2014 年度 上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文
イメージ共有と感性経験
~人々はイメージ共有で何を得るのか~
A0941393 金 熙燁
2015 年 1 月 15 日提出
目 次
目次 ... 1
第1章 はじめに ... 2
第2章 理論的背景... 3
デジタル文化と感性 ... 3
感性媒体としてのSNS ... 4
SNSのイメージと感性経験 ... 5
第3章 検証 ... 6
感性媒体とイメージ ... 7
コミュニケーション ... 7
フィードバック ... 9
付加価値... 9
否定的視覚とデメリット ... 11
第4章 まとめ ... 11
あとがき ... 12
参考文献 ... 13
第1章 はじめに
SNS が日常のコミュニケーションのツールとして位置づけられてから数年が経った。
にもかかわらず、個人のコミュニケーション能力やライフスタイルに対する研究は今一で ある疑問がする。広告市場はSNS向けに新たな戦略を散々試している。既にAmazonなど の大型サービス業界の合併などのような成功例が紹介されている。これらを裏付けるモノ として、Facebookのユーザー数およびトラフィックなどに関するデータは数多い。しかし SNS 利用に従うカルチャー要素を探る研究は中々見当たらない。本稿では多様なデジタル 文化の中心にいる若人のコミュニケーション傾向を変化させ、コミュニケーション関係の 尺度を強化する様々なメカニズムを「感性」というキーワードに転換して述べていきたい。
個人化をもたらすメディアが持つ関係中心的なネットワーキングはデジタル文化の中 にある感性、すなわち情緒基盤のコミュニケーションの量態を表す。モノや数値では表せ ない人間根本の内面的価値がFacebookの「いいね」や「シェア」などのようなワンクリッ クで済んで、これで巨大な感性のつながりが成り立っていると考えられる。デジタル文化 と感性の融合は人間のコミュニケーションによって価値が生まれる。デジタル文化とテク ノロジーの発展の中で、スマートフォン(以下スマホ)は我々の生活にソフトウェア的な つながりを可能化させた必須品となった。特にスマホのカメラ機能を通じて我々は自分の ストーリーをイメージ化して表し、持続的に他人との共有を行うことができる。つまりSNS 環境の中、自分自身を対象化したイメージを創り管理し、そのイメージを共有することで 社会的な空間に入り、他人との関係を結ぶミシェル・フーコー(Michel Foucault)の自己 テクノロジー(Technologies of the self)概念で自分の感性を表し、さらには感性コミュニ ケーションを行う。
SNS の環境の中、個人は移動中でも非言語的なメッセージであるイメージを共有して 感性を感じ合う経験を行う。このような感性は、再び関係を強化させる経験を可能化する か、またこれにより関係が新たな局面に差しかかるかに分けてその利用方法を見ていきた い。
アナログ時代からイメージは非言語的なメッセージとしてその感性的な価値を持ち、
関係形成のためのコミュニケーション・ツールとして活用された。そのイメージが持つ固 有の特性が最近はSNSを通じて関係の転換と媒体の対象として変化している。この脈絡を 本稿のアジェンダとし、SNS でのイメージ共有を通じた感性経験および関係の分析、イメ ージ活用において若人の表現方式の変化過程を調べ、イメージ共有を通じた自己表現と周 りとの関係結びの相関関係について見ていきたい。
本稿はデジタル文化の感性表現がイメージ共有を通じてSNSで如何なるメカニズムで 行われているか、そのコミュニケーションの中で「果たして我々はどこまで幸せになれる か?」という人間の幸せに対する問いから始まる。
第2章 理論的背景
2−1 デジタル文化と感性
デジタル文化はライフスタイルにも多様な変化をもたらした。米国の社会学者アー ヴィング・ゴッフマン(Erving Goffman, 1922-1982)によると現代社会の正体性に対す る考えで、人々の対人関係に対する概念を「印象管理(Impression management)」と定 義し、他人が自分をどのように認知し評価しているかに対して興味を持ち、他人が形成 する自分の印象をコントロールする過程を意味する。このようなアーヴィング・ゴッフ マンの「印象管理」概念はSNSのFacebookという研究対象でユーザーが自分自身を直 接抽象化したイメージを如何に共有し感性を表して経験するかを考察することに活用で きる。「印象管理」は行為者の相互作用を実際に見せる前面領域(front region)と他者の 認知から隔離された領域である後面領域(back region)に分けられ、前面領域はフォー マルな形での行動と発言が行われる社会的な場で規範や強制が狭くて強い。社会的な正 しい役割を果たすことに対して緊張が持続し、自己規範に注意する一方で、匿名性を特 徴とするインターネットは後面領域に近い。ここではFacebookユーザーが如何にイメー ジ共有を相互作用化するかについて深めていきたい。
2−1−1 感性の概念とデジタル共有
感性という概念はデジタル時代以前のアナログ時代から長い間蓄積された人間の コミュニケーションの理解として肝心な要素である。デジタル文化の中、多様な技術 が発展すればするほど人間認識の根本的な欲求に対する問いを見つける過程は必須に なり、本能ともいえるだろう。従ってSNSのFacebookのイメージ共有を通じたつな がりで感性を表現し、経験する一連のプロセスは人間認識の根本的な欲求に対する当 たり前の行為であろう。
心理学でいう感性は、「刺激に応じて感覚を起こす能力」と定義されている。また 哲学では「印象を受け入れる能力」といっている。従ってFacebookでのイメージ共有 は人間がコミュニケーションにおいて感性を受け入れる能力を拡張させた重要な表現 手段として考えられる。
カナダの英文学者、文明批評家マーシャル・マクルーハン(Marshall McLuhan)
はメディアを指して「人間の拡張(the extension of man)」であり、すべてのメディ アは人間が持つ感覚器官の心理的あるいは物理的な拡張を意味すると唱えた。デジタ
ル文化の中、SNS のイメージ共有を通じて感覚器官の心理的な拡張は人々のつながり を強くし、このようなつながりは人間の内面を動じる同時に他人との心理的距離を縮 める肯定的な機能をするだろう。
2−2 感性媒体としてのSNS
2−2−1 SNSの特徴
SNS とは、一人メディア、一人コミュニケーションを中心に個人の日常生活や関 心分野についての多様な共有のことで、他人との関係を形成し各自のキャラクターに よって目的性を持ち仮想のコミュニティーを形成するサービスである。全世界的に SNS利用人口は2013年16億人を超え、このまま成長が続けば、2017までに23億人 に到達する見込みである(米国インターネット調査会社eMarketerより「月に最低1 回はSNSにログインする人数」)。世界インターネット利用者の SNS利用に対する調 査結果、全体の応答者の85.2%がSNSを利用していて、その内56.8%がSNSに毎日 ログインしている。このようにSNSの急速な拡散から新たなライフスタイルやコミュ ニケーションの方式、多様なつながりなどの変化が予測される。SNS は人とのつなが りを目的とするソーシャルネットワークをより手軽にできるサービスである。またソ ーシャルネットワークは人と人の間の連結網-マンツーマンの関係だけでなく多様な すべての関係-で、社会関係網は個々人の集まりではなく個人が集まって成り立つコ ミュニティーのことである。
またSNSは人々の持続的な関係形成に対するニーズを最も効率的で即時的に満た している。ネットワークの発展によって利用者は自分の友達と24時間つながっていて、
物理的な距離や時間はそのつながりを制約しない。彼らは自分が今どこにいて誰とい て何をしているかを公開し、時には写真の共有で感覚的なモードを拡散する。このよ うにSNSは既存の媒体とは比べられない個人的関連性という特徴を持つ。
2−2−2 共有とSNS
我々は SNS を通じて何を共有するのか?米国の心理学教授ドナルド・ノーマン
(Donald A. Norman)は時間と場所にかかわらず常に連絡可能なスマホで人々の間で やり取りされるメッセージは単なる情報の共有ではなく暖かい感情的なつながりで、
人々は互いに「今ここにいるよ。」、「今どこ?」、「好きだよ。」などのメッセージをし ているという。また人々は慰められ安心するためにコミュニケーションを必要とする。
従ってSNSのイメージ共有を通じて現実の物理的な距離を超え、仮想の空間にともに 居てその中で心理的な安定感を持つのである。
米国の社会学教授マーク・グラノヴェッター(Mark Granovetter)は弱い紐帯が
持つ情報共有の有用性を「弱い紐帯の強み(the strength of weak ties)」と唱えた。社 会全般でこのような弱い紐帯は生活環境と関心分野が異なる人との間で、コミュニケ ーションを助け合い、互いに新たな情報が流れ込まれる可能性を高める。弱い紐帯の 主要な機能の一つとして強い紐帯関係が成り立っている小さな集団とその集団同士を つなぐブリッジの役割が挙げられる。紐帯を通じて個人や社会構成員に重要で新たな 情報が、同質的な集団を超え社会全体のシステムに自然と流れ込まれるようになる。
SNS でのイメージ共有を通じたコミュニケーションは SNS を利用する主体であ る個人の特徴によってそれぞれで、目的の異なる空間を構成し有機的に多様な人々と の関係を取り交わしながらともに進化している。ここでいうSNS利用者は一つの目的 で一貫した受動的なユーザーではなく、自ら自律性で予測不可能な能動的なユーザー 同士の紐帯を意味する。マーク・グラノヴェッターが定義した「弱い紐帯」に当ては まるだろう。
2−2−3 モバイルとSNSの感性
人間は本来社会的な存在であるため他人とのつながりを結びたがり、自分が望む 集団に所属されて人との愛情や友情などを分け合いたい欲求を持っている。
テクノロジーの発展の中、モバイルとSNSの結合で作られた新たなライフスタイ ルの中でもスマホは最も個人的で感性的なデバイスで、デジタル文化の多様な変化の 中で肝心な役割を満たしてきた。スマホはリアルタイムで個人の率直な自己表現であ る感性をカメラで自分のストーリーを即時的に作り出し、素早く他人と共有すること で肯定的かつ発展的なつながりを可能化した。
このようにデジタル文化でモバイルは単純なコミュニケーション・ツールではな い。言い換えると経験やストーリーそして感性を伝える重要な媒体である。個人はモ バイルを通じて自分に対する日常を記録、削除、公開、回想するスキルを発揮するこ とによって自分のライフを構成し自分なりの正体性を表そうとする。
2−3 SNSのイメージと感性経験
2−3−1 感性表現ツールとしてのイメージ
イメージとは何か?非言語的なメッセージの一つである。メッセージは言語的な ものと非言語的なものに分けられ、イメージは代表的に非言語的なメッセージで他人 に意味を伝えて理解してもらうための視覚中心のコミュニケーションである。最近コ ミュニケーションでのメッセージは間接的で非体験的な情報として受け入れられるこ とが多い。ここでイメージはメッセージの伝達という目的を果たすイメージ・コミュ ニケーションの形を取る。SNS のイメージはこのように非言語的なメッセージで、人
間それぞれの固有感性に付加価値を付け感性的にアピールされる。
SNS でのイメージは客観的で事実的な内容の伝達を超え、利用者個人の経験や感 性を表すことにより意味を持つ。すなわち事実でなくストーリーの経験から親密なつ ながり向けの感性的なアプローチである。
2−3−2 イメージ共有、感性そしてつながり
人々は何を大切にするのか?SNS のイメージには利用者自らの些細な日常から価 値観、体験的なストーリーまで様々なモノが含まれている。これは人とのコミュニケ ーションを通じた相互作用の過程の中で感性的な愛着をもたらし、つながりを形成し 維持する媒体となる。
一方で、SNS のイメージ共有は個人の熱望と意地にもよるが、その具体的な方式 や過程は社会的なつながりと秩序の中で調整される。つまり個人の自己テクノロジー は与えられた社会的環境の中で妥協的に行われる。このような社会的制約はSNS利用 者が第3者の目線から自分をモニーターリングでき、自分が求める反応を引き起こす コンテンツを作り、それを敢えて他人に提供しその反応を期待することも起こり得る。
しかし、オンライン上でのイメージ公開の適度や範囲に関する問題もあり、イメージ 提供者は親密な知り合いとの共有を主な目的とするが、イメージはその意図と外れる 範囲まで広がる可能性もあり、その状況での人々はありのままの自分のイメージを公 開したがらなくなる。米国の小児科医博士オキープとクラックーピアソン(Gwenn Schurgin O’Keeffe & Kathleen Clarke-Pearson)は「Facebook鬱」について指摘し ている。これはFacebookの友達の自慢や幸せそうな表情の写真は、自分が相対的にそ のスタンダードに満たされていない存在であると考えさせる。逆に絶望感を与える恐 れがあるという意味でもある。またFacebookのイメージ共有は自ら見てもらいたい部 分だけを選択的に見せられる分、現実のライフが歪んだ形態として現れる可能性が高 く、このため生じる相対的な憂鬱は簡単なものではないだろう。
第3章 検証
デジタル文化の中でSNSのハブのような役割をしているFacebookの利用者が選ぶ媒 体の利用方式は様々である。しかし媒体の形や目的が異なっていても人間のコミュニケー ションを通じた欲求解消のメインには感性が存在する。恐らく感性は社会と文化の全般的 なコミュニケーションを融合する目的で登場したキーワードであろう。人々の心を動かせ
る感性は人それぞれであるため一つに定義するのは難しい。ただし技術が進化しても人間 的なものが重要であることには疑いがないだろう。
SNS でイメージとは個人が持つ特別な自己体験的なストーリーを心に訴える際、感性 的に強いアピールとなる。率直なイメージは他人を説得させる強い力を持ち、紐帯を形成 させる基盤となる。Facebookのイメージは信頼と親密感の相互的なコミュニケーションと いう点で感性的であり、社会的ツールとして人々に感性経験を共有させる媒体でもある。
ここではなぜイメージ共有をするかについて中心的に見ていきたい。
3−1 感性媒体としてのイメージ
デジタル文化の中で常に変化するライフスタイル。我々はFacebookで今思っている ことや感情そして状況を他人に伝える際、イメージを用いて表現するのか?
Facebookのイメージは文字より視覚的に優れた感性的表現力やそのイメージだけの
豊かなストーリーがある。ドナルド・ノーマンによると写真は特別な感情的アピール感 を持ち、我々の考えや感情そして状況を表してコミュニケーション化する上での感性を 拡大する重要な役割であるといっている。
Facebookでのイメージは非言語的なメッセージとして文章に比べて個人の感性によ
り大きく影響を受ける。一つのモノに対する感性は個人それぞれであり、同じ人でも同 一対象に対して既に持っている感情や身体の状態、周りのバックグラウンドなどによっ て異なる。すなわちイメージを眺める人の直観的な感性により、多様な想像力が加わっ て個人が持っている現在の心理状況や経験がさらなる可能性や潜在力を生み出す。恐ら くこのような特徴で、イメージを用いて自分のストーリーを表現して他人とのつながり を結びたがるのではないだろうか。
3−2 イメージ共有を通じたコミュニケーション
Facebookのイメージ共有を通じて人とのコミュニケーションの距離を縮めて親密性
の空間を展開できるのか?そしてなぜイメージを通じてコミュニケーションをしたいの か?
3−2−1 感情表現と感情補償
人間のコミュニケーションの根源は感性の表現から始まる。Facebookでのイメー ジ共有で我々は持続的に感情を表して確かめるコミュニケーションの中で、心理的に 癒し合い、誰かとともにという安定感を感じる。
3−2−2 自己記録
Facebookでのイメージ共有で人とのコミュニケーションを目的とする同時にこれ を通じて自らのイメージを形成し再生産して表したい欲がある。このような欲はフラ ンスの哲学者ミシェル・フーコー(Michel Foucault)の自己テクノロジー(Technologies of the self)の概念で、自分と自分、自分と他人のつながりの中で、自分を作り出す主 体を説明している。SNS では自分に向けて視線を振り向く。自らを蘇って他人や世の 中との関係について考え直す。特にFacebookでのイメージ共有を通じて内面の感性を 表現し、自分なりのストーリーを作っていく。
3−2−3 持続的なつながり維持
持続的なつながりを保つためには、社会的ネットワーキングが要求される。人々 のつながり形成を目的とするSNSでのイメージ共有はアナログ的な関係をデジタルに 転換するだけでなく、その関係を新たに再編する。つまりソーシャルネットワーキン グをより手軽にするためのツールで、人間とのつながりを結び付く機能を持つ。従っ てデジタル文化の中のSNSのイメージ共有は人と人を結び合う感性の媒体ともいえる だろう。
SNS のイメージは感性というコードと結合されて個々人の弱い紐帯〜すべてのあ り得るつながり〜を幾何級数的なネットワークに変える価値を持つフラットフォーム としての機能を満たす。社会関係網は個人でなく数多くの個人が集まって成り立つコ ミュニティーの概念である。インターネット媒体の登場は人々の相互作用に多く影響 され始め、コミュニティーの概念は時間と空間を超えて仮想空間のコミュニティー概 念を形成していくようになった。
3−2−4 情報共有
情報共有とは自分の情報を他人に提供することで他人との距離を縮め、心理的に 信頼を伝えられる行為である。ここで個人が自分を表現し、社会的ネットワークを可 視化して人々の間の紐帯を生産するSNSの登場を情報共有という側面から見ていきた い。
SNS を活用した全世界的なコミュニケーション人口の増加がもたらした変化は、
利用者を単純にオンライン空間で互いにコミュニケーションする以上のことを含んで いる。部分的で一時的な変化に止まらず、根本的には人々を結んで弱い紐帯を強くさ せる効果もある。すなわち情報共有は紐帯を強くする触媒材となる。同時にオンライ ン空間で自分を表すことで自分の知識共有に関して興味を持ち、ソーシャルメディア に参加して自然に情報を受け取れるようになる。
3−2−5 自己ブレンディング
Facebookで自分だけの固有のイメージを共有する。そしてイメージ共有を通じて
自分をPRする。自ら期待される自己ブレンディングを、イメージを通して表現する。
つまりSNSは個人が持つ自己ブレンディングの欲を表す固有のサービス価値を持つと もいえるだろう。
3−2−6 正体性の表現
SNS 利用者には正体性を表現したいという欲が存在し、自分だけの正体性の表現 はコミュニケーションにおいて重要なモチベーションとなる。このために視覚的な表 現手段であるイメージは利用者の自己表現の様式の肝心なツールとなる。
正体性は主体の社会的な経験を一定の象徴的な形として再現するプロセスで、正 体性は「何か」ではなく、「成るモノ」という観点で捉えたい。このようなオンライン での正体性の表現は、他人に対し肯定的なイメージを作り出し、否定的な印象を回避 する効果を持つ。自分と関わっている人々に良い印象を残すのが何よりである。
3−3 イメージ共有に対するフィードバック
空間のシェアは、媒体を用いたコミュニケーションでの相互作用で、「他人とともに いるような感じ」あるいは「同じ場所にいる感じ」を指し、オフラインの物理的な近接 性と似ていてオンライン空間では人々の間の紐帯を強くする要因である。Facebookでの イメージ共有を通じて知り合いとやり取りする「いいね」や「コメント」などのフィー ドバックは仮想の空間で心理的にともにいるような錯覚を招き、共感してつながりを深 めることに役立つ。利用者にとっては、心理的な安定感と同時に孤独感や孤立感から抜 け出せるような影響も挙げられる。
3−4 イメージ共有の付加価値
カナダの英文学者、文明批評家マーシャル・マクルーハン(Marshall Mcluhan)に よると、新たなメディアの出現は、新たな世界に対する人間の知覚方式の変化およびコ ミュニケーションの変化を意味すると唱えた。そうすると、結論的に我々はFacebookの イメージ共有を通じてどのような付加価値を望んでいるのか?
3−4−1 心理的補償
利用者の間に心理的な紐帯を強めるためのイメージはどの媒体よりもその影響力 が大きい。例えば偶然見かけた日常の写真は、同時にこれを見ている友達との親密感 や心理的な紐帯を強くする。またFacebookでのイメージとは単純に見える何かではな く、自分の中にある感性を表すナレーションの役割も果たすだろう。イメージとして 表した独白に知り合いからの「いいね」や「コメント」は、感性的なコミュニケーシ
ョンを通じて独りという孤立感から逃れる同時に親密感を倍にさせる。
3−4−2 自己正体性の表出に対する満足
自己正体性の表出とは、積極的に自分を表す行為である。SNS を利用するモチー ブは自分のアピールと相手のイメージやポストを確認してコミュニケーションを取る ことにその意味がある。誰かに見て欲しいという願望が直接的な要求でなくても、自 分が今何をしていて、何を考えていて、何を残したいかなどの欲、これらをイメージ が重要な表現の手段として自分または他人との対話を可能化している。
特に他人のフィードバックに自分の存在感や正体性に確信を持って幸せを感じる。
Facebookは他人との相互作用を「いいね」、「コメント」、「シェア」などを通じて自然
にサポートすることができる。さらにこれで親密感が生じ、コミュニケーションを通 じた感性経験ができる。
3−4−3 現実へのつながり形成
米国の政治学者ロバート・パットナム(Robert David Putnam)は信頼とレシプ ロシティー(相互性)に基づいた。ロバート・パットナムによるとインターネット利 用はサイバー上のコミュニケーションだけで留まると無意味であるという意見と、イ ンターネットは現実の物理的空間と関連づけた際こそ真なるコミュニケーションが取 れるという考えについて述べている。
デジタル文化は現実のライフスタイルと社会文化全般に変化をもたらし、これか らより大きな発展と影響を及ぼすと見込まれている。コンピューターを媒体にして行 われるコミュニケーションであるCMC(Computer Mediated Communication)は、
物理的な空間で相手との関わりがない。コンピューターが相互をつなぎ、コミュニケ ーションのシチュエーションを形成するため、コミュニケーションのシチュエーショ ンでの最も基本的な条件である「人との出会い」が排除されている。モバイルとネッ トワークの発展はFacebookでイメージ共有を通じて自分の感性を表し、コミュニケー ションする機会と人々に、いつ、どこでも持続的なつながりが可能な環境を提供する。
しかしこのような環境の中の人々は無意識中に人と人との直接的な出会いが排除され た状態から来る心理的に不明な虚しさを感じる。これはイメージ共有を通じて現実世 界での直接的な人と人とのつながりを望む感性の拡張を期待しているためではないか。
3−4−4 コミュニケーションの根源となる感性表現から得られる幸福感
米国の作家ニール・ポストマン(Neil Postman)は世間と自分を結ぶ窓、それが
「メディア」で、新たな技術は知識と真理の意味を変え、世界を認識する感覚や思考 を変えっていくと唱えた。
デジタル文化のニューメディアは時間と空間を乗り越えるコミュニケーションを
可能化させ新たなライフスタイルや未来の暮らしに多様で肯定的な可能性を示す。こ のようなデジタル文化の中でニューメディアの代表例であるSNSでのイメージ共有は、
感性を伝わるものだけでなく同時に個人の内面化された素直な自己表現の方式である。
これはコミュニケーションの根源とも呼ばれる自分の感性表現への満足感であり、他 人とのつながり形成とそのコミュニケーション過程を通じて拡大された感性経験でも ある。
3−5 イメージ共有の課題
しかしながらイメージ共有に対する否定的視覚やデメリットも挙げられる。
3−5−1 社会的目線と関係による感性経験の制約
自己テクノロジー(Technologies of the self)の一環として日常で自分を対象化し、
記録して管理する技術が大きい割合を示している現状で、自分と自分のイメージの間 には既に社会的目線がある。これはすなわち社会的目線と他人との関係の中で、時に は感情を自由に表すことにおいて考えられる制約も看過できないだろう。
3−5−2 相対的剥奪、劣等感、疎外感
SNSのイメージ共有の主体者である個人は自分が欲しいだろうが欲しくないだろ うが、自分が所属された社会と他人との関係に影響を受け、その過程の中で変化して いる。また個人の日常が如何に社会的に理解され、再現されるべきであるかに対して 問い続けるだろう。
第4章 まとめ
スマホが普及され、ソーシャルメディアが個人間のコミュニケーションのツールとし て位置づけられた。最近Facebookはソーシャルネットワークを代表するサービスだけでな く、数々のソーシャルメディアをつなぎ、互いのブリッジの役割をしている。Facebookは ビジネス的な可能性、メディア的な仲裁な役割を超え、個人間の最も親密で内密な話を語 られる媒体として注目されている。
ここまで様々なスマートツールで、数多くのユーザーの個性をつなぎ合う機能を感性 というキーワードとして取り挙げてきた。ここで挙げている感性とは、ユーザー間の親密
感を高め、ネットワークの距離を縮め、相互作用を活性化させる信頼のことである。しか しSNSの重要さとともにソーシャルメディアの量的成長、ネットワークトラフィックの増 加、ソーシャルマーケティングの広告収益の増大などの分析が主流となっている。従って ユーザー中心の観点から感性のコミュニケーションと心の交わりが持つ意味に着目してき た。主な検証対象はFacebook で、SNSでの非言語的メッセージであるイメージは文章に 比べて豊かな感性的表現力を持つことが確認できた。
SNS でのイメージは感性を伝える媒体で、個人の考えや感性を表そうとする巨大なメ ッセージである。同時に内面化された率直な自己表現ともいえる。文章に比べて直説的で ないという側面からそれぞれの心の裏のナレーションを聞くこともできる。表にせず利用 者個人の経験により解釈されることで、自己表現の心理的安定感を持つ。人々にSNSのイ メージ共有とは、特別でフレッシュな自己表現でありつつ内面からの存在感の確認過程で、
他人との肯定的な関係を望むプレイである。これは感性経験の拡張を通じて内面の寂しさ や孤独さの解消、幸せへの根本的な欲、主体的本能、自発的自己表現を意味するだろう。
あとがき
今回、イメージ共有と感性経験について卒業論文を書いたが、途中テーマの変更も何 度かあり、ガイドラインを作るのに相当な時間を費やしたのが主な原因で、先生の期待に お応じできるレベルの研究が十分に行われなかった。さらに正確なデータや成功事例など は一切取り上げておらず、それぞれの各関連者の引用や文献が大きな割合を占めしている。
またSNSの中でも数多いサービスが存在しているが、メインとしてFacebookだけに注目 したことも見解によっては違う結論に至った可能性も考えられる。以上の様々な要因から 面白みが欠けてしまっているのが現状である。より方向性をしっかりと定めた上でロジッ クに力を入れておけば優れた結果物になったのではないかと悔いるところがある。
参考文献
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佐藤方彦(2011)『感性を科学する』丸善出版
福田忠彦(2004)『人間工学ガイド−感性を科学する方法』サイエンスティスト社
高広伯彦、池田紀行、熊村剛輔、原裕、松本秦輔(2011)『フェイスブックインパクト つながりが変える企業戦略』宣伝会議