• Tidak ada hasil yang ditemukan

PDF Pw75 P01 P32 4c - 公益社団法人日本心理学会

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2024

Membagikan "PDF Pw75 P01 P32 4c - 公益社団法人日本心理学会"

Copied!
2
0
0

Teks penuh

(1)

23 小特集 病気と付き合う

服薬を支援する

 HIV感 染 症 は,1990年 代 後 半 からの治療の飛躍的な進歩によ り,完治はできないがコントロー ル可能な慢性疾患と位置づけられ るようになった。患者は抗HIV 薬の服用を遵守することで免疫機 能を維持・回復し,AIDS発症や 死に脅えることなく生活できるよ うになったのである。

 しかし,治療が奏効するために は内服率95パーセント以上を求 められ,それが生涯に亘る。短期 長期の副作用もある。飲み忘れが 薬剤耐性を招くこともある。患者 がしっかり服薬継続できるよう,

チーム医療により多方向からサ ポートするのだが,それでも十分 に飲めない患者や服薬拒否,通院 中断に至る患者が一部にいる。数 錠の薬を飲むだけなのに,やめて しまえば昔と同じ経過(発症や死 亡)を辿ることになるのに,と医 療者側はとても心配することにな る。治療や疾患に対する理解不 足,副作用への恐怖感,生活パ ターンの問題,飲酒や薬物使用に よる判断力の低下,うつ,HIV関 連神経認知障害等,飲めない(飲 まない)原因は色々考えられる。

 このような時カウンセラーたち は,患者の内服困難や治療拒否の 理由をきめ細かくアセスメント し,チーム他職種と協議し,誰が どう関わることが支援になるかを

考え,自らは必要に応じて様々な 臨床心理学的アプローチを工夫し ている(喜花他, 2016)。患者は 必ずしもカウンセラーの直接関与 を歓迎しない。他者に頼ることを 恥と思ったり,自律性を損なわれ るように感じたり,触れられ侵入 されることを恐れていたりするか らである。そうした心境を尊重 し,しかしそこで目を離すことな く,患者の心の内外に起きている ことを俯瞰して支援の糸口を探し 続けるカウンセラーたちの柔軟で 能動的な働きが,各地のHIVの 診療現場で実を結んでいることは 喜ばしいことである。

うつとスティグマ

 前述の通り,飲めない原因の ひとつに「うつ」があるが,HIV 感染症の患者のうつ病の有病率は 高いとする報告がある(三橋他, 2006)。感染告知のショックで抑 うつ的になることは正常な反応の ひとつであり,疾患を理解し治療 可能性への信頼が増すにつれ回復 できることが多い。むしろ長期療 養の中で現れて来るうつのほうが 深刻である。抗HIV薬の副作用 として出現することもあるし,実 生活上の困難な体験が引き金に なることもある。それ以外にも,

「HIVを持っていること」自体に よる慢性的な心的負担も原因とし て看過できない。

 HIV感染症には,正しい理解が

行き渡らなかった当初に付された 社会的スティグマ(恐怖,汚れ,

性行為の代償などを象徴する)が あり,現在もそれは解消されたと は言い難い。スティグマが偏見に 基づくものだと客観的に考えるこ とができたとしても,患者自身に も「自分がとった行動の結果とし ての感染」という自己責任の負い 目が残ることがある。そうしたこ とが他者への病名開示を困難に し,多くの患者が隠しごとを持っ た生活を余儀なくされる。がんな ど他疾患の患者であっても病名を 誰彼なく話しはしないだろうが,

「言ってもいいけれど今は(この 人には)言わない」と選択するの と,「言いたくても言えない」と 思って隠し続けるのとでは,内的 緊張や後ろめたさの度合いがかな り違う。言えない病を持つことが 自己価値を損ない,自尊心を低下 させることにもなる。

 服薬100パーセント,データ良 好で社会的役割も十分に果たして いる謂わば模範的な患者が,ふ と,すべてをぶちまけたい衝動 や,このまま長く生きることの虚 しさを口にすることがある。表の

「HIVとうまくつき合えている患 者像」は,見えないところでのひ そかな緊張や忍耐の連続の上に成 り立っていることを知る瞬間であ る。身中のHIVへの嫌悪感や異 物感が強い人ほど,それを押し殺

HIV 感染症における患者支援と予防

新潟大学医歯学総合病院感染管理部 特任助教

古谷野淳子

(こやの じゅんこ)

Profile─古谷野淳子

早稲田大学卒業。専門は臨床心理学・コミュニティ心理学。精神科領域・HIV領域の心理臨床を並行して実践。

著書は『がんとエイズの心理臨床:医療にいかすこころのケア』(分担執筆,創元社),『セクシュアル・マイノリ ティへの心理的支援:同性愛、性同一性障害を理解する』(分担執筆,岩崎学術出版社)など。

(2)

24

なっていただきたい。それが,彼 らが将来の自分の健康を守る力に なり,HIV予防にも寄与すること と考える。

文 献

エイズ動向委員会(2016)エイズ動 向委員会報告.

日 高 庸 晴(2008)MSM(Men Who have Sex with Men)のHIV 感染 リスク行動の心理・社会的要因に 関する行動疫学的研究.『日本エ イズ学会誌』 10 , 175-183.

樋口匡貴・中村菜々子(2010)コン ドーム使用・使用交渉行動意図に 及ぼす羞恥感情およびその発生 因の影響.『社会心理学研究』 26 , 151-157.

喜花伸子・阪木淳子・森祐子・渡邊 愛 祈・ 松 岡 亜 由 子 他(2016) 特 集:困難事例とカウンセリング.

『日本エイズ学会誌』 18 , 116-141.

古谷野淳子他(2014a)「その瞬間」

に届く予防介入の試み.『日本エ イズ学会誌』 16 , 92-100.

古谷野淳子他(2014b)認知行動理 論(CBT)によるHIV 予防介入研 究.『平成25年度HIV 感染予防対 策の個別施策層を対象にしたイン ターネットによるモニタリング調 査・認知行動理論による予防介入 と多職種対人援助職による支援体 制構築に関する研究報告書』

松 高 由 佳 他(2013)Men Who have Sex with Men(MSM)における HIV 感染予防行動を妨げる認知 に関する検討.『日本エイズ学会 誌』 15 , 134-141.

三橋和則他(2006)HIV 感染者にお けるうつ病の有病率の検討.『日 本エイズ学会誌』 6 , 28-33.

して社会適応の努力を続けること による心理的疲弊に留意する必要 がある。

 HIV感染症を依然としてつき 合いづらい病気にしているスティ グマ。患者が内面化しているス ティグマの様相は個々に異なるに せよ,「受け容れ難い(し排除も できない)ものを抱えて生きる」

という普遍的なテーマを患者がど う体現するか,それをどう支援す るかが臨床心理学に問われてい る。筆者自身は,心のエネルギー の源となるものを患者がひとつで も多く発見し,自分の人生への肯 定感が育まれるようなカウンセリ ングを試行錯誤している。

予防について

 HIVは性感染症であり,セッ クス時のコンドーム使用が有効な 予防方法のひとつである。そう と知っていても使用しない理由 は,面倒,快感を損なう,性感染 症のリスク認識が薄い,世代や仲 間うちの規範,相手との関係性等 多層的である。心理学領域におい ても,これまで数々の検討がなさ れてきた(介入研究に発展した例 として,コンドーム使用に関わる 羞恥感情の研究がある;樋口・中 村, 2010)。

 国内の新規感染の約7割が男性 同性間の性交渉由来であるため

( エ イ ズ 動 向 委 員 会, 2016), ゲ イ・バイセクシュアル男性(以 下,ゲイ男性)の予防行動に係る 要因の探索は殊に重要である。本 邦のゲイ男性対象のインターネッ ト調査では,コンドーム使用と セックスに投影される心理との関 連,社会的な理解のない中で性的 マイノリティであることによるゲ イ男性の精神健康の悪化と健康行 動との関連が指摘されている(日 高, 2008)。筆者は,ゲイ男性が セックスの際「この人は誠実そう

だから,大丈夫だろう」といっ た,予防行動(セイファーセック ス)を妨げる認知に焦点づけた個 別認知行動面接という予防介入 法を開発し(古谷野他, 2014a),

ランダム化比較試験によりセイ ファーセックスへの自己効力感や 実際の行動に及ぼす効果を検証し た(古谷野他, 2014b)。研究の過 程でゲイ男性の認知内容の因子構 造が明らかになったが(松高他, 2013),その中には自棄的な要素 を含む「諦め,開き直り」という 因子があり,ここでも精神健康と の関連が示唆される。また,この 介入を受けたゲイ男性からは「自 分のセックスについてまじめに話 せた」ことへの肯定的な反応が少 なからずあった。そこから筆者 は,彼らが性行動を含めた自分に ついて,「真剣に聴いてくれる誰 か」に向かって語る機会を持ち,

自分が尊重されるべき存在である との感覚を得ることが,予防行動 への動機づけのスタート地点にな るのではないかとの思いを強くし た。

 社会の性的マイノリティへの理 解不足によって悪化した精神健康 が予防行動を阻害しているのであ れば,ゲイ男性が性行動を開始す る前の学齢期からの環境の側に,

性の多様性を受け容れる方向への 変革を促すことも必要である。こ れは目前のHIV予防からはかけ 離れているようでいて,かなり本 質的なポイントであると思う。こ のテーマへのコミュニティ心理学 や社会心理学からの取り組みに期 待したい。またスクールカウンセ リングや学生相談等の学校心理臨 床に携わる方々には,ぜひ性的マ イノリティに開かれた環境の一員 となり,性について,自分につい て揺れる気持ちを抱える生徒や学 生がアクセスしやすい受け皿と

Referensi

Dokumen terkait

般的である4。ただし、一定範囲内の親族以外の者が保険金受取人となるというだけでモ ラル・ハザードが格段に高まるわけではなく、あまりにも限定的な運用は、多様化する家 族関係などに応じた生命保険の利用の機会を奪うことにもなりかねない5。現行法の規定 は、モラル・ハザードの配慮しながらも、経済制度としての保険の効用を広げる規定であ ると評価できよう。

軟骨魚類由来プロテオグリカンの新規抽出法の検討 ○鈴木 潤、北山 昴、児島 薫、吉田 孝 (弘前大・農学生命科学部) 【目的】プロテオグリカン(PG)は、複数の糖鎖がコアタンパク質に共有結合した複合糖タンパ ク質であり、その糖鎖はグリコサミノグリカンと呼ばれる。PG は生体内に広く分布し、軟骨組

実施実験内容: Menu1 香の神秘 ~香の成分を抽出しアロマキャンドルを作る~ 生命化学科 熊谷日登美,赤尾真, 山口勇将 Menu2 ゼリーでバイオサイエンス ~食で人を幸せにしたい~ 食品ビジネス学科 若林素子,清水友里 Menu3 お茶に含まれる抗酸化成分を調べてみよう 食品生命学科 松藤寛, 大槻崇 Menu4

実施実験内容: Menu1 ゼリーでバイオサイエンス ~食で人を幸せにしたい 食品ビジネス学科・若林素子,清水友里 Menu2 ヨーグルトの中の乳酸菌を見てみよう! 応用生物科学科・髙橋恭子,中西祐輔 Menu3 分子が彩る香りの世界 生命化学科・袴田航 Menu4 香の神秘~香の成分を抽出しアロマキャンドルを作る~ 生命化学科・熊谷日登美,赤尾真, 山口勇将

公益社団法人日本農芸化学会北海道支部 奨励賞授賞内規 2021年3月1日改定 1.公益社団法人日本農芸化学会北海道支部(以下北海道支部)に公益社団法人日本 農芸化学会 北海道支部 奨励賞を設ける。 2.北海道支部 奨励賞(正会員)は農芸化学の進歩に寄与するすぐれた研究をな し、なお将来の発展を期待し得る北海道支部所属の正会員に授与する。応募者は

別紙1 個 人 会 員 規 則 第1条 公益財団法人日本国際問題研究所(以下「本研究所」という。)の趣旨に賛同し、その 活動を支援するため所定の会費を納付するものを会員とする。(本研究所定款第53条) このうち個人として入会するものを個人会員とする。 第2条 個人会員として入会する場合は、所定の入会届を本研究所に提出し、会費を納入する。 第3条

なった。これに基づいて休眠していると注意 を受けた研究所を 実質今 日の隆盛に 導 くための努)J を始めたのであるが、その発展過程については又の機会にゆずる ことにする 。 最後に、その発展を可能にしてくださった現理事長木田英氏以下学財界在箱の 理事 の皆様にこのIul顧の席をかりて深甚の敬意 と謝意 を表わす次第である。 [註]