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Hokkaido University, Faculty of Agriculture
2004農経学科 経済原論Ⅱ
資本蓄積のしくみと雇用
(
2年11/16, 3年11/12)
担当:久野秀二(
Hisano, Shuji)農業市場学分野・助手
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
経済成長の本質 経済成長の本質
o
資本の生産過程G-W-G’
o
資本の蓄積過程G-W-G’・・・G’’・・・G’’’
n
拡大された規模での生産(再生産)は,国民総生産の増大すなわち 経済成長をもたらす。だが,生産が資本主義的企業によって担われ ている以上,それはあくまでも拡大された規模での資本の生産(再生 産)であり,したがって拡大された規模での剰余価値の生産(再生 産)を前提する。n
豊かさの指標である「経済成長」が,そのまま私たちの生活の豊かさ を意味するわけではない。Hokkaido University, Faculty of Agriculture
資本蓄積のしくみ 資本蓄積のしくみ
o
単純再生産n G-W-G’
o
拡大再生産n G-W-G’-W’-G’’
(剰余価値部分の再生産への投資)o
資本の集中n G-W-G’—W’’-G’’’
(他の資本や遊休資本を吸収・合併して拡大)W =
g (資本家の個人的消費)
G-W-G’
(同じ規模での再生産)Hokkaido University, Faculty of Agriculture
・ ・ ・ つづき
・ ・ ・ つづき
o
社会的総資本の構成と資本蓄積のしくみn
第1年度の社会的総資本C+V+M
(Mc+Mv+Mk )n
第2年度の社会的総資本C+Mc + V+Mv + Mm
(Mmc+Mmv+Mmk)n
第3年度の社会的総資本C+Mc+Mmc + V+Mv+Mmv + Mmm
(Mmmc+Mmmv+Mmmk)Hokkaido University, Faculty of Agriculture
有機的構成 有機的構成
o
有機的構成n
不変資本部分C (or Mc, Mmc)n
可変資本部分V (or Mv, Mmv)n
この比率C/V を「資本の有機的構成」という
n
有機的構成は「一労働単位あたりの生産手段消費量」を表しており,近似的に労働の生産性(労働の社会的生産力)を表している
o
有機的構成が不変の場合n
①C / V ②C+Mc / V+Mv③C+Mc+Mmc / V+Mv+Mmvの いずれも同じ比率の場合,つまり総生産の価値の増大とともに不変 資本も可変資本も同じ比率で増加する場合è
雇用労働力も複利的に増加n
だが,総生産物価値の増加率(経済成長率)と労働力の増加率(人 口増加率)とのギャップが存在する場合,つまり資本の有機的構成 が不変のままで労働力の社会的供給源が限られる場合,資本蓄積 は「労働力不足」という事態に直面è
労働節約的な技術の開発,安価な労働力の確保によって克服Hokkaido University, Faculty of Agriculture
・ ・ ・ つづき
・ ・ ・ つづき
o
有機的構成が上昇(高度化)する場合n
蓄積が行われるかぎり,その追加投資がどのような有機的構成に よって投下されるかにかかわらず,雇用の増大が見込まれるn
だが,次期の再投資の一定部分がヨリ労働節約的な,したがって以前より高い有機的構成を示す機械設備の更新等に投下される場合,
その不変資本部分に対応する可変資本部分は縮小
è
蓄積が行われても必ずしも雇用は増加せず,かえって減少する こともn
さらに現実の蓄積過程においては以下の要因が重なって,有機的構 成の高度化のテンポが増し,雇用減少圧力が強まるu 機械設備の更新が早まる場合(ex. 優遇税制等の景気刺激策)
u 資本の集中にともなう「合理化」が強行される場合 u 競争によって中小企業が淘汰される場合
è
経済成長と失業の並立2
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
相対的過剰人口 相対的過剰人口
o
資本にとっての存在意義n
豊富な労働力=景気変動や企業戦略に対応した労働力需給の調節弁の役割
=産業予備軍
n
安い労働力=現役労働者との競争
=労賃の価値以下への切り下げや労働強化が容易に
n
従順な労働力=労働力の代替性(=失業への危機感)
=労働者の資本への経済的従属の完成
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
・ ・ ・ つづき
・ ・ ・ つづき
o
相対的過剰人口の存在形態n
流動的過剰人口(産業構造や労働力編成等の変化にともなって遊 離される部分=摩擦的失業ex.職安で職探ししている失業者 cf.
パート・アルバイトや派遣労働は?)
n
潜在的過剰人口(農民層分解等で農村に滞留して半ばしつぎょう状 態にある部分cf.専業主婦は?)
n
停滞的過剰人口(不規則・不安定で労働条件の劣悪な部分ex.零
細家内工業,小商店,内職cf.パート・アルバイトや派遣労働は?)
o
失業率 その統計と実態からの乖離è添付資料
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
雇用問題 雇用問題
o
「雇用の弾力化」の意味n
人件費の抑制n
正規雇用の削減と非正規雇用の活用による雇用の伸縮性の確保n
産業構造の転換にともなう労働力移動の促進n
これらを妨げるような雇用関連法制の規制緩和の正当化o
雇用規制の緩和n
労働者派遣法(1999.12):労働者派遣事業の規制緩和 n
職業安定法(1999.12):有料民営職業紹介事業の対象拡大 n
労働基準法(2001.4):有期雇用契約における期間制限の緩和 n
雇用保険法(2001.4):保険料引き上げ(=国庫負担率の引き下
げ)と失業給付の抑制
n
産業活力再生特別措置法(1999.10)
:企業負債を国民の税金で穴 埋め(平成版「徳政令」)+公的資金投入の前提条件にリストラ「合理 化」Hokkaido University, Faculty of Agriculture
・ ・ ・ つづき
・ ・ ・ つづき
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「雇用の過剰化」をどう考えるかn
長時間労働と雇用削減の併存n
時短による雇用創出の可能性n
企業の社会的責務(欧州でできて,なぜ日本でできないのか)Hokkaido University, Faculty of Agriculture
次週の内容
o 2年目11/30, 3年目11/19 o
講義内容n 社会経済学の基礎理論(4)
n 資本の再生産と景気変動
o
次週までの課題n とくになし