2008年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文
「究極の恋愛論」
A0442331
田中 真帆
2008 / 1 / 15
目次
1 はじめに
1.1 調査動機
2 恋愛とは
2.1 言葉の定義
2.1.1 恋愛の定義
2.2 恋愛の種類
2.3 恋の科学
2.3.1 男女がうまくいかない理由
2.4 脳の構造の違いからくる男女の壁 2.5 女性が男性にこぼす不満
2.6 恋愛に求めているもの 2.7 恋と愛の違い
2.8 同一化現象 2.9 結婚と恋愛の違い 3 素朴な疑問
4 ハーシュマンの理論 4.1 それぞれの定義 4.2 それぞれの役割 4.3 ハーシュマンの見解 4.4 さらなる疑問
5 恋愛版ハーシュマン
5.1 定義
5.2 合理的な人間
6 仮説と検証方法
6.1 仮説
6.2 検証例
6.3 検証結果
6.4 昔の恋人とうまくいかなかった理由
6.5 推測
6.6 さらなる疑問
7 「追われたい」「追いかけたい」
7.1 結果
7.2 見解
7.3 このときのExitとVoiceの関係性
8 まとめ
8.1 二人が情熱を保ち続けるために必要な6つの大切なステップ 8.2 恋愛の愛族に大切な条件
8.3 理想のカップル 9 終わりに
10 参考文献
11 アンケート
1.はじめに
1.1 調査動機
「愛」というものは人間が生きていくためにとても重要な要素である。特に「恋愛」は誰もが 興味を持っているものだ。人間は物心ついた時から自然と異性を意識し始める。若いうちから色 んな人と付き合っている人も、ただの遊び人に見えるかもしれないが、無意識に自分の将来の伴 侶となる人を選んでいるからである。しかし、本当の「恋愛」というものは最も身近にあるよう で手に入れることは難しく、私だけでなく誰もがこの問題に悩まされた経験があるはずだ。いく らこちらが相手のことを思っていても、その強い意志とは裏腹に去ってしまうことも、またその 逆もある。私は今まで友達などから何度も色々な恋愛相談・体験の話を聞いてきたが、ほとんど が 1 年以上のお付き合いを続ける前に別れを迎えてしまうなど、なかなか理想の相手を見つけ るのは難しいようだ。もちろん一番初めに出会った人がその理想の相手という事もありえるが。
そういう人達はごく稀でラッキーである。
そこで私は『恋愛』という私達人間にとって永遠のテーマに興味を抱いた。何度恋をしても、
どうしてもうまくいかない人には必見である。
2 恋愛とは
参考までに恋愛というものを参考文献から引用して述べてみたいと思う。
2.1 言葉の定義
まず、恋愛というものは個人の捉え方によって様々に変化するものだから、研究を進めるに当 たって言葉の定義をしたいと思う。
2.1.1 恋愛の定義
『恋愛とは、生殖衝動の発露として異性を求め、これを獲得、保有しようとする要求 に伴う感情である。』(②のpp.27より)
2.2 恋愛の種類
1 生理的愛情;単に肉欲から起きるもの 1 覚性的愛情;容貌の美をみて起きるもの
2 固着の愛情;交際によりいつも接近しているために起るもの 3 敬慕の愛情;才知や芸能などを尊敬するもの
4 同情の愛情;境遇の関係から起るもの
(②pp.82-83より)
2.3 恋の科学
・人は恋をするとホルモン分泌が活性化され、脳内に激しい変化を起こし、それが性格や感情に も影響していく。「女性が恋をするときれいになる」という通説もこのことが影響している。
・人間は誰かを追い掛けて恋している時は PEA(フェニールエチルアミン)という物質が脳内 に分泌され、さらにその人を好きになるといわれている。このPEAは別名「恋の媚薬」と呼ば れていて追い掛けられると出なくなる。
2.3.1 男女がうまくいかない理由
男女がうまくいかない理由として様々な議論がされている。中でも最も言われているのが以下 のことである。
脳の構造の違い
・女性・・・言語をつかさどる左脳と空間的な問題解決を行う右脳を同時に使う(eg.電話をし ながらメールを打つ)
・男性・・・一度にどちらか片方しか使えない。(①pp.48より)
2.4 脳の構造の違いからくる男女の壁
例1. 何か家庭で問題が起きたとき、女性は夫から何か優しい言葉をかけてもらったり、気を 遣ってもらうことを望んでいるのに、夫はもっと仕事で成功するという解決策をとった。
その為、女性が夫と別れるのは養ってもらえないからではなく(そういう場合もあるが)、
精神的に満たされないという理由が大きい。(①pp.20より)
例2. 女は結婚すると、将来のことを心配しなくなる。
男は結婚したとたん、将来のことが心配になってくる。(③pp.17より)
例3. 女は一人の男を知れば、全ての男を理解できる。
男は全ての女を知っていても、一人の女も理解していない。(③pp.22より)
例4. 女が評価するときは、行動一回、贈り物ひとつにつき1点になる。(女にとって大事な のは、大きさではなく回数)
男の場合は、行動や贈り物の大きさで点数が変わってくる。(③pp.116-117)
2.5 女性が男性にこぼす不満 1. 機嫌が悪いと黙り込んでしまう
2. 二人の間が親密になったかと思うと、彼は一歩引いて何もしゃべろうとしなくなる 3. 私の話を親身になって聞いてくれない。代わりに問題を解決しようとする
4. 私が泣くと、彼はとてもきまりが悪そうだ 5. めったに愛していると言ってくれない 6. 心を開いて気持ちを話そうとしない
7. 私の感情が不安定な時に、彼は私のして欲しい事を分かってくれない 8. 言い争いになった時、彼は自分が正しくないと気がすまない
(①pp.53より)
2.6 恋愛に求めているもの
・女性版:女性は、特定の異性から愛され、大切に扱われていると実感したいと痛切に願い、自 分が決して孤独な存在ではないのだという事を確信する必要がある。なぜなら女性を憂 鬱な気分にさせるものは、言い知れぬ孤独感であるからだ。(④pp.23より)
・男性版:男は、恋に落ちることによって、自分の事はさておいても女性のために全力を尽くし たいと願うようになる。そうすることで心が開放されると、男は利己的な自分から脱皮 し、大きく変わることができるし、自信を持てるようにもなる。彼女の幸福は、すなわ
ち自分自身の幸福である。また男性は対人関係において失敗すると、ひどく落ち込み、
他人との親しい交際や様々な人間関係から逃げ出し、自分だけの世界に閉じこもる(④ pp.20-21より)
2.7 恋と愛の違い
恋愛とひとまとめに言いますが愛と恋は全くちがうものである。哲学的に言えば、恋はときめい ている状態で、愛は信頼している状態などといわれる。
2.8 同一化現象
人間は考え方、行動、外見、しゃべり方、リズムなどが自分と似ている人を好きになる。した がって互いに相手に好かれようとするカップルなどはお互いに同一化しようという意志が働くた め、考え方、行動、外見、しゃべり方、リズムなどが同調してくる。同調がうまく成立すると長 時間一緒に過ごしていても不快感はなくなり、逆に快感を感じるようになる。したがってこのよ うなカップルはPEAが出なくなっても互いに引きあえるようになる。 しかし、同一化がなされ るためには以下の必要条件をみたす必要があり、これらがないとどれだけ努力しても無駄に終わ ってしまう。
1)魅力(ルックス)、健康、ファッションがかけはなれていないこと
2)学歴、知能、聡明さがかけはなれていないこと 3)親の教養や経済力がかけはなれていない こと
同一化が成立するためにはあらかじめこれらを満たしていないと難しいと言える。これらは努力 でカバーできるものではない。
2.9 結婚と恋愛の違い
この論文では主に20代前半を対象にアンケートをとっているので、まだまだ恋愛経験は未熟で 結婚に対してのイメージを明確に持ちながら恋愛している人は少ないであろう。結婚生活では相 手に不満があってもExitすることは簡単なことではない。それに比べ、結婚前の恋愛ではうまく いかなければExitすることも可能だ。恋愛は結婚に比べ自由である。しかしだからこそ人は恋愛 というものを楽しむのかもしれない。
3 素朴な疑問
1. どのような男性あるいは女性が別れを切り出しやすいのか 2. またどのようなカップルが理想なのか
これらの疑問を経営学や社会学の理論を使って考えてみようと思う。
4 ハーシュマンの理論
ある時ゼミの授業で、アルベルト・ハーシュマンの『Exit,Voice,and Loyalty』という本を読 んだ。そこでは「離脱」や「発言」という言葉が出てきた。この授業を受けている時、私は恋愛 の世界でも同じようなことが言えるのではないかと思い、これを私は何とかこの恋愛研究につな げることはできないだろうかと考えた。
この本はそもそも、企業の業績低下は一般的に、提供される製品やサービスの質の面での低下に 反映されると考えられると記している。そこで登場するのがExit(離脱)とVoice(発言)であ る。
4.1 それぞれの定義
・Exit(離脱);顧客がある企業の製品を購入するのをやめたり、メンバーがある組織から離れ ていくこと。
・Voice(発言);企業の顧客や組織のメンバーが自らの不満を直接表明すること。また不愉快な 事態から逃避するよりも、とにかくそうした事態を変革しようと立ち上がること である。
・Loyalty(忠誠);忠誠が存在すれば離脱の可能性が弱まり、忠誠の度合いが増すごとに、発言 の行使される可能性が高まる。
4.2 それぞれの役割
いくつか文章を参考文献から引用してExitとVoiceの違いについて、もう少し詳しく述べてお こう。
Exit
・その結果、収益が低下したり、メンバー数が減少したりする。
・顧客と企業が直接対峙することは一切ない、という意味で非人格的。
・離脱は、怠慢な経営に対し収益の低下という罰を下すことによって、企業の経営者を反省させ 経営の向上を図らせる。
Voice
・発言は弱々しい不満から激しい抗議行動にいたるまで程度に差があるため、体力的に消耗する などコストがかかる。
・不満を持つ消費者は、その不満をぶちまけることができ、そうすることによって、怠慢な経営 陣に働きかけ品質やサービスを改善させることができる。
・離脱ではなく発言する事は、企業や組織などが産み出すものを変えようと試みることである。
・発言の有効性は、ある一定のところまでは、発言量に応じて増大するであろうが、発言も離脱 同様行き過ぎる場合がある。すなわち、不満を持った顧客やメンバーの抗議がある限度を越える と、品質などの低下の回復に向けたどのような努力であっても、その努力を手助けするというよ りは、むしろ妨害してしまう。
・発言オプションは、離脱オプションが使えない場合、不満を抱いた顧客・メンバーが反応する ことのできる唯一の方法である。
・離脱していない人はだれであれ、発言の候補者である。
・発言は、離脱に代替するものとしてではなく、それを補完するものとして機能する。
・発言が効果的だと顧客が十分に納得すれば、人は離脱を先延ばしにする。いったん離脱してし まえば、発言を行使する機会を失うが、発言したところで離脱の機会は失われない。したがって、
離脱は発言が失敗した後に行使される最後の手段なのだ。よって発言とは、離脱を補完するもの であるとともに、離脱に代わる手段となりえる。
・発言オプションが選択されるには、品質が低下しいまや低劣な製品と化したものの顧客であり 続けるという意思決定が重要である。すぐにより良い製品に切り替えたいと感じるときでも、そ れには費用がかかるため、「忠誠」(Loyalty)という形でやや合理性に欠けるやり方で、以前の 製品に留まる。
・離脱オプションに比べて、発言は費用がかかる。よって消費者は、購入する財やサービスの数 が増えるにしたがって、少しずつ発言する余裕がなくなる。
Loyalty
・ 衰退には陥ってはいるが回復の見込める組織において、発言を促す。
・忠誠は消費者はその企業や組織から離脱するのを抑制する。
4.3 ハーシュマンの見解
発言と離脱が最適な効果をもつように組み合わさり、それが安定的になるための好条件など、ま ずありえない、と述べている。
4.4 さらなる疑問
恋愛の世界でも、人はそれぞれ性格によって Exit派・Voice派に分かれ、恋愛をしているの だろうか。また人はそれぞれ持ち合わせている性格と恋愛場面では、Exitや Voiceはどのよう に表れているのか。ハーシュマンが言うようにExit派とVoice派の最適な組み合わせなど本当 にありえないのだろうか。
5 恋愛版ハーシュマン
5.1 定義
・Exit;付き合っている相手に不満があったら、それを表明せず相手の前から去ってしまう(離 婚・別れる)
・Voice;付き合っている相手に不満があったら、品質向上のために相手にそれを意思表明する こと(ケンカ)
この定義に基づくと、素朴な疑問で述べた1の疑問では、Exit タイプの人が別れを切り出しや すいと言える。
5.2 合理的な人間
ハーシュマンはVoiceするコストを考えると、何も言わずにExitする方が合理的であると考え たため、Exitを支持。よって、この恋愛版ハーシュマンでは、一人の相手にずっとLoyalty(忠 誠)で、その人を選択し続けるのは合理的な人間がすることではないとなる。付き合っている相 手に不満があれば、我慢せず次の人を見つけたほうがよい。
それにもかかわらず、なぜ多くの人は相手に不満があっても忠実に付き合い続けるのだろうか。
それには以下のような理由が考えられる。
①目隠しの手
合理的な行動でないにもかかわらず、他の選択肢を見えなくする
努力して手に入れたものに対してLoyaltyが高いのでVoiceするのが遅い。Voiceす るのが遅ければ遅いほどExitすることが難しくなる。
「恋は盲目」
②もてない論
相手の不満度が大きくても、Exitしたくても次が見つからない。
だからVoiceするしかない。
だからその人でとりあえずは確定してしまう。
このような理由から付き合っている人がベストな恋愛パートナーでないにもかかわらず、次の恋 愛に進むことができずに自分の意図に反する相手を選択し続けてしまうのである。
6 仮説と検証方法
それでは一体どのようなカップルが理想なのか、検証してみた。
6.1 仮説
カップルの組み合わせとして4つのパターンがある。
1. Voice派&Voice派 2. Voice派&Exit派 3. Exit派&Voice派 4. Exit派&Exit派
理想のカップルとは
1.Voice派&Voice派同士のカップルはうまくいくが、Exit派&Voice派やExit派&Exit派同 士のカップルはうまくいかない。
2.付き合う相手によって性格と恋愛はExitとVoiceは変わるのか
→付き合う相手が持っている性格や恋愛態度に関係なく、Exit派・Voice派は変わらない。
6.2 検証例
① ・女性Voice派。
・付き合ったのは2人。
・2人中1人自らExitした。もう一人はまだ付き合っている。
・基本的に付き合っている相手に対してLoyalty高い。
・しかし、相手に合わせて出方を変える。(Voice しないと自分もしない。相手が Loyalty 高いと不満があってもVoiceしにくい)
② ・女性Voice派。
・付き合ったのは3人。
・2人は自分からExitし、1人はされた。
・自分からExitした相手はどちらもExitで、Exitされた相手はExitだった。
→相手によって自分のタイプも変わる。Voice派と付き合うと喧嘩が絶えなかった様子。そ れが面倒くさくなり相手が好きでなくなってしまうとVoice派からExit派に変わる。反 対にExit派と付き合うと自分がVoice派で思ったことはすぐに口に出してしまうので、
相手からExitされる。
③ ・男性Voice派。
・今もずっと2年くらい続いている人が一人。
・相手に不満があったら、その場では言わないが、徐々に溜めて2・3ヶ月に一回くらい大 きいVoiceをする。
・お互いかなりLoyaltyは高い。
④・男性Voice派。
・付き合ったのは2人。
・付き合った2人にどちらもExitされた。その時にVoiceした。
⑤ ・女性Exit派だった。
・付き合ったのは6人。
・5人は自分からExitした。6人目とは現在も交際中。
・6人目一回は自分からExitしたが、相手のLoyaltyの高さを見て戻った。
→今付き合っている人の影響でExit→Voiceに変わった。
⑥ ・男性Exit派。
・付き合ったのは5人(ヨリを戻すのも入れたら7人)
・5人中4人は自分からExitした。
相手に不満があったらすぐその場ではExitもVoiceもしない。不満・ストレスが頂点に達 したら、すぐに相手を嫌いになりExitできる。
→付き合うまでの難易度は全て低いのでLoyaltyも低い。なので、相手に執着しない
⑦ ・男性Exit派。
・付き合ったのは1人。
・相手にExitされた。しかし、その際にVoiceはなし。
・Entryの難易度が低かったため、お互いにLoyaltyは高くなかった。
⑧ ・女性Exit派。
・付き合ったのは1人。
・自分からExitした。
・付き合った相手もExit派だった。
・相手が変わってもVoice派にはならないと思う。
6.3 検証結果
・Voice派;相手に不満があったら、すぐその場では言わないが、徐々に溜め込んでストレス がピークに達したら相手に爆発する。
それでも相手への不満が解消されなかったら、Exit してしまう。それまでの浪 費コストが高い。
Getの難易度にかかわらずLoyaltyが高い。
結構相手の出方によって行動を変えがち。
→恋愛に対して受動的?
・Exit派;相手に不満があり別れようとしたら、特に相手に強い Voiceをせずスッパリ別れ られる。
→一人の人に対して執着心がない。なるべく労費コストを抑えようとする傾向あ り(喧嘩するのが面倒くさいなど)。
Exit派は、Getする難易度も高くない。
→なのでLoyaltyが低い。
→すぐに恋愛対象を切り替えられるので、恋愛に対して積極的??
6.4 昔の恋人とうまくいかなかった理由
・Voice派:自分の相手へのVoiceが強すぎてお互いの意見が衝突し、破局の道へ。また相手の Voiceが強すぎると次第に相手を嫌いになってしまい、最悪の結果に。
・Exit 派:アンケート調査に協力してもらった Exit 派の人はほとんどが、付き合った相手も Exit派であった。その為、お互いに強いVoiceをする前に別れを告げてしまう。
6.5 推測
・その人が持ち合わせている性格がExitかVoiceのいずれかであっても、付き合う相手によっ て、自分の性格とは反する恋愛行動をとっている場合もある。
・また、恋人をGetした難易度によって、相手に対してのLoyaltyが高くなるので自分の持ち 合わせている性格に関係なく、接する態度が変わることがある。(検証例3:Exit派→Voic
・調査の結果、意外と Voice&Voice 同士の恋愛はあまり成功しておらず、Exit&Voice または Voice&Exit同士の恋愛が長く続いている。
6.6 さらなる疑問
・アンケート調査をした結果、Voice派同士の恋愛は成功すると仮定したが、一概には言えな いようである。では、個人が持ち合わせているVoiceやExitの度合いによって相性の良し悪 しも決まるのではないだろうかと考えた。
7 「追われたい」「追いかけたい」
私は再度ゼミ生に以下の質問をしてみた。
Q1.自分の性格のVoice・Exitを度数で表すとしたら、それぞれどれくらいだと思いますか。(eg.
10段階中Voice6・Exit4)
Q2.また付き合っている・または付き合っていた中で一番合っていた相手の度数はそれぞれどれ くらいだと思いますか。このときの「相性の良かった」というのは、年数も関係しているだろう が、それぞれ付き合っていて居心地が良かった人とする。
7.1 結果
①男性Exit派:1.V3・E7 2.V6・E4
②男性Exit派:1.V2・E8 2.V8・E2
③男性Exit派:1.V2・E8 2.V6・E4
④女性Exit派:1.V3・E7 2.V4・E6
⑤男性Voice派:1.V7・E3 2.V5・E5
⑥女性Voice派:1.V5・E5 2.V7・E3
⑦女性Voice派:1.V7・E3 2.V3・E7
⑧女性Voice派:1.V6・E4 2.V8・E2
⑨女性Voice派:1.V8・E2 2.V6・E4
7.2 見解
以上のようにほとんどの人が自分のVoice度が高くExit度が低ければ相手にはその逆を求め、
逆にVoice度が低くExit度が高い人の一番相性が良かった相手はそれが逆であるという、面白 い結果が得られた。
しかし、一番相性の良かった相手のExit度が高いのは妙である。そこで私はアンケートに答え てくれた人達はExit度をLoyalty度またはListen度として捉えているのだろうと思った。つま り相手のVoice度が高くてExit度が低いのは、自分の意見に対してあまり反論や意見を言って 欲しくなく、ただ聞いていて欲しいのだ。そうすることによってVoiceの度合いが高い人は自分 の不満が解消され、カップルは円満になる。
一見違うタイプ同士のカップルはうまくいかないように見える。しかしこれは、「追われるタイ プ」と「追うタイプ」の恋愛が成立するように自分のタイプと少し違う相手が理想のカップルな のである。実際自分と少し違うタイプの人を好きになり、お互いの違いが良い刺激となるのであ ろう。
7.3 このときのExitとVoiceの関係性
・ハーシュマンは、「離脱が支配的なとき、発言の効果は過小評価されるし、逆の場合も同じ であろう」と、Exitと Voiceの関係性は対極にあるように述べている。しかしこの恋愛版で は、ExitとVoiceの関係性は、自分のVoice度が相手によって高くなったり低くなったりと変 化することはあっても、それに反比例して自分のExit度が高くなったり低くなったりするこ とはない。よってここでのExitとVoiceは対極の関係ではないのだ。
8 まとめ
以上のことを踏まえて理想のカップルとはなんであろうと考えてみた。
8.1 二人が情熱を保ち続けるために必要な6つの大切なステップ 1. 違うからこそ惹かれあう、補い合える
2. だからいつも「興味津々」でいられる;自分も恋も大切に。二人の時間を大切に 3. 「相手の弱さ」を受け入れよう、「優しい自分」を感じてみよう
4. 自分を癒す「能力」は誰の中にもある;パートナーを非難するだけではなく自分を見つめ なおす
5. 生涯かけて築きあげる「絆」の重さ、強さ;お互いを「特別な存在」として認識 6. 自分を見失わずにパートナーとの一体感を保つ
(①pp. 258より)
8.2 恋愛の愛族に大切な条件
1. 恋愛に対する適度の刺激が継続的にあること
2.その感情を思いのままに一時に発散、実行しないということ 3.恋愛を「腹八分目」にしておくこと
4.愛人の人格と意思を尊重する事
5.その全部を占有しようとする心をコントロールすること (②のpp.81-83)
8.3 理想のカップル
・Voice派&Voice派同士はうまくいく場合が多い。
・一見Exit派&Voice派同士はうまくいかないように見えるが、「追われるタイプ」&「追うタ イプ」の恋愛が成立しているように、違うタイプのカップルもうまくいく。
・自分が幸せになるために、一番大切なことは、あこがれの彼や彼女を手に入れることではなく、
自分と釣り合いのとれる相手を見つけること。いろいろな科学者たちの調査によると、カップル が幸せになるための条件は、ふたりの魅力、知能、学歴、健康、宗教、親の学歴などが互いにつ り合いがとれていることだと述べている。万が一、モテモテの異性と結婚できたとしても、二人 のレベルがつり合っていないと、二人ともとんでもなく不幸になる可能性が高いのだ。
9 終わりに
そうは言っても人間には5感以外に第六感が備わっているように、第一印象で出合った人を好き になってしまうパターンも少なくないだろう。
しかし、何度恋愛してもいつも同じ失敗をしてしまう人は、好きになる人のバターンが似ている のだろう。もう一度自分の恋愛体質を見つめなおし自分に最も合う人はどういう人なのかを分析 する必要があるのではないだろうか。
また理想の相手を見つけるためだけでなく、自分自身も多少変える必要があるかもしれない。
Exit の度数が高すぎる人は、労費コストを考えるより相手に不満があったらすぐに去らず、恋 人とじっくり話し合うことが重要だ。逆にVoiceの度数が高すぎる人は、自分ばかりVoiceをす るのではなく相手にもVoiceする機会を与えてあげるのが必要である。またVoice度が高い人は 付き合う相手に依存しやすいため、常に恋人の意識が自分に集中していないと気が済まない傾向 がある。恋人以外で自分を出せるコミュニティやストレスを発散させる場所を見つけることが大 事であろう。
私個人の意見では、若いうちから色々な人と付き合い様々な経験を積んでおくべきだと思う。も ちろんその中では楽しいことばかりではなく、辛いこと苦しいこともたくさんあるかもしれない。
しかし、自分が体験して身に付けたものは将来きっとかけがえのないものになるだろう。私も、
いつまでも恋をしながら自分自身を常に磨いていきたいと思う。
10 参考文献
①ジョン・グレイ著、大島渚訳「愛が進化する心理学 最良の結婚または最良の結婚生活のため に」『ベスト・マリッジ』 三笠書房 1995年9月20日第1刷発行
② 森田正馬著『恋愛の心理』白揚社 1990
③ アラン・ピーズ/バーバラ・ピーズ『嘘つき男と泣き虫女』主婦の友社 2004年4月2 0日第1刷発行
④ ジョン・グレイ著、大島渚訳『ベスト・パートナーになるために』三笠書房 2001年1 0月25日改訂新版第1刷発行
⑤ A.O.ハーシュマン著、矢野修一訳『離脱・発言・忠誠』ミネルヴァ書房 2005年6月2 0日初版代刷発行
⑥ http://charge.fortune.yahoo.co.jp/zap/renaikagaku/explain.html
⑦ http://lovetalk-web.hp.infoseek.co.jp/libraly/sience/4loveout.htm
⑧ http://www.so-net.ne.jp/renaikagaku/dic.pict/scdictionary023.html
⑨ http://www.so-net.ne.jp/renaikagaku/dic.pict/scdictionary025.html
11 アンケート
主にハーシュマンの理論を一緒に勉強した網倉ゼミナールの生徒に協力をお願いしました。
1. あなたの性格はVoice派ですか、Exit派ですか。
2. 今まで何人の人とお付き合いしたことがありますか。
3. その中で何人の人からExitされたか、もしくは何人の人にExitしましたか。
4. そのExitやVoiceの性格は付き合う相手によって変えましたか。
5. 付き合った相手は何派でしたか。
6. 自分の性格のVoice・Exitを度数で表すとしたら、それぞれどれくらいだと思いますか。(eg.
10段階中Voice6・Exit4)
7. また付き合っている・または付き合っていた中で一番合っていた相手の度数はそれぞれど れくらいだと思いますか。