Ⅶ1. 前政権における対北朝鮮政策の教訓
2. 李明博政府の対北朝鮮政策
□ 李明博政府は、相生共栄の対北朝鮮政策と 「非核·開放·3000」 を
基礎にした朝鮮半島の新平和構想とグランド·バーゲン(Grand
Bargain)を掲げている。
A. 相生共栄の対北朝鮮政策と「非核·開放·3000」
□ 李明博政府の対北政策は<表 Ⅰ-1>に示した対北政策である。
ビジョン
実用と生産性に基づいた相生と共栄の南北関係発展を果 たし、
朝鮮半島の平和統一の実質的土台を拡充すること。
目標
平和共同体
◦北朝鮮の核問題解決と南北間の軍事的緊 張緩和による朝鮮半島における新たな平 和構造を創出すること。
経済共同体
◦南北の経済協力は、韓国側の一方的支援 中心から脱皮し、双方で相互補完的な協 力がなされるべきだ。
◦経済協力事業は ▲北の核問題の進展
▲経済的妥当性 ▲財政負担 ▲国民的合 意など四原則に立脚して進めなければな らない。
幸福共同体
◦南北分断は南北住民すべての幸福を制約 してきた。
◦南北の関係発展への努力は、分断と冷戦 の痛みを治癒すること。
◦南北7千万民族の幸福を追求
- 南北における人道的懸案問題を解決し、 南北住民の生活の質的向上
□ 「非核·開放·3000」 は、「相生共栄」 の対北政策の概念のなかで展
開された具体的な推進戦略である。
- 北朝鮮に核廃棄の決断を促す環境を作りつつ、南北共同繁栄の
道を追及するという戦略である。- それは、北朝鮮の核廃棄進展 状況にしたがって韓国が国際社会と協力し、北朝鮮の経済再建 及び住民生活改善のための経済·教育·インフラ·生活向上など五
大分野において包括的パッケージ形態の支援を提供する戦略。
表 Ⅰ-1 「相生共栄」 の北朝鮮政策の体系
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
推進原則
◦実用と生産性
◦原則に徹底、柔軟なアプローチ
◦民族的合意
◦南北協力と国際協力の調和
推進課題
◦真心ある南北の対話
◦朝鮮半島の平和定着
◦相生と互恵の南北経済協力
◦社会·文化交流の活性化
◦人道的問題の解決
B. 「朝鮮半島新平和構想」とグランド・バーゲン(Grand Bargain)
□ 李明博大統領は2009年8·15<光復節> の祝辞で、朝鮮半島の平
和実現のための包括的構想として 「朝鮮半島の新たな平和構想」 を
提示した。
□ 李明博大統領は、2009年9月21日(現地時間) にニューヨークで 「
朝鮮半島の新たな平和構想」 の延長線上で、「北朝鮮が核プログラ
ムを放棄することが自らを発展させる唯一の道」 ということを強調しつ
つ、北朝鮮核問題の根本的解決を追求する 「グランド・バーゲン
(Grand bargain)」を公式的に提案した。
(1) 「朝鮮半島新平和構想」
□ 「朝鮮半島新平和構想」 は 「非核·開放·3000」 を根幹としている。
頼を構築し、南北の共同繁栄を追求することである。その主な内容は 次の通りである。
- 第一に、北朝鮮の完全な非核化のスタート
- 第二に、北朝鮮経済発展のための国際協力の実行
- 第三に、南北経済共同体の実現のための南北ハイレベル会議の設置
- 第四に、経済·教育·財政·インフラ·生活向上など五大プロジェクト
の推進
- 第五に、南北における在来型武器削減の論議
(2) グランド·バーゲン(Grand Bargain)
□ グランド·バーゲン(Grand Bargain)は、北朝鮮の核プログラムの一
部についてアプローチする過去の接近方法と違い、「北朝鮮の核問題」
を 「北朝鮮問題」 という大きな枠組みから 「包括的な一括妥結」 方
式を追求する提案だといえよう。
◦同時に、「グランド·バーゲン(Grand bargain)」 は北朝鮮の核開
発中止に力点をおく接近ではなく、交渉の最終目標である「不
可逆的(irreversible)非核化」 を念頭においた北朝鮮の非核化に
直接近づくという根本的提案である。
□ グランド·バーゲン(Grand bargain) の主な内容。
① 六者協議を通じて、北朝鮮が核放棄の決断を確実に見せる核プ
ログラム中心部を廃棄すれば、北朝鮮に対し確実な安全保障と国
際支援を本格化する。
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
- 具体的な要素は五カ国協議を通じて決定。
② 北朝鮮核廃棄の終着点について、明白な合意を土台に韓米比中
ロの五カ国は、
合意による具体的行動プログラムを準備し、推進する。
□ 「グランド・バーゲン(Grand bargain)」 の戦略的意義
① 米朝直接対話で、「核保有国」 の地位を確保しようとする北朝鮮
の戦略意図を遮断。
◦北朝鮮は核問題を米朝だけの問題と見なし、韓国を排除しようと
している。
- その上北朝鮮は、米朝両国の直接対話で核保有国の地位 を確保しようとしている。
◦李明博大統領は、このような北朝鮮の意図を決して許さず、同
時に、北朝鮮の核をこれ以上米朝両者間だけの議題とすること
はできないという立場を表明した。
- すなわち、韓国政府も長官級ハイレベル会談で北朝鮮の核
問題を中心議題として扱い、北朝鮮核問題の解決のため積
極的に介入する役割を果たそうというものだ。
◦ 「グランド・バーゲン」 提案は、「核保有国の地位を確保しようと いう北朝鮮の戦略的意図を遮断」、「北朝鮮核問題解決のた めの韓国の断固とした意志及び積極的努力」 などのような戦略 的意義がある。
② 「サラミ戦術(salami tactic)」 の限界克服と根本的解決の追求。 ◦サラミ戦術(salami tactic)とは、取引の内容をいくつか細切れ
にして、徐々に積み重ねて行きながら実際の内容を勝ち取って
いくという戦術である。
- すなわち、北朝鮮の段階的行動に対しては、そのたびに少し ずつ補償を与える戦術である。
◦このようなサラミ戦術では、北朝鮮核問題においては部分的成
果をあげるに留まった。
- 北朝鮮の 「瀬戸際戦術」 により、「危機→交渉→合意→破棄」
の過程を繰りかえすなかで、根本的解決には限界が現れた。
◦北朝鮮は重油支援、米国のテロ支援国家の指定解除など、
反対に得るものを引き出しながら、一方では核廃棄を後ろに追い
やり、2度の核実験を強行した。
- すなわち、韓米日中ロ5者は時間と費用だけ消耗する結果 を招いてしまった。
◦ 「グランド・バーゲン」 提案は、サラミ戦術(salami tactic)の限 界を克服するために根本的問題解決の方法をはっきりさせたこと に戦略的な意義がある。