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香川衛星STARS(愛称KUKAI)

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1. はじめに

2009年1月,西日本初香川発の大学衛星STARS (通称KUKAI)が宇宙に飛び立った。香川衛星開発プ ロジェクトが2005年1月にスタートしてから4年で ある。STARSは,親子二機からなる衛星,テザーと 呼ばれるひもの伸展,カメラロボットによる衛星撮影,

と挑戦的な技術が盛りだくさんの衛星である。メイン ミッションは,テザー伸展回収機能を持つ親機から,

テザー宇宙ロボット機能を持つ子機を放出し,テザー 張力を利用して姿勢制御される子機が親機の撮影を行 うことである。

図1にSTARSのフライトモデルの写真を示す。図 奥左側が子衛星であり,手前右側が親衛星である。表 1に主要緒元を示す。

表1 STARSの主要諸元

衛星名称:KUKAI 技術名称:STARS

(Space Tethered Autonomous Robotic Satellite)

外寸および重量:

親子型衛星

(親子固定状態で打ち上げ,軌道上で親子分離) 親衛星 質量:4.2kg

外形:160×160×253mm 子衛星 質量:3.8kg

外形:160×160×158mm

(太陽電池パドル,ドッキング装置,ロ ボットアーム,含まず)

軌 道:

高度約666km(Altitude666km) 太陽同期準回帰軌道

(Sun‑Synchronous Sub‑Recurrent Orbit) 軌道傾斜角約 98度(Orbit Inclination98deg)

通信システム

周波数:145MHz(UP)/435MHz(DOWN) (アマチュア周波数帯)

香川衛星STARS(愛称KUKAI)

Kagawa Satellite STARS (KUKAI) 能見 公博

香川大学工学部

香川衛星STARS(愛称KUKAI)は,2009年1月23日に種子島宇宙センターからH‑IIAロ ケットにより打ち上げられた。STARSは,親子二機からなる衛星,テザーと呼ばれるひも の伸展,カメラロボットによる衛星撮影,と挑戦的な技術を実証することを目的とした。

それぞれの機能の実証実験に成功し,最終目標である子機による親機撮影も実施した。現 在,香川大学では宇宙ゴミ除去を目標とし,テザーに繋がれた宇宙ロボットの移動と姿勢 制御に関する基礎実験をミッションとするSTARS‑Ⅱを開発中である。

キーワード:超小型衛星,宇宙ロボット,宇宙テザー,親子衛星

紹 介

図1 STARS Flight Model

― ―

(2)

コールサイン:親衛星JR5YBN,子衛星JR5YBO 通信アンテナ:太陽電池パドルアンテナ(新規開発)

主要ミッション:

短距離テザー伸展回収

テザー先端子衛星のロボット制御 子衛星搭載カメラによる親衛星撮影

エクストラミッション:

宇宙技術の地域普及啓発/理解増進

学生のものづくり教育および衛星運用プロジェクト

寿 命:実験運用3ヶ月/発展運用1年 (以降,衛星搭載機器寿命試験)

打 ち 上 げ:2009年1月23日12:54(JST)

GOSAT(いぶき)相乗り衛星としてH‑

IIAロケットにより種子島宇宙センター から打ち上げ

2. KUKAI実験運用結果

STARSは平成21年1月23日12時54分に打ち上げ,

初回運用のCWビーコン受信によりロケットからの正 常分離を確認した。その後約1週間で衛星正常状態を 確認,カメラ撮影および衛星間通信機能を確認した。

そして2月2日に親子固定解除およびテザー伸展実験 を試みた。親子解除は成功したが,テザー伸展実験は 通信不調による誤動作のため,実施できなかった。こ れを受けて,地上局整備および誤動作トラブル復旧後,

2月下旬からテザー伸展制御およびロボット制御実験 を実施した。数センチ〜数十センチ程度のテザー伸展 に成功,子機カメラによる親機撮影に成功した。図2 に写真を示す。左は親子ドッキング状態で撮影,太陽 光照射されないため暗い。右はテザー伸展後に撮影,

親衛星太陽電池パドルが撮影されている。

打ち上げから3ヶ月経過した4月23日に基本実験 運用を終了し,その後は地域衛星としてイベント等を 通した地域活性化,応用実験を実施している。図3は 衛星の背面または側面に搭載されたカメラにより地球 を撮影した写真である。左上の写真は,初回撮影(原画 を2倍引き伸ばし)。太陽光が強く,白色の地球が撮影

されている。右上・左右下は,太陽光を考慮したタイ マー撮影(原寸)であり,地球と分かる写真を取得する ことができた。

3. テザー宇宙ロボット

STARSは能見研究室の研究テーマである「テザー 宇宙ロボット」の技術実証を目的としている。テザー 宇宙ロボットは1995年(平成7年)に提案した世界初 の新規的・独創的システムである。テザーに繋がれて いるため緊急回収が容易であり,冗長系を持たない最 小機器構成で小型化できる。また予備燃料も必要なく,

テザー張力を利用した移動,姿勢制御により燃料節約,

そして小型化へと繋がる。また,ロボットは作業対象 があるため,とくに微小重力環境である宇宙では,接 触・衝突の危険性が高い。小型化は,その被害を最小 限に抑えることができる。テザー宇宙ロボットは,大 型母船からテザー伸展により対象物に近づくシナリオ で,宇宙機外観検査,人工衛星保守,軌道上デブリ(ご み)処理,惑星探査などへの利用が期待される。

図2 子衛星から親衛星の撮影

図3 STARS撮影地球画像

― ―

和歌山大学宇宙研究所紀要 創刊号

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4. 学術的意義

テザー宇宙ロボットは学術的観点から考えると,二 つの大きな意義がある。ロボット工学の観点からは,

従来のベース固定型ロボット制御とも,宇宙ロボット などのベース浮遊型ロボット制御とも異なる,テザー に繋がれ張力が作用する状態における新しい制御手法 の開拓と位置づけることができる。その原理は,テザ ー先端系質量中心およびテザー連結点とテザー伸展方 向の相対関係を,ロボット機能により操作し,テザー 張力による回転力を制御することである。機械力学観 点から見ると,テザー宇宙ロボットの運動解析では,

超柔軟体と剛体との混在系,大変形・大変位・大回転 を伴う非線形課題,制御系,時変系(伸展回収によるテ ザーの長さ変化)など,マルチボディダイナミクスにお ける種々の先端的課題が包含し,かつ連携しており,

その取り扱いは工学的,工業的な意義が大きいといえ る。

5. 地域連携

プロジェクトでは,地域連携,教育も視野に入れて 活動を進めている。地域で作る衛星を目指し,地域の 中小企業の得意分野を探し,ここを作ってもらえない かと持ちかけ,協力してもらっている。宇宙とはまっ たく接点がない企業が,自分たちの得意とする技術を 衛星開発にいかした。学生も企業と直接やり取りをし て,実務経験を積むことができ,技術系社会の常識に 触れた。そんな地域の企業は10社以上となった。もう 一つ,アマチュア無線家たちの協力は重要なものであ った。地上アンテナ,衛星アンテナ,無線機,これら はアマチュア無線家の協力なしではできなかったであ ろう。打ち上げ後も彼らの協力は欠かせない。衛星開 発の入門トレーニングとして,新入生はCanSat(空き

缶衛星)を作る。通信機能,マイコンを搭載したもの で,上空からパラシュート等で降下させ実験するもの だ。また,子供たちへは体験教室という形で,衛星開 発に触れてもらっている。

6. 今後の展開

香川衛星開発プロジェクトは,こうして実宇宙シス テムを開発できる技術を身につけた。香川衛星 STARS打ち上げ後には,2010年8月に観測ロケット S520‑25号機によるテザー宇宙ロボットの姿勢制御実 験を実施し,学術的観点から制御手法の評価検証が実 施できた。現在,宇宙ゴミ除去を目標とし,その基礎 実験を実施するSTARS‑IIを開発中である。

STARS‑IIの寸法はSTARSと同じ,質量もほぼ同 程度であり,主要目的は次の通りである。

①重力傾斜を利用したテザー伸展

②テザーに電流を流す(ベアテザー)

③テザー張力を利用したロボット制御

④張力制御によるテザー繰り出し/巻き取り 図4 テザー宇宙ロボットイメージ

図5 地域における協力企業

図6 子供向け宇宙体験教室

― ―

香川衛生STARS(愛称KUKAI)

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参考文献

1)能見公博,谷川準,細田貴之,「観測ロケット実験に おけるテザー宇宙ロボットの姿勢制御解析」,航空宇 宙技術,Vol.11,pp.23‑28,2012.

2)Masahiro Nohmi,Takeshi Yamamoto,Osamu Itose,Jun Saitou,“Rocket Separation Mechanism  for Pico Mother and Daughter satellite “  KUKAI”,

“Journal of System  Design and Dynamics,Vol.4, No.6,Special Issue on D&D2009,pp.984‑995, 2010.

3)能見公博,「超小型ロボット衛星の開発と軌道上動 作実証」,日本機械学会論文集(C編),第76巻,第770 号,pp.2515‑2521,2010年10月.

4)能見公博,大井克己,詫間哲,苧側正明,「アマチュ ア無線通信用の超小型衛星搭載用太陽電池パドルア ンテナ」,航空宇宙技術,第9巻,pp.37‑42,2010年.

5)能見公博,山本健志,糸瀬理,斎藤隼,「超小型親子 衛星KUKAIのロケット分離機構」,日本機械学会論 文集(C編),第76巻,第765号,pp.1036‑1042,2010 年5月.

6)Masahiro NOHMI,“Microgravity Experiment for Attitude Control of A  Tethered body by  Arm  Link Motion,”Motion Control edited by  Federico Casolo,INTECH,ISBN  978‑953‑7619

‑65‑8,265‑276,January2010.

7)能見公博,「香川衛星KUKAIの超小型テザー伸展シ ステム軌道上実験」,日本機械学会論文集(C編),第 75巻,第760号,pp.3144‑3151,2009年12月.

8)M asahiro NOHM I,Takeshi YAM AM OTO, Akira ANDATSU,Youhei TAKAGI,Yuusuke NISHIKAWA,Takashi KANEKO  ,Daisuke KUNITOMI,“Kagawa Satellite “STARS”in  Shikoku,”Transactions of the Japan Society for  Aeronautical and Space Sciences  ,Aerospace Technology Japan,Vol.7,  No.ists26,pp.Tu7

‑Tu12,October2009.

9)能見公博,「テザー宇宙ロボットの姿勢制御に関する 微小重力実験」,日本航空宇宙学会論文集,第53巻,

第617号,pp.281‑287,2005年6月.

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和歌山大学宇宙研究所紀要 創刊号

Referensi

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