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質問票調査を中心に ―

4. 考察

ここまで、QCDEに基づく環境重視企業と非重視企業、組織体制として環境担当取締役あ るいは環境担当部署の設置企業と非設置企業とに区分し、それぞれの群間の平均値の差が 統計的に有意であるかを確認した。この3つの区分における考察における特徴は、環境担当 取締役のいる企業はいない企業に比べて、環境配慮活動の成果/影響として製品の販売数量 と品質、企業のイメージの3点が向上したと示唆されたところにある。環境重視企業や環境 担当部署のいずれも環境配慮活動の成果/影響は企業イメージ向上の可能性が示されたのみ であった。環境配慮活動を成果に結びつけることは難しいと考えられるなか、環境担当取締 役の存在が成果の向上に影響した可能性のあることが示されたのである。

本研究で採用しているt検定は群間の相関を示すのみであるので、販売数量や品質の高い 企業が環境担当取締役を設置していることも考えられる。しかし、環境担当取締役のいる企 業は、環境配慮活動に営業・販売・マーケティングの関与が大きいと考えられることのほか、

環境に配慮する理由として市場での競争に勝ち残ることや環境保護に役立つ事業(製品)を 扱っていることなどを特徴的な理由として認識している可能性も検証結果は示している。

これらを踏まえれば、環境担当取締役は環境配慮活動の結果として生み出される製品の販 売サイドに注力し、また影響を与えている可能性があるとも考えられる。ただし、環境担当 取締役のいる企業は、製造原価の低減といった具体的な成果は見られないものの、エネルギ ーや廃棄物の発生量を削減することにも積極的に取り組んでいることが読み取れた。その 意味では、環境担当取締役のいる企業は、品質としての環境付加価値を高めるような販売サ イドだけに熱心に取り組むのではなく、製造サイドにおける環境負荷の低減にも積極的に 取り組んでいるとも思われる。

ヒトの環境配慮活動への関与という点では、本調査では、環境担当者の製品開発チームへ

の参加について質問項目を立てたが、平均値は3以下であった。環境担当者の製品開発チー ムへの参加はあまりないようである。ただし、環境担当部署を設置する企業では、平均値は 低いものの部署のない企業に比べると有意な差のあることが示された。環境に関する専門 知識を持つ環境担当者が、製品開発にも関与している事例はあるのかもしれない。実際、環 境担当部署を設置する企業の特徴の一つは、社内の各部署の協力を得ているとうかがえる ところであった。また、社内外の様々なステイクホルダーに配慮し、PDCAを配慮した環境 マネジメントシステムを構築して個々の環境配慮活動を推進し、様々な環境 KPI を設定し ていると読み取ることもできた。環境担当の部署を整備することで、環境配慮活動を行うた めの体系的な仕組みが構築されるようである。ただし、これらの仕組みや活動は必ずしも成 果に結びついていないようである。

5. おわりに

本研究は、製造業を対象として環境配慮活動の内容やその成果について質問票調査をも とに考察を行った。その結果として、環境を他の項目に優先するような環境重視企業と非環 境重視企業とに区分した場合、環境重視企業は非重視企業に比べて、活動の評価に環境KPI を利用することにも積極的であることなどが読み取れた。しかしながら、環境重視企業の活 動は、原価企画と関連するであろう製品開発のための取り組みとは必ずしも一致しておら ず、販売価格や販売量、製品原価の低減といった成果とも結びついていないようであった。

また、直接部門およびその周辺部門の関与を得ながら環境配慮活動を遂行する一方で、経理 などの間接部門の関与はどちらかというと消極的であると考えられるほか、営業・販売・マ ーケティング部門はむしろ非重視企業の環境配慮活動に関係していることが示唆された。

環境重視企業・重視企業の区分は、環境配慮活動の取り組みは必ずしも一貫性があるように は見られなかった。

そこで、回答企業を環境担当取締役や環境部署の有無で区分し、同様の分析を行ったとこ ろ、取締役のいる企業では製品の販売量や品質においても平均値が有意に高いという結果 であった。

また、環境部署を設置する企業では、あらゆるステイクホルダーによる環境配慮活動への 影響を考慮し、個別の環境配慮活動を積極的に推進していることがうかがえた。環境担当部 署が、環境推進活動の担い手として組織のすみずみまで考慮して実践するための環境マネ ジメントシステムが構築されているようである。

これらの特徴は、直観的にも推測できるようなものであるが、産業を問わずその傾向が読 み取れたところに本研究の意義があるとも考えられる。組織的に環境配慮活動を進めるた めには、環境担当部署を設置し、また成果に結びつける意思を持った環境担当取締役を設置 することに意味があるかもしれない。ただし、本研究では、環境重視企業が環境に付ける優 先順位には1〜3位という点で濃淡があり、取締役も専任または兼任の区分は行わずに分析 を行っている。それらの区分を踏まえたより詳細な分析のためには、それぞれの区分の実数 に偏りがあるため定量的に分析するには限界があると思われる。環境担当取締役や環境担 当部署を設置する意義を論じるためには、環境担当取締役を設置していると回答した企業 について個別にインタビュー調査等を行って事例として考察するなどによって検証するこ とが考えられるが、それらについては稿を改めて検討したい。

付記

本章は,科学研究費【基盤研究B:課題番号20H01556】の助成を受けて進められた研究成果 の一部である。また,本章は,日本管理会計学会スタディ・グループ「原価企画の今日的課 題と対応に関する研究」における研究成果の一部である。

参考文献

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Arjaliès, D-L. and J. Mundy. 2013. The Use of Management Control Systems to Manage CSR Strategy: A Levers of Control Perspective. Management Accounting Research 24: 284-300.

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Dangelico, R. M. and D. Pujari. 2010. Mainstreaming Green Product Innovation: Why and How Companies Integrate Environmental Sustainability, Journal of Business Ethics 95: 471-486.

Norris, G. and B. O’Dwyer. 2004. Motivating Socially Responsive Decision Making: The Operation of Management Controls in a Socially Responsive Organization. The British Accounting Review 36: 173-196.

おわりに

諸藤裕美

本SGでは、企業が取り組むべき今日的課題として、サービタイゼーションと環境配慮を 取り上げ、そこでの原価企画のあり方について明らかにしようと試みた。

サービタイゼーション班の複数領域にまたがる文献レビューにおいて、差別化による収 益の作り込み重視とともに、顧客やサプライヤーとの関係性の重要性、契約が長期間にわた ることによる不確実性の高さ、サービスと製品の束の構成要素の数と構成要素間の相互依 存性の高さの存在による複雑性の高さ、不確実性や複雑性の高さが原価見積等を難しくす ること、量産前の段階と量産以降の段階をあわせて管理していくことの重要性がポイント として明らかとなってきた。

このような点は、環境配慮型活動に対しても、若干の形の違いはあれど、多くは同様のこ とが当てはまると考えられる。社会との関係性の重視(関係性を持つステークホルダーの増 加による複雑性の増加)、原価企画において環境関連の尺度を入れることによる複雑性の増 加、長いタイムスパンを視野に入れる必要性があることから生じる不確実性などである。

本SGの活動も、新規性の高いテーマを扱ったこと、人数が少なくはないことから、不確 実性と複雑性が存在するものであったといえる。ここまでの活動の成果にたどり着いたこ とについて、メンバー各位に敬意を表したい。

両トピックに関する今後の研究成果が蓄積していくことを期待したい。

Dalam dokumen 原価企画の今日的課題と対応 (Halaman 99-104)