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地球温暖化と極端な気象現象* 1

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(1)

地球温暖化と極端な気象現象*

1

山 元 龍 三 郎 ? 先ほどは不破先生 (*3) から環境問題 ても、この研究結果が導かれるまでの に関する非常に広範かつ含蓄あるお話 プロセスです。

を伺いましたが、私は、ある研究グ 地球温暖化の一つの側面としてよく ループがこの

2

3

年の間苦労して、こ 知られているのは、大気中の炭酸ガス の問題に取り組んでいる状況をお話を の増加によって、地球全体の温度が高 して、地球環境問題というものの難し くなり、徐々に海水面が上昇すること さをご理解いただければと思います。

『地球はどうなる?』との問いには恐ら

<答えることが出来ないでしょうが、

その答えの足がかりになるかもしれな いと思っています。

集中豪雨とか台風という災害をもた らす極端な天気現象を取り上げますと、

『天気現象の激しさの上限が最近、地球

現象が激しくなる』といってしまうと、

週刊誌の見だしにもなりかねませんの で、お話のポイントはなんといいまし

です。しかしここで特に注目するのは

『地球温暖化と共に気象災害を引き起こ すような台風或いは集中豪雨といった ものの激しさが変わるのか、変わらな いのか』という問題でございます。地 球温暖化という現象は文字通り地球規 模ですが、地球一周

4

km

に対して、

集中豪雨を引き起こすような現象は 温暖化と共にひどくなりそうだ』とい 精々

100 km

、台風でも数百

km

です。両 う話しができそうです。このことをあ 者の空間スケールは地球に比べて桁違 る研究グループが結論として導き出し いに小さいのです。時間スケールでも、

ました。今日はこのような結論が導か 災害を起こすような気象現象はずっと れたプロセスをお話したいと思います。 小さいわけです。 『空 間と時間のス

『地球温暖化と共に災害をもたらす気象 ケールが全然違った現象の間に何か関 係があるのか、ないのか』という議論 は一筋縄ではいかない。当然悪戦苦闘 が伴います。

1.

主要な嵐

(windstorm catastrophes) ( 1 9 6 0  1992)

による

10

年間の被害額(米ド ルの

1992

年貨幣価値に換算)の変遷。

Munich R e  (1993)

の資料に基づく」.

P.Bruce (1994)

より引用

1960 1969  I   1970 1979  I   1980 1989  I   1983 1992 

被害総額(億ドル)

支払い保険金(億ドル)

226 

53  336  83  380 

189  8

2   8 5

 

"創立

50

周年記念講演会(平成

8

11

8

日)講演 京都大学名誉教授

" 「地球環境の将来(不破 敬一郎) 」

(82)  海 洋 化 学 研 究 第10巻第2号 平 成9年 11月

(2)

〈気象災害の増加〉

1

は、横軸に

1967...,9 I

年の

25

年間 をとっており、縦軸は自然災害による 年間の被害者総数(世界中)です。世 界気象機関の事務総長のオバシさんが= < 250  まとめた図をお借りしたものですが R  

200 

60

年代後半の被害者は多くて

5

千万 人、これが大きく変動してながら、

90

年代には

3

億〜

3

5

千万の年もありま す。平滑化しますと明らかな増加傾向 がございます。これには地震や火山に よる災害も含まれており、天気現象や それに関連した現象も含めて、自然現 象全体による被害はこういう状況です。

天災による被害を数字に表わしている のが損害保険でございまして、その増 加傾向を示すのが表

l

(前頁)です。

1960

年代、

70

年代、

80

年代の

10

年間 に比べて、

80

年から

90

年の

10

年間は、 1000  支払い金額が特に増えており、損害保 樗 険業界では大問題としています。たと云累 えば図

2

はアメリカに限定しています e

が、横軸は

1925..‑...,90

年、縦軸は洪水に 示 よる年間の被害総額の対数です。年に全-—• ← 

よる大きな変動はありますが、

1920

年 苔 代を平均しますと、だいたい

1

億ドル、

90

年代に入りますと

30

億ドル近くに なっています。

『気象災害が非常に増えている』とい う事実は否めない。 『このような被害 の増加は、人口増加や社会の脆弱性な ど、社会構造が主な原因であって、天 気現象の結果ではないのではないか』

という意見もございます。実際気象庁 の気候問題懇談会でこの話をしまし た 時に、立教大学の経済の先生が『損害 保険上の支払いの急増というのは保険

•oo

350  JOO 

150  100  50 

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  68

  86

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  28   18

oe    6L  gL

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91

 

CL   L2

  OL

  69  

19

 

10000 

10 

自然災吉による 年間被害者数

(G.O.P.Obasi(1994)

による)叫……0

1

米国における 洪水による年間棟害総額

(K.Smith,1993

による)

06 6(   S8 6(   08 6(

R6

 

0 6( S9 l6   09 6(   SS 6L  

0S 6L

S1'6 L 

86 L 

SC 6L   OC 6L   SC::

6L 

契約の増加を反映しているのだ』と ぉっしゃっています。しかし、気象を やっている私にとって 、問題は 『地球 温暖化に伴って大気の動きが激しくな るのかどうか、災害を引き起こすよう

Transaction of The R esearch  Institute of  Oceanochemistry Vol. 10, No. 2, Nov. 1997 

(83) 

(3)

な集中豪雨が激しさを増すのかどうか』

という事でございます。この気象災害 の増加に社会構造の変化が大きく影響 していることは確かだと思います。災 害を引き起こすような天気現象の激化 も影響しているのではないかというこ とに関して、今までまとまった研究は ございませんでした。もしも、『温暖化 とともに天気現象が激しくなる』と判 れば、土木工事等の設計基準の変更が 当然でてくるわけです。『今まで

50

年 に

1

回の洪水と考えられていたのが、

30

年に

1

回起こる、今まで

50

年に

1

回 の割合で

300

ミリの降雨と考えてたの が、実は地球温暖化に伴って

500

ミリ になる』とすると、当然河川の堤防の 嵩上げが必要になってくる。これは国 家財政に大きく影響するような大土木 工事の設計基準の変更を必要とします。

あまりにも大きい社会的影響がありそ うだという意味では、この種の研究は ハッキリとした結果がでるまで、あま り大きい声で言わない方がいいのだろ

250 

う か と も 思 わ れ ま す 。 し か し 、

scientific

な形での研究結果の発表

は、別に否定するつもりはないのです。

集中豪雨を起こす天気現象の水平規 模は

100km

以下、台風でも数百

km

で、

地球の大きさに比べますと極端に小さ い。地球温暖化がどうなるかという議 論のための道具になっている「大気大 循環モデル」の格子間隔はだいたい

2 3

km

ですので、そのような大循環 モデルのシミュレーションで格子間隔 以下の現象の一般的傾向を組織立てて 研究するのが困難となる。そのために 過去のデーターを検討して何とかその 傾向を、たとえば

100

年くらいの期間 の傾向を見つけるという研究をせざる を得ないのです。

話はさしあたって集中豪雨ですが

『昔に比べて集中豪雨が激しくなったか どうか』ということです。極端な現象 は当然のことながら稀れにしか起こら ない。稀れにしか起こらない例として 図

3

は、ニューヨークのセントラル

日降水量

200,̲ 

(E E) UCI I

150 

50 

年 最 大

Cent1‑.al  Park(New York) 

1  880  1900  1920  1910  1960 

3

(84)  海洋化学研究 第10巻第2号 平成9年11 月

(4)

100 

10 

0.1 

0.0 ]  

0.00! 

Central  Park(New York) における 日降水量の頻度分布 (70 年間)

20  40  60  80  100  120  140  160  180  200 

日降水量 ( m m )

4

2. Sussex

ストーリー

日雨量の再現期間の計算値と実際との食い違い

(A.S.Potts [1982])  (1931  1 9 8 0 )

のデータから計算

観測点 再現期間

I   0

100

1000

Worthing  49. 5  mm  67. 6  

Illill 

85. 3  mm  Horsham  45. 9  mm  62.   0  mm  77.   8  mm  Parham House  50.   2  mm  66. 7  mm  82. 8  mm 

Sussex

での大雨の発生

年月日 場所 降水量 継続時間

1980

9

20

Worthing  112.   0  mm  10,‑..., I   1

時間

1980

10

10

Worthing  133. 3  mm  20

時間

1981

4

13

Horsham  90. 9  mm  8.  5

時間

1981

6

1

Findon  67. 7  mm  3.  5

時間 パークで過去

110

年間の毎日の日雨量

の年間の最大値が年によってどうか わったかを示しています。

1875

年以降 の

110

年間が示してあります。

200

ミリ を超えるひどい雨の年もあれば、そう でない年もある 。問題は『例えば

150

リを超えるような激しい雨がどういう トレンドをもっていたか』です。これ を議論しようとすると、こんなデー

ターからトレンドは簡単に求められま せん。図

4

は頻度分布を示しています。

横軸が日降水量の値、縦軸は頻度(%)

の対数です。問題はこの図の右端近く の非常に稀れにしか起こらない現象の 長期変化を検出することです。

l

ヶ所のデーターでは当然こういう トレンドを検出するのは困難です。そ の例を示したのが表

2

です。イングラ

Transaction of T h e  Research Institute of  Oceanochemistry Vol. 10, No. 2, Nov. 1997 

(85) 

(5)

ンドの南部にサセックスという地域が あります。その地域の

3

箇所での

50

年 間のデーターを基にして、

10

年に

1

回 起こるひどい雨、あるいは

IO   0

年や

1000

年に 1回起こるような確率の日雨 量が、どれくらいかを計算をした結果 です。ところがこの計算をした後、

1000

年に

1

回しか降らない確率だった はずのものが、実は

10

ヶ月ほどの間に

4

回も降ったのです。これは

1

ヶ所の データーをもとにして、雨量の確率を 求めることの危険性を示しています。

別の表現をしますと、そういう統計が うそをつくということになります。統 計的な有意性をきちんと確かめなかっ たためだといわざるをえません。 1ヶ 所のデーターからトレンドを求めるこ

との危険性を避けるために、複数箇所 のデーターで議論したらどうだろうか

ということになります。同じように、

5

に日雨量の年最大値が年によって どう変わるかを示しています。京都の データーは実線、大阪のは破線で示し ています。京都と大阪では当然雨の降 り方も違います。多数の観測点のデー ターを取り扱うとしても、生やさしい ことではありません。在来の統計手法 では、 トレンドの検出が難しいと言わ ざるをえないのです。

この種の問題は、

1990

年に出されま した国連のあるグループのレポート

(IP CC

と言う略称で呼んでいますが、

日本語では「気候変動に関する政府間 パネル」と呼んでいます)では、「極端 な現象のトレンドに関して研究すべき だ」と記しています。今年出ました

IPCC

の第

2

次レポートでは、実際にこ の問題を取り上げています。最近の新

り即 AL MAXIMUMOF DAILY RAINFALLl 

300 

50 

OA   TK

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00 00   50 50   22 1

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1895 

‑ ‑「‑ ‑ I  

1915  1935  1955 

YEAR 

1975  1995 

5

(86)  海洋化学研究 第10巻第2号 平成9年11月

(6)

しい手法で、組織的な研究がこの年代 前半に始まったと記しています。この

IPCC

の第

2

次レポートで紹介されてい

る私たちの研究では、複数箇所のデー 200 ‑

豆 三 □ 羞三号髯喜琴/喜 i 賃:忍五賃;・旦箪禽忍;.

15000

いで一様である。現象の激しさが増す 場合には、発現時期の頻度は最近の方 が増えてくる、という作業仮説です。

例えば西日本全体で

100

年に 一度とい う大雨が、数十ヶ所の気象台のどこか 200  で観測される。もしも、集中豪雨の上

B

限に属するような激しさが全体として>

d  

変わらなければ、頻度分布は、

100

年 間 「

あまり変わらない。ところが、その集 中豪雨の激しさが昔に比べて最近は酷 くなっていれば、いわば記録破りの集 中豪雨は昔に起こった頻度は少なくて、

最近は多い。これを逆に使って、長期 トレンドを検出しようというのがこの 作業仮説でございます。集中豪雨はご 存じだと思いますが、京都で起こって 同時に広島で起こるということはあり ません。集中豪雨という現象に関して 日本の気象観測網の個々の観測点は、

相互無関係であり、またある場所でお こって次にどこかでおこる場合でも時 間的には独立だとみなせます。そうい う意味で空間的にも、時間的にも独立 だとみなせる現象に関して、上述の作 業仮説が成り立つのかどうかを確かめ ることが必要です。乱数を使った モン テカルロシミュレーションで有用性や

11AXll1A  OF FIRST‑TENTH RANKS FOR 80 YllARS AT 30 STATIONS 

2  

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NO THENO 

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10  a   3 U  

 

   

7U  111J 

INCREASING TREND OF 

K  

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100 X  

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100 I  

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6

Y E A R  

正当性をチェックすることができます。

6

はモンテカルロシミュレーション で採用した疑似観測点の年間最大の日 雨量が年によってどう変わったか例を 示しています。この上のパネル(図

6)

はトレンドのない場合です。下の場合 には増加傾向があり

100

年間の標準偏 差に相当する量が

100

年間に増加した という設定をしたものです。

1

ヶ所の データーを見ただけではトレンドがあ るかどうか判断出来ないのです。

観測網でこのような状況を多くの観 測点で見ますと、それぞれの観測点で

10  a

 

70 

Transaction of The Research Institute of  Oceanochemistry Vol. IO, No. 2, N o v.  1997 

(87) 

(7)

40 

30 

(X )K 3N 3n U3 8d  

20 

10 

NO TREND 

40 

30 

︒ 2  

(X )K 3N an U3 8J  

10 

TREND OF  k   =   100  %  

︒ ︒

2

l t

 

 

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41

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61

80 ︒ l o  

8   ︒

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R

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"'▲ 

61  l   80 

81 

i   100  図 7

100

年間の最大値、この場合は第

1

位か ら第

10

位までとった場合ですが、どの 年代に起こったか示しています。図

7

で影をつけた部分が

95

%信頼限界です ので、この範囲の値になる確率が

95%

だという事を意味しています。右の図 はトレンドのある場合ですが、初めの

10

年間で比べますと、最後の

10

年間は 明らかに記録更新の酷い雨が頻繁に 降ったということでございます。この ように、多年の間で最大の降水量がい つ起こったかを複数の観測点から成る 観測網データーについて見ることに よって、例えば日本ではこのトレンド があるのか、ないのかという判断がで きるのです。結論的には日本の

55

ヶ所 のデーターを各

20

年ごとにくくりまし たが、この場合は第

1

位から第

3

位まで の発生頻度でございます。あきらかに 昔に比べると最近は増加してきたとい

うことが言えますし、統計的にも有意 な増加でございます。

〈豪雨激化の原因〉

先ほど申し上げました空間と時間ス ケールが全く違うものの間にどうも関 係がありそうだと言うことになります。

このようなトレンドの原因は何だろう か。今までお話ししましたように、

データー解析の結果とは一応独立に、

炭酸ガスが増えたときに地球の気候が どう変わるかというシミュレーション がなされています。そのシミュレー ションそれ自身では集中豪雨の増加の 議論は難しいですが、実は気象庁の付 属の気象研究所のグループが『炭酸ガ スが増えたとき、雨の降り方はどう変 わるのか』を議論しました。その結果、

炭酸ガスが増えて気温が上昇しますと、

地球全体として雨が多くなります。こ

(88)  海洋化学研究 第1 0巻第2号 平成9年11月

(8)

れは気温上昇に伴って飽和水蒸気量が ことを理解するために図

8

を掲げます。

増えることで空気中の水蒸気が増え、 この図は温暖化が起こったときの温度 その結果雨が増えることまでは理解し 上昇の分布図であります。横軸が緯度 やすいのです。 で北半球・赤道・南半球であり、縦軸 実は問題は雨の降りかたです。温暖 は高さでございます。炭酸ガスが

2

倍 化が進行するとにわか雨が増えると同 になったときに、対流圏の下の方での 時に、地雨(連続的な雨)の降る面積 温暖化は大きく、上の方ではむしろ少 が狭くなると言うのです。結論的には、 ないかないしは冷却が起こる。下層で 炭酸ガスが増えることによっておこる 温度が高くなるすなわち空気の密度が 地球温暖化の結果として、地球全体と 軽くなる。上層はそうでない。となり

しての雨量は増えるが、降水面積が減 ますと当然、対流が起こりやすくなり、

る。集中豪雨の激しさはこれにつなが そして、対流性の降水が増え、空間的 るものでありまして、やはり地球温暖 な集中豪雨が増す。このように集中豪 化が上述のトレンドの最有力の原因と 雨の激しさの増すことが、温暖化の高 いわさざるを得ないだろうと思います。 度分布から理解できる。それでは具体 降水面積の減る原因が温度変化である 的にどの程度激しくなるのかというこ

温暖化の高度・緯度分布

30 1‑GF. DL, 2   x   C 0 2 ‑ 1   x   C O 2   12 

^   乏 ― ― ― ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 円 25  20 ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑、 ― ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 5 5   25 遮

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1013 

70  50  30  10  ‑10  ‑30  ‑50  ‑70 ‑90 

北半球 緯 度 南半球

C O 2

倍増時の昇温量(℃) (

1  2

月〜

2

月)

昇温量:上部対流圏で小、下部対流圏で大(熱帯を除く)

対流活動が活発化

8

Transaction of The Research Institute of  (89)  Oceanochemistry Vol. 10,  No. 2, Nov. 1997 
(9)

再現期間

10000 

1000 

100 

10 

Gumbei 分布

a   =‑0. 045 

{3  =0. 902  •U46~199i

(1  =1.084 

‑2  ‑1   0   I   2   3   4   5   6   7   8  

年最大日降水量(標準化)

Shee t  I  

50

年確率日降水量 (IIlill)

1896,...,̲,1945  1946,....,̲,1995 

標準

3.  5   4.  4  

函館

133.   5   151. 5  

東京

240.   1   278. 5  

熊本

323. 8   377. 9  

9

とですが、詳細は省いて、結果だけを の

50

年間では、

240

ミリというのが

50

述べます。図

9

の横軸は年最大日降水 年に

1

回起こる確率。ところが最近で 量で、その単位は多数の箇所のデー は、

280

ミリ近くに増えているのです。

ターを一括処理するために標準化をし 熊本、函館も示しますが、このような たものです。縦軸はリターンペリオド 統計結果でございまして、もしも「こ

(再現期間)です。左下から右上へ伸び れが確かなものであり、しかも、その た

2

本の太い曲線は、それぞれ前半の 傾向が将来続く 」となりますと冒頭で

50

(1896.‑‑..,1945

年)と後半の

50

年 申しましたように、土木工事の設計基

(1946.‑‑..,1995

年)に対応しています。 準の見直しにつながるわけです。しか

100

年に

1

回しか起こらない豪雨」の し、このようなトレンドが、日本だけ 標準化値は前半では

4

、ところが最近 なのかどうか。実は米国とか中国或い では、

5

くらいになりました。この下の はオーストラリアの一部でも確認され 表では、

50

年間の確率を示しておりま ています。どの程度グローバルなもの す。例えば東京では、その

1945

年以前 か、それが本当にその地球温暖化の結

(90)  海 洋 化 学 研 究 第1 0巻第2号 平 成9年11 月

(10)

果としておこったものか、最も確から いう意味のいわゆる「熱エンジン」と しい原因が温暖化だと私は推測しまし して台風は動いているのです。地球温 たが、そのような推測をより強固なも 暖化に伴って海面の温度が高くなれば、

のにするためには、コンピューターを 最大限に使ってモデルシミュミレー ションで確かめる必要があるだろうと 考えます。

〈台風活動の動向〉

集中豪雨の話は以上で切り上げるこ

熱エンジンがより激しく作動するだろ うというのがエマニエルの主張点でご ざいます。彼が1987 年に出したモデル ですが、地球温暖化と海面水温の上昇 に伴うエネルギーの供給増加で、台風 の勢力の増加が考えられます。たとえ ば海面水温の

2

℃の上昇で最大風速が とにしまして、次に取り上げるのは

10  mis

の増加或いは中心気圧が

25 hpa 

『台風の激しさが温暖化に伴なって増す の低下になるという計算結果を出して のかどうか』という問題でございます。 います。

常識的にいいますと、先ほども申しま ところが、そういう単純なモデルで したように、現在の気候シミュレー ハリケーンの状況を議論できる筈はな ションで採用されているモデルの空間 いというのが、

93

年にメキシコで開か 解像度は台風に比べて余りにも低いの れたシンポジウムの結論でした。イギ で、議論は難しい。実際に台風やハリ リスのライトヒル先生が委員長になっ ケーンが発生するのは熱帯の海上、し てまとめられた、このシンポジウムの かも

26

℃以上の海面水温の海域に限ら 報告では、エマニエルのモデルがあま れています。これは万人の認めるとこ りにも簡単すぎて、そして彼の結論が ろです。従って、『地球温暖化が進ん あまりにも明快だったので、世の中を で、

26

℃の海域が広れば、恐らく台風 惑わすような論文だという非常に手厳 の発生は増える、或いは激しくなるだ しい批判がまとめられたわけです。こ ろう』という推測は常識的です。それ のシンポジウムは結論的には海面昇温 を、米国

MIT

のエマニエルが簡単なモ の影響は否定できないが、非常に大き デルを用いて計算しました。台風やハ い年々変動のために確定的なことは云 リケーンでは、下層の空気は逆時計回 えないのが現状だということでした。

りの回転をしながら中心の方へ移動す 非常に慎重に研究を進める科学者の多 る。中心近くで上昇して上空の成層圏 くは、この結論に異論はないと思いま の近くで外へ流出する流れがございま す。事実国連の

IPCC

(上述)の今年度 す。空気は下層で海面上を中心の方へ の報告書でも、だいたいこれに近いこ 吹き込む間に多量の熱や水蒸気を海か とをまとめています。図

10

(次頁)は らもらいます。そして上空で、いわゆ ハリケーンの強さが海面水温でどう変 る放射冷却で熱を失います。ですから わるかを示しています。下の図は北西 比較的温度の高い下層で熱をもらい、 太平洋の台風であります。こんなデー 上空の温度の低いところで熱を失うと ターでは、海面水温の上昇に伴って台

Transaction of The Research Institute of  (91)  Oceanochemistry Vol. 10, No. 2, Nov. 1997 

(11)

風或いはハリケーンの強さが強くなる ということはとうてい言えませんので ライトヒル先生の結論はもっともです。

実はこれでおしまいだ ったら、私は この問題を取り上げませんでしたが、

最近注目すべき成果が発表されました。

それは米国海洋大気庁の科学者が

2

前に発表したものです。これは、「

257

個のハリケーンの

7000

回以上の状況を 取り上げています。

15

か ら

30

℃近くま

での海面水温でハリケーンの中の最大 風速がどういうふうに分布したか」と いうことを示しています(図

II

)。それ

海面水温と熱帯低気圧の強度

Evans  (1993)  

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北大西洋

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北西太平洋

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ぞれの海面水湿に対してハリケーンの

50

%の強度は太い実線で示しています。

海面水温が少々高くなっても、低く なっても半分ぐらいは最大風速は変わ

りません。この点は先ほどのライトヒ ル先生達の結論と合致するわけです。

例えば

20

℃の海面水温の時に、大部 分は

20

S、ところが

95

パーセンタイ ルは

30

s

近いのです。

95

パーセンタ イルに着目しますと海面水温の上昇に 伴って明らかに上昇しています。計算 では、

50

パーセンタイルは海面水温に 無関係だが、最大値

95

とか

99

パーセン タイルは海面水温に関係している 。こ れは過去の事実として受け入れるもの であります。 しかし、炭酸ガスの増加 等によって地球温暖化が進むと、恐ら く海面水温が高くなり、この

99

%或い は最大値という上限が頻繁に起こる可 能性があるということでございます。

こう考えますと、 『将来この地球はど うなるか』という答えではありません が、過去のデーター解析をしますと、

どんどん地球温暖化が進むことによ っ て、熱帯低気圧の上限の勢力が強くな

りそ うだし、降水強度、集中豪雨等の 上限も激しくなりそうだということで す。先ほどの、不破先生のお話は近未 来でしたけれども、私の場合は、未来 ではな くて過去に留ま っています。そ れを未来の問題に外挿するためには、

さらなる研究が必要だと痛感して いる 昨今でございます。

20 

5

 

30  35 

海面水温(℃)

1 0

(92)  海洋化学研究 第1 0巻第2号 平成9年11 月

(12)

16  18  2 0   22  24  2 6   28  90 

8 0   70 

60 

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10  10 

16  18 

溺面水温(℃)

2 0   22  24  2 6   2 8  

.30 

海面水温別のハリケーン内最大風速の確率分布 最大値:海面水温に関係

5 0 %

:海面水温に無関係

2 5 7

個のハリケーンの

7110

回の観測

DeMaria

&  

Kaplan (1994)

の研究 11

Transaction of The Research Institute of  Oceanochemistry Vol. 10, No. 2, Nov.  1997 

(93) 

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