幾何学基礎1
2012-06-19[
台風休講]
(2012-06-26
講義)11
7 線積分と面積分
7.1 スカラー場の線積分
☆ 式 (7.1) R
ba
f (x) dx ⌘ lim P
N 1i=0
f (⇠
i)(t
i+1t
i) は区分求積法の原理 .
復習. limはN ! 1のときの極限ではない!!! 極限をとるために動かすのは閉区間[a, b]の 分割 j ={a=t0, . . . , tN =b}の列{ j}で,j! 1のとき| j|= maxi|ti+1 ti| !0 となるもの. したがって, limはj! 1のとき (‘| j| !0のとき’でも可). Nは分割 j
による小区間[ti, ti+1]の個数: N =Nj. j ! 1 )Nj ! 1だが, 逆は一般には成り立 たない. 多くの応用ではj! 1 ,Nj ! 1 となるための誤りか(p.iv, 答4). また, “区 間の分割( j)の仕方と代表点(⇠i)の取り方に依らず”も正確ではなく, 加えて,そもそも
“| j| !0となる分割列{ j}の取り方によらない”ことが必要かつ重要. (修正せよ.)
Q1. [ 復習 ] 分割 を必ずしも等分割でない場合も含めて考えるのはなぜか ?
☆ 曲線 C (r(t), a t b) に沿ったスカラー場 f の線積分を , 区分求積法 の原理を拡張して , R
C
f ds ⌘ lim P
N 1i=0
f(r(⇠
i)) s
iにより定義する .
注意. limはN ! 1, si!0のときでなく, limは| j| !0のとき (| j|= maxi si).
一般には| j| !0) si!0)Nj ! 1しか言えないが,多くの応用では三者が同値. また,線積分も極限が“| j| !0となる分割列{ j}および閉区間[a, b]の分割 jの仕方 と代表点⇠iの取り方によらない” ときに定義される. (修正せよ.)
★ 線積分では積分路 C の 向き r(a) ! r(b) が大事 [p.104, 下の ( 逆 ) 参照 ].
確認. 上の区分求積法の原理では, ‘暗黙の了解’により,x=tかつ 向き はxもtもa!b.
上の線積分でも, ‘暗黙の了解’で, ‘パラメータtが増える方向’ = ‘弧長sが増える方向’.
☆ 弧長 s と時刻 t の関係
dsdt= | r
0(t) | より , R
C
f ds = R
ba
f(r(t)) | r
0(t) | dt.
確認. ここでも‘暗黙の了解’で, ‘パラメータtが増える方向’ = ‘弧長sが増える方向’.
※ [ 例題 1] の ‘ 暗黙の了解 ’: 積分路 C の (0, 0, 0) ! (1, 2, 3) という 向き . Q2. ds は C の 像 と 向き のみにより , パラメータの取り方によらない ?
※ 積分路 C が閉曲線のときに , 線積分を ‘ 閉積分 ’(p.103) というのはまれ ;
‘ 閉積分路に沿う線積分 ’ というのが普通 ; H
C
f ds と表すのはよくある .
★ ( 和 ) R
C1+C2
f ds = R
C1
f ds + R
C2
f ds; ( 逆 ) R
C
f ds = R
C
f ds.
補足. (和)は積分路の和;C1の終点とC2の始点が一致しなくても定義でき,よく使われる. (逆)で CはCと 像 が一緒で 向き が逆の積分路: r C(t) =rC(a+b t)などと定義; 1変数のRa
b f(x)dx= Rb
af(x)dxに相当(線積分的にはR
[a,b]f dx= R
[a,b]f dx).
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7.2 ベクトル場の線積分
☆ 曲線 C に沿ったベクトル場 F の線積分 : s を C の弧長 , t =
drdsを C の単 位接ベクトルとして , R
C
F · t ds = R
C
F · dr = R
C
(F
xdx + F
ydy + F
zdz).
★ 線積分は一般には積分 経路 に依存し , 積分路の端点のみでは決まらない .
観察. (0,0,0)から(1,2,3)への曲線に沿ったベクトル場F = (xy, z2,0)の線積分: 有向 線分の場合[例題3]とyz平面に原点で接する放物線[確認!]の場合(p.107)では値が違う.
※ p.108 前半の R
BA
· · · dt はすべて R
r(t)=Br(t)=A
· · · dt とすべき .
★ 定理 7.1: 点 A から点 B への曲線 C に沿ったスカラー場 ' の勾配 grad ' の線積分の値は端点だけで決まる : R
C
grad ' · dr = '(B) '(A).
Q3. 定理 7.1 は何の一般化か ?
※ [ 力学 ] “ 運動方程式 ”
線積分!
(← 微分)
“ 力学的エネルギー保存則 ”:
[例題4]: R
CF ·dr= ‘力F が物体にした仕事’ = ‘物体の運動エネルギーの増加分’.
[例題5]: 力F がスカラーポテンシャル'を持つ(F = grad'が成り立つ)とき,
“ ‘運動エネルギーの増加分’ = ‘位置エネルギーの減少分’ ”)“力学的エネルギー保存則”.
7.3 2 重積分の復習
☆ 式 (7.9) RR
D
f (x, y) dxdy = lim P
i
f (⇠
i, ⌘
i) S
iは区分求積法の原理 .
復習. 2重積分も, limは| j| !0のとき (| j|= maxi‘ Siの直径’);極限が“| j| !0 となる分割列{ j} および長方形領域Dの分割 jの仕方と代表点(⇠i, ⌘i)の取り方によ らない” ときに定義される. (修正せよ.)
補足. 領域Dが長方形でない場合, Dが面積確定(RR
D1dxdyが積分可能)であることが 必要. それには,Dの境界@Dが面積0,特に@Dが区分的に滑らか,なら十分(p.iv,答2).
事実. 関数fが面積確定領域Dで積分可能であるためには,f のDでの不連続点の全体が 面積0,特にfがDで連続,なら十分.
計算. 領域D={(x, y)|'(y)x (y), cy d} (', は[c, d]で連続)上で連続な 関数f の2重積分は累次積分RR
Df(x, y)dxdy=Rd c
R (y)
'(y) f(x, y)dx dy で計算(7.10).
Q4. [ 復習 ] 2 重積分の変数変換での 絶対値規約 dxdy =
@(x,y)@(u,v)dudv とは ?
7.4 曲面の面積
※ 曲面 p(u, v) は 直交座標 uv 平面から xyz 空間 R
3への写像と考えよ .
注意. そう考えないと微分係数の意味がわかりにくくなる. p.110の図では,uv平面が斜交 座標になっているが,曲面の 像 に直接描く応用的手法で,幾何の理解のためには勧めない. 記法. p:D3(u, v)7!p(u, v) = (x(u, v), y(u, v), z(u, v))2R3;S=p(D)が 像.
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☆ 式 (7.11) dS =
@p@udu ⇥
@p@vdv =
@p@u⇥
@p@vdudv は面積要素 .
補足. 数学では‘面積要素’ (area element) といい,数学以外では‘面積素’とも訳す. 意味. u, v方向の微小ベクトルdu,dvの 像 @p@udu, @p@vdv のなす平行四辺形の面積.
☆ 式 (7.12) S = RR
D
@p
@u
⇥
@p@vdudv は uv 平面の領域 D の 像 の面積 .
補足. [千葉]で‘曲面p上の領域D’とあるのは応用的手法の観点から;数学では,Dをxyz 空間R3とは別個の 直交座標uv平面の領域ととらえ,Dのpによる 像p(D)と区別する.
Q5. 累次積分 (7.13) で , “ 変数が増加する向きに積分することに注意 ” とは ? Q6. [ 例題 6] で ,
surface element
面素
@p@✓⇥
@p@= r
2sin ✓ の幾何的な意味は ?
7.5 スカラー場の面積分
☆ 曲面 S = p(D) に沿ったスカラー場 f の面積分 : RR
p(D)
f dS .
計算. RR
p(D)f dS =RR
Df(p(u, v)) @p@u⇥@p@v dudv.
※ [ 例題 7] の f (✓, ) =
2は変 !!! ✓ = 0, ⇡ または = 0, 2⇡ のときは ???
Q7. dS は曲面の 像 と 向き のみにより , パラメータの取り方によらない ?
7.6 ベクトル場の面積分
☆ 曲面 S = p(D) に沿ったベクトル場 v の面積分 : RR
p(D)
v · n dS.
計算. n= @p@u⇥@p@v @p@u⇥@p@v ;RR
p(D)v·ndS=RR
Dv(p(u, v))· @p@u⇥@p@v dudv.
注意. 上のnの定義は現代(幾何)的; 式(7.17)の‘±’は古典(応用)的処方箋.
解説. [pp.115–118, [発展i] 現代的に曲面S=p(D)の 向き を考えるには,ハンドアウト p.9Q6略解例のように,微分形式を導入するとよい. 現代的にndS= @p@u⇥@@vp dudv の 成分を計算すると,ndS= @(y,z)@(u,v)dudv,@(z,x)@(u,v)dudv,@(x,y)@(u,v)dudv . pの成分(x, y, z)の全 微分より,dx=@x@udu+@x@vdv,dy=@u@ydu+@y@vdv,dz= @z@udu+@z@vdv. du,dvの外積的 性質(dudu= 0,dvdu= dudv,dvdv= 0)により,ndS= (dydz, dzdx, dxdy). すると, v = (vx, vy, vz)に対し,RR
p(D)v·ndS =RR
S(vxdydz+vydzdx+vzdxdy). 要するに, ベクトル場の面積分とは2次微分形式の積分に他ならない. このように,古典(19世紀)的 に問題ごとに 向き を選んだり, 取って付けたような重積分の計算規約(Q4)をひねり出す 煩瑣性が,微分形式を導入することにより現代的かつ体系的に解消されるのだ.
Q8. [ 例題 8][ 点電荷を囲む球面に沿った電場の面積分 ] と問 3 [ 同じ点電荷を
囲む円柱面に沿った電場の面積分 ] の値が一致する不思議をどう説明する ?