• Tidak ada hasil yang ditemukan

3回目の

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2025

Membagikan "3回目の"

Copied!
4
0
0

Teks penuh

(1)

2009

年の中国経済は、政府主導の強力な需要拡大策によりいち早く金融危機を乗 り越え、2010年には国内総生産

(GDP)

が日本を抜いて世界第

2

位になることが確実 視されている。勢いは衰えを知らず、20年後には米国を抜いて世界最大の経済大国 になるとも言われている。先般のダボス会議でも、中国の躍進ぶりは多くの出席者 の関心を集めた。いまや、日本を含めた先進国は「現在の世界経済は中国を中心と する新興国が牽引している」とその存在を評価しており、企業活動においても、あ らゆるグローバル企業の経営に中国戦略は不可欠になっている。

一方で、2009年の日本は再びマイナス成長に陥り、景気の低迷が続く。新年の

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は「何も決めず、行動しない日本は

3回目の

『失われた

10

年』を迎えるリスクがある」との厳しい見方を示した。こうした状況 下、日本もやっと重い腰を上げ、経済規模で日本を脅かす中国に注目し、いかに中 国と向き合い、付き合っていくかといった「中国論」が切実かつ重要な話題となっ ている。長年、中国とビジネスをしてきた経験を踏まえて、わたしなりの「中国論」

を述べさせていただきたい。

中国の成長の原動力

ノーベル経済学賞を受賞したロバート・ソロー教授が指摘するように、経済は、

①労働人口の増加、②資本の投下、③全要素生産性の向上― の

3

つが成長の条件 である。中国は「世界最大の人口」を抱え、その巨大市場をねらって「世界中の投 資資金」が集まり、「最先端の生産技術やノウハウ」をもつ世界中の企業が進出する。

中国にはソロー教授が指摘した

3

つの要素がすべてそろっている。この現実を直視 するならば、日本企業が今後の成長のために、中国に出ていかない理由はみつから ないはずだ。

中国ビジネスが初めて盛り上がった1980―

90年代においては、日本の経営者は必

ず「中国は必要か否か」という問にまず頭を悩ました。いまや、この問こそ「不要」

であり、むしろ経営者は「中国から不要だ」と言われないために何をすべきかを、

自問自答するようになっている。日本経済は中国をはじめとするアジア市場と向き

国際問題 No. 590(2010年4月)

1

◎ 巻 頭 エ ッ セ イ ◎

Niwa Uichiro

(2)

合っていく以外に生き残る道はない。議論の余地はなく、この道を覚悟して進むほ かないのだ。実際、この

10年間で、アジア向けの輸出入が全体の 5

割を占めるよう になったことに象徴されるように、日本経済は従来の米国依存の体質から中国を中 心としたアジア依存に変質した。日本企業は、収益の

5

割以上をアジアから得るよ うになったいま、アジアを「ひとつの市場」と捉え、日本企業の主戦場とみなけれ ばならない。

では、中国とどう向き合うのか。わたしは日ごろ、中国を考えるときに、できる 限り歴史的な視点と、中国人の目線に合わせたローカルな視点、つまり中国人が自 分の国をどう見ており、何を考えているかを常に念頭におくようにしている。こう した視点こそ、中国を理解する出発点だと思っている。

中国の経済発展の歴史を振り返ってみてみたい。1978年、 小平氏の指導の下で 改革・開放路線が始まり、1988年からは二桁成長を持続させてきた。この高度成長 の多くは、日本や台湾、シンガポール、韓国が経験したアジアの成長モデルを真剣 に研究し、学び、実践した結果だ。異なるのは、安い人件費と資源を武器に、世界 中のメーカーを誘致した点である。官民が一体となって「世界の工場」としての地 位を確立し、輸出を原動力にして国民の所得を倍増させ、巨大な消費市場を作り出 した。中国政府が描いた独自の成長モデルの勝利とも言える。

輸出の増大とともに、国際的な市場競争のルールに従う努力もなされた。政府は 強い指導力を発揮して世界貿易機関

(WTO)

加盟を果たすなど、グローバルスタン ダードを積極的に導入し、「国際競争に勝ち残る」という大きな目標に挑戦してきた。

文化大革命の時代に海外に窓を閉ざしてきた状況を思い起こすと、ここ

30年の中

国の躍進は、世界的な大国になるための官民挙げての努力の成果と言える。政府は 大きな目標の実現に向け、北京オリンピックや上海万博の開催、国内の主要鉄道幹 線の高速化整備など、国民にも力強いメッセージを発信し続けてきた。

中国がたどってきた壮大で巧妙な道のりを振り返れば、中国がいま、どこにあり、

これからどういう方向に向かっていくかが判断できる。中国は政府の描く成長戦略 の下、劇的に自己変革し、先進国型の市場経済を目指してきた。今後は「世界の工 場」であるとともに「世界の市場」としての役割も果たすだろう。国内に抱える地 域格差や所得格差も、さらなる経済発展の大きなポテンシャリティーに転換しなが ら持続的な発展を続けていく、とわたしは確信している。

リスクコントロールの重要性

次に、これまでの日本の「中国論」にみられた偏った視点を指摘しておきたい。

日本で中国ビジネスを議論する際、必ずと言っていいほど「チャイナリスク」が 取りざたされてきた。「リスク」は事前に察知すべきだが、逃げてばかりではいけな

巻頭エッセイ「世界の市場」中国と向き合う日本企業― 大競争のなかで求められる自己変革

国際問題 No. 590(2010年4月)

2

(3)

い。中国に進出した外資系企業、あるいは中国資本の企業の台頭をみれば、彼らが いかにリスクをコントロールしてきたかがわかる。

日本企業の多くは中国が異質で格別に難しい市場とみなし、果敢な企業戦略の選 択をためらってきた。わたしは自戒の念も込めて、こうした姿勢を反省する必要が あると思う。日本企業は欧米より早く中国に進出した。家電製品など日本の一部の 製品は、かつて仕様の変更もないまま日本よりも高い価格で売られ、圧倒的なシェ アを誇ったこともあった。今日、多くの日本企業が中国で築いた先行優位を維持で きていないのは、リスクを過剰に恐れ、事業投資の失敗を最小限に抑えようとした ためではないか。リスクを恐れるあまり、より大切な「チャイナチャンス」を逃し てしまった。

日本を含めたすべての国には、特有の国情がある。企業は自国と異なる国情をリ スクとして捉え、国情にあったビジネススタイルを模索しなければならない。中国 も例外ではなく、さまざまなリスクが存在する。民族問題、資源問題、環境問題、

人権問題など枚挙にいとまがないが、これらは他の国々も経験してきたり、あるい はこれから経験したりすることであって、中国だけが直面している特殊な問題では ないだろう。日本もかつて深刻な公害問題を経験し、克服して「環境大国」と言わ れるまでになった。中国も日本と同様にさまざまな問題を乗り越えていくであろう。

その方向感があれば、リスクとチャンスの見極めも難しくはない。

「中国は日本を必要としているのか」、「中国は日本の何を欲しているのか」という 視点も大切である。

日本の技術やモノづくりのノウハウが世界最高の水準にあるのは疑いのない事実 であろう。ただし、中国という独特な市場において、日本製品が受け入れられるか どうかは、別の問題である。作る側、あるいは売る側としての視点だけでなく、買 い手の目線で企業戦略を練っているか。日本企業同士の競争だけにとらわれ、世界 のトップ企業に勝つための戦略に怠りはなかったか。中国で実績の上がらない企業 のほとんどは、「中国は何を欲しているのか」という視点が欠けていたのではないか。

「日本は先進国であり、中国市場では日本の優れた技術をディスカウントする必要が ない」という思い込みもあったはずだ。中国の実情に合わせた商品戦略ならびにコ スト戦略を重視する意識が、他国の企業より劣っていなかったか。これらを自己点 検しなければならない。

中国とともに自己変革を遂げるために

最後に、日本には、中国の実態を自らの目で確かめることなく語る傾向と、自国 の経済発展の歴史を振り返ることなく、中国経済とその将来を語る傾向がある、と 指摘しておきたい。賢者は歴史に学ぶと言う。半世紀前、高度成長期の日本は、現

巻頭エッセイ「世界の市場」中国と向き合う日本企業― 大競争のなかで求められる自己変革

国際問題 No. 590(2010年4月)

3

(4)

在の中国と同様に人材や資金に恵まれ、高い生産性による急速な工業化で、世界を 驚かせるほどの成功を果たした。その後も円高やオイルショックの試練を乗り越え て、「made in Japan」に象徴される輸出は

50倍、労働者の所得は何十倍にも増え、民

需が国内総生産の約

8

割を占める消費大国にもなり、世界第2位の経済大国になった。

中国の改革・開放路線はまさに日本経済の姿を自国の目標とし、いつか日本を乗 り越えようという試みであった。日本企業は「昨日の日本は明日の中国」と考え、

自らの成功経験を十分に生かしながら中国市場に挑むべきだ。日本が歩んだ輝かし い道のりをしっかり認識して、果てしのない大競争の時代に臨むべきなのである。

中国は多様性に富んだ複雑な市場である。しかし、わたしは日本は同じ儒教文化 をもつ国であり、欧米の国々よりも複雑さを克服しやすいのではないか、と思って いる。日中両国が互いに相手の立場を理解し、相手が必要とするモノを考えるよう な、相互補完的な経済活動ができれば、日中両国はともに発展するだろう。両国だ けでなく、アジアそして世界の発展にも寄与できる、とわたしは信じる。

中国は「世界の工場」であると同時に、日本を上回る「世界の市場」でもある。

この市場は、かつてどの国も経験したことのないワールドワイドの競争の場であり、

世界のトップレベルの企業が社運をかけて参入している。この厳しい競争に日本企 業が勝ち残るには、中国とともに自己変革できるか否かにかかっている。この点こ そ、いま、日本が中国や世界から問われる問題である。中国を世界的な視点で捉え ると同時に、もう一度、日本自身の姿をグローバルな視点で見直してみる必要があ るだろう。

巻頭エッセイ「世界の市場」中国と向き合う日本企業― 大競争のなかで求められる自己変革

国際問題 No. 590(2010年4月)

4

にわ・ういちろう 伊藤忠商事取締役会長

Referensi

Dokumen terkait

2010年代、すなわち今後10年間の世界を特徴づけるのは、中国のさらなる台頭と アメリカの相対的後退であろう。 中国は、2008年秋に始まった世界的景気後退をいち早く脱却し、成長への道に復 帰し、世界は中国の発展に頼って不況から脱出しようとしている。中国経済の現状 をややバブルと見る人もいるが、ともかく成長を続けそうだ。他方でアメリカは、

はじめに 世界の安全保障環境は、科学技術の劇的な発展とグローバリゼーションの影響で大きく変 化している。米国におけるトランプ政権の誕生や英国の欧州連合(EU)からの脱退は、国際 秩序の大変革を意味している。そうしたなかで、中国のグローバルパワーへの復活は、わが 国にとっても米国、ロシア、韓国、北朝鮮など主要な国々との関係にも大きな影響を与えて

-78- 図 16 中国の石炭供給量と消費量の推移(単位:10 億トン)(2000 年から 2013 年) (資料)US DOE EIA 図17は、世界の電力需要の2040年に向けての増大量の予測値を示しているが、中国の 電力需要の増大部分が世界の中で抜きんでていることがわかる。しかも2012年以降、2040

中国語専攻プログラム 1.教育目的 中国語専攻プログラムは、「聞く・話す・読む・書く」という4技能を最大限に高めることによ り、「使える中国語」を身に付けると共に、中国の文化・社会・経済・日中文化の違いを学び、国 際感覚を持つ、時代に求められている人材の育成を目的とします。

��� 中国人研究者による日本の ODA の研究 王� は�めに 1954 年 10 月にコロンボ・プランへの加盟により、日本は政府開発援助(Official Development Assistance、以下 ODAと略称)を開始し、1980年代には援助を拡大し、 89年にODA実績がアメリカを抜き世界1位になった。中国国内において、1979年末か

2 ・得られた各保護対象と税金支出に対する限界効用を基に支払意思額を算定し、世界の世 帯数を乗じて(人間健康と社会資産はさらに世界人口で除する)各保護対象に対する支 払意思額を算定した。 ・先進諸国では生物種に対する重み付けが相対的に大きく、新興諸国では人間健康に対す る重み付けが相対的に大きい結果となっていた。

世界大手化粧品メーカーの資生堂は、1872年に日本初の洋風調剤薬局として誕生した。 今や日本を含め、世界89の国と地域でグローバルブランド「SHISEIDO」を販売している。 2013年3月期の海外売上高比率は、44.9%となっている。国内外合計15拠点に工場を配置し、 現地生産を進めている。また、研究開発体制 を整え、各地域の特性を踏まえた商品開発を

第2次世界大戦の終結から70年、という時点は、この間に世界はどう変わり、どう 変わらなかったかを考えさせてくれる。もちろんそれは国によって、あるいは地域に よって異なるであろうし、さらには宗教、性別、そして根本的には個人ごとの別個な 現象でもあろう。しかしながら世界全体、あるいは人類全体にとって、この 70 年の