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Photosystem II における tyrosine D の酸化反応機構

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214 化学と生物 Vol. 52, No. 4, 2014

光合成酸素発生反応で利用されるタンパク質内プロトン移動経路の発見

Photosystem II における tyrosine D の酸化反応機構

光合成では,光のエネルギーを使って水分子を酸素分 子と水素イオン(プロトン,H)に分解する〔2H2O

(水:基質)→O2(酸素:生成物)+4H(プロトン:

副産物)+4e(電子)〕.植物では,葉緑体にある膜タ ンパク質「Photosystem II (PSII)*1」の内部にある金属 錯体部位Mn4CaO5 クラスター*2 部位およびその近傍で この反応を行う(図1.2011年になって初めてこの Mn4CaO5 クラスターの詳細な分子構造が解明された(1)

Mn4CaO5 クラスター周辺の分子構造を見ると,水分 子が多数存在している.これらの水分子のなかで,水分 解反応に使われる水分子(基質)はどれかを知ること が,反応機構を分子レベルで理解するための第一歩であ る.なぜなら,基質水分子が特定されれば,複数の原子 からなるMn4CaO5 クラスターのどの部位で触媒反応が 起こるのかわかり,周辺のアミノ酸残基などもわかるた め,そこから反応機構をより具体的に推定できると考え られるからである.

しかし,分子構造を見ただけではどれが基質水分子か はわからない.水分解では,酸素とともにプロトンが副 産物として生成される.このプロトンはタンパク質内部 のMn4CaO5 クラスター付近で生成された後,タンパク 質外部へ移動し,排出される.もし,そのプロトン移動 の経路を特定することができれば,その道筋を逆にたど ることにより,基質水分子に行き着ける.したがって,

水分解機構を明らかにするためにすべきことの一つとし て,プロトンがタンパク質内のどの部位を通って排出さ れるのか,その「プロトン移動経路」を特定することが 挙げられる.

PSIIの中心部はD1・D2サブユニット*3  と呼ばれる 二つのタンパク質からなる(図1).D1とD2はとてもよ く似た形をしているが,D1はMn4CaO5 クラスターをも つのに対し,D2はもたない.これは,タンパク質の分

子進化の過程において,もともとD2にも含まれていた はずのMn4CaO5 クラスターが消失してしまった結果と も言われている(2).水分解後のプロトン排出はD1にお けるMn4CaO5 クラスターの近傍で起こる.しかし,D1 のこの領域にはプロトン移動経路の候補となる水分子が 多く存在するため,一見しただけでは経路を特定できな い.特に,X線結晶構造座標では水素原子位置が見えて いないため,その水素結合パターンが不明であり,この ままではプロトン移動経路の同定は至難の業である(一 般にタンパク質内プロトン移動は水素結合を介して行わ れる).

一方,D2における対応する領域では水分子が少ない ため,プロトン移動経路の候補が絞れるので,D1側に 比べれば解析を行うことが容易である.私たちは,D2 のこの領域に着目し,2013年のノーベル化学賞受賞対 象となった量子化学計算手法「QM/MM法*4」を行う ことによって同定を試みた.(なお筆者の一人は,2013

*1 植物の葉緑体に含まれる膜タンパク質.光のエネルギーを利用 して水を分解し,酸素と水素イオンを発生する.

*2 PSIIにおいて水分解反応を触媒する金属錯体部位.

*3 PSIIの中心となるタンパク質部品.D1とD2は互いに相同性が 高くよく似た構造をとっているが,違いもある.D1はMn4CaO5

クラスターをもつが,D2はもたない.

*4 Quantum Mechanics/Molecular Mechanics法の略.計算精度 を持ち合わせた量子力学計算 (QM) と計算速度を持ち合わせた分 子力学計算(MM)を組み合わせることで,巨大分子を実用的な 精度・速度で計算することができる.その開発には2013年ノーベ ル化学賞受賞者 Arieh Warshel 教授(南カリフォルニア大),Mi- chel Levitt 教授(スタンフォード大)両名の貢献が大きい.

図1光合成で水分解・酸素発生反応を行うPSIIタンパク質全 体像(左).タンパク質内に埋め込まれた触媒部位Mn4CaO5 ク ラスターと周辺の電子移動経路,プロトン移動経路が反応に重 要(右)

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化学と生物 Vol. 52, No. 4, 2014

年のノーベル化学賞受賞者Arieh Warshel教授(南カリ フォルニア大)のポスドク研究員として2008年まで研 究を行っていた).

その結果,私たちはこの領域に唯一のプロトン移動経 路(図2,右)が存在することを見いだした.この経路 はD2に存在する「チロシン D (TyrD)」と呼ばれるア ミノ酸残基からプロトンが放出されるときに使用される ものである.経路上の水分子とアミノ酸残基の上をプロ トンは,まるでドミノ倒しの動きが伝播していくよう に,次々に移動していくことがわかった(3)

さて,タンパク質の進化の過程をさかのぼると,D2 はもともと,D1のようにMn4CaO5 クラスターをもち,

水分解反応を行っていたと言われている.私たちが発見 したプロトン移動経路はその痕跡かもしれない.重要な 要素は進化の過程を経ても失われずに残るものである.

もしそうならば,これと同様なプロトン移動経路がD1 にも存在しているのではないだろうか.そこで,D1に おいて対応する場所を調べたところ,水分子とアミノ酸 残基からなる経路を発見することができた(図2,左). しかも,興味深いことに,このプロトン移動経路は水分 解に必須であると言われている塩化物イオンを含んでい た.これらのことから,D1におけるこの経路が,実際 に水分解反応で使われているプロトン移動経路であると 考えられる(3)

その構造の複雑さから,PSIIにおける水分解反応機 構は未解明な点が多く,人工光合成開発などの工学的応

用の障壁となっている.今後は,プロトン移動経路だけ でなく基質水取り込み経路,酸素放出経路などを発見す ることで,PSII水分解反応の完全理解へとつながるこ とだろう.

  1)  Y.  Umena,  K.  Kawakami,  J.-R.  Shen  &  N.  Kamiya :   , 473, 55 (2011).

  2)  A.  W.  Rutherford  &  P.  Faller : , 358, 245 (2003).

  3)  K.  Saito,  A.  W.  Rutherford  &  H.  Ishikita : , 110, 7690 (2013).

(石北 央*1,斉藤圭亮*2, 3,*1東京大学大学院工学 系研究科,*2大阪大学大学院理学研究科,*3科学技 術振興機構さきがけ)

プロフィル

石 北  央(Hiroshi ISHIKITA)    

<略歴>1998年東京大学工学部化学生 命工学科卒業/2000年東京大学大学院修 士 課 程 修 了/2005年 Freie Universität  Berlin, Ph.D.  取得/同年 The Pennsylva- nia State University,  ポ ス ド ク/2006年  University of Southern California, ポスド ク/2007年日本学術振興会海外特別研究 員/2008年東京大学分子細胞生物学研究 所助教/2009年京都大学生命科学系キャ リアパス形成ユニットテニュアトラック特 定助教/同年科学技術振興機構さきがけ研 究者(兼任〜2013年)/2013年京都大学生 命科学系キャリアパス形成ユニット講師/

同年大阪大学大学院理学研究科生物科学専 攻教授/2014年東京大学大学院工学系研 究科応用化学専攻教授<研究テーマと抱 負>私は理論を研究しているのではありま せん.タンパク質を通して生命現象を解き 明かすことが私のサイエンスです<趣味>

美術鑑賞,車,釣り

斉藤 圭亮(Keisuke SAITO)    

<略歴>2003年筑波大学第三学群工学基 礎学類卒業/2008年筑波大学大学院数理 物質科学研究科,博士(工学)/同年大阪 市立大学大学院理学研究科ポスドク/2011 年京都大学生命科学系キャリアパス形成ユ ニット特定研究員/2012年科学技術振興 機構さきがけ研究者/2013年大阪大学大 学院理学研究科生物科学専攻助教<研究 テーマと抱負>タンパク質内で起こるプロ トン・電子・エネルギー移動などの反応の 仕組みを調べること<趣味>音声合成 図2(左)D1および(右)D2におけるプロトン移動経路

Cl-1:塩化物イオン,TyrD:チロシンD

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