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GLUT4の細胞内動態を可視化する - J-Stage

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化学と生物 Vol. 55, No. 10, 2017

GLUT4 の細胞内動態を可視化する

化学アプローチで明らかとなった糖鎖の役割

グルコース輸送体の一種であるGLUT4は,主に筋肉組 織や脂肪組織に発現する12回膜貫通型タンパク質であり,

インスリン刺激に応じて血中のグルコースを細胞内に取 り込み血糖値を下げる役割を担っている(1).GLUT4は,

通常は細胞内に存在するが,インスリンが分泌されると 細胞膜へ移行しグルコースを細胞内に取り込む.この制 御機構が正常に機能しなくなり,グルコースを細胞内に 取り込めなくなることは,2型糖尿病の発症の原因とな る.このため,GLUT4の細胞内動態の制御機構を明らか にすることは,生命科学や医学の観点から重要な課題で ある.近年,GLUT4の細胞膜外ループのAsnに付加さ れる糖鎖(N-結合型糖鎖)が,GLUT4の細胞内動態の 制御に関与していると報告された(2).これに対し,N-結 合型糖鎖は,GLUT4の細胞内動態には影響を与えない という研究結果も発表されており(3),その役割の有無に 注目が集まっていた.本研究では,新たに高精度なタン パク質イメージング技術を開発することで,GLUT4の 動態を解析しN-結合型糖鎖の役割を調べることを目的 とした.

筆者らは,紅色硫黄細菌由来の小タンパク質(125ア ミノ酸)であるPYP(Photoactive yellow protein)をタ グタンパク質として標的タンパク質につなぎ,合成蛍光 プローブによって特異的にPYPタグをラベル化すること によって,標的タンパク質を蛍光イメージングする手法 を開発してきた(4).この技術のポイントは,プローブが 遊離状態では非蛍光性で,タンパク質をラベル化すると 蛍光性となる「発蛍光プローブ」を用いることである.

通常のプローブは,常に蛍光を発するため,細胞に発現 しているタンパク質をイメージングするには,洗浄操作 により遊離のプローブを除く必要がある.これに対し,

発蛍光プローブは,洗浄操作を行うことなく迅速かつ高 いコントラストでタンパク質をイメージングできる.本 研究で,GLUT4の細胞内動態を詳細に解析するために,

PYPタグをラベル化する複数の新たな発蛍光プローブを 開発した.開発したプローブのうち,AT-DNB2と名づ けたものは,細胞膜非透過性でPYPタグをラベル化する と遠赤色の蛍光を発する.このプローブをGLUT4の動 態解析に用いる利点は,GLUT4の細胞膜外ドメインに

PYPタグをつないだとき,細胞内のGLUT4をラベル化 することなく,選択的に細胞膜移行したGLUT4をラベ ル化できることである.さらに,AT-DNB2は発蛍光プ ローブであるため,洗浄操作なしでインスリン存在下の GLUT4の動態をイメージングできることである.洗浄操 作を行うとインスリンも除去されるため,GLUT4の動態 に影響するが,AT-DNB2を用いることでこの悪影響を 回避できる.実際に,PYPをGLUT4の細胞膜外ループ に挿入したPYP-GLUT4を細胞に発現させ,AT-DNB2 を添加したところ,インスリンに応答したPYP-GLUT4

図1PYPタグラベル化技術を用いたGLUT4の細胞内動態の 可視化と糖鎖の機能解析

(A)インスリン存在下における正常糖鎖をもつGLUT4の細胞内 動態(右は実際のイメージング画像で,スケールバーは10 µmを 示す).PYPタグは,細胞膜外ループに挿入されており,膜非透 過性プローブを用いると細胞内のPYP-GLUT4はラベル化されず,

細胞膜移行したPYP-GLUT4のみラベル化される.また,用いた プローブは,遊離状態では非蛍光性でラベル化されると蛍光強度 が上昇する.このため,遊離プローブを洗浄操作により除去する ことなくイメージング実験ができる.(B)インスリン存在下にお ける糖鎖欠損GLUT4の細胞内動態(右は実際のイメージング画 像で,スケールバーは10 µmを示す).GLUT4の糖鎖欠損変異体 を用いてイメージングを行うと,インスリン刺激によりPYP- GLUT4変異体は細胞膜移行し,プローブによりラベル化され細胞 膜にとどまることなくエンドサイトーシスする.

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の細胞膜移行が洗浄操作なしで観察できた.

次に,N-結合型糖鎖の役割を調べるために,糖鎖形成阻 害剤や糖鎖欠失変異体を用い,糖鎖の異常がPYP-GLUT4 の動態に与える影響についてイメージング実験により検討 した.驚いたことに,インスリン存在下では,AT-DNB2 が細胞膜非透過性であるのにもかかわらず,その蛍光は 細胞内から観測された.この結果は,糖鎖に異常のある PYP-GLUT4は,インスリン刺激により一過性に細胞膜 移行してAT-DNB2によりラベル化され,その後迅速に 細胞内にエンドサイトーシスすることを示唆した.そこ で,エンドサイトーシスを阻害したところ,AT-DNB2 由来の蛍光が細胞膜上から観測されたことから,糖鎖異 常のあるPYP-GLUT4は一過性に細胞膜移行することが 証明された.以上の結果から,糖鎖は,GLUT4の細胞 膜への局在を維持させる役割を果たしていると考えられ た(5)(図1

GLUT4の膜局在の維持にかかわるしくみの破綻は,

血糖値の上昇を引き起こし,2型糖尿病の発症の原因と なる可能性がある.本研究の結果は,GLUT4の膜局在 化機構の解明に加え,糖尿病の発症機構の解明と治療薬 の開発につながることが期待される.

  1)  D. Leto & A. R. Saltiel:  , 13, 383  (2012).

  2)  Y. Haga, K. Ishii & T. Suzuki:  , 286, 31320  (2011).

  3)  N. Zaarour, M. Berenguer, Y. Le Marchand-Brustel & R. 

Govers:  , 445, 265 (2012).

  4)  Y. Hori & K. Kikuchi:  , 17, 644 

(2013).

  5)  S. Hirayama, Y. Hori, Z. Benedek, T. Suzuki & K. Kikuchi: 

12, 853 (2016).

(堀 雄一郎*1,2,菊地和也*1,2,*1 大阪大学大学院工学 研究科,*2 大阪大学免疫学フロンティア研究センター)

プロフィール

堀 雄一郎(Yuichiro HORI)

<略歴>2001年京都大学大学院薬学研究 科 修 士 課 程 修 了/2004年 同 博 士 課 程 修 了/同年ロックフェラー大学博士研究員/

2006年大阪大学大学院工学研究科助教/

2012年JSTさきがけ研究者(兼任)/2013 年大阪大学免疫学フロンティア研究セン ター助教(兼任)/2016年大阪大学大学院 工学研究科准教授,同免疫学フロンティア 研究センター准教授(兼任),現在に至る

<研究テーマと抱負>蛍光プローブの開 発,ケミカルバイオロジー,タンパク質・

ペプチドの機能化学<趣味>読書,ジョギ ング

菊地 和也(Kazuya KIKUCHI)

<略歴>1990年東京大学大学院薬学系研 究科修士課程修了/1994年同博士課程修 了/同年カリフォルニア大学サンディエゴ 校博士研究員/1995年スクリプス研究所 リサーチアソシエイト/1997年東京大学 大学院薬学系研究科助手/2000年同助教 授/2005年大阪大学大学院工学研究科教 授/2009年同大学免疫学フロンティア研 究センター教授(兼任),現在に至る<研 究テーマと抱負>化学プローブの設計・合 成・生物応用

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.659

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