2014 年度 数理リテラシー 中間試験問題
2014年6月26日2限施行, 担当 桂田 祐史 ノート等持ち込み禁止, 解答用紙のみ提出
1. 次の各文を記号のみを用いて表せ。
(1) 「p ならばq」の否定は、「p であるがq でない」である。 (2) √
3 は、実数全体の集合と有理 数全体の集合の差集合に属する。 (3)写像 f による a の像は b である。 (4) A と B の合併集合
(和集合)は、A を含む。 (5) x が A と B の共通部分の要素であるためには、x が A の要素であ
り、かつ x が B の要素であることが必要十分である。 (6) tanx= 1 を満たす x が 0< x < π/2 の範囲に存在する。
(状況を説明しておくと、(1) で p と q は命題, (3) で f は写像 f: A → B であり a ∈ A かつ b∈B, (4) と (5) ではA と B は集合でありx は全体集合の要素)
2. 真である命題はそれを証明し、偽である命題はその否定命題を(¬を使わずに)書いて証明せよ。
(1) (∀x∈R) (∃y∈R)y > x (2) (∃y∈R) (∀x∈R) y > x
3. 次の命題の否定命題を書け (ただし Ωは R の部分集合で、f: Ω→R とする)。
(∀ε >0) (∃δ >0) (∀a ∈Ω) (∀x∈Ω: |x−a|< δ) |f(x)−f(a)|< ε.
4. (1) 真理値表を用いて分配法則(p∨q)∧r ≡(p∧r)∨(q∧r)を証明せよ。
(2) (p∨q)∧(r∨s)≡(p∧r)∨(p∧s)∨(q∧r)∨(q∧s) を証明せよ。
(3) ab= 0 ⇔ (a= 0∨b = 0) と (2) を利用して、連立方程式 {
x(x2+ 4y+y2) = 0
(y+ 2)(y+x2) = 0 を解け。
5. (1) 以下の言葉の定義を述べよ((b)〜(e) は二つの集合に関するものを答えよ)。
(a) 部分集合 (b) 和集合 (c) 共通部分 (d) 差集合 (e) 直積集合 (f) ベキ集合
(2) A={1,2,3},B ={0,1,2} とするとき、A∩B, A∪B, A×B, 2A,A\B を外延的に(つまり要 素をすべて書き並べる方法で) 表せ。
6. (1) 集合族{An}n∈N の和集合 ∪
n∈N
An, 共通部分 ∩
n∈N
An の定義を書け。
(2) 任意の集合族 {An}n∈N に対して、
(∩
n∈N
An )c
= ∪
n∈N
(Acn)が成り立つことを証明せよ。
(3) An = {
x∈R| −1
n < x <2n }
とするとき、∪
n∈N
An と ∩
n∈N
An を求めよ。
7. (1) 写像 f: X → Y が (a) 全射であること、(b) 単射であること、それぞれどういう意味か説 明せよ(定義の条件を書け)。 (2) X ={1,2,3}, Y ={4,5,6} とするとき、X からY への全単射 をすべて求めよ。 (3) f: [a, b]→R が狭義単調増加であれば f は単射であることを示せ。
(4) f: X →Y と g: Y → Z とするとき、以下の (a), (b) を証明せよ。(a) f と g が全射であれば g◦f も全射である。(b) g◦f が全射であればg も全射である。
8. 授業で説明したように、高校数学では暗黙のルールで関数の定義域を定める。そのルールを採 用するとき、次の関数の定義域X と値域 f(X) は何か (集合の形で答えよ)。
(1) f(x) = logx (2) f(x) = 1 x2−2x−3
(試験当日はおおあわてで作ったので、結構おかしなことを書いてしまっていた。)
1. (1)¬(p⇒q)≡p∧(¬q) (2)√
3∈R\Q (3)f(a) = b(またはf: a7→b) (4)A∪B ⊃A (5) x∈A∩B ⇔ (x∈A)∧(x∈B) (6) (∃x)(0< x < π/2)∧(tanx= 1) あるいは(∃x∈(0, π/2)) tanx= 1
2. (1) 真である。x を任意の実数とするとき、y :=x+ 1 とおくと、y ∈ R かつ y > x であるか ら。(2) 偽である。否定命題は(∀y∈R) (∃x∈R) y≤xである。これは (1) と良く似ている (不等 号に等号がついているけれど)。y を任意の実数とする時、x:=x+ 1 とおくと、x∈Rかつ y≤x が成り立つ。(まあ、x:=y でも良いわけだ。)
3. (∃ε >0) (∀δ >0) (∃a ∈Ω) (∃x∈Ω: |x−a|< δ) |f(x)−f(a)| ≥ε.
4. (1) 真理値表は
p q r p∨q (p∨q)∧r p∧r q∧r (p∧r)∨(q∧r)
T T T T T T T T
T T F T F F F F
T F T T T T F T
T F F T F F F F
F T T T T F T T
F T F T F F F F
F F T F F F F F
F F F F F F F F
となり、(p∨q)∧r と (p∧r)∨(q∧r)の真理値が一致するので、(p∨q)∧r≡(p∧r)∨(q∧r).
(2) (1) と交換律からp∧(q∨r)≡(p∧q)∨(p∧r)も成り立つので、
(p∨q)∧(r∨s)≡((p∨q)∧r)∨((p∨q)∧s)
≡((p∧r)∨(q∧r))∨((p∧s)∨(q∧s))
≡(p∧r)∨(q∧r)∨(p∧s)∨(q∧s).
(3) {
x(x2+ 4y+y2) = 0
(y+ 2)(y+x2) = 0 ⇔x(x2 + 4y+y2) = 0∧(y+ 2)(y+x2) = 0
⇔(x= 0∨x2+ 4y+y2 = 0)∧(y+ 2 = 0∨y+x2 = 0)
⇔(x= 0∧y+ 2 = 0)∨(x= 0∧y+x2 = 0)∨(x2+ 4y+y2 = 0∧y+ 2 = 0)
∨(x2+ 4y+y2 = 0∧y+x2 = 0)
⇔(x, y) = (0,−2)∨(x, y) = (0,0)∨((x, y) = (2,−2)∨(x, y) = (−2,−2))
∨((x, y) = (0,0)∨(x, y) = (√
3,−3)∨(x, y) = (−√
3,−3))
⇔(x, y) = (0,0),(0,−2),(2,−2),(−2,−2),(√
3,−3),(−√
3,−3).
5. (1) (a)〜(e) では、A と B を集合とする。(a) A が B の部分集合であるとは、(∀x) x∈ A ⇒ x ∈B が成り立つことをいう。(b) A∪B :={x|x∈A∨x∈B} を A と B の和集合と呼ぶ。(c) A∩B :={x|x∈A∧x∈B}をA とB の共通部分と呼ぶ。(d)A\B :={x|x∈A∧x̸∈B}を A
と B の差集合と呼ぶ。(e) A×B :={(x, y)|x∈A∧y∈B} をA と B の直積集合と呼ぶ。ここで (x, y)はxと yの順序対を表す。(f) Aを集合とするとき、Aの部分集合の全体2A :={X |X ⊂A} を A の冪集合と呼ぶ。
(2)A∩B ={1,2},A∪B ={0,1,2,3},A×B ={(1,0),(1,1),(1,2),(2,0),(2,1),(2,2),(3,0),(3,1),(3,2)}, 2A={∅,{1},{2},{3},{1,2},{1,3},{2,3},{1,2,3}}, A\B ={3}.
6. (1) ∪
n∈N
An ={x|(∃n ∈N)x∈An}, ∩
n∈N
An={x|(∀n ∈N)x∈An}. (2)
x∈ (∩
n∈N
An )c
⇔ ¬ (
x∈ ∩
n∈N
An )
⇔ ¬((∀n ∈N)x∈An)⇔(∃n∈N)x̸∈An⇔(∃n∈N)x∈Acn
⇔x∈ ∪
n∈N
(Acn).
(3) ∪
n∈NAn ={x∈R| −1< x}, ∩
n∈NAn ={x∈R|0≤x <2}. (証明は省略 — よく似た An =
(−1/n, n) の場合を、授業中の説明と、配布したプリントで証明してある。)
7.
(1) (a) (∀y∈Y) (∃x∈X) f(x) =y (b) (∀x∈X) (∀x′ ∈X)x̸=x′ ⇒f(x)̸=f(x′)
(2) 次のようにして定まる f1 〜f6 が X から Y への全単射である(要するに4, 5, 6 の順列をすべ て書け、ということになるわけ)。
f f(1) f(2) f(3)
f1 4 5 6
f2 4 6 5
f3 5 4 6
f4 5 6 4
f5 6 4 5
f6 6 5 4
(3) f: [a, b]→R が狭義単調増加とする。すなわち
(∀x1 ∈[a, b])(∀x2 ∈[a, b]) (x1 < x2 ⇒f(x1)< f(x2))
が成り立つと仮定する。x, x′ ∈[a, b], x̸=x′ とする。x < x′ または x > x′ が成り立つ。
• x < x′ ならば、x1 :=x, x2 :=x′ として f(x)< f(x′) が導かれる。ゆえに f(x)̸=f(x′)
• x > x′ ならば、x1 :=x′, x2 :=xとして f(x′)< f(x) が導かれる。ゆえに f(x)̸=f(x′).
いずれの場合も f(x)̸=f(x′) であるから、f は単射である。
(4) (a) f と g は全射と仮定する。z を Z の任意の要素とする。g が全射であるから、g(y) = z を
満たすy ∈Y が存在する。それを一つ選ぶ。f が全射であるから (∃x∈X)f(x) = y. この とき g◦f(x) = g(f(x)) =g(y) = z. ゆえに g◦f は全射である。
g◦f は全射と仮定する。z を Z の任意の要素とする。g◦f が全射であるから、g◦f(x) =z を 満たす x∈X が存在する。それを一つ選ぶ。y:=f(x)とおくとき、y∈Y かつ g(y) = z であ る。実際、g(y) =g(f(x)) = g◦f(x) =z. ゆえに g が全射である。
8. (1) X = {x∈R|x >0}, f(X) = R (2) f(x) の分母が 0 になるところは定義域から除外 するので、分母を調べよう。g(x) := x2 − 2x −3 (x ∈ R) とおくと、g(x) = (x−3)(x+ 1) = (x −1)2 −4, g(x) = 0 ⇔ (x = −1∨ x = 3), g(R) = [−4,∞). これからX = R \ {−1,3}, f(X) = {y∈R|y >0} ∪{
y∈R|y≤ −14}
. (最後のは f(X) ={
y∈R|y >0∨y ≤ −14}
と書い ても良い。)
注意事項
この面を表にして配り、試験開始まで裏返さないこと。
• 筆記用具と時計以外はカバンにしまって下さい。(ティッシュとか飲み物とか。定規とかにつ いて明記しておくか。)
• 10:45 になったら試験を始めます。12:10 終了予定です。始まりが遅れたら、その分終わりの
時間もずらします。
• 問題は好きな順に解答して構いません。ただし一つの問題の解答は一ヶ所にまとめること。
• 解答用紙は裏面も使用して構いません。なるべく解答用紙 1 枚で済ませること。解答用紙を 縦に折って左右二列で使うなど各自工夫して下さい。どうしても足りなくなった場合は試験監 督に申し出ること。
• 309 号室で試験を受ける人達へ: 桂田は試験時間中4 回ほど (約 20 分間隔)、309 号室に質問 を受けに来る予定です。問題についての質問がある人はそのときに尋ねて下さい。
• 遅刻は11:20 まで認めます。11:30〜12:00 の間は退室可能(手をあげて試験監督に知らせ、解
答用紙を渡し、静かに荷物をまとめて退室)。