C h a p t e r 6 P O L I C I E S,M E A S U R E S A N D I N S T R U M E N T S
−温暖化における政策・措置・手段−
2000年6月28日・7月5日 文責:蛭田伊吹・小林亜子
6.1.1 イントロダクション
目的:様々な政策と措置を、クライテイア(判断基準)に基づいて議論する事
6.1.2 政策、措置、手段の種類 温暖化対策における国内政策の種類
*1排出/炭素/エネルギー税制度
*2取引可能認可(cap and trade)制度 *3補助金制度
*4デポジット・払い戻し制度 deposit –refund system *5自主協定制度
*6非取引可能許可制度 (non tradable Permits) *7技術・性能基準制度
*8製品禁止制度 *9政府直接投資制度
温暖化対策における国際的政策の種類
*1取引可能割り当て制度( tradable Quotas)
*2共同実施(JI) *3CDM
*4統一排出/炭素/エネルギー税 *5国際排出/炭素/エネルギー税
*6非取引可能割り当て制度 *7製品/技術の国際水準制度
*8国際自主協定 *9直接国際財政源、技術移転
6.1.3 Second Assessment Report からの政策構築 京都議定書:附属書Ⅰ国に削減目標が課せられた。
京都メカニズム等の削減目標達成の為の措置。
6.1.4 政策選択の為のクライテリア(判断基準)
政策と措置における政府の介入:温室効果ガス緩和政策のオプションを評価する時各政府 はそれぞれ違った比重をクライテリアにかける。
*政策オプションの評価の為のクライテリア*
1.環境効果性 2.費用効果性 3.分配の検討 4.実行可能性
6.1.5国内手段チョイスの政治経済
広く当てはまる政策を。
6.1.5.1. . 政治経済文献から 政策の・・・
需要サイド:政策に利害関係をもつ業者
供給サイド:環境政策や措置をデザインし施行しようとする機関や行政
政策が各主体に与える影響:規制措置、排出税、自主協定、規制, 禁止制度 規制された産業のみが規制による利害関係者ではない。環境団体の主張もある。
*市場ベースの政策は、効果性を損なうことなく道徳的な視点からの意見をも取り入れる 為に、柔軟性をもたなければならない。
・政治経済文献は供給サイドである立法者や政治家を軽視している傾向がある。
・各国の政治や政府のあり方(供給側)等によって政策への政治的支持は大きく変わる。
6.1.5.2. 温暖化政策との関わり合い 需要サイドからの視点
*環境団体 *炭素ベース燃料の生産者
*燃料大量使用者 *エネルギー使用の製造業者
*エネルギー効率とGHG削減技術製造業者
各主体の政策への意向・各主体の受ける影響
燃料生産者:取引可能炭素許可制度(もしくは炭素税)が炭鉱の入り口や源泉(上流)、に かかる事に大きな影響を受ける。
発電所:二酸化炭素税、取引可能許可システム、排出基準に影響を受ける。
製造業者:エネルギー効率、燃料効率基準に影響を受ける。規制を加え生産コストを高く する燃料効率もしくはエネルギー効率基準には反対。
政策に応じるポイントは政治的に重要である。
排出基準:より厳しい基準が new sourcesにかけられると既存の企業が利益を受ける場合 がある。
・GHG削減によって利益をえようとする産業は温暖化政策の支持者となる傾向がある。
・国によって供給サイドは様々なものの、政府は歳入を挙げる政策を優遇する。他の団体 は収入等よりも費用を重視する。
6 . 2 N a t i o n a l P o l i c i e s , m e a s u r e s , a n d I n s t r u m e n t s
各国で行われる政策の影響は、それぞれの国が持つ政策導入の戦略や既存の政策などによ り大きく異なってくる。
6 . 2 . 1 N o n G H G P o l i c i e s w i t h S i z a b l e G H G E m i s s i o n I m p a c t s 6 . 2 . 1 . 1 S t r u c t u r a l R e f o r m P o l i c i e s
構造改革の第一段階:(特に市場経済への過程にある国)
貿易自由化、財政上の規制緩和、税制改革、国営企業の民営化、外国からの投資 をひきつける為に情報開示(opening capital account)
*構造改革をすることによってエネルギー利用が効率的になり、GHG排出の削減に つながる。しかし、規模の経済の効果がエネルギー効率化効果を上回る可能性あり(中国)
6 . 2 . 1 . 2 P r i c e & S u b s i d y P o l i c i e s
*市場改革とマクロ経済政策→気候緩和戦略するのに考慮すべきパラメーター 会計改革、税制改革
エネルギー部門:
*高価/補助金で安価に抑えた低質エネルギーサービスを受けている途上国では難しい。
*国によっては、石炭の補助金をやめることでGHG排出を削減できる。
(中国、ロシア、インド等、’97に世界の総エネルギー需要の27.5%を占める国々
→排出-16%で、世界の総排出量の4.6%削減)
運輸部門:外部不経済の内部化によって部門の10-15%の排出削減可能。
6 . 2 . 1 . 3 L i b e r a l i z a t i o n o f E n e r g y M a r k e t s
*供給側にも需要側にも選択の自由
→エネルギー市場の競争を活発化させるためだが、GHG排出削減の可能性もある。
しかし、絶対に炭素があまり出ないエネルギーへシフトするとは限らない。
自由化でCO2↓のケース:
今まで石炭を補助していた国々 UK、US、途上国
自由化でCO2↑のケース:
①もともと化石燃料を使用していない国々:ノルウェー、スウェーデン、スイス
②安くて質の悪い燃料を売る生産者が市場に参入し、逆効果が出てしまう国:日本
6.2.2 E c o n o m i c I n s t r u m e n t s , C o m m a n d & C o n t r o l I n s t r u m e n t s , V o l u n t a r y A g r e e m e n t s , R & D P o l i c i e s a n d O t h e r Standards and Regulations (基準・規制)
*Command&Control政策ともいう。技術orパフォーマンス基準があり、罰金などが課さ れる。義務でも自主的でも良い。しかし、目的達成にかかる限界費用は排出源によって大 きく異なるため、非効率的。
*マーケットベースの手段はまず、command & Controlによる方法に先行される。
→特に途上国。
*パフォーマンス基準: ゴールが決まっていて、方法は自由。大胆な技術革新を するインセンティブあり。
エネルギー効率性の基準(Energy efficiency standards)
①有効なエネルギー節約(維持)政策のツール
②特に設備所持が多い、また増えている国やエネルギーに対する関心の薄い国に 効果的。
US:’90-’10 $460億費用軽減。4億トンCO2排出削減 EU:冷蔵庫と冷凍庫の基準で300 TWh 電力節約
中央・東ヨーロッパ:60 TWh節約, 2500万トンCO2削減
日本:4/1/1999発効の省エネ法改正により、最高3900万トンCO2削減 (内訳:表 参照)
6 . 2 . 2 . 2 E m i s s i o n T a x e s a n d C h a r g e s (排出税)
排出税:*国内排出者がfeeや税を二酸化炭素換算で1トン当たり払う。
*排出レベルは確定できないが、削減費用は限られているので予測可能。
*インフレ、技術革新、排出する企業の数などによって調整する必要あり。
完全市場では1つの税率をかけると自然に一番安い方法で削減が実現されるが、実際では、
あまり効率が良くない。
税をかける方法:
①化石燃料の生産者・輸入業者→エンドユーザーにかけない事で規制をかける企 業数を減らす。
②輸出入される製品(例:車)に排出税をかけると影響が大きいため、そういった
「tradable goods」には低い税がかけられている。もし取られることになったら、
税のない国で生産するようにシフトするだけ。
*失業を出さないためならば、賃金に対して補助金を出したほうが、同じ分の税をとるよ りも良い。
*環境税を課し、労働にかかる税を減らせば失業をださなくてすむ。
*R&Dにもつながる
*オークション認可制度の方が、技術革新のインセンティブが強い。
*各国が税を導入しているが、まだどの国にも統一された炭素税は導入されていない。
→税の政策自体が一方的だから。しかも国際的な競争力の問題もある。
6 . 2 . 2 . 3 T r a d a b l e P e r m i t s (取引可能な認可制度)
*コミットメントで割り当てられた国内排出源の排出リミットを、各企業に(無償、又はオ ークション方式で)配分する。認可は自分が実際に出している量と同量であり、認可をも っている企業同士では、少なくとも取引して良い。参加企業の行動は、常に管理(チェッ ク)される必要あり。
*取引費用が高すぎなければ、cost-effectiveであり、市場を歪めるようなところはない。
問題点:どこに認可の責任を割り当てるか。
ダウンストリーム:GHGを出した時。車の所有者など アップストリーム:GHGを出す物質をリミットつける
*認可を持っていない企業にも参加させた方が良いという意見もある。
①認可証の価格の変動リスクにもたえられる
②認可をもっている企業よりも情報を持っている可能性がある
オークションか無償か?
無償:ルールが必要。公平なルールを見つけるのは難しい。
オークション:国に税収が入る
案:認可証の価格高騰を防ぐために、ある程度まで価格が高くなると追加的に認可証を政 府が発行する。→排出レベルは抑えられないが、コストは予測可能。
6 . 2 . 2 . 4 V o l u n t a r y A g r e e m e n t s
自主協定:1つ、又は1つ以上の民間企業が環境保護の為の目標等を掲げ、政府と交渉、
合意したもの。法的に署名して契約が結ばれるものは少ない。
+面:取引費用の低さ、コンセンサスの取りやすさ、削減方法の選択の自由により、
総コストが安い!企業が好むので実行可能性が高い。
−面:フリーライディングの可能性。大きな企業が好き勝手なことをやるリスク。
→ラベリング(政府による)で参加者にはインセンティブ、フリーライダーには ディスインセンティブ。
*目標が高すぎると達成できないという、トレードオフが起こる。
*VAを評価するには: ①他の政策との有効性を比べる
① VAが行われる前の状況と比べる
② BAUシナリオと比べる
6 . 2 . 2 . 5 I n f o r m a t i o n a n d M a r k e t T r a n s f o r m a t i o n I n s t r u m e n t s 情報: ・ミクロレベル→実行可能性についての研究等
・マクロレベル→詳しい統計データ等
*教育やトレーニングプログラムが長い間残る効果があるし、TV等のメディアでのキャン ペーンも良い。
エコラベル: +面→市場を歪めない、消費者に選択の余地を与える、情報の1つ
−面→厳しすぎる基準だと偏りすぎる、それよりも低い基準のラベルを 無限に作れてしまうので、消費者を惑わせる。
R&D:そのまま情報になる
グリーンマーケティング:’green’なエネルギー源なので消費者に高くても自主的に買って もらう。(US, UK, Denmark, Netherlands, Australia)
6 . 2 . 3 M i x e s o f N a t i o n a l P o l i c y I n s t r u m e n t s 政策は組み合わせて実施すべき:
①排出源が多いため、1つの政策がすべてに良いわけではない。
②1つしか採用しないと妥当性の幅が狭くなってしまう。
③緩和にかかるコストをいろいろな人に配分し、反対派を減らす必要あり。
④もともと政府は一つだけの政策を選ぶわけではない。
6 . 3 国際的政策、措置、と手段
全ての国がその社会的、経済的、環境政策において可能な限り温暖化問題へ考慮するのは 各国のcommitmentである。(UNFCCC資料①)
しかし非附属書1国が資本の制約、知識の欠乏等によってGHG削減の可能性が制約され ている。この為これらのバリヤーを乗り越える規定が定められている。(資料②③)
このセクションでは3つの京都メカニズムについて述べる。
6.3.1. 国際排出権取引
京都議定書17条:排出割り当て量の一部を取引できる制度
・限界削減費用の均衡化→費用効果的
・透明性があり、匿名である取引→効率的
問題点:補完性の規定、 取引の制限、初期割り当て、責任規定
6.3.2. プロジェクトベースのメカニズム
プロジェクトによってクレジットを得、Ⅰ国が削減目標達成の為に使用する、というもの。
JIとCDMがあり、これらの中で重要な課題はベースラインの問題
6.3.2.1. JI(6条)
・ERUsは投資国(両国とも附属書1国)が削減目標達成の為に使用できる。
・ホスト国の政府がベースラインについての規定を決める権利がある、という議論 問題点:ホストとプロジェクトの適格性、モニタリングとレポートの必要性、ベースライ ンの更新頻度、ERU認証・取引状況、補完性の規定、同意のインセンティブ等。
6.3.2.2. CDM(12条)
究極的な目的;非附属書Ⅰ国の持続可能な発展を促しつつ附属書Ⅰ国の削減目標を達成さ せること。
・ホスト国の政府はプロジェクトが持続可能な発展に寄与する事を査定
・運営機関による認証
・資金の追加性の問題(ODA)
・CDMに残されている多くの課題
6.3.2.3 ベースライン
ベースラインは状況の想定である→不確実、推測
不確実性を減少させる方法→期間の短縮→インセンティブの減少
・適切なベースラインを設ける機関の必要性
6 . 3 . 3 .直接国際移転
UNFCCCにおいて附属書Ⅱ国は途上国に追加的な資金、技術移転等を提供するべき(政策
を導入する為等)とされている。(資料④)
6.3.3.1.Financial Resources
持続可能な発展の為には投資の増加が必要。
先進国によるburden Sharing
・ODAに追加的な資金の必要性。ODAの減少。(資料⑥)
日本:グリーンエイドプラン(アジアの経済発展と環境保護の為に)
6.3.3.2.技術移転
持続可能な発展と温暖化安定化の為には環境に配慮した技術移転が重要
・温暖化への適応策と緩和策を兼ね備えた技術の伝導。移転は贈与か譲与ベース 技術移転についての規定(資料⑤)
―効果的な技術移転の為に必要な条件―
*技術保有者は技術を移転したいという意向をもっている事
*受け入れ国が求めている技術である事
*移転は受け入れ国にとって手頃であること。
−技術移転の妨げとなるもの−
*データ、情報、知識、の欠乏(特にemerging技術において)
*地域の需要への不十分な理解
*高い取引費用
政府の役割:技術を調査し、公有技術を途上国に移転する基金を設置する事。
全ての国において技術移転の発展の為にはpublicly−fundedな研究開発が重要である。技 術移転においては公共部門が重要な役割を担う。
技術排出を緩和、もしくは温暖化の適応にふさわしい技術はほとんぼまだ商業化されてい ない。
6 . 3 . 4 . その他の政策と手段
6.3.4.1.規制手段
国際的に規制手段をかける方法
1.国への統一規制(製品やプロセスについて)→国内政策の選択制限に 2.固定排出レベル(取引不可能排出)を各参加国に課す。→非効率的
6.3.4.2.国際炭素税と国内炭素税
・費用効果的
・排出削減プログラムにかかるコストが明確
国際的な価格ベースの政策における2つの懸念。
1.排出レベル:価格ベースの政策は一定の排出レベルを保証するのに失敗する。
2.国際合意の実効性:国際的にも国内的にも統一税は交渉がむずかしいだろう。
・税は国際的アプローチにおいてはもっと実効性ありとしている。
排出への貢献度は上がっている為、GHG削減の為には途上国の参加が必要となる。将来 割り当てにおいて先と途が同意するのは難しいだろう。
・国際的にレビューされた広く深いアプローチはもっと国際同意を得られ易いのでは、と している。まずは最小限のコミットメント、そして時を重ねるごとにコミットメントを強 める(参加を深める)のがよいでしょう、と。
6.3.4.3 国際ハイブリッド政策
・不確実性を減らす為にはお金によるペナルティーを議定書にふくんでは。
→これらの徴収は政府による非遵守をクリアにする。またこれらはGHG緩和活動に使う 事ができる、とする。
6.3.4.4 調整された基準
国際環境基準を設定するのは困難である。
Ex)自動車業界
国際基準:ISO(柔軟性をもつ)。
6.3.4.5 国際自主協定
気候変動に関する自主協定を結ぶ企業が増えている。
Ex)・98年にECとヨーロッパ自動車製造組合 日本と韓国も。・
・ECはテレビのエネルギー効率とビデオプレイヤーにも
・Financial Institution Initiative
・Energy Starプログラム→ロゴの使用 費用インパクトは分析されておらず
6 . 4 I n t e r r e l a t i o n s B e t w e e n I n t e r n a t i o n a l a n d N a t i o n a l P o l i c i e s , M e a s u r e s a n d I n s t r u m e n t s
6 . 4 . 1 R e l a t i o n s h i p B e t w e e n D o m e s t i c P o l i c i e s a n d K y o t o M e c h a n i s m s
*国際政策と国内政策が両方マッチできる方法見つけ出す必要性 (例:京都メカニズム)
*政策によって調整される限界削減費用よりも安く排出を削減できる場合やるべき
(cost-effectiveness)
*限界削減費用 =国際的なAAUsの価格を反映した国内税率
=国際的な排出権取引市場へのオープンアクセス
!どちらにしても一番安くするのがポイント!
限界削減費用を各国間で一緒にするのは、京都メカニズムを補完的手段とする限 りできない!
国内取引可能にする場合:
①国内のすべての排出源をカバーし、キャップは、各国の割当量と同等になるよ うにする。
②京都メカニズムの国際取引にも従事しないといけない。
国内排出/炭素税を導入する場合:
①すべての排出源をカバーし、国内削減費用=税にする。
取引不可能認可(パーミット)制度or VAの場合:
① 割り当てはすべての排出源をカバーする。
② AA=認められている排出
③ 排出源に認可証が分配されていなければ、CERs、ERU、AAUs は使えない。
割り当て量内で国際取引出来るが、こういった国内政策は経済的ではない。
(低費用でもないし、限界削減費用と価格の一致も出来ない。)
京都メカニズムと国内政策のコンビネーションが余り使われていない理由:
1:京都メカニズムは特定の国にかぎられている。
2:すべての排出源やsinkを把握できないし、それらすべてにインセンティ ブを与える方法もない。
6.4.2 Conflicts with International Regulation and Trade Law 環境保護と自由貿易・投資→両立は難しい
WTO:まだ結論に矛盾がある。下記のようなことについて話し合われている↓
① 多国間貿易システム(Multilateral Trading System)と多国間環境協定(MEAs。
例:UNFCCC)といった環境のための貿易措置。
② 貿易に影響を及ぼす環境政策と多国間貿易システム
UNFCCC 3条5項
“The Parties should cooperate to promote a supportive and open international economic system that would lead to sustainable economic growth and development in all parties, particularly developing country Parties, thus enabling them better to address the
problems of climate change. Measures taken to combat climate change, including unilateral ones, should not constitute a means of arbitrary or unjustifiable discrimination or a disguised restriction on international trade.”
(締約国は、すべての締約国(特に開発途上締約国)において持続可能な経済成長及び開 発をもたらし、もって締約国が一層気候変動の問題に対処することを可能にするような協 力的かつ開放的な国際経済体制の確立に向けて協力すべきである。気候変動に対処するた めにとられる措置(一方的なものを含む。)は、国際貿易における恣意的もしくは不当な差 別の手段または偽装された制限となるべきではない。)
GATT20条シャポー
…同様の条件の下にある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別待遇の 手段となるような方法で、又は国際貿易の偽装された制限となるような方法で、適用しな いことを条件とする。
京都議定書 17条(排出権取引)とWTO
WTOは、製品とサービスの移転や手当て(allowance)の相互認識をコントロールする。
→排出権取引は製品でもサービスでもないめ、対処出来ない。
環境と貿易:WTOメンバーをfree-ridingさせないためにMEAsを使うようになった。し かし、輸入国の指定するPPMs requirementを満たせない輸出国に対して「環境」を利用し て差別することになるのではないか?(例:マグロ・イルカ事件、エビ・ウミガメ事件)
*GATTは製品とサービスの PPMsが汚ければ、クリーンプロダクトでも輸入禁止してよ いといった。(エビ・ウミガメ事件)
汚染税でMEAをやる国もある。
WTO→輸入品に、輸入国と同じ税負担をかけて良いとしている。
よって、GATTはdirty processの輸入製品は輸入国と同じだけの税を かけることを許した。
(US-Taxes on Petroleum and Certain Imported Substances, 1987)
dirty process clean product ⇔ clean process clean product
GATTはまったく違うものとしてあつかう。よって掛ける税が違っても差別ではない。
6 . 4 . 3 I n t e r n a t i o n a l C o - o r d i n a t i o n o f P o l i c y P a c k a g e s
エコロジカル・ダンピング :環境規制を軽くすることに対する企業の反発。
Annex I 締約国は、そこまで厳しくない義務を産業にかけ、競争を活発化させよう
とする。
負の相関関係:汚染物質限界削減費用↑ 純輸出↓ (程度は少なくなっている。) 京都議定書:co-ordinationの特殊ケース
6 . 4 . 4 E q u i t y , P a r t i c i p a t i o n a n d I n t e r n a t i o n a l P o l i c y I n s t r u m e n t s 途上国・市場経済への移行過程にある国:効率性と公平性のトレードオフ
①公平性が重要
②将来炭素をたくさん排出する国々
③限界削減費用が一番小さい国々
*公平性のコンセンサスのとれた定義はまだない。
*どういったメカニズムを使うのかが、参加国の数やタイミングを決める。
取引可能認証制度:公平かどうかはその配分にかかっている。
「自国は売れるから取引に参加する」という理由よりも排出枠を買うのと、自分 で緩和(削減)するのにかかる費用の和で参加するかが決まる。
①人口による配分
②GDPによる配分
ベストな配分:eastern countriesには最小の参加インセンティブを、western countries には最大の削減費用節約を。(eastには得/損させない、westはGDPの0.09%の費用を負 担させる。)
6 . 5 政策の選択
6 . 5 . 1 価格 v s 量 政策
不確実性と歪んだ情報は政策を困難にする。
またそれにより、価格手段(税)か量手段(取引可能割当量)のどちらの政策が好ましい かが変化する。
価格手段(税)が好ましい場合
・GHGをコントロールする場合等。
・コストの不透明性を制限する場合。
6 . 5 . 2. 技術革新における代替的政策手段の効果
新技術の浸透による利益を達成する為の3つのステップ。
1.発明 → 2.革新 → 3.普及
政府…調査と技術発達の為の投資(補助金等)、情報の普及、を行う。
(直接政策による技術革新のインセンティブは小)
政治への大きなインパクトをもつ政策(温暖化対策等)は技術の発明と革新と普及を受け 継ぐよりもそれらを育てる為にデザインされる。
政策手段と技術変化の関係
環境政策:市場ベースのアプローチ、操業基準、技術基準に分類。
(後者2つは「技術強制」とも考えられる。) 問題点:達成へのリスクと、革新への不確実性。
6 . 5 . 2 . 1 . 代替的政策手段の影響の理論分析
理論的な枠組み
個別の技術選択モデル:企業が与えられた技術の固定コストを知った上で、それを 導入すべきか決める。
革新は研究開発コストの選択、不確実性を企業に与える。
新技術導入のインセンティブ・・・直接規制(操業基準)と市場ベース手段(取引可能許 可)どちらが大きいのか。(企業の立場によって変化する)
政策手段のランキングは企業がいかに革新を真似できるかという事、革新のコスト、環境 利益、等に関わっている。
6 . 5 . 2.2 代替的政策手段の効果 経験的な分析
エネルギー効率についての経験より技術普及の環境政策の影響を調べる EX)アメリカの断熱技術
エネルギー価格効果(エネルギー税の効果と同じと考える)と技術導入コストによる効果
(技術導入の補助金と同じ効果と考える)を既存のものと比較
エネルギー価格の変化に対するエネルギー効率の反応は重要であるという事がわかった。
技術革新から普及へ
エネルギー効率分野では技術の革新プロセスは市場における製品の特性に影響を与える事 になる。
革新すると…よりよいエネルギー効率が同じ値段、もしくは前のエネルギー効率の時より も低い値段でできるようになる。
エネルギー価格変化と効率基準の効果→進歩は自主的に、革新はエネルギー価格とエネル ギー効率基準の変化によって起こった。
技術革新から発明へ
革新はエネルギー価格(税)とエネルギー効率基準(規制)の変化によって起った。
技術変化とエネルギー価格は大きく比例している。(アメリカの特許の例)
6.5.3 財政システムと政策手段の相互作用
国内における GHG 対策は政策と財政システムの相互作用によりすべてコストがかかる が、このコストは歳入上昇の政策(炭素税等による)がとられると減らされる。
→「歳入リサイクル効果」。(GHG目標達成の為には歳入が発生する手段のほうが有利であ る。歳入がゆがみをなくすために使われれば。)
6.5.4. 政策とプログラムを監視し評価する方法、社会的マーケティング
政策をモニターする必要性
national inventory(一年ごとに更新)がモニタリングシステムの中枢
分野別政策別の排出から情報の詳細を知る→将来の政策の為に
ここ数年政府のプログラムを評価する文献がでている。しかし温暖化を緩和するためのプ ログラムやモニタリングは少ない。
6.5.5. 国際温暖化協定、フリーライダー阻止、承諾と義務
6.5.5.1 フリーライダー阻止
最低限の参加条項(minimum participating clause)によって参加を増やそうとしている。
参加のためにはアメとムチが同じ程度必要。モントリオール議定書は両方をうまく使って いる。京都議定書は今のところフリーライダー阻止のメカニズムをつくっていない。
フリーライダー阻止と遵守強制のつながり。
協定における非遵守の手続きは経済制裁と遵守へのアメが遵守を強制させる事になる ↓
フリーライドを阻止する政策が遵守させる政策にもなる
実際にフリーライディングを阻止できれば遵守を強制できる。現在では京都議定書はモン トリオール議定書を成功へ導いたメカニズムを真似ていない。
6.5.5.2 遵守(C O M P L I A N C E)
コミットメントを達成する為に。
・約束期間の増加
・遵守問題と排出権取引の関係:情報公開、一定基準を満たす
6.5.5.3. 責任
・非遵守国からの割り当て量移転の扱い方
・買い手に責任を転嫁する規定→もしその国が削減目標を達成していなかったら割当量の
一部もしくはすべてをもらった国に返すこととしている(買い手は割り当てを獲得する前 に発行人の遵守の意向査定するインセンティブを得る)。