日本語教育実践研究 創刊号
r日本 語 教 育 実践研 究(6)」
の 文 法授 業 で 学 ん だ こ と
大工原
勇人
【キー ワー ド1 機 能 文 型 ・言 語 運 用 能 力 ・文 法 授 業 ・教 壇 実 習 1.授 業 見 学 で 学 ん だ こ と 筆 者 は 、 今 期 、5月14目 ま で はr日 本 語 文 法8A」 の 授 業 を 、 そ れ 以 降 はr文 法6A1 の 授 業 を 見 学 して き た。 ま た 、 昨 年 度 後 期 に は 、 早 稲 田大 学 教 育 学 部 の授 業 の 一 環 と して r文 法6A」 の 授 業 を見 学 した.つ ま り、3つ の異な る クラスで、佐久 間 まゆみ先 生の担 当 す る 文 法 授 業(以 下 、r佐 久 間 ク ラ ス 」 と称 す る)を 見 学 して き た こ とに な る が 、 これ ら の 3ク ラ ス に は 、 授 業 の 目的 や 進 め 方 な ど につ い て 共 通 す る 部 分 と、 学 習 者 ・レベ ル ・環 境 とい っ た 条 件 の 違 い に応 じて 変 化 す る 部 分 とが あ っ た 。 筆 者 に と っ て 、3つ の ク ラ ス に 共 通 す る 部 分 は 、 文 法 授 業 を 運 営 す る上 で の 基 本 と して 、 ま た 、 変 化 す る部 分 は ク ラ ス に よ っ て 異 な る 個 々 の 具 体 的 な 条 件 へ の 対 応 の 仕 方 と して 、 そ れ ぞ れ 学 ぶ と ころ が 多 か った. そ 二で 、 本 章 で は 、 まず 、3つ の ク ラ ス に 共 通 す る部 分 とそ れ ぞ れ の 条 件 に よっ て変 化 す る部 分 に っ い て 具 体 的 に 述 べ 、 筆 者 が 授 業 見学 を 通 じて 学 ん だ 点 を ま とめ て み た い。 1。1文 法 の授 業 の 役 割 日本 語 教 育 に お け る 文 法 の 指 導 方 法 と して 、一 般 に採 用 され る の は 、 文 法 項 目 を 文型 の 形 で 提 出 す る 、 い わ ゆ るr文 型 積 み 上 げ 方 式 」 で あ る。 佐 久 間 ク ラ ス も、 基 本 的 に は 、 こ の 方 法 を採 る が 、文 型 の 選 定 ・分 析 ・提 示 の 方 法 に 大 き な 特 徴 が あ る。佐 久 間 ク ラ ス で は 、 r機 能 文 型(注1)」 を コ ンセ ブ トと して 、日本 語 の 初 級 か ら上 級 に 至 る す べ て の 文 型 をr程 度 」 「並 列 』 「話 題 」 な ど の16機 能 に 分 類 し、 各 機 能 別 に 該 当す る個 々 の 文 型 を学 習 者 に 提 示 して い く と い う方 法 を採 って い る。 こ の よ うに機 能 文 型 を提 出 す る 目的 は 、学 習 者 に 各 文 型 の 有 す る機 能 、す な わ ち 、rそ の 文 型 を 使 っ て 日本 語 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン に お い て 何 が で き る の か 」 を 意 識 させ る こ と で 、 学 習 者 が 文 型 をr理 解 す る」 だ け で は な く、 実 際 に 「使 え る」 よ うに な る こ と、 言 い 換 えれ ば 、 日本 語 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 を 養 成 す る こ と に あ る。 学 習 項 目 と して の 機 能 文 型 が この よ うな 目的 を持 っ 以 上 、 当 然 、 そ れ を教 え る 授 業 の 目的 は 、 学 習 者 が 文 型 をr使 え る 」 よ うに す る た め のr橋 渡 し」 をす る こ と に あ る。 文 型 使 用 へ の 橋 渡 しの 場 と して の 授 業 の あ り方 を明 確 にす る た め に 、 学 習 者 と機 能 一 71 一文 型 と の 関 係 を 次 の 【図1】 の よ うに モ デ ル 化 す る。 1.く 予 習> II.く 授 業> III.く 復 習> w.運 用 学習者 の予 習 i.文 型 の 導 入 i.宿 題(例 文 の 作 成 〉 文 型 の 習 得 H.例 文 の 理 解 血,問題 練 習 ロ.誤 用 等 の フ イ ー ドバ ッ ク r知 る ・理 解 す る 」 →r知 る ・理 解 す る ・使 う」 →r使 う ・理 解 す る 」 →r使 う 」 【図1】 学 習 者 と機 能 文 型 と の 関 係 こ の モ デ ル に お け るrn,く 授 業>」 とは 、 教 室 活 動 そ の もの(狭 義 の授 業)を 指 す が 、 これ に 「1.く 予 習>」 と 「皿.<復 習>」 の 段 階 を 含 め た 広 義 の授 業 を 考 え る と 、 文 型 の 「理 解 』 を 「運 用 」 へ と結 び っ け る とい う授 業 の 位 置 づ け が よ り明 確 に な る 。 文 法 の 授 業 が.r理 解 」 か らr運 用 」 へ のr橋 渡 しの 場 」 と して 位 置 付 け られ て い る こ と は 、3つ の 佐 久 間 ク ラス に 共 通 し て お り、 文 法9)実 習 授 業 を設 計 す る上 で の 最 も重 要 な 指 針 を学 ぶ こ とが で き た 。 1.2rH.<授 業>」 の 展 開 L1で 、 文 法 の 授 業 の 主要 な 目的 は 、 学 習 者 が 機 能 文 型 を 日本 語 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン でr運 用 」 す る た め ヴ)r橋 渡 し』 に あ る こ とを 指 摘 した。 本 節1,2で は 、佐 久 問 ク ラ ス に お け る 教 室 活 動 、 す な わ ち、 「H,く 授 業>」 の 中 で 、 実 際 に どの よ うな 手 順 や 手 段 に よ っ てr橋 渡 し」 が 行 な わ れ る の か を 取 り上 げ る。 く 授 業>で は 、 個 々 の 機 能 文 型 に つ い てri.文 型 導 入 」 →r亘.例 文 理 解 」 →rih,問 題 練 習 」 とい う3段 階 を踏 ん で 、 学 習 者 に 機 能 文 型 を 理 解 させ 、 運 用 へ と導 い て い く。 そ れ ぞ れ の 段 階 にっ い て 概 説 す る と 、 まず 「i.文 型 導 入 」 の 段 階 は 、 文 型 の 「機 能 」 や 類 似 表 現 と の違 い な ど に つ い て 学 習 者 に 意 識 させ る段 階 で あ り、 学 習 者 が機 能 文 型 を 「知 る」 段 階 と な る 。 「h,例 文 理 解 ユ の 段 階 は 、機 能 文 型 を用 い た 例 文 の 内 容 理 解 を 通 じて 、機 能 文 型 を 「理 解 す る 」 段 階 で あ り、 これ は 、 佐 久 間 ク ラ ス の 中 心 的 な 学 習 活 動 と な っ て い る。 次 に 、 τhi.問題 練 習 』 σ)段階 は 、 穴 埋 め式 の 問 題 を解 く こ と を通 じて 、 学 習 者 が 機 能 文 型 を 「使 う」 段 階 で あ る。 この よ うに 、 各 機 能 文 型 につ い て 「知 る→ 理 解 す る→ 使 う」 とい う手 順 を踏 ん で 、 「橋 渡 し」 を 図 る 〈授 業 〉展 開 は 、3つ の ク ラ ス に 共 通 して お り、1機 能 文 型 当 た り、約20∼25分(r導 入 」2∼3分 、r例 文 理 解 」10∼20分 、r練 習 間 題 」5∼7 分)の 時 間 配 分 で 、全90分 聞 の 〈授 業>で 、 約3∼4種 の 機 能 文 型 を学 習 す る。 各 機 能 文 2 一, `
日本語 教育曳践研究 創刊号 型 のr知 る → 理 解 す る→ 使 う』 とい う3段 階 の 学 習 活 動 の 時 間 配 分 に 関 して は 、学 習 者 の レベ ル の 違 い に応 じて 若 干 の 異 同 が 見 られ 、6レ ベ ル と8レ ベ ル の 授 業 を 比 べ る と、 後 者 で は 機 能 文 型 をr使 う」 段 階 で あ るr練 習 問題 」 の 段 階 に 僅 か な が ら(3∼5分 程 度)よ り 多 く時 間 か け る とい う傾 向 が あ っ た. 授 業 見 学 を 通 じて 、 文 法 授 業 の 進 め 方 の 基 本 的 な パ ター ン と、 学 習 者 の レベ ル に 応 じた 時 間 配 分 の ア レン ジ の 方 法 を 学 ぶ こ とが で き た。 1,3教 師 の 発 問 佐 久 問 ク ラ スの 文 法 授 業 の 大 き な 特 徴 は 、学 習 者 の 機 能 文 型 の 理 解 を促 す 乎 段 と してr発 問 」 が 多 用 され る こ とで あ る。 この 教 師 に よ る発 問 は 、学 習 者 に よ る 各 機 能 文 型 の ポ イ ン ト(形 式 ・意 味 ・機 能)の 理 解 、 例 文 の 文脈 ・表 現 意 図 の 理 解 、 語 彙 の理 解 な ど を確 認 す る こ と を 目的 と して お り、文 法授 業 進 行 上 、 大 きな 役 割 を担 っ て い る。 機 能 文 型 の 形 式 ・ 意 味 ・機 能 や 例 文 の 文 脈 等 に っ い て 、教 師 が 説 明 して しま うの で は な く、一 つ 一 つ の 例 文 、 お よ び 教 科 書 の デ ー タ ベ ー ス の 用 例(小 説 や 新 聞 の 社 説 な どか ら 引 用 した 実 際 の 文 型 の 使 用 例)ご とに 、r発 問 」 とい う形 で 、 学 習 者 にr考 え る き っ か け 」 を 与 え る こ とに よ っ て 、 学 習 者 は 主 体 的 に 自力 で それ ら を 考 え る こ とに な り、 機 能 文 型 を よ り深 く理 解 す る こ とが 可 能 に な る.ま た 、 教 師 の発 問 は 、 学 習 者 に 授 業 へ の 参 加 意 識 を 持 た せ 、 発 問 に答 え る こ とで 学 習 σ.)達成 感 が 生 じる た め 、授 業 を 活 性 化 させ る と い う意 味 で も、 非 常 に効 果 的 で あ る。 しか し、 一 口 にr発 問 」 と言 っ て 竜)、た だ 何 で も聞 け ば い い とい うも の で は な い 。 発 問 の 内 容 は 、易 しす ぎ て も難 しす ぎて も効 果 的 で は な く 、そ の 上 、90分 とい う限 られ た 授 業 時 問 内 で は 無 駄 な 発 問 を す る 余 裕 な ど な い.そ の た め 、 学 習 者 の 反 応 を 十 分 に 計 算 した r適 切 な 発 問 」 を 事 前 に 用 意 して お く必 要 が あ る。 ま た 、 個 々 の 学 習 者 の 能 力や 性 格 に 合 わ せ て 、誰 に どの 発 問 を 当 て るか とい う こ と も、事 前 に あ る程 度 考 え て お か ね ば な ら な い. さ らに 、 当然 の こ と な が ら、 実 際 の 授 業 の展 開 に お い て は 、 学 習 者 の 反 応 や 理 解 度 、 教 室 の 雰 囲 気 等 の 条 件 に 合 わ せ て 、 臨 機 応 変 に 計 画 され た発 問 を取 捨 選 択 して 変 更 して い く必 要 に 迫 られ、る。 r発 問 」 は 、 学 習 者 の 理 解 を 促 し、 教 室 を 活 性 化 す る効 果 的 な 手 段 で あ る が 、 効 果 的 な 発 問 σ)ため に は 、周 到 な 準 備 が 不 可 欠 で あ る こ と を学 ぶ こ とが で きた 。 1.4r皿.〈 復 習>』 一 例 文 作 り と添 削 ・評 価 に よ る フ ィ ー ドバ ッ クー rIH ,〈復習 〉」の段階 とは、学習 者 に毎週課 され る例 文作成 の 宿題 と、それ に対 す るフ ィー ドバ ッ クの こ とで 汝)る。 佐 久 間 ク ラ ス で は 、 毎 週 、 学 習 者 に授 業 中 に習 っ た 機 能 文 型 を 使 って 例 文 を 作 る(1っ σ)機能 文 型 に つ き3文)と い う宿 題 を課 して い る。 提 出 され た 宿 題 は 、 毎 回 、 添 削 ・評 価 され て 、 翌週 、 学 習 者 に 返 却 され る.つ ま り、 く 復 習 〉 は 、 学 習 者 を 機 能 文 型 の運 用 に 導 くた め の 応 用 練 習 で あ り、 広 義 の 授 業 の 最 終 段 階 とな る。 3 ︻ r
佐 久 問 ク ラス で は 、 学 期 の 最 初 の 宿題 返 却 時 に 、 次 の 【図2】 に 示 した 添 削 の 仕 方 の 決 ま りを学 習 者 に 説 明 して い る。 ・文 字 の 誤 り 二 一 戒 稜 一 → 成 績 ・文 法 の 誤 り=カ ッブ メ ン は 、 お 湯 を か け る漏 、 食 べ ら れ る 。 → とす ぐ に ・助 詞 の 誤 り:父 困 や さ し い 。 → は ・省 略 せ よ=母 が 、 東 京 一圏 一見 物 に 来 た 。 ・挿 入 せ よ;郊 外 は 暮 ら しや す い 反 面 、 〈 時 間 が か か る。 通 勤 に ・語 彙 の 間 違 い1友 人 と 夕 食 を 食 っ た 。 一→ 食 べ た 【図21誤 りの 種 類 別 の 添 削 の マ ー ク 【図21の よ うな 誤 りの 種 類 別 に 異 な るマ ー クで 添 削 され る こ とに よ っ て 、 学 習 者 は 返 却 され た 宿 題 を そ σ.)後の 学 習 に フ ィー ドバ ック で き る。 ま た 、宿 題 σ)添削 は 、r教 師 と学 習 者 」 と の 一 対 一 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンで も あ り、「教 師 と ク ラ ス」 とい う関 係 で 進 め られ る 普 段 の 教 室 活 動 の 中 で は 、 な か な か 対 処 しに くい 個 々 の 学 習 者 が 抱 え る問 題 に 対 して 、 個 別 に対 応 し得 る と い う利 点 が あ る。 学 習 者 が 返 却 され た 宿 題 につ い て 、 自分 の 例 文 が なぜ お か しい の か 、 ど う直 せ ば よ い の か な ど を、 先 生 や 大 学 院 生 に質 問 し、 自分 の 理 解 を 深 め て い く とい う光 景 が 〈授 業>終 了 後 な どに しば しば 見受 け られ た。 評 価 の 方 法 は 、最 初 の 授 業 の 際 に 、r自 分 の 本 当 の こ とを 書 くjrあ ま り長 く しな いjr面 臼 く書 く」 とい う3っ の 例 文 作 りの 指 針 を学 習 者 に 説 明 し、 学 習 者 が 宿 題 と して 作 っ た 例 文 が 、 こヴ)3っ の 基 準 を満 た して い る場 合 に はr◎ 」、 機 能 文 型 は 理 解 で き て い る が 、 例 文 の 内 容 が 、r自 分 」に つい て の 表 現 に な っ て い な か っ た り、例 文 が長 す ぎた りす る 場 合 に は 、rO」 、文 型 は 理 解 で き て い る が 、語 彙 な ど の 誤 りが あ る場 合 に はr△ 」、文 型 が 身 に つ い て い な い 場 合 に は 、 「×当 とい うマ ー ク を各 例 文 に 付 け る.ま た 、各 例 文 に っ い て の 評 価 を 合 計 して 、 宿 題 全 体 と して 、rA+(◎ が2∼3)」 か らrC(文 型 が 身 に っ い て い な い)」 ま で の 評 価 を す る。 学 習 者 が 例 文 を 作 る こ とで 実 際 に 機 能 文 型 を使 い 、 そ の 誤 りや 適 切 さ を教 師 が 添 削 ・評 価 して 返 す こ と で 、 学 習者 の 理 解 が さ らに 深 ま る。 授 業 の 最 終 段 階 と して の く復 習>の あ り方 を 学 ぶ こ とが で き た, 2.実 習 授 業 を 通 じて 学 ん だ こ と 次 に2.で は 、 立 場 を 観 察 者 か ら実 習 生 へ と替 えて 、 教 壇 実 習 に 向 け て の 準 備 、6月25 日の 実 習 授 業 本 番 、 そ の 後 の 反 省 な どか ら学 ん だ こ と に つ い て述 べ る。 4 昨 '
日本語教育実践研究 創刊 号 2.1実 習 に 向 け て の準 備 まず 、2.1で は6月25日 の 実 習 授 業 に 向 け て 、4月16日 か ら6月18目 ま で の10週 に 渡 っ て 、 具 体 的 に ど の よ うな準 備 を して き た の か 、 そ して 、 そ の 準 備 過 程 の 中 で 筆 者 が 何 を 学 ん だ の か に つ い て述 べ る。 ま ず 、 佐 久 問 ク ラ ス の 授 業 観 察 記 録 で あ るr授 業 見 学 シー ト」 を4月23日 、4刀30日 実 施 の 授 業 につ い て の2回 分 、 さ らに 佐 久 間 先 生 が どの よ うな 教 案 に 基 づ い て 授 業 を 行 な っ た の か を 想 定 し再 現 す る 「想 定 教 案(逆 教 案)」 を5月7日 実 施 の授 業 に っ い て1回 分 作 成 し、 文 法 授 業 の 役 害IIや授 業 展 開 の 基 本 に っ い て 学 ん だ 。 こ の 段 階 で 学 ん だ こ と に っ い て は 、1,で 詳 述 した の で こ こで は 省 略 す る が 、 一 つ だ け 補 足 と して 、 「5分 間 ユ ニ ッ ト(注 2)」 に っ い て 説 明 した い。 これ は 、授 業 観 察 時 に5分 間 を一 つ の 単 位 と して 展 開 を 観 察 す る とい う方 法 で 、 この5分 間 を 一 つ の 学 習 活 動 の 単 位 とす る考 え 方 は 、 自分 の 実 習 授 業 の 教 案 を 作 成 す る 上 で 、 大 い に 役 立 っ た。 次 に 、5月14目 に は 、受 講 者 が 各 自の 担 当す る機 能 文 型 に つ い て の 教 材 研 究 の 結 果 を 報 告 し、 意 見 を 交 換 した 。 筆 者 は 、6-6「 話 題 ・提 題 」 の機 能 文 型36「 ∼ な ん か/な ん て/ な ど、 ∼ 」 の 担 当 で あ っ たが 、rと りた て 詞 」 に 関 す る先 行 研 究 に 当 た り、r∼ な ん か/な ん て/な ど 、 ∼ 」 の話 題 の取 り上 げ 方 を 把 握 す る と と も に 、 教 科 書 の 例 文 や 『教 師 と学 習 者 の た め の 日本 語 文 型 辞 典 』(グ ル ー プ ジ ャ マ シ イ 編(1998))の 例 文 な どが ど の よ うな機 能 を 持 っ か を 分 析 した 結 果 を報 告 した 。 例 え ば 、 例 文36-3rお 仕 事 の こ とな ど 、 あ ま り心 配 しな い で くだ さい 。1と い う例 文 は 、rな ど」 に よ っ て 、仕 事 をr軽 視 」 しな が ら、 話 題 と して 取 り上 げ る こ と に よっ て 、 相 手 を安 心 させ る とい う コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン上 の 機 能 を 持 っ こ とな ど で あ る。 教 材 研 究 に よ っ て 、 学 習 者 に 機 能 文 型 を理 解 させ る た め に 、 どの よ うな 発 問 を す べ きか が 明 確 に な り、 教 案 作 成 を ス ム ー ズ に進 め る こ とが で き た 。 ま た 、 実 習 授 業 中 に 学 習 者 か らの 質 問 が 出 た 際 に 、 と ま ど うこ とな く対 応 で き た の も 、 この 段 階 で 教 材研 究 を周 到 に行 っ た 結 果 で あ ろ う。 そ の 後 、 実 習 日ま で の6週 間 は 、r教 案 を 作 成 → 受 講 生 や 先 生 との 意 見 の 交 換 お よ び 摸 擬 授 業 → 先 生 に よ る 添 削 → 教 案 の 練 り直 し」 とい うブ ロセ ス を 数 回 に わ た り繰 り返 し、 実 習 用 教 案 を 仕 上 げ て い っ た。 こ の 教 案 を 作 る過 程 で 最 も苦 労 した の は 、r発 問 作 り」で あ っ た.教 案 上 で は 、 うま くい っ て い る よ うに見 え る発 問 で 塗)、実 際 に 模 擬 授 業 で 試 して み る と 、 質 問 が抽 象 的 過 ぎ て 答 え に くい もの で あ っ た り、機 能 文 型 の理 解 に っ な が らな い よ う な 無 駄 な 質 問 だ っ た り して 、 実 習 日ま で に 何 度 も練 り直 した 。 ま た 、 教 案 を 作 り始 め た 当 初 は 、 「生 グ)教材 ∫ と して 、漫 画 の 実 例 を授 業 で用 い る 計 画 を 立 て て い た が 、先 生 や 他 の 実 習 生 か ら漫 画 σ)登場 人 物 や 場 面 の 説 明 に 時 間 が か か りす ぎ る とい う指 摘 を受 け 、途 中 か ら 犬 型 ロ ボ ッ トAIBOの 写 真 を 用 い て 、 学 習 者 にrAIBOが 欲 しい か 」 を 尋 ね 、r欲 し くな い 」 と答 え た 学 習 者 に は 、rロ ボ ッ トの ペ ッ トな ん か 欲 し くな い で す 」 と文 型36を 用 い て 言 わ せ る 練 習 を 、 「欲 しい1と 言 っ た 学 習 者 に は 「ロボ ッ トの 恋 人 だ っ た ら ど うで す か?」 一75一
と さ らに 尋 ね 、rロ ボ ッ トの 恋 人 な ん か 、 欲 し くな い で す 」 とや は り文 型36を 用 い て答 え させ る と い う練 習 に 切 り替 え た、、実 際 の 実 習 授 業 で は 、授 業 の 終 盤 に 時 間 が押 して しま い 、 も し これ が 漫 画 の 実 例 だ っ た ら、 授 業 時 間 内 に 扱 え な か っ た で あ ろ う。 実 習 の 最 後 の ユ ニ ッ トをAIBOの 写 真 を 用 い て 、機 能 文 型 を運 用 す る こ との 達 成 感 を 味 わせ っ っ 、 終 え る こ とが で き た の は 、 準 備 段 階 で 、 先 生 や 他 の 受 講 生 か ら 自分 の 教 案 の 不 備 を 指 摘 され た お か げ で あ る。 ま た 、授 業 以外 の 時 間 に も 、 同 じク ラ ス で 実 習 を した澤 田淳 さん 、 加 藤 綾 子 さ ん と何 度 か 自主 的 に教 材研 究 、教 案 の 検 討 、模 擬 授 業 を行 っ た 。 実 習 で はr筆 者(大 工 原) 一・澤 田 さ ん 一→加 藤 さ ん 」 の 順 で、 一 人30分 間 で 、1文 型 ず つ を 担 当 した が 、r3人 で 一 っ の 授 業 を 作 る」 と い う視 点 で 教 案 を 練 り、相 互 の 連 携 を深 め て い っ た. こ の よ うに 、 実 習 授 業 ま で の1(1週 に わ た る準 備 期 間 で 、機 能 文 型 とい うコ ン セ ブ トを 生 か した 文 法 授 業 σ)教材 研 究 の 方 法 や 教 案 作 成 の 方 法 な ど、 文 法授 業 を効 果 的 に行 な うた め の 準1、浦と して どの,欠 うよ うな こ と が必 要 な の か を 、 基 本 か ら学 ぶ 二 とが で き て 、 有 益 で あ っ た。 2.2実 習 授 業 の 分 析 ・反 省 次 に6月25日 の2時 限 目 に 行 な っ た 筆 者 自身 の 実 習 授 業 に つ い て 、 実 習 終 了 後 の7月 2日 、9日 、16日 に授 業 を撮 影 した ビデ オ を 見 な が ら行 な っ た反 省 会 で の話 し合 い の 内 容 を踏 ま え て 分 析 す る。 (1)学 習 者 の 様 子 筆 者 が 教 壇 実 習 を 行 な っ た 文 法6Aの ク ラ ス は13名 の 学 習 者 が お り、出 身 国 は ア メ リカ 、 中 国 、韓 国 、 タイ 、 ロ シア な ど多 様 で 歩)った,筆 者 は 、 学 期 の 初 め は 文 法8Aの ク ラ ス を 見 学 して い た が 、実 習 ク ラ ス が 文 法6Aに 決 ま った5月21目 か らは 、文 法6Aの ク ラ ス を 見 学 した 。 そ の 次 の 週 か ら 、6Aク ラ ス の 学 習 者 を 知 る た め に 、 大 学 院 生 一 人 に っ き 学 習 者2∼3人 の グ ル ー プ を 作 り、 学 習 者 か ら の質 問 へ の 対 応 な どを 担 当 して 交 流 して き た。 実 習 当 日は 、 授 業 を ビデ オ 撮 影 す る関 係 で 教 室 の 雰 囲 気 が 普 段 と違 った(教 室 の 前 後 に カ メ ラ が 設 置 され 、 座 席 も撮 影 の た め に 変 更 し、 さ ら に 撮 影 楠 助 の 大 学 院 生 が 数 名 来 て い た)た め 、 学 習 者 が 多 少 緊 張 して い る様 子 で あ っ た 。 授 業 の 初 め の30分 を 担 当 した 筆 者 は 、 ク ラ ス の 緊 張 を解 くた め に 、 自分 自身 が 落 ち 着 い て 授 業 を進 め よ う と心 掛 け た が 、 初 め の うち は 、 な か な か 緊 張 感 が 抜 け ず 、 つ い 早 口 に な っ て しま っ た。 しか し、 出 席 を と っ た 時 に 、 学 習 者 が 笑 顔 で うれ しそ うに返 事 を して くれ た こ とで 、 そ の 後 落 ち着 い て授 業 を 進 め る こ とが で き 、 そ れ に伴 っ て 学 習 者 も 徐 々 に リラ ッ クス して い き 、 途 中 か ら は笑 い 声 も 出 る よ うに な っ た 。 授 業 中 、 学 習 者 が 協 力 的 で 、 発 閻 へ の 反 応 も 非 常 に 良 か っ た た め 、 授 業 が 進 め や す か っ た。ま た 、学 習 者 の 側 か ら も質 問 が 多 く出 て 、よ い 雰 囲 気 を保 っ こ とが で きた よ うに 思 う。 しか し、 学 習 者 か ら の 質 問 に 対 応 す る の に 予 想 外 の 時 間 が か か り、 授 業 中 に 、 「練 習 問 題 」 6 ︻ ず
日本語教育実践研究 創刊号 を 扱 うこ とが で き な か っ た の は 、 大 き な 反 省 点 で あ る 。 質 問 内容 が 主 にrな どユ の 並 列 ・ 例 示 の 用 法 と否 定 的 評 価 を表 す 用 法 との 関 連 とい う点 に集 中 して い た こ と か らす る と 、 事 前 に 学 習 者 の この よ うな 疑 問 を 予 測 して 、 教 案 を 立 て て お け ば 、 ス ム ー ズ に 授 業 を 進 め る こ とが で き た で あ ろ う、,ただ 、 授 業 後 に 、 学 習 者 か らr質 問 に 答 え て くれ て 、 うれ しか っ た 」 とい う声 が 聞 か れ た σ)は、 とて も うれ しか っ た 。 (2〉 実 習 授 業 に っ い て の 自己 分 祈 今 回 び)実習 を 振 り返 っ て 最 も良 か っ た と思 う点 は 、 落 ち 着 い て 冷 静 に 授 業 を 進 め る こ と が で き た とい うこ とで あ る。 文 型 の 導 入 の 仕 方 や 発 閻 の 出 し方 な ど 、事 前 に リハ ー サ ル し た 成 果 が 出 て 自然 に で き、 学 習 者 か らの 質 問 に も慌 て る こ とな く対 応 す る こ とが で きた 。 これ は 、 事 前 の 教 材 研 究 や 教 案 作 成 、 模 擬 授 業 な どの 準 備 を入 念 に 行 な っ た こ とか ら生 じ た 自信 が 大 き か っ た よ うに思 う。 ま た 、r生 の 教 材 」 と して 用 意 したAIBOの 写 真 を使 っ た 応 用 練 習 で は 、学 習 者 か ら笑 い が 出 て 、 ク ラ ス を リラ ッ ク ス させ る こ とが で き た 。 授 業 後 に学 習 者 か らrAIBOが … 」 とい う感 想 が 多 く 出 た σ)は、 そ れ だ け印 象 に残 る よ うな 練 習 が で き た とい うこ とで は な い か と思 う。 一 方、 反 省 す べ き 点 は 、先 に も述 べ た が 、 授 業 の 終 盤 で 時 間 が 足 りな くな っ て しま い 、 教 科 書 のr練 習 問 題 」 の 部 分 を扱 うこ とが で き なか っ た こ と で あ る。 具 体 的 に は 、 教 科 書 の 例 文 σ)内容 理 解 が 終 了 す る ま で は 、 教 案 の 時 問配 分 通 りに 進 め る こ とが で き た が 、学 習 者 か ら の 質 問 が3人 連 続 して 出 て 、 そ の 対 応 に 約5分 間 費 や した た め 、 残 り2ユ ニ ッ トの r教 科 書 の 実 例 理 解 」 とr練 習 問 題jの ど ち らか を 削 らな け れ ば な らず 、r教 科 書 の 実 例 ゴ の 方 を扱 う とい う判 断 を した 結 果 、「練 習 問 題 」を扱 うこ とが で き な くな っ て し ま っ た.実 習 授 業 終 了 後 に 、 学 習 者 をr機 能 文 型 を 使 え る よ うに 導 く」 と い う授 業 の 目的 か らは 、 機 能 文 型 をr使 う」 段 階 と して の 「練 習 問 題jを 扱 う方 が 適 切 で あ っ た と後 悔 した が 、 む し ろ 、r教 科 書 の 実 例 」 と 「練 習 問 題 」 の どち らを 扱 うべ き か を 「授 業 中 に〕 判 断 しな けれ ば な らな か っ た こ と の 方 が 間 題 で 歯)り、 教 案 を 作 成 す る段 階 で 時 間 が 足 りな くな っ た 時 の こ と ま で 考 えて 、 学 習 活 動 の 優 先 順 を決 め て お け ば 、 こ の よ うな 失 敗 を防 ぐ こ と が で き た の で は な い か と思 わ れ る。 (3〉 反 省 会 教 壇 実 習0.)反 省 会 で は 、録 両 した ビデ オ を 見 な が ら、 他 の 受 講 生 や 先 生 か ら 自分 の授 業 に つ い て の 意 見や ア ドバ イ ス を い た だ き 、 大 変 参 考 に な っ た 。 中 で も、 今 後 改 善 す べ き点 と して 、r板 書 の 字 の 大 き さ」(字 が 大 き す ぎ る)、r学 生 へ の あ い づ ちの 打 ち方 ∫(学 習 者 に あ い づ ち を うつ 際 はrう ん 」 で は な く 、rは い」 やrえ え 」 に した 方 が い い)と い う2点 を指 摘 して い た だ い た の は 、 自 分 で は 全 く気 が 付 か な か っ た だ け に 有 益 だ っ た 。 ま た 、ビデ オ 撮.影に お け る ミス が 、実 習 生 全 員 の 反 省 点 と して 挙 げ られ た 。実 習 当 日は 、 擾 業 者 以 外 の 者 が 分 担 して 、 ビ デ オ の 撮 影 を 行 な うこ とに な っ て い た が 、 事 前 に撮 影 の 役 割 分 担 や 機 材 の 操 作 方 法 につ い て 確 認 を しな か っ た た め に 、 テ ー ブ の 交換 を怠 る な どの ミ 77
ス を 犯 して しま った 。 以 後 、 二 の よ うな 失 敗 が繰 り返 され な い た め に も、 実 習 前 に 撮 影 責 任 者 や テ ー ブめ 管 理 者 な どの 役割 分 担 を 明 確 に して お く こ とを 薦 め た い 。 2,3他 の 実 習 生 の 授 業 の分 析 次 に 、 同 じ90分 間 の 授 業 を担 当 した 他 の 受 講 生 〔澤 田淳 さん 、加 藤 綾 子 さん)に よ る 実 習 授 業 に つ い て 分 析 す る。それ ぞ れ の 実 習 生 が 各 自の 個 性 を発 揮 し特 色 あ る授 業 を 行 い 、 筆 者 に とっ て 学 ぶ と ころ が 多 か っ た 。 (1〉 澤 田淳 さ ん σ)授業 澤 田 さん は 、 筆 者 の 授 業 の 後 の30分 に 、 文型37「 ∼ を 中 心 に(し て)/を 中 心 と して /を 中 心 と した 、 ∼ 」(話 題 ・提 題)を 担 当 した 。教 材 研 究 の 段 階 か ら澤 田 さん が カ を入 れ て い た の は 、r∼ を 中 心 にjをr場 所 や 空 間 の 中 心 」(例 えぱ 、r関 東 地 方 を 中 心 に 」)を 表 す た め の 文 型 と して 認 識 して い る学 習 者 に 、r話 題 の 中 心 」を表 す 用 法 を い か に分 か りや す く導 入 す る か と い うこ とで あ っ た。 こ の導 入 の 方 法 と して 、 澤 田 さん は 、 二 つ の 円 で 中 心 と周 縁 を 表 した 図(2つ の 「∼ を 中心 に 、 ∼ 」 に 共 通 す る 「中 心 の イ メー ジ ・ス キー マ 」) を 書 い て 説 明 した が 、 非 常 に分 か りや す く、 うな ず い て い る 学 習 者 の 姿 が 多 く見 られ た 。 こ の 説 明 の 仕 方 は 、 認 知 言 語 学 を 研 究 す る澤 田 さ ん の 個 性 が よ く出 てお り、 多 義 語 を 説 明 す る際 の 説 明 方 法 と して非 常 に 参 考 に な っ た。 ま た 、 澤 田 さ ん の 実 習 は 、 教 案 に な い 要 素(そ の場 の ア ド リブ)が 印 象 的 で あ っ た 。 例 文 に ア ル バ イ トσ.)話が 出 て き た とき に 、 自分 自身 の ア ル バ イ トの 体 験 を話 して 、 教 室 が 活 性 化 した が 、 実 習 終 了 後 に 、 この ア ル バ イ トの話 が そ の 場 の 思 い っ き で あ っ た と知 り、 と て も驚 い た 。 教 案 に な い こ と を実 習 授 業 で や る の は 、 リス ク を伴 うが 、澤 田 さ ん が 教 室 の 雰 囲 気 に 合 わ せ て 行 動 し、 結 果 的 に教 室 の ム ー ドが 非 常 に 明 る く な っ た 上 、 時 間 通 りに 実 習 を終 え る こ とが で きた の で 、r柔 軟 な 対応 」 と して 評 価 で き る で あ ろ う。 実 習 中 に は 、 緊 張 した た め か 、 漢 字 が 出 て こな くな って 、板 書 を ひ らが な で 書 く ミ ス も あ っ た が 、 授 業 全 体 と して の 流 れ や 雰 囲 気 が よか っ た た め 、 さ ほ ど気 に な らな か っ た 。 (2)加 藤 綾 子 さん の授 業 加 藤 さん は 、 澤 田 さん の 後 を受 け て 、 文 型38r∼ か らい うと/∼ か らい え ば 、 ∼ 」(話 題 ・前 提 ・立 場)を 担 当 した 。 加 藤 さ ん は 、冷 静 に 教 案 通 り授 業 を進 め 、 これ とい っ た ミ ス も な く、 非 常 に 安 定感 の あ る 、 見 て い て 安 心 で き る授 業 で あ っ た 。 加 藤 さん の 授 業 が 非 常 に ス ム ー ズ で あ っ た こ との 一 つ の 要 因 と して 、 加 藤 さん が 学 習 者 の名 前 を しっ か り と覚 え て い た こ とが 挙 げ られ る。 箪 者 も 、佐 久 間 先 生 の 授 業 を 観 察 しな が ら学 習 者 の 名 前 を覚 え て お こ う と心 掛 け て いた が 、 実 習 当 日は 、 学 習 者 の座 席 が 普 段 と変 わ り、 ま た 、 普 段 は 後 ろ か ら学 習 者 の 背 中 を 見 て い た の で 、 教 壇 に 立 っ て 学 習 者 の 顔 を 見 た 時 に 、 名 前 が とっ さ に 出 て こず 、 指 名 に 時聞 が か か っ た り、 学 習 者 の名 前 を 間 違 え る とい う ミス を した 。 ビ デ オ で 確 認 して み る と 、他 の 実 習 生 孟)指名 に 時 間 が か か って い た た め 、加 藤 さん の 授 業 か 8 酵 '
日本語教育実践研究 創刊号 ら 、 「学 習 者 の 名 前 を 覚 え る」 と い う 当 た り前 の こ との 重 要性 を再 確 認 させ られ た 。 ま た 、 加 藤 さん は 「早 大 生 の 生 活 調 査 」 とい う早 稲 田 大 学 生 の ア ル バ イ トの 実 態 に 関 す る グ ラ フ の ブ リン トを用 意 し、そ の調 査 結 果 に基 づ い て 、r∼ か らい う と、 ∼ 」 とい う機 能 文 型 を使 う練 習 を行 っ た が 、 単 に 穴 埋 め の 問 題 を解 く よ りは 、 よ り現 実 に 近 い 形 で 機 能 文 型 を 使 用 させ た とい う意 味 で 非 常 に 効 果 的 で あ り、 機 能 文 型 をr使 う」 段 階 で は 、 こ の よ う に 学 習 者 が で き る だ け 自然 に使 うこ との で き る応 用 練 習 を用 意 す る こ との重 要 さ を感 じ させ られ た。 加 藤 さ ん の 丁 寧 な授 業 の 進 め 方 は 非 常 に 参 考 に な っ た が 、一 方 で 、語 句 な どの 説 明 が 「丁 寧 す ぎ る 」場 合 が あ り、r学習 者 が 機 能 文 型 を 使 用 で き る よ うに導 く」 とい う授 業 の 役 割 を さ らに 意識 して 学 習 活 動 に メ リハ リを持 た せ た ら、 よ り よい 授 業 が で きた の で は な い か と 思 う。 3.ま とめ 一r日 本 語 教 育 実 践 研 究(6)」 で 学 ん だ こ と一 最 後 に 、1,と2,で 述 べ て き た こ と に つ い て の 要 点 を 、 「日本 語 教 育 実 践 研 究(6)」 の 全 体 を 通 じて 学 ん だ こ と と して ま とめ る. (1)機 能 文 型 の 授 業 は 、文 法 に 関 す る知 識 を学 習 者 に 与 え る だ け で な く、学 習 者 が 文 法 知 識 を実 際 に運 用 で き る よ うにす る た め のr橋 渡 し」 の場 で あ る。 (2)機 能 文 型 の 授 業 で は、学 習 者 が 文 型 をr知 る」段 階 のr導 入 』、学 習 者 が 文 型 をr理 解 す る 」 段 階 のr例 文 理 解 」、 学 習 者 が 文 型 をr使 う」 段 階 のr練 習 問 題 」 とい う 3段 階 を踏 ん で 、r僑 渡 し」 を 行 な う。 ま た 、学 習 者 の 能 力 が 高 く な る ほ ど 、r使 う」 段 階 に 重 点 を お い て 、授 業 を 設 計 す る。 (3)単 に説 明 す るの で は な く 、発 問 に よ っ て 考 え る き っ か け を 与 え る こ とで 、学 習 者 の 理 解 を深 め る。発 問 は 、授 業 を 活 性 化 す る手 段 と して も効 果 的 で あ るが 、授 業 中 に 効 果 的 な 発 問 をす る た め に は 、 事 前 の 周 到 な 準 備 が 不 可 欠 で あ る。 (4〉 学 習 σ.〕最 終 段 階 と して の 宿 題 を 効 果 的 な もの にす るた ぎ)には 、学 習 者 の誤 りの 種 類 に よ っ て 異 な る マ ー ク を使 い 分 け て 添 削 す る な どの き め の 細 か い フ ィー ドバ ッ ク が 必 要 で あ る。 (5)教 材 研 究 の 充 実 は 、教 案 作 りの 基 礎 と な る。 ま た 、充 実 した 教 材 研 究 に よ っ て 授 業 中 の 情 神 的 な 余 裕 も生 ま れ る。 (6)教 案 は 、学 習 者 の 反 応 ま で 予 測 して 立 て るべ き で あ る。 また 、授 業 時 に 時 問 が 余 っ た 場 合 や 足 りな くな っ た 場 合 な どに つ い て も考 え て お く と よ い。 作 成 の 際 に は 、5 分 間 を 学 習 活 動 の1単 位 とす る と 、 教 案 が 立 てや す く、 修 正 しや す い,「5分 間 ユ ニ ッ ト」 は 、 授 業 中 の 時 間 調 整 や 軌 道 修 正 等 に も 役 立 っ 。 9 ﹁ご
(7〉 授 業 時 に は 、教 師 が 「落 ち着 き」 を保 つ 必 要 が あ る。 落 ち 着 き が 、 柔 軟 な 対 応 や 適 切 な コメ ン ト、ス ムー ズ な 展 開 な ど を生 む 。 落 ち 着 い て 授 業 を進 め る た め に は 、事 前 の準 備 を周 到 に行 な うこ とが 不 可 欠 で あ る。 (8)教 師 は ク ラ ス 全 体 に 聞 こ え る大 き な 声 を 出 す こ と(特 に授 業 開 始 直 後 の 第 一 声 の 大 き さ)が 基 本 だ が、声 は 単 に 大 き け れ ば よい とい うで は な く、 ク ラ ス の サ イ ズ や 学 習 者 の 雰 囲 気 に に合 わ せ た 声 量 を 工 夫 す る必 要 が あ る。 (9)教 育 は 、人 間 を 相 手 に す る も の で あ るた め 、学 習 者 へ の や さ しい 気 遣 い も必 要 で あ る。 あ い づ ち の 打 ち 方 、教 師 の 顔 の 向 き 、視 線 の 位 置 な ど に注 意 し、学 習 者 が 気 持 ち よ く授 業 を受 け られ る よ うに心 掛 け る 。 (10)自 分 の 授 業 を 他 の 人 に 見 て も らっ た り、逆 に 、他 の 人 の授 業 を 見 せ て も ら う こ とか ら得 る も の は 大 きい 。教 材 研 究 、教 案 作 りな どす べ て の 段 階 に お い て 、学 習 者 を含 む 他 者 か らの 意 見や 反 応 は 、 傾 聴 に 価 す る。 r日 本 語 教 育 実 践 研 究(6)」 の文 法 授 業 を通 じて 、 学 習 者 の 日本 語 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン能 力 を養 成 す る た め の 文 法 授 業 の設 計 お よび 授 業 運 営 の 方 法 に つ い て 基 礎 か ら学 ぶ こ と が で き た.今 後 は 、 授 業 で学 ん だ 基 礎 を生 か す と と もに 、学 習 者 の レベ ル や 目的 、 教 材 な ど に 合 わ せ た 指 導 方 法 を 工夫 し、 「よ りよ い 文 法 授 業 」 を模 索 して い き た い。 最 後 に 、こ の 授 業 が 筆 者 に と っ て 有 意 義 な もの とな っ た の は 、共 に学 ん だ4人 の 実 習 生 、 澤 田 淳 さん 、 加 藤 綾 子 さん 、 寅 丸 真 澄 さん 、 関 口 由利 江 さん の 存 在 が 大 き い。 ま た 、 実 習 の 準 備 お よび 本 番 で様 々 な ご指 導 ・ご協 力 を い た だ い た 先 輩 の 鈴 木 香 子 さ ん 、朴 恵 燥 さん 、 河 内 彩 香 さん 、 田 口み ゆ き さん 、 村 上 康 代 さ ん 、 李 桂 芳 さ ん 、 チ ュ ー シ ー ・ア サ ダ ー ユ ッ トさん に も この 場 を 借 りて 心 か らの 感 謝 を 申 し上 げ た い 。 (ダイ クハ ラハ ヤ ト ・修 士 課 程1年) 【注 】 (1)早 稲 田 大 学 日本 語 研 究 教 育 セ ン タ ー 作 成 『日本 語 機 能 文 型 リス ト(50音 順 ・レベ ル 順 ・ 機 能 順)』(2000年3月30目 版)参 照. (2)5分 問 ユ ニ ッ ト方 式 にっ い て の 詳 細 は 、 佐 久 問(1994)pp.96、 丸 山(1990)を 参 照 。 【参 考文 献 】 グル ー プ ジ ャマ シ イ編(1998)『 教 師 と学 習 者 の た め の 日本 語 文 型 辞 典 』 くろ しお 出 版 佐 久 間 ま ゆみ(1994〉 「日本語 教 育実 習 授 業 の 指 導 と課題 」『目本 女 子 大 学 日本 語 教 育講 座 設 立経 緯 と実 習 報 告 』Pp.89-98日 本 女 子 大 学 日本 語 教 育 講 座 委 員 会 佐 久 間 ま ゆみ ・川 本 喬編 『日本 語 文法62004年 度 』 早 稲 田大 学 目本 語 研 究 教 育 セ ン ター 丸 山 敬介(1990)『 経 験 の 浅 い 日本 語 教 師 の 問題 点 の研 究』 創 拓 社 一80一