4 . これまでのまとめ
科目: 基礎数学A及び演習(演習)(2‐1組)
担当: 相木
過去3回のプリントで命題や集合に関する基本事項を解説した.それらにはかなり抽 象的な概念やものの扱い方も含まれており,初見では分かりづらいという印象を受けた人 もいるかと思う.
このプリントでは,具体的な練習問題を解きながら今までに扱った内容を総括する.
問1 以下の集合に対する等号が成り立つことを証明せよ.
{x∈R | |x|<1} ∩ {x∈R | x >0}={x∈R| 0< x <1}
解答. 議論をしやすくするために3つの集合A, B, Cを以下のように定める.
A={x∈R | |x|<1} B ={x∈R | x >0} C ={x∈R | 0< x < 1} このようにおくと,証明すべきことは
A∩B =C
と表現できる.集合の等号の定義からA∩B ⊂CとC⊂A∩Bの両方が成り立つことを 示せばよい.
A∩B ⊂Cの証明
∀x∈A∩B, x∈C を示す.そこでA∩Bの任意の要素xを取る.x∈A∩Bより特 にx∈Aなので,Aの定め方から|x|<1であるが,これは
−1< x <1 (1)
ということである.さらに,x∈A∩Bよりx∈BでもあるのでBの定め方から x >0
(2)
である.xに対しては(1)と(2)の両方が成り立つので 0< x <1
1
であることがわかり,x ∈ Cである.任意のA∩Bの要素xに対してx∈ Cが示された ので
A∩B ⊂C
が示された.
C ⊂A∩Bの証明
∀x∈Cを取る.Cの定め方から
0< x <1 である.特に
−1< x <1 も成り立つのでx∈Aである.また,
0< x
なので,x∈Bでもある.したがって,x∈Aとx∈Bがともに成り立つのでx∈A∩B である.∀x∈C, x∈A∩Bが示されたので
C⊂A∩B
が示された.
以上を全てまとめると,A∩B ⊂CとC ⊂A∩Bの両方が成り立つことが示された ので
A∩B =C
である. □
問2 以下の命題の意味を説明し,その真偽を証明せよ.
∀x∈R, |x|<1
解答. まず,問題の命題が全称命題であることに注意すると,その意味は
「全ての実数は絶対値が1未満である」
となることが分かる.
この命題は偽である.なぜなら,3∈Rであるが,
|3|= 3 >1
であるので絶対値が1未満でない実数が存在するからである. □ 2
問2の解答でも暗に用いたが,否定命題の定義から命題P に対して P が偽であることを証明する
ということと,
¬P が真であることを証明する は同じである.問2の解答においては
∀x∈R, |x|<1 が真であることを証明するために,その否定命題である
∃x∈R, |x| ≥1
が真であることを,3という具体的に条件を満たすxが1つあることを示すことによって 証明した.
問3 数列{an}∞n=1 がα ∈Rに収束することを全称・存在命題を用いて表現せよ.
解答. 基礎解析学IAの教科書に記載されている数列の収束の定義は
任意のε >0に対し,次を満たすNε ∈Nが存在する.
「n≥Nε ⇒ |an−α|< ε」
である.
この命題が真であるとは,最初に任意のε >0をとり,それに応じて「· · ·」の条件を 満たすNεが存在するということである.
「· · ·」の部分はP ⇒ Qという命題の定義から,n ≥ Nεを満たす全てのnに対して
|an−α|< εが成り立てば真となる.
以上を踏まえると,数列の収束の定義を以下のように表現することができる:
∀ε >0, ∃Nε ∈N, ∀n ≥Nε, |an−α|< ε.
□
3
予約制問題
(4-1) 数列{an}∞n=1がα ∈R に収束することの否定命題を全称・存在命題を用いて表現 せよ.
(4-2) 以下の命題の意味を説明し,その否定命題を書け.
∃x∈Q, ∀n ∈N, ∀m∈N, nx+m̸∈N.
(4-3) 以下の命題が真であることを証明せよ.
∀ε∈(0,1), ∃n∈N, 1−εn > 1 2.
ここで,(0,1)は{x∈R | 0< x <1}で定まる開区間である.
(4-4) 以下の等号を証明せよ.
{x∈R | ∀y∈N, xy ∈Z}=Z
早いもの勝ち制問題
(4-5) 数列{an}∞n=1が∞に発散するとは
∀L >0, ∃NL ∈N, ∀n ≥NL, an> L が成り立つことである.上の命題の否定命題を書け.
(4-6) 以下の命題の意味を説明し,その否定命題を書け.
∀x∈R, ∃y∈R, ∀z ∈R, z2 ≥xy.
(4-7) 以下の命題が偽であることを証明せよ.
∃δ >0, ∀n ∈N, nδ ≤1.
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