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書写というとICTとは縁が遠い学習領域と考えるかたが多いのではないでしょうか。
しかし私は、効果的な活用によって、書写こそICTとの親和性が高い学習になりうると 考えています。ここでは、書写におけるICT活用の注意点と活用の可能性や方向性を考え つつ、教育出版のデジタルコンテンツがどのように書写の学びに役立つか紹介したいと 思います。
まずは、「ICTを活用すること自体が目的化してしまわないよう、十分に留意する必要 がある」ということを、書写だからこそ、よく考えて使用する必要があることを強調し たいと思います。それはなぜか―書写は、文字を正しく整えて手書きする技能の習得な どを中心に、手書きの楽しさを学び、コミュニケーションの一つとして手書きを位置づけ、
効果的に手書きとデジタルを使い分けることを目ざす学習領域であると考えるからです。
内容解説資料
東京学芸大学
芸術・スポーツ科学系
特任准教授
草津 祐介
先生書写 の 特性 に 合 わせた
I CTの 活用 を
はじめに―書写におけるICT活用のすすめ
「まなびリンク」では、教科書で扱っている毛筆 教材のほかに、補充教材も用意されています。教 材文字のPDFと運筆動画によって、より深く学びた い児童のさらなる学びに対応することができます。
補充教材もデジタルで
くさ つ ゆう すけ
※「汎用性の高いコンテンツ」は「指導者用デジタル教科書(教材)」、「学習者用デジタル教材」に収録されています。
汎用性の高いコンテンツ❷
教育出版のデジタルコンテンツは、単独でも活用可能であるのと同時に、学校でお使 いの授業支援ツールなどともあわせて活用できるよう、汎用性高く設計されています。
「書写は何を教える学習領域なのか」ということをしっかりと意識したうえで、これら を手段として、教具として、効果的に活用することによって、より書写の学びを深めて ほしいと思います。
なによりも、書写におけるICTの活用にあたっては(書写のみではないと思いますが)、手 で書くことの学習効果をしっかりと教師が認識し、発達段階、学習段階を踏まえた活用を 意識していただくことがDX化する教育において重要になっていくのではないでしょうか。
おわりに
「こう筆文字検索」
「こう筆文字検索」は毛筆学習を硬筆学習に 生かす際、大いに活躍します。児童が学習した 文字を主体的に他の文字に生かそうとする活動 は、個別最適な学びにつながります。8文字まで 同時に検索することができるので、言葉として硬 筆を学ぶことができ、学習の日常化をはかる際 に非常に効果的です。
シミュレーション
文字の大きさや位置を変えるなどのシミュレーションを行うことで、思考を促すコンテ ンツです。「技能」習得を見据えながら、「思考力・判断力・表現力」を育成できるこのよ うなコンテンツは、主体的・対話的で深い学びの実現のために大変有効です。
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【学習の進め方】(解説動画)
授業開きで、書写学習の流れを確認できます。
学校で使用しているほとんどの端末にはカメラがついて います。書写においては、写真の撮影、動画の撮影は大 変有効に活用できそうです。写真や動画をデジタルポート フォリオとして残す。撮影した写真や動画を使って意見交 換や共有を行う。児童自身が書いている動きを動画で撮影 して振り返りに活用する。こういった活用が期待できます。
また、教科書に掲載されている二次元コード(まなびリン ク)の読み取りにも、カメラを使用します。まず書写の学び においては、「カメラ機能」を積極的に使ってみてください。
「動画」と「比較ツール」を使った授業展開例
「動画」と「比較ツール」を使った授業展開例
「動画」と「比較ツール」を使った授業展開例
「動画」と「比較ツール」を使った授業展開例
1
【ためし書きをしよう】
2
【めあてを知ろう】
3
【教材文字と比べよう】 【教材文字と比べよう】
4
【めあてに気をつけて練習しよう】 【めあてに気をつけて練習しよう】
5
【まとめ書きをして、ためし書きと比べよう】 【まとめ書きをして、ためし書きと比べよう】
6
【めあてに気をつけて書けたか、伝え合おう】
7
【学んだことを硬筆で、他の文字へ生かそう】
教材文字 ためし書き
ためし書き まとめ書き
【比較ツール】
児童が書いた文字を撮 影し、教 材 文 字と比 較 できます。直接ペンで書 き込みができるので、自 分の課題を見つけられや すくなります。
【比較ツール】
ためし書きとまとめ書き を比べることで、授業 を通してどれくらい自 分の課題ができるよう になったのか、気づき やすくなります。
動画は教室の ディスプレイな どで流しておき、
児童がいつで も確 認 できる 環境をつくると よいでしょう。
児童にも必要な時に端末で 視聴できるよう促すと、より 個別最適な学びへとつながる のではないでしょうか。
書写だからすべてアナログがいいというわけではありません。むしろ、
書写はどう教えたらいいかわからない、自分は字が上手ではない から書写は教えられない、といった従来よく聞かれた悩みがICTの 活用により解決する、という場面もあるのではないかと思います。
書写こそデジタルとアナログという二項対立的な考えから脱却し、
効果的にICTを活用していく必要があると思います。
教育出版のデジタルコンテンツは、ICTの活用を押しつけたり、
ICT活用の理由のためにつくられていたりというものではく、先生 がたに「この学習の、この場面で使ったらより書写の学びが効果的 になるな」と思われるようなコンテンツに、という視点で開発されて います。すでにさまざまなコンテンツ、アプリなどを活用されてい る先生も多数いらっしゃるかと思います。
そこに教育出版のデジタルコンテンツを組み合わせて、より個別最 適な学び、より深い学びへと結びつけていただければと思います。
では、汎用的な活用が可能なデジタルコンテンツの一部を紹介 したいと思います。
効果的に学ぶためのICT活用
「動画」を十分に活用しましょう
まず「カメラ機能」の活用を!
教科書の二次元コードと連動している「まなびリンク」は、
毛筆の運筆動画のみならず、硬筆や水書の運筆動画、授業 の導入で興味・関心を高める動画など、目的や場面に応じ て有効に活用できます。
さらに「指導者用デジタル教科書(教材)」や「学習者用デ ジタル教材」には、毛筆の穂先の動きがよくわかる朱墨アニ メーションや、斜めの角度から撮影した運筆動画もあり、筆 使いの理解がより深まります。
汎用性の高いコンテンツ❶
「比較ツール」
「比較ツール」はカメラ機能で撮影した写 真を使用し、教材文字との比較、試し書きや まとめ書きの比較などを画面上で行うことが できるツールです。
また、並べたものを保存できるので、デジ タルポートフォリオとして記録を残したり、学 校でお使いになっている授業支援ツールで 活用したりすることもできます。