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Ⅷ3. 保健医療分野における日本の協力の実例

Dalam dokumen 北東アジア地域協力の 新たな連係 (Halaman 106-132)

本章では、日本の保健医療分野における国際協力プロジェクト の実例を紹介したい。

(1) ワクチン予防可能感染症のサーベイランス及びコントロー ルプロジェクト1

中国は13億を超える世界最大の人口を抱えている。また中国は、

亜熱帯湿潤地から亜寒帯、砂漠地までを有した地形的、気候的に多 様な国であり、日本の約26倍の国土を持つ。このように広大な国土 と多様な気候や地形、膨大な人口を有することから、様々な感染症 の発生地である上、感染者数も多い。ワクチンによる予防が可能な 感染症の場合、中国における結核の新規感染患者(年間約79万人)

は、日本を含む西太平洋地区の新規感染者の70%を占める。また、

中国におけるはしかの発症数(年間約6万件)は、同地区の半数以 上を占めている。そしてB型肝炎感染者は、全世界の約30%にあた る約1.3億人にのぼる。さらに、近年、世界を脅かしているSARSや 鳥インフルエンザなどの感染症についても、最初の症例が発見され たのは中国である。人やモノの移動に伴い、感染症も国境を越えて 広がりやすくなる。日本を含む西太平洋地区において、中国の感染 症対策は大きな課題とされている。

1 日本国際協力機構(JICA)ホームページ(http://www.jica.go.jp/evaluation /before/2006/chi_03.html)より引用。

ワクチン予防可能感染症のサーベイランス及びコントロールプ ロジェクトは、中国中西部の5省(江西省、四川省、甘粛省、寧 夏回族自治区、新疆ウイグル自治区)を対象に、2006年11月から 2011年10月までの5年間の予定で実施される。感染症発症動向を 正確かつ迅速に把握するためにサーベイランス水準を向上させ、

予防接種事業を改善することによって、対象4疾患であるポリオ フリーの維持やはしか、B型肝炎、日本脳炎の発生率低減、そし て子供の健康改善を図る。

【プロジェクト目標】

対象省におけるサーベイランスの水準と予防接種サービスの質の向上

<指標>

ポリオ:「2003~2010年全国ポリオ根絶維持行動計画」に準 じ、対象省農村部における児童の予防接種が調査接種率 90%以上を達成・維持する。

はしか:「全国2006~2012年はしか消除行動計画」に準じ、対 象省における児童の予防接種が調査接種率95%以上を達 成・維持する。(但し、同計画はパブリックオピニオン を求めている草案段階のものであることから、計画確定 後に数値目標を再設定する。)

B型肝炎:「2006~2010年全国B型病毒性肝炎防治規画」に準 じ、対象省における新生児B肝ワクチン3回接種が調査接 種率約90%を達成・維持する。また、対象省における施

設分娩の生後24時間以内ワクチン初回接種率90%以上を 達成・維持する。

日本脳炎:「日本脳炎予防控制指導意見」に準じ、(日本脳炎の 流行している)対象省の省疾病管理予防センター(CD C)において実験室診断の技術知識が向上する。

(2) 中国リハビリテーション専門職養成プロジェクト2

【プロジェクト開始日】

2001年11月1日

【要請背景】

中国は、急速な経済発展と工業施設や交通量の増加に伴い、労 働・交通災害が急増しており、身体障害者数は、現在、約6,000 万人にのぼると言われている。中国衛生部は「総合病院リハビリ テーション医療管理に関する規定」を制定し、大規模な総合病院 を対象に、リハビリテーション科の設置と理学療法士、作業療法 士の配置を義務づけた。しかし、リハビリテーション従事者の不 足が著しく、リハビリテーション従事者の育成と人材養成を担う 講師陣の育成が急務となっている。

中国リハビリテーション研究センターは、中国障害者福祉基金

2 外務省ホームページ(http://www‐mofa.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/

gaiyou/odaproject/asia/china/contents_03.html)より引用。

会(障害者連合会の前身)と日本政府(無償資金協力による機材 整備等の技術協力プロジェクト)の協力のもと、リハビリテー ション分野の臨床、研究、教育を担う総合機関として設立され た。これによって、リハビリテーション従事者の人材養成を行う 基盤が整えられた。同センターは、中国全国を対象に現職者に対 する専門的な研修を積極的に実施してきたが、中国のリハビリ テーション事業の需要を満たすには、教育の質・量ともに不十分 である。そのため、同センターと中国障害者連合会は、1997年、

日本の都道府県に対し、中国リハビリテーション研究センターリ ハビリテーション学院の設立を内容としたプロジェクトの実施を 要請した。

【協力活動の内容】

以下の協力を通じ、カリキュラム作成、教員養成、教育技術指 導、教育管理指導、教材作成等を実施する。

① 専門家の派遣

専門家を派遣し、カリキュラムの整備、シラバスの作成指導、

教材の編纂、専門科目(理学療法、作業療法、臨床医学、言語 療法、看護等)の技術指導と教授法の指導等を行う。

② カウンターパート研修員の受入れ

プロジェクト内容に関連した中国側関係者を年間2~3名受入 れ、日本の関連機関において研修を実施する。研修分野は、理 学療法、作業療法、リハビリテーション医療である。

③ 機材の供与

リハビリ教育機材や実習機材等を供与する。

(3) 中国医薬品安全性評価管理センター日中友好プロジェクト

【プロジェクト開始日】

2000年7月1日

【要請背景】

中国では、医薬品の安全性が十分に確保されておらず、公衆衛 生への影響が懸念されている。また中国は、国内で製造される医 薬品を世界各地に輸出しているが、その安全性及び信頼性を高め ることが課題となっている。このような背景のもと中国政府は、

日本政府に対して国際的GLP(Good Laboratory Practice)基準 に適合した医薬品の評価を行うために、安全性評価センターの設 立にかかる技術協力を要請した。

【協力活動の内容】

以下の分野において、専門家派遣を通じた技術指導、カウン ターパートの日本研修やワークショップ、シンポジウム、セミ ナー等の開催を行う。

① GLP実施・管理、SOP作成

② 一般毒性試験、遺伝毒性試験、発癌性試験(慢性毒性試験を含

む)、生殖発生毒性試験、病理組織標本、病理組織学的評価、ト キシコキネティクス、毒性試験、実験動物施設・動物管理

③ 安全性試験に必要な機器・器材の整備

4. 北東アジアにおける日本の協力の可能性

北東アジアは、日本、中国(東北三省・内モンゴル)、韓国、北 朝鮮、ロシア(極東・東シベリア)、モンゴルからなる小地域であ る。この地域は、全地域が北東アジアに属する国と一部地域だけが 北東アジアに属する国とに分けられる。

北東アジアの特性の一つは、域内各国・地域の経済発展に大きな バリエーションがあることである。日本が保健医療分野での国際協 力を行う場合、韓国やロシアとの関係は、他の発展途上国に対して 共に国際協力を行うパートナー関係へと変わる。同様に中国とは、

日本の過去の経験を活かして協力プログラムを行う関係だが、保健 医療分野では共に国際協力に取り組むパートナーへと変わる。東南 アジアや南アジア、アフリカ諸国とは異なり、モンゴルや北朝鮮の 保健医療事情はそれほど劣悪とは言えないが、この両国は日本が過 去の経験を活かした協力プログラムを行う対象とされる。

例えば、<表Ⅳ‐1>のように、1999年の北朝鮮の乳幼児死亡率は 出生1,000人当たり22.5人であった(1993年は14人)。これは日本 における1960年代半ばの数値である。無償医療制度が開始される など、北朝鮮における保健医療の社会システムは悪くはないが、最

指標 1993年 1999年 増加/減少

総人口(人) 21,213,000 22,575,000 1,541,000

合計特殊出生率(%) 2.2 2.0 ‐ 0.2 平均寿命(年) 73.2 66.8 ‐ 6.4 1歳未満の乳幼児の死亡率(%) 14/1,000 22.5/1,000 8.4/1,000

5歳未満の乳幼児の死亡率(%) 27/1,000 48/1,000 21/1,000

一人当たりGNP(米ドル 991 457 (1998年) ‐ 534 近の厳しい経済状況は、保健医療をめぐる数値が90年代前半より悪 化したことを示唆している。つまり、北朝鮮は、日本が保健医療分 野の国際協力を推進する対象として十分な要素をもつと言える。

日本の保健医療分野における国際協力の重要な領域の一つに感 染症がある。SARSや鳥インフルエンザなどの最初の症例が発見 されたのは中国である。北朝鮮は中国と日本の間に位置してい る。北朝鮮において感染症に対する社会的施策を強化すること は、北朝鮮の住民にとって利益になる。そしてさらに、このこと は日本におけるこれらの感染症の減少や、北東アジア諸国への脅 威の低減にもつながる。このような感染症の国際的な広がりを防 ぐための対策を講じる上で、日本が北朝鮮やモンゴルに対して技 術協力プロジェクトや無償資金援助を供与することは、十分に考 えられる方策である。

<表Ⅳ-1> 北朝鮮における保健医療分野の指標

出典:ERINA『ERINA情報』EJ01-052001年

<図Ⅳ-1> 北朝鮮における1歳未満児死亡率と5歳未満児死亡率

14 15 15 19 21 24 23

27 28 32

40 43

50 48

0 10 20 30 40 50 60

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 1歳 未 満 児 死 亡 率 5歳 未 満 児 死 亡 率

出典:ERINA『ERINA情報』EJ01-052001年

北朝鮮では、母子保健やリプロダクティブ・ヘルスに関する保 健医療分野の社会システムが準備されているものの、経済が困難 な状況にあることから、<表Ⅳ‐2>のように、乳幼児死亡率や乳 幼児の体格などに関する指標の数値は、改善を要する水準となっ ている。日朝両国の関係が正常化した場合には、日本は直ちに北 朝鮮に対して、同分野における国際協力や援助を行うべきだろ う。なぜならば、これはレジームの問題ではなく、北朝鮮住民の

「人間の安全保障」の問題だからである。

Dalam dokumen 北東アジア地域協力の 新たな連係 (Halaman 106-132)