指摘している。

 このケースで着目すべきは、同質性の高い集団が、権威のある会長の意向に従って、専門家による情報の 評価を行わず決定を下したという点である。これは、ジャニスの集団浅慮のモデルと符合すると言える。そ して、決定が本稿の8章で述べたような日本のガバナンスの問題によって、チェックがなされなかったこと が更に失敗を招くこととなったと考えられる。

-事例2 キリンビールの慣性

 逆転現象の具体例のところで、日本の戦後のビール市場におけるキリン対アサヒの概略については述べ た。(残念ながら、企業の意思決定とその極大化に関わる資料は入手できなかった。)

 キリンが意思決定を極大化をしていると考えられた、行動はいくつかあるがまず、生ビール市場への本格 参入の時期は何を意味するであろうか。1970年代、キリンは他社が「ガリバー」キリンへの対抗策として 生ビールに力を入れているのに対し、模倣しない戦略をとっていた。生ビールの研究そのものは、1960年 代中頃から始まっていたようであるが、対外的には「生は邪道」であるとしており、生ビールの販売に踏み 切り本腰を挙げていったのは、1981年の「ビヤ樽」発売以降である。キリンとしては、6割ものシェアを 所謂ラガービールで構築し、日本人の味覚は中長期的には変化しないという見方から、また工場設備の面に おいても、戦略を転換することは難しかったようである。しかし、市場での競争において、チャレンジャー にあたる企業の差別化には極力同質化で対抗することが望まれる。したがって、ビンの生ビール(キリンび ん生、通称青ラベル、1985年)の参入の遅れに対しては、意思決定での判断ミスがあるとも考えられなく もないが、これは想像の範疇である。

 キリンの流通政策についても、過去の路線に引きずられることとなった形跡がうかがえる。そもそも、キ リンの戦後の躍進は、流通政策の成功によるところが大きかった。業務用市場ではなく、積極的に家庭用市 場を開拓し、卸や小売との流通システムの構築を先導して、度々近代化と合理化を繰り返していった。ま た、それが高回転と情報の早いフィードバックをもたらす速度の経済を実現していった(加護野・石井、

1991)。これは、シェアの大きいキリンに有利に働く。また、地方において代理店契約を結んでいる卸の 影響力と商品力の相乗効果を利用し、多くの販売量を実現できる構造を形成していった。

 しかし、コンビニエンスストアーやスーパー、ディスカウントストアの台頭の流れには乗り遅れたようで ある。特に、90年代の細川政権の規制緩和による酒類の大型店での販売許可の流れは、キリンにとって不 利なものとなった。アサヒ等の他社が特約店の支援も行いつつ、コンビニやディスカウントストアに浸透し ていく側で、特約店などの一般酒販点が主体のキリンは、既存の店鋪の販売支援を行っていった。その内容 は在庫管理を含めた物流支援であったり、情報端末の導入であったり、ドライ戦争以前はあまり訪れなかっ

(12)

た店鋪まで社員を出向かせ、直援にあたらせるといったものである。しかし、ドライ戦争後の巻き返しをは かり、既存の特約店網の統廃合を行ったのは90年代末であり、そこでも、既存の戦略に引きずられた形跡 があるといえる。

 キリンのドライ戦争前後での競争優位の喪失には、パラダイムによる情報の過少評価の可能性が考えられ る。もちろん、意思決定自体の資料はないので憶測であるが、その行動をみると、過去の意思決定とその成 功に強化された戦略的方針が、新しい競争軸の存在を見逃したのかもしれないと思われる。

-事例3 ヤマト運輸の革新者としてのジレンマ

 最後に、逆転されそうなケースを挙げる。クロネコヤマトのヤマト運輸は、宅急便市場を創造した企業で あり、そのブランドも確固たるものと思われた。しかし、ごく最近の記事(日経ビジネス2000年12月4日 号「どうした!?ヤマト運輸」)のよると、佐川と日通の追撃と株価の低迷にヤマトはさらされており、そ れは(Christensen, 1997)のイノベーターズジレンマによるものだという。株価は2000年始めは4000円 を越えていたものが、同年11月には2000円近くまで低下し、取り扱い荷数においても、佐川と日通よりも 低成長となっている。また、ユニクロやアマゾンとの契約も取りこぼしているという。

 その原因としては、CtoCの小口輸送に適した大規模運送システムの完成度が高く、かえって容易にコス トを下げることを挙げている。例えば、2tトラックにしても、佐川は法人ユーザー業務が多く持ち返りが ないため荷物の満載が可能であるのに対し、ヤマトは個人宅での持ち帰りが多く荷物の満載は出来ないと いった違いがある。また、組織の規模が多く、インターネットとの対応を考え、他社が力点を置いている情 報システムの本格導入に関しても、コストが大きくなるという。

 だが、ヤマト運輸は現場と本社の距離があり、それが値引きなどの場面で顧客との迅速な交渉を困難にし ており、それが競争優位の喪失につながっているという。ヤマトはそもそも労働組合の影響力が大きく、労 組は新企画の立案にも関与している。しかし、そのボトムアップ型の意思決定は時間がかかることを意味す る。また、現場である営業所と本社の営業部は同一ではなく、ときおり営業部の結んだ契約が営業所で混乱 を招く原因になるという。営業所は営業所の採算体制を気にしている。しかも、ドライバーには役員といっ た中枢への昇進の道が閉ざされており、近年、本部と現場の関係は冷えていると思われているそうだ。

 この本部と現場の連係の記事に関しては、アリソンの官僚政治モデルでの決定の実行可能性の問題が想起 される。ヤマト本部の決定には労働組合への調整が必要になる点、現場である営業所はその単位での組織目 標とルーティンに従って行動している点という、組織の政治と下部組織の自律的行動の問題がヤマト運輸の 抱えている問題であり、それが競争上必要な意思決定を妨げられるとも考えられる。

 以上三つのケースを本稿での興味と資料の入手可能性から選択した。そして、それぞれに意思決定の極大 化や歪曲の要因となったであろう要素を前章迄の内容に沿って削出してみた。意思決定の具体的な様子が観 察できるのは、第二のソニーのケースであり、集団浅慮とトップマネジメントに対するチェックの空洞化が 存在したと思われる。

12 まとめ

 以上、先発企業の競争優位の喪失という競争構造において、技術的要因の他に組織内部の要因が関与して いるのではないかという問題意識に始まり、意思決定の極大化と歪曲に繋がる要因を分析し、最後にそれら のいくつかが該当する事例を挙げた。分析の結果、企業の競争優位の喪失では競争構造が決定的である場合 があるものの、企業内部の意思決定の問題も大きな影響力をもっていると分かった。また、(Allison,  1971)の言及するように組織を単一の行動とみなすだけではなく、組織内に相互作用があるものとして分 析する視座が有意義であることも改めて認識された。

 日本マクドナルドの藤田社長は、「商売にデモクラシーはいらない。それじゃ衆愚政治になっちゃう」と 語っている(日本経済新聞2000年12月18日夕刊)が、そこには集団内の同調作用を通じて意思決定が歪曲 するのを避ける意図が感じられる。

 企業の競争の成否と巧拙を論じる際、競争構造の影響が絶対的なものか相対的なものか区分した上で、意 思決定問題も無関係ではない場合があるとして、今回は論を閉じたい。

(13 今後の課題)

 今回の卒業論文では、筆者が当初構想段階で企図したような意思決定に集団内での相互作用がはたらき、

(13)

意思決定が極化するといったことを直接分析することはできなかった。しかし、それには企業秘密が保護さ れる私的企業の事例を研究する方法としては、大変な困難を伴う。時として、先のソニーの買収劇ように詳 細なケースが公表されることがある。しかしそれは、どちらかといえば例外である。

 意思決定における諸々の極大化要因を理論だけではなく、実証の面から分析するとなると工夫が必要とな る。事例研究の資料を自ら作成するか、事件等が起きた時のマスメディアによる情報の公開に期待するしか なくなる。また、ガバナンスの特徴などから接近する必要も発生する。実験経営学の方法も、大変有意義で あり、普遍的な条件での意思決定の側面の多くを明らかにするものと思われた。

 今後は、事例研究を中心として組織や戦略を研究する方法論や技法の学習を通じて、組織や意思決定の最 適化が妨げられるバイアスや、またその逆の競争優位につながる組織の要因について研究していきたい。今 回のような制約のかかるテーマであれば、企業に限らない領域において事例を求めたい。

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