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はじめに 欧州統合は、欧州における恒久平和を祈念して

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(1)

はじめに

欧州統合は、欧州における恒久平和を祈念して、第2次世界大戦後間もなく大陸諸国を中 心に始められ、この崇高な政治目標を掲げる統合は、現実的には主として経済的手段を通 じて実現が図られてきた。経済統合は、関税同盟として出発した欧州経済共同体(EEC)か ら、財、サービス、資本、労働力が自由に移動する単一市場としての欧州連合(EU)に発 展した。今やEUは

27

ヵ国、約

5

億人を有する世界最大の経済圏であり、このうち

16

ヵ国、

3.3億人が参加する経済通貨同盟

(EMU)では単一通貨ユーロが流通する。

かつてマーチン・フェルトシュタインは、EMUでの経済政策の利害対立から参加国の戦 争の可能性を示唆したが、これは杞憂に終わりそうだ(1)。1999年にユーロが導入されてから

10年、ユーロ地域の経済は多くの問題を抱えつつも、域内経済の相互依存度は着実に高ま

っている。そこでは欧州中央銀行(ECB)が超国家機関として単一金融政策を担当しており、

その傘下にある各国中央銀行は、自国政府に対して国債引き受けなど信用供与を禁じられ ている。すなわち戦争のための軍資金を調達するうえでの最も安易な、自国の中央銀行を 利用する道は閉ざされている。ユーロを評価する際、このようなかたちで欧州の平和に貢 献していることを忘れるべきではない。

第1節でユーロ地域のこれまでの歩みと経済政策の枠組みを略述した後、第

2

節と第

3節

で、それぞれユーロの対内的、対外的側面からみた実績を概観する。第4節で世界金融危機 との関連を念頭に、EUとユーロ地域の金融規制・監督体制の現状に触れ、まとめに代えて 第5節で今後の課題を挙げたい。

1

ユーロ地域の歩みと経済政策

(1) 信認確立への歩み

マーストリヒト条約の手続きに沿って1999年1月、ユーロは

EMU

3段階の発足ととも

に誕生した。実質的に経済収斂条件を満たした欧州通貨システム参加国のうち、英国、ス ウェーデン、デンマークを除く大陸

11

ヵ国で発足したユーロ地域は、その後

10年間のうち

にEU新規加盟国からの参入もあって、2009年初め西欧から東欧、地中海島嶼部をまたぐ

16

ヵ国に拡大した。

ユーロの船出に先立ち、主に英米圏ならびに英語文献に多く依存する日本の研究者は、

(2)

概して批判的かつ悲観的な意見が支配的で、ユーロは失敗すると予想する向きも少なくな かった(2)。根拠としては、欧州ないしユーロ地域は最適通貨圏ではない、あるいは政治統合 がないままで通貨同盟が成功するかは疑問だ、小国はドイツのような大国の犠牲になって しまう等々が挙げられる。確かに主権の移譲を単一通貨導入に関連する最小限の分野に抑 えたまま、先進工業国の間でEMUを設立するプロジェクトは、世紀の大実験であり未曾有 の大冒険であると言えよう。しかし、10年を経た現在、最終的になお確定はしないにせよ、

ユーロに関し否定的な見解はあまり聞かれなくなった。

これまでユーロは大きな試練を3回経験している。最初は

2000

年9月、ECBが米国連邦準 備銀行、イングランド銀行、日本銀行などと、ユーロ下落を阻止するために市場で協調介 入を行なった時である。ユーロの対ドル相場は、発足時の1.17ドルから翌年にかけてほぼ一 本調子で下落、ついに0.85ドル水準で5ヵ国・地域の中央銀行が買い支えに出動した。下落 の背景は、第一に発足時の実効相場が、マルクなど旧通貨の加重平均相場の過去5年間の最 高値にあったこと、第二に、「根拠なき熱狂」と言われた

IT

景気が米国に資金を引き付けた こと、第三に、新生のEMUの経済運営、なかんずくECBの金融政策に対する不透明感から、

市場の信認が未確立だったことがある。また、金融政策には信頼できる迅速な統計が不可 欠であるが、ユーロ地域の統計が不十分だったことも問題を大きくした。

第二の試練は、2003年

11

月、ドイツとフランスが「安定と成長協定」(SGP)に反して

3

年連続国内総生産(GDP)比

3%

を超える財政赤字を計上したにもかかわらず、両国の強い 発言力を背景に経済財政閣僚理事会(Ecofin)が、過大な赤字是正・制裁手続きの発動を中 止したことである。この出来事は、ユーロ参加国の健全財政維持への不安だけでなく、ユ ーロ地域の制度とガバナンスに不信感を招きかねないと懸念された。この時ECBは強い調 子の抗議声明を発表した(3)。結局

2005年、SGP

は財政赤字拡大への縛りを緩め、制裁手続き の期間を延長するかたちで改定された。

第三の試練は、2007年夏に始まり現在もなお続く世界金融危機と同時不況である。米国 のサブプライムローン問題に発する金融危機は、ほぼ同時に欧州に波及し、ユーロ地域を

含む

EUの金融機関の多くは、いまだ測りきれない不良債権問題に悩んでいる。金融危機は、

第 1 図 ユーロの名目実効相場の推移 150

140 130 120 110 100 90 80

 2000年=100。

(注)

 国際決済銀行(BIS)資料。

(出所)

1994-01 1995-02 1996-03 1997-04 1998-05 1999-06 2000-07 2001-08 2002-09 2003-10 2004-11 2006-01 2007-02 2008-03

(年月)

(3)

信用収縮を通じて実体経済を不況に陥れた。ユーロ地域は、世界同時不況のなかにあって、

参加国自身の経済対策に加えて、危機に苦しむ東欧加盟国経済の救済も併せ考えなくては ならない。2009年はユーロ経済初めてのマイナス成長が予測されるなど、過去半世紀最も 深刻な不況をいかに乗り切るか、EMUは厳しい試練に直面している。

(2) 経済政策の枠組み

ユーロ地域の経済政策の特徴は、その権限の二重構造にあり、その結果、経済運営は、

単一の金融・為替政策と複数の財政・構造政策の組み合わせで行なわれる。金融政策は共 同体レベルでもっぱらユーロシステム(ECBと参加国中央銀行)が担当する。財政政策と構 造政策の権限は加盟国政府にあり、共同体レベルで閣僚理事会と欧州委員会が政策協調を 行なう。

政策権限が、共同体(EU)と加盟国レベルに分かれる背景は、第一に補完性の原則があ る。政策権限は可能な限り国民に近いレベルにあるべきで(例えば市町村)、上級レベルで担 当せざるをえない、あるいは担当することが効率的である場合に限って、より上のレベル

(県や州、国、さらに

EU)

に権限を移譲するとの考え方である。したがって、単一通貨を導 入する以上、金融政策の決定と実施は、ユーロシステムが担当する。為替政策は、基本方 針を閣僚理事会で決め、ECBが日常の運営を担当する。他方、財政・構造政策については、

決定権限を共同体レベルに集中しなければならない必然性はない。

第二の背景は、加盟国とEUの利害関係にある。財政政策は、国の予算(歳入と歳出)と いう主権の根幹にかかわる分野であり、どの国も共同体への権限移譲は抑えたいと考える

第 1 表 ユーロ導入以後の主な出来事

1998年 6月 欧州中央銀行(ECB)・欧州中央銀行システム(ESCB)設立。

1999年 1月 ユーロ導入(現金取引以外)。ユーロ地域に単一金融政策導入。

2000年 1月 欧州閣僚理事会が、EU経済の競争力強化を目指すリスボン戦略採択。

9月 ECB、米連邦準備制度理事会(FRB)など1ユーロ0.85ドルの水準で

   ユーロ買い市場介入。

2001年 1月 ギリシャがユーロ地域参加。

2002年  1月 ユーロ紙幣(法定通貨)・コイン流通開始。

2003年 3月 EU全域の金融監督機関と中央銀行間で金融危機に関する覚書締結。

2004年 5月 中東南欧10ヵ国EU加盟。

2005年 3月 リスボン戦略改定。安定と成長協定(SGP)改定。

2007年 1月 スロベニアがユーロ地域参加。ブルガリア、ルーマニアEU加盟。

8月 ECBが欧州金融市場逼迫に伴いユーロ流動性供給。

12月  リスボン条約(欧州連合条約を修正)署名(アイルランド批准否決)。

2008年  1月 マルタ、キプロスがユーロ地域参加。

7月 ユーロが1.5990ドルの最高値を記録。秋以降急落。

2009年 1月 スロバキアがユーロ地域参加。

(出所) ECBなど。

(4)

のが自然である。構造政策は、個別の産業や労働・製品市場の規制やそれら全体の秩序に かかわることから、多くの経済単位の利害が複雑に絡み合っている。欧州単一市場の円滑 な機能を促進するため、貿易政策、競争政策などはEUに権限を移しても、多くの個別政策 は個々の加盟国に委ねざるをえない。

マクロ経済政策が、ECBによる単一金融政策と加盟国政府による複数の財政政策に分か れると、ユーロ地域の経済運営にあたって政策主体間の政策協調が重要な課題となる。金 融政策については、マーストリヒト条約がECBの独立性と政策目標(物価の安定)を明確に 定めている(4)。その前提のもと、ECBと各国財務大臣・欧州委員会は、ユーログループ

(Ecofinのうちユーロ地域の閣僚で構成)で定期的に意見交換をしている。

財政政策に関し加盟国は、ユーロ地域の健全な経済運営の観点から、SGPによって財政赤 字を原則GDPの

3%以内に抑え、中期的に均衡させるか黒字化すること、一般政府債務残高

をGDPの

60%以内、あるいはそれに近づける義務を負っている。財政健全化は、EMU

参加

のための経済収斂基準の項目であるが、参加後の空洞化を防ぐためにドイツのイニシャテ ィブでSGPが取り決められた。

定期的な経済政策の協調は、

Ecofin

を舞台に多角的サーベイランスのかたちで行なわれる。

サーベイランスは、一般経済政策指針の枠組みにおける全般的な政策協調(5)、SGPに従って 行なわれる財政政策の相互監視、欧州雇用協定の枠組み、改定リスボン戦略に基づく構造 政策のフォローによって構成される。2008年からの金融危機、同時不況など緊急事態に際 しては、欧州委員会を実質的な事務局として、欧州理事会(首脳会議)を招集するなど臨機 応変に対応が図られる。

第 2 表 欧州経済通貨同盟(EMU)における政策決定の仕組み(2009年3月末現在)

目 標

金融政策 物価の安定(中期的に インフレ率を2%以下 かつ近い水準に維持)。

金融規制・監督 金融(金融機関、市場、

市場インフラ)の安定。

財政政策 中期的に財政収支を均 衡ないし黒字化。

共同体

(EU)

ユーロシステムのもと で欧州中央銀行(ECB)

が政策決定。なお為替 政策は、Ecofinの基本 方針のもとECBが運用 を担当。

欧州銀行監督官委員会

(CEBS)が欧州委員会 に助言。

ECBは情報収集、ショ ック対応のための市場 流動性操作、EU/各国 への助言。

経 済 財 政 閣 僚 理 事 会

(Ecofin)が、安定と成 長協定(SGP)に基づき、

制裁を伴うルール・ベ ースの政策協調を行な う。

構造政策 弾 力 的 、 競 争 的 な 労 働・製品市場を通じる 経済成長と雇用促進。

Ecofinが、リスボン戦 略(成長と雇用のため の総合指針)に基づき、

制裁を伴わず、勧告の みのソフトな政策協調 を行なう。

加盟国

ユーロシステム加盟各 国中央銀行(NCB)が 政策を実施。

各国金融当局の責任。

規制・監督の仕組み(対 象業界、中銀の関与)

は国ごとに異なる。

NCBによる緊急流動性 支援(ELA)。

各国政府が主体的に政 策を決定、実施。SGP に沿って安定プログラ ムを毎年作成、Ecofin で審査を受ける。

各国政府が主体的に政 策を決定、実施。立地 条件改善、研究開発、

教育訓練など成長と雇 用関連分野を重視。

(出所) 筆者作成。地がグレーの枠は政策決定の主体。

(5)

2

域内経済とユーロ

(1) 単一市場と単一通貨

欧州単一市場は

1993

年に発足したが、国民通貨の存在が市場の一体化を妨げていた。

1999

年、ユーロ導入により

EMU域内では為替取引にかかわるコストと不確実性がなくなっ

たうえ、価格の透明性向上による情報コスト削減と競争促進、金利の低下や金融市場統合 の促進による金融面での便宜性向上などにより、実体経済・金融経済両面での一体化が進 んだ(6)

ユーロ地域の財・サービス貿易依存度は

GDP

44%

(2007年)と、日米(それぞれ

35%、

29%)

に比べて高く、経済が開放的であることを示している。域内貿易比率は

50%、他のEU

諸国との貿易を含めると68%に達する(2007年)。ユーロ域内の財貿易の

GDP

比率は、ユー ロ導入前1998年

26%

から

2007年33%

に上昇しており、これはユーロを導入しなかった英国、

スウェーデン、デンマークとの貿易の伸びを

2

―3%上回っている。サービス貿易は、同じ 期間5%から

7%

の伸びにとどまっており、これは域内サービス市場が今も相当分断されて いることを反映すると考えられる。

単一通貨の導入は、企業の合併・買収(M&A)中心に域内での直接投資(FDI)を大きく 刺激した。ユーロ地域のFDIに占める域内比率は、フローが1999年35%から

2006年 45%へ、

ストックが43%から

45%

に上昇した。ECBは、ユーロ導入はユーロ地域の

FDI全体の 15%

(そのうち域外からの

FDI

7%)

を底上げしたと推計している。特に製造業(石油化学、石炭、

ゴム、プラスチック製品、輸送機械)の

M&A

が増加する一方、サービス業への影響は限定的 である。

証券投資に関しては、為替リスクの消滅による機関投資家の投資基準変更などにより、

ユーロ地域での証券投資に占める域内投資比率は、1997年から

2006

年の間に株式投資で

12%

から

28%

へ、債券投資で11%から

57%

へ大幅に増加した。

金融・資本市場の統合に対するユーロのインパクトは、市場によってまちまちである。

ユーロシステムが金融操作の対象とする資金市場は、当然のことながらほぼ統合済みで、

国によって金利水準や慣行の差異はほとんどない。証券市場のうち、債券市場はかなり統 合が進んでおり、社債に比べ特に国債市場はほぼ統合済みである。他方、株式市場の統合 は遅れている。銀行市場は、銀行間あるいは大企業相手の卸売り分野はほぼ統合済みであ るが、家計や中小企業を対象とする小売り分野では地方色が残っており、統合は進んでい ない。

(2) ユーロ経済の仮決算

1999

年から2008年前半までのユーロ地域の経済パフォーマンスを総括すれば、ほぼ満足 できると言えるだろう。経済はおおむね安定的に成長するなかで、失業率はなお高いもの の漸減し、物価は目標値近くに収めることができた。ユーロ導入に先立つ10年間(1989―

98年)

の平均値と比較すると、経済成長率は同じだが、雇用情勢と物価の安定に関しては明 らかに好転している。地域全体の国際収支はほぼ均衡している。この間ユーロ加盟国間の
(6)

経済格差は、ポルトガルが遅れ気味であることを除いて縮小した(第

3

表参照)。

また、米国経済との比較では、かつて常に米国を下回っていた経済成長率は、2006年以 降ほぼ同じ水準にあり、失業率は

2007年まで米国より恒常的に 3%以上高かったが、2008年

米国の悪化により肩を並べた。インフレ率と経常収支については、ユーロ経済のほうが一 貫して良好なパフォーマンスを示している。米国経済と欧州経済に関し、前者は国民の経 済格差は大きいが、失業しても職をみつけやすい、成長力に富むダイナミックな自由経済 であり、後者は比較的所得は平等だが、長期失業者が多く成長力に欠ける社会的経済であ ると形容されてきた(7)。現在の世界同時不況を経て両経済がどのように展開するのか興味深 い。

ドイツ連邦銀行の伝統を受け継ぐECBは、物価の安定はインフレ・リスク・プレミアム の削減を通じて経済成長と雇用創出に有利な金融環境をもたらす、との考えのもと、単一 金融政策を運営してきた。物価安定の目標を中期的に

2%

以下、かつ

2%

に近い水準とおい たのに対し、2007年までの実績は平均

2.1%

であった。同時にユーロ発足以来1500万人の新

第 3 表 ユーロ地域・加盟国の主要経済指標

ユーロ地域 2.2 0.7 2.1 3.3 8.0 6.0 −0.6 0.2 −1.9 −0.6 115 110 ドイツ 1.5 1.0 1.6 2.8 9.1 7.0 −1.7 7.6 −2.4  0.0 123 114 フランス 2.1 0.7 1.8 3.2 9.4 6.4 1.6 −1.2 −2.6 −2.7 116 113 イタリア 1.4 −0.9 2.3 3.5 8.7 −0.5 −2.5 −2.9 −1.9 120 104 スペイン 3.8 1.2 3.1 4.1 11.8 9.8 −4.0 −10.1  0.1  2.2 96 102 オランダ 2.3 2.0 2.4 2.2 3.1 2.3 1.9 6.8 −0.5  0.4 129 132 ベルギー 2.3 1.1 2.0 4.5 8.0 6.0 4.0 2.1 −0.2 −0.2 123 123 オーストリア 2.3 1.6 1.7 3.2 4.2 3.2 −0.7 3.2 −1.5 −0.5 133 129 フィンランド 3.4 0.9 1.6 3.9 9.7 4.9 8.1 4.6  3.9  5.3 115 116 ギリシャ 4.1 2.9 3.2 4.2 8.0 −7.8 −14.1 −4.5 −2.8 84 97 ポルトガル 1.7 −0.0 v.9 4.2 4.1 6.8 −10.2 −9.8 −3.6 −2.6 77 74 アイルランド 6.4 −2.3 3.4 3.1 6.6 5.0 −0.4 −5.4  1.6  0.3 122 143 ルクセンブルク 5.2 2.5 2.7 4.1 2.2 3.5 13.2 9.9  2.3  2.9 218 279 スロベニア 4.4 3.4 5.5 5.5 5.8 3.7 −2.7 −4.9 −2.4 −0.1 52 64 キプロス 3.7 3.7 2.6 4.4 3.2 −5.2 −9.7 −2.7  3.3 87 93 マルタ 2.4 1.4 2.3 4.7 4.5 −13.1 −5.4 −5.3 −1.8 81 76 参考:米国 n.a. 1.1 n.a. 3.8 4.5 5.8 −4.3 −5.3 n.a. −3.0

1999―

2007

1999―

2007

1999―

2008 2008 1998 2008 2000 2007 2007 2007 1998 2006 GDP

実質成長率

インフレ率

(HICP) 失業率 経常収支 GDP比

財政収支 GDP比

1人当たりGDP EU27=100

(単位 %) 

(出所) ECB、Eurostat、国際通貨基金(IMF)World Economic Outlook(WEO)、MIX(Management Intelligence eXpress)。

(7)

規雇用が創出され、失業率が

1980年代初め以来の最低を記録したこと、そして世界的に国

際商品価格が上昇傾向にあった環境を考慮すると、これは「素晴らしい成果」(ECB 2008a,

p. 5)

と言えよう。

他方、個々の加盟国の立場からは課題も残った。ECBの政策金利は、ユーロ経済全体の 物価安定を念頭に決められるため、ドイツなど低インフレ国には実質金利が高くなり、景 気上昇への重荷になりがちである。他方、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルラン ドなどキャッチアップ過程にある国々では、インフレ率が高いため実質金利がマイナスと なり、景気が過熱するのみならず、一部ではバブル形成の弊害をもたらすに至った。さら に、これらの国の経常赤字は、本来なら持続困難な水準まで膨らんでいる。

かねてより欧州経済の問題点は低い経済成長と高い失業率に代表されるが、ユーロ加盟 国ではこれらの問題に対応する政策手段は限られている。ユーロの為替相場と

ECB

の金融 政策は所与であり、財政政策はSGPの制約を受け、特に一般公的債務残高が許容水準を大 きく超えるイタリア、ギリシャ、ベルギーにとり財政出動の規模は限られる。

したがって、各国経済を活性化するうえで、構造政策の役割はきわめて大きい。労働市 場は、組合員と非組合員、正規と非正規労働者の間の処遇格差の問題、解雇や労働条件に 関する規制や労使協定など、いまだ硬直的で改善の余地が大きい。製品・サービス市場で の不十分な競争や新規参入、政府調達市場での規制などの問題点も指摘される。競争力向 上のためには、教育・訓練の改善、研究・開発の充実も必要である。

2000年欧州理事会は、

「知識を基礎とした、世界で最も競争力に富み、ダイナミックな経

済になる」ためにリスボン戦略を採択し、特に供給サイド改革のための目標と具体的施策 を策定した。しかし、リスボン戦略は、加盟国側から

EU官僚による干渉であるとの反発を

招き、また進捗状況の評価も強制力をもたなかったため、2005年大幅な見直しを余儀なく され、内容を簡素化し「経済成長と雇用」に的を絞ることとなった。その後の実績は、失 業率や経常収支が示すとおり、国ごとに相当な跛行性がみられる。

3

地域性が濃いユーロの国際化

ユーロの国際化に関するECBの政策スタンスは明快である。「政策的観点から、ユーロシ ステムはその通貨の国際的使用に関し、中立スタンスをとってきた。政策目標としてユー ロの国際化を追求することはなく、非居住者による使用を促進することも抑制することも ない。ユーロ地域の境界外における通貨の使用は、自由な民間(および時には公的な)決定 に基づく、経済的・金融的な展開の結果であり、そうあるべきである」(ECB 2008a, p. 96)。 このスタンスは、かつて

1970年代までマルクの国際化に消極的だったドイツ連邦銀行、あ

るいは1990年代積極的に円の国際化を進めようとしたわが国大蔵省とは異なる。

ユーロの国際化は、発足当初の約5年間急速に進展し、その後は横ばい状態を続けている。

国際通貨の

3

つの機能、すなわち計算単位(例:貿易の建値)、支払い手段(例:為替取引取 扱高、国外の紙幣流通高)、価値の保蔵手段(例:外貨準備、国際債券残高)のいずれをとって も、世界の基軸通貨たる米ドルに次ぐ地位にある。米ドルが世界中で広く使用されている
(8)

の対し、ユーロの国際化の特色は、その著しい地域性にある。ユーロは、EU諸国とその周 辺の欧州、アフリカで普及する一方、アジアと西半球では限定的な利用にとどまっている。

(1) 債券:ユーロ建て国際債(ユーロ地域以外で発行されるユーロ債)は、世界の国際債残 高の

32.2%を占めるが、このうち半分強

(50.6%、2007年第

2

四半期)は英国、デンマー ク、スウェーデンを中心とする

EU内外の欧州の発行体による。また EU

新規加盟国およ び英国、デンマーク、スウェーデン

3国が発行した国際債残高に占めるユーロ債の割合

は、それぞれ

77.9%と58.4%

(同)にのぼる(8)

(2) 貸し出し・預金:世界のクロスボーダーの貸し出し、預金残高に占めるユーロ建ての 割合は、20%強で10年前と大差ない。一方、中東欧

11ヵ国における外貨建て貸し出し・

預金残高に占めるユーロの割合はそれぞれ

70%

以上(2007年、例外はスロバキアとポーラ

ンド

40%強)

60%以上ときわめて高く、また国内総貸し出し・預金に占めるユーロの

割合も一部の国で貸し出しの

90%以上

(ブルガリア、ルーマニア)、預金の

40%

以上(ク ロアチア、マケドニア)に達するなど、近隣諸国で資産の通貨代替がみられる。

(3) 貿易取引通貨:貿易の建値は、当然のことながらユーロ地域との地理的近さや取り引 き関係の緊密さに影響される。ユーロ加盟国のユーロ建て貿易比率は、おおむね輸出

50

60%

強、輸入40―60%(2006年)であり、非

EU地域向けに比べ EU

諸国向けが高い。

中東欧諸国の輸出入におけるユーロ建て比率は

50

―90%に達する。他方、例えばインド ネシア、タイのユーロ建て貿易比率は

5%に満たず、日本でも 2008年下半期の輸出 7.6%

(ただし対EU51.8%、財務省)、輸入

3.1%

(対

EU30.9%、同)

にとどまる。

(4) 外貨準備:世界の外貨準備に占めるユーロの比率は、2004年までの

5

年間17.9%から

第 4 表 ユーロの国際的役割・基礎データ

国際債券残高 21 37 32.2 ドル 43.2 円 5.4 総額 9.7兆ドル クロスボーダー貸出残高 19.0 23.9 22.1 総額 5.7兆ドル(12月末残)

クロスボーダー預金残高 27.1 26.2 21.0 総額 6.5兆ドル(9月末残)

外国為替取引高(1日当たり・4月) 18.8 18.5 18.5 ドル 43.2 円 8.3 総額 3.2兆ドル 財輸出建値(非ユーロ地域向け・年間)

 フランス 50.8 49.2 49.7

 ドイツ 63.2 67.8

財輸入建値(非ユーロ地域より・年間)

 フランス 42.6 45.7 48.4

 ドイツ 53.9 59.4

外貨準備における割合 17.9 24.8 26.5 ドル 63.9 円 2.9 総額 6.4兆ドル 海外流通ユーロ紙幣比率 10―20 海外流通ドル紙幣 60(2005末)

1999年末 2004年末 2007年末

(単位 %) 

(注) *:2001年、**:2006年。

(出所) ECB, The International Role of the Euro, July 2008など。

**

**

**

**

スペイン 60.2 ギリシャ 38.8

(トルコのユーロ建て比率 48)

(2008年下期日本の円建て比率 39.4)

スペイン 54.0 ギリシャ 33.6

(トルコのユーロ建て比率 38)

(2008年下期日本の円建て比率 20.7)

(9)

24.8%

に上昇し、その後は横ばい推移している。2004年末現在、ユーロ地域近隣諸国で はユーロの比率が

57.8%

であったのに対し、アジア、西半球などいわゆるドル圏では

18.3%

にすぎなかった。この動向に関し

ECB

は、中央銀行の外貨準備の運用方針に関連 すると分析している。すなわち多くの中央銀行は、当初は取引動機によりユーロを積み 増し、その後、最小分散ポートフォリオ戦略によりリスクをできるだけ低く抑え、アン カー通貨(ドル)を多めに保有する傾向となった。なお、世界の外貨準備6.4兆ドルのう ち、構成通貨が判明しているのはその

3分の 2

にすぎない点に留意する必要があろう。

(5) 第三国の為替政策:ユーロを為替政策の基準としている国は、2008年為替相場メカニ ズムⅡ(ERM II)参加5ヵ国、カレンシー・ボード制2ヵ国、ユーロ化2ヵ国、ユーロ・ペ ッグ制中央アフリカフラン圏(14ヵ国)、フランス海外領土などユーロを主要参考通貨と する管理変動相場制

9

ヵ国など約40ヵ国にのぼる。注目すべき動きとしては、ロシアが 管理変動相場の参考通貨バスケットに占めるユーロの比率を

2005

2

月以前10%から

2007

7月以降 45%

に引き上げたこと、2008年

2月、ハンガリーがユーロを参考とする

管理変動相場制を廃してインフレ目標の変動相場制に移行したことがある。また、一部 の非ユーロ地域

EU

諸国とクロアチア、セルビア等は、為替市場の介入通貨としてドル ではなくユーロを使用している。

4

ユーロ地域の金融規制・監督体制

1) 世界金融危機とユーロ

今回の世界金融危機は米国発であるが、その特徴は、ほぼ同時に欧州に波及し、欧米金 融機関の破綻と金融市場の機能停止が並行して生じたことにある。背景は金融のグローバ ル化であり、21世紀に入ってから米・EU・アジア

3

大経済圏相互の資金フローのうち、米

EU双方向の取引が際立って増加している。

欧州の大手銀行は、伝統的に銀行・証券兼営主義であり、近年米国の投資銀行業務に傾 斜していた。さらにユーロ地域の銀行は、共通通貨の導入に伴い通貨別の地域特性と競争 優位が失われたことから、米国をはじめ中東欧、途上国など域外進出に積極的だった。こ の結果銀行は、オーバー・ローンと高い対外資産比率により、資金調達を市場性資金に依 存する体質となっていた。

米国での住宅金融と証券化プロセスには、英国、オランダ、ドイツ、フランス、スイス などの銀行が深く関与し、ウエアハウジング融資(ローン買い取りから第1次証券売却まで、

あるいは第1次証券買い取りから第

2

次証券売却までの担保資産積み上げ資金供与)を提供してい た。必要資金は主として市場調達していたために、米国の資金市場逼迫の欧州への波及は 必然だった。

かねてより多くの識者は、グローバル不均衡の解決策として、ドルの下落による米国経 常赤字の縮小・是正、それと並んでユーロの上昇と影響力拡大のシナリオを描いてきた。

2007年 7月サブプライム問題の表面化と 2008

年3月米証券大手ベアー・スターンズ破綻に際 し、為替市場ではドル売りとユーロ・円買いが起こり、いったんはシナリオどおりに進む
(10)

かにみえた。

しかし、9月同じく証券大手のリーマン・ブラザーズ破綻を契機に金融危機が深刻化する と、ユーロ相場が大きく下落し、逆にドルが円を除く主要通貨に対して上昇する結果とな った。米国の在外資産のドル転換・本国回収が大規模に生じたことに加え、国際的取引が 基軸通貨ドル中心に行なわれてきたため、金融市場逼迫に際してドル需要が集中した結果 である。欧州の金融システムと規制・監督体制の弱点が露呈したことも、ユーロ売りに拍 車をかけた。グローバル不均衡が持続不能であることは明らかになったが、同時に、基軸 通貨ドルが底力を発揮する一方、ユーロの未熟さをみせつけられた。

(2) 整合性に欠ける

EU

金融規制・監督体制

EUにおける金融規制と金融機関・市場監督は、基本的に加盟国の権限である。金融監督

機関は国ごとに異なっており、例えばドイツは連邦金融サービス監督局、フランスは銀行 委員会、イタリアとスペインは中央銀行である。欧州パスポート制度によりEUの銀行が他 の加盟国に支店を設立することは自由で、その際、銀行の健全性リスクは本店所在国(ホー ム)が、流動性リスクは支店所在国(ホスト)が監督する。

銀行が支店形態で国際化する場合に比べ、現地法人や合弁銀行を通じて進出する場合、

金融監督は複雑になりホームとホストの分業は困難となる。子会社形式の銀行は、現地法 人として健全性・流動性監督ともに子会社所在国(ホスト)金融当局が担当する。しかし実 質的には親銀行が支配するため、親銀行所在国(ホーム)当局の協力なくして監督の実を上 げえない。持ち株会社を通じるなど、枝分かれして多国籍化する場合、一国による銀行グ ループ全体の規制・監督はいっそう困難になる。金融危機が発生した場合、どの国が対応 し、解決のためのコスト負担をどのように分担するかが問題となる。

ユーロ地域においては流動性リスクの監督権限は、ユーロシステムに移された。ECBと 加盟国中央銀行は、金融リスクに関する情報収集と資金市場での流動性供給を担当すると ともに、加盟国とEU関係当局(欧州委員会とEcofin)に対して金融規制や危機管理の面で協 力する。しかし、健全性リスクの監督権限は引き続き加盟国にあるため、銀行監督の仕組 みが

2段階に分かれ複雑になってしまった

(9)

現状、EUレベルには金融規制・監督の権限はない。Ecofinの諮問機関として欧州銀行監 督官委員会(CEBS)や欧州証券監督官委員会(CESS)があり、加盟国の金融監督慣行の収 斂と協力促進、欧州委員会(10)への助言にあたる。金融安定問題の協議の場はEcofinである。

大手銀行の多国籍化、証券・保険会社など他業態の銀行業務参入、金融工学の金融商品へ の応用・複雑化などに鑑みると、現行のEU・ユーロ地域の金融規制・監督体制が不十分な ことは明らかである。

今回の世界金融危機に際して、EUの金融規制・監督体制の欠陥により加盟国間で摩擦、

混乱(11)がみられるなど問題点が露見したことから、2008年10月、バローゾ欧州委員会委員 長の諮問により「EUの金融監督に関する高級グループ」(委員長ドラロジエール元IMF専務理 事)が作られ、2009年

2月、検討結果をまとめたドラロジエール報告が発表された。報告は、

規制・監督の主体は加盟国という原則を維持しつつ、同時に

EU

横断的な金融リスクに対応
(11)

し、効果的に監督を進めるため、2つの

EU

レベルの機関創設を提言するなど、金融安定確 保のため31項目にわたり勧告している。欧州委員会が勧告内容を法案にまとめ、6月の欧州 理事会で第1回の議論が行なわれる予定であり、段階的に具体化がめざされている(欧州金 融監督システムは第2段階

2011―12年設置)

5

今後の課題

今やユーロ経済は、単一通貨発足10年目にして未曾有の試練に直面している。世界金融 危機・同時不況が進行するにつれ、EU経済とユーロ経済が抱える問題点も次第に明らかに なってきた。時系列的にまず、①金融機関・システムと監督体制の脆弱性が、続いて

2009

年に入ると、②ユーロ加盟国の信用格差が表面化し、さらに、③金融・通貨危機に陥った 中東欧諸国の救済問題が重大な不安定要因として政治化した。これらの問題は、いずれも ユーロ経済の将来を左右することになろう。

(1) 金融の安定

ユーロ加盟国の大手銀行は、米国での住宅・証券関連リスク資産を多額に保有していた だけでなく、スペイン、アイルランド、フランスなどで不動産バブルを引き起こした融資 の担い手でもあった。さらに中東欧の

EU新規加盟国に対し、オーストリア、ドイツ、イタ

リアなどの銀行は多額の債権を有している。これらすべての金融資産に潜む不良債権化の リスクは、今後もユーロ経済の足を引っ張ることになろう。今回の経験を教訓として、EU はドラロジエール報告に沿って、新たな金融規制・監督体制を検討している。加盟国レベ

ルと

EUレベルの監督協調が、本当に実効性を上げうるのかが問われる。

2) ユーロ加盟国の信用格差

単一金融・為替政策のもとで、ユーロ加盟国は、財政・構造政策という限られた政策手

EBA, EIA, ESA議長 ECB/ESCB

理事会メンバー 欧州委員会

欧州銀行監督局

(EBA)

欧州保険監督局

(EIA)

欧州証券監督局

(ESA)

国別銀行監督機関 国別保険監督機関 国別証券監督機関 欧州システミック・リスク評議会(ESRC)

―マクロ健全性の監督―

欧州金融監督システム(ESFS)

―ミクロ(金融機関)健全性の監督―

個別金融機関の動向に関する

情報提供 早期リスク警報

(出所) “The High-level Group on Financial Supervision in the EU” Report, 25 February 2009.

第 2 図 欧州の新しい金融安定体制(ドラロジエール報告提案)

(12)

段で経済運営を行なってきた。これまでもインフレ率の格差からくる単一金融政策の効果 の差異、域内途上国のキャッチアップ過程に起因する景気過熱・資産バブルの問題など指 摘されてきたが、今回の深刻な事態に至るまで表面化することはなかった。上記の不動産 バブルの問題に加え、ギリシャ、スペイン、ポルトガルは

GDP比 10%

もの経常赤字を記録 している。共通通貨のもとで経常赤字が直ちに経済危機に結びつくことはないにせよ、い ずれ地域格差、財政負担のかたちで問題化するだろう。また、多くの国で財政赤字が急拡 大している。これらを背景に、長期国債利回りで示されるドイツと各国の信用格差は、2008 年初までほぼ無視できたものが

2009年 1月ギリシャ 2.53ポイント、アイルランド 2.13、イタ

リア1.55、ポルトガル

1.25

にまで拡大した(12)。この問題をつきつめれば、政治同盟を前提に しない通貨同盟の成否にもかかわると考えられ、当該国のこれからの政策対応が注目され る。

3) ユーロ地域の拡大

ユーロ非加盟のEU西側3ヵ国と異なり、2004年以降EUに加盟した中東欧諸国は、経済収 斂条件を満足させればユーロの導入が義務付けられている。ユーロ導入に先立ち少なくと

も2年間

ERM II

に参加しなければならないが、実質的に自国通貨をユーロに固定した国の

多くがインフレ、経常赤字、対外債務累積、そして金融・通貨危機に悩む結果となった。

これらの国は、西欧諸国との所得格差が大きいだけに、キャッチアップにかかわる問題が、

ユーロ導入に至る前段階だけでなく、いずれ導入後の段階でも、(現在の地中海諸国のように)

くすぶり続ける可能性がある。経済通貨同盟に占める新興国の比重が増すにつれ、それら がユーロ経済、ひいてはユーロ相場の負担となる可能性は排除できないだろう。

1 Martin Feldstein, “EMU and International Conflict,” Foreign Affairs, November/December 1997.

2) 例えば、David Lascelles, The Crash of 2003, An EMU fairy tale, Center for the Financial Innovation, December 1996.

3 ECB Press Release, “Statement of Governing Council on the ECOFIN Council conclusions regarding the cor- rection of excessive deficits in France and Germany,” 25 November 2003.

4) マーストリヒト条約第3A条「単一金融政策と単一為替政策は物価の安定維持を第一義的な目標 とする」

5) 詳細は、村 (2007)の資料、「EUにおける『一般経済政策指針(200305年)」を参照され たい。

6) 第2節、第3節の経済指標は主にECB、Eurostatの資料による。

7) 詳しくは、Jonas Pontusson, Inequality and Prosperity: Social Europe vs. Liberal America, Cornell University Press, 2005を参照されたい。

8) この項の統計はECB(2008b)による。

9) マーストリヒト条約第105(6)条は、EcofinはECBに銀行の健全性監督権限を与えることができ る旨規定しているが、この条項は発動されていない。

(10) 今回の世界金融危機に際し、EUとしての対応指針は3件出されたが、担当部署は経済金融総局 ではなく競争総局となっている。

・2008年10月13日付IP/08/1495, “State aid: Commission gives guidance to Member States on measures for banks in crisis.”

(13)

・2008年12月8日付IP/08/1901, “State aid: Commission adopts guidance on bank recapitalization in current financial crisis to boost credit flows to real economy.”

・2009年2月25日付IP/09/322, “State aid: Commission provides guidance for the treatment of impaired assets in the EU banking sector.”

(11) 1994年のEU預金保険指令により、預金保険の水準は2万ユーロ以上であれば加盟国が自由に設 定することとなっている。2008年9月アイルランドが水準を無制限に引き上げたため、英国の銀行 から大量の預金がアイルランドに流出した。

(12) http://www.ecb.europa.eu/stats/money/long/html/index.en.html

■参考文献

岩田健治(2009)「なぜヨーロッパで危機が顕在化したのか」『世界経済評論』第53巻第3号。

田中素香(2009)「深刻な金融・経済危機のヨーロッパ」『世界経済評論』第53巻第3号。

西村陽造(2009)「最適通貨圏の理論に金融リスクを導入する―最近の中東欧の通貨・金融危機リス クを踏まえたゲーム理論のアプローチ」、日本金融学会春季大会報告論文。

福永一樹(2008)「国際通貨としてのユーロの現状と展望」、国際通貨研究所。

哲司(2000)『アジア安定通貨圏―ユーロに学ぶ円の役割』、勁草書房。

―(2007)『東アジアの通貨・金融協力―欧州の経験を未来に活かす』、勁草書房。

―(2009)「世界金融危機の原因と対応」『国際金融』第1197号。

ECB(2008a)“Monthly Bulletin 10th Anniversary of the ECB 1998–2008.”

ECB(2008b)“The International Role of the Euro,” July.

ECB(2008c)“One Monetary Policy and Many Fiscal Policies: Ensuring a Smooth Functioning of EMU,” Monthly Bulletin, July.

“The High-level Group on Financial Supervision in the EU Chaired by Jacques de Larosiere” Report, Brussels, 25 February 2009.

むらせ・てつじ 龍谷大学教授

Referensi

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