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イネが環境に応じて水分量を調節するしくみ - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 6, 2012

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今日の話題

イネが環境に応じて水分量を調節するしくみ

地上部からの蒸散要求に応じて根のアクアポリン発現量が変化

近年,世界各地で異常気象が多発し,農業をめぐる環 境はますます厳しくなりつつある.農作物の収量・品質 を維持向上させるためには,自力で移動することができ ない作物が限られた日射・栄養分・水分を効率的に取り 込んで利用するしくみを明らかにすることが必要であ る.とりわけ水分吸収は,光合成や栄養素の吸収・体内 での移動にも密接に関わるなど,作物が生長するための 基礎となる重要な機能であり,近年は水分生理学的な解 析のみならず分子生物学的な側面からも重点的に研究が 進められている.

生体内の水輸送にはアクアポリンという膜タンパク質 の果たす役割が大きい.アクアポリンは主として水を選 択的に輸送するチャンネルで,膜内外の浸透圧差に応じ て受動的に水を輸送する.アクアポリンが存在すること により,生体膜における水分子の透過速度は受動拡散の 場 合 よ り 桁 違 い に 速 く な る.ヒ ト に はAQP0か ら AQP12まで13種類のアクアポリンが存在し,様々な臓 器や組織にアクアポリンが分布し機能を発揮してい る(1).アクアポリン機能の欠損は様々な疾患をもたら す(1)ことからも,アクアポリンは生物にとって欠かすこ とのできない分子であることがわかる.

植物は30種類以上ものアクアポリンをもつ(2).モデ ル植物シロイヌナズナで35種類,トウモロコシで33種 類,イネで33種類(3)のアクアポリン遺伝子が報告され ている.植物のアクアポリンは,主として4つのサブ フ ァ ミ リ ー に 分 類 さ れ る.細 胞 膜 型 ア ク ア ポ リ ン 

(PIP : plasma membrane intrinsic protein), 液胞膜型ア ク ア ポ リ ン (TIP : tonoplast intrinsic protein), NIP :   nodulin26-like intrinsic protein,SIP : small and basic  intrinsic proteinで構成される.このうち,PIPとTIP に属するアクアポリンは一部を除いて水透過性が高く,

実際に「アクアポリン(水の孔)」としてはたらくもの が多いと考えられる.NIPとSIPに属するアクアポリン についてはまだ機能が十分に解明されていないが,水透 過性が低い分子種が多いことから「アクアポリン」とし ての役割を果たしているわけではないと考えられてい る.たとえばイネのNIP2 ; 1はケイ酸(4)を専門に輸送す るチャンネルであることが明らかにされている.

イネの場合,水の輸送に密接に関わるPIPとTIPにつ いては,分子種によって器官局在性が異なる.PIP1 ; 1 やPIP2 ; 1は全身の多くの器官で発現が見られるが,

PIP2 ; 5やTIP2 ; 1は 根 で 多 く 発 現 し,PIP2 ; 7や TIP1 ; 2は葉身で多く発現する(3).TIP1 ; 1やTIP2 ; 2な どは浮きイネの節間が伸長する部位で発現量が増加す る(5).筆者らは最近,TIP3 ; 1が登熟中の籾で特異的に 発現することを見いだした.このように,各アクアポリ ンはイネ体内において発現時期や発現組織が異なり役割 分担をしているものと考えられる.また,根に着目した 場合,根のみで特異的に発現するPIP2 ; 4やPIP2 ; 5は 環 境 応 答 性 が 高 い の に 対 し,全 身 で 多 く 発 現 す る PIP1 ; 1やPIP2 ; 1などは環境の変化に対する発現応答が 鈍い(6).PIP1 ; 1やPIP2 ; 1などは通常の生育を行なうた めに必須の「構成的」なアクアポリンであると考えられ る一方で,PIP2 ; 4やPIP2 ; 5は構成的に発現するアクア ポリンだけでは必要な吸水量をまかなえない状況におい て,水分不足に陥らないように臨機応変に発現が誘導さ れ根の吸水機能を向上させるアクアポリンではないかと 考えられる.このように環境応答性といった観点からも 各アクアポリンの役割が分担されている可能性が示唆さ れた.

植物は様々に変化する環境下に置かれた場合に,アク アポリンの量的変動により体内の水分量を自在に調節し ている.たとえば日中の盛んな吸水・蒸散は,根のアク アポリン遺伝子発現量の増加によって支えられている.

12時間明期・12時間暗期の人工気象室で水耕栽培した イネ幼苗の場合,明期開始2時間後に根のアクアポリン 遺伝子発現量のピーク(タンパク質量としてのピークは さらに3 〜4時間後)が認められる(6).最も強く誘導さ れるPIP2 ; 5の場合,夜間に比べ100倍以上も遺伝子発 現が誘導される.このような根における発現量の日周変 動は,植物がもつサーカディアンリズムに支配されると 考えられてきた.しかし,このサーカディアンリズムに よる変動はそれほど大きくはなく,むしろ地上部からの 蒸散要求が根に伝わり日中の発現量を増加させることが 主要因であることが明らかにされた.明条件下であって も過湿により蒸散が抑制されている場合には,アクアポ

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今日の話題

リン発現量の著しい増加は認められなかったからである

(図1(6).この結果は,大気が乾燥してイネが盛んに蒸 散していると根のアクアポリン遺伝子発現が誘導される ことを意味する.地下部の乾燥ストレスや塩ストレスが 根の水透過性やアクアポリン遺伝子発現に及ぼす影響に ついては過去に多数報告がなされているが,地上部の環 境が地下部のアクアポリン発現量を制御する現象は初め ての報告であり,そのメカニズムについても興味がもた れる.また,この現象がイネ以外の植物にも共通して見 られるのかどうかについても興味深い.

作物が環境に応じて水分量を調節する仕組みとして,

上記のようなアクアポリンの量的変動は数時間レベルで の応答と考えられる.一方で,より早い時間帯での調節 機能も知られており,それはアクアポリンのタンパク質 レベルでの機能調節が関与していると考えられる.その 一例がアクアポリンの水の通り道(ゲート)の開閉調節 である.アクアポリン分子内の特定のアミノ酸残基のリ ン酸化などにより,アクアポリンの立体構造が変化して ゲートの開閉が調節される可能性が報告されている.環 境ストレスを受けたときにもこのメカニズムがはたらく のかどうか検討が進められている(2, 7).また別の機能調 節として,アクアポリンの細胞内局在性の違いによる水 透過性の調節機構がクローズアップされている(7).たと えば,PIPの場合,本来あるべき細胞膜上に正しく局在 しているか否かにより細胞の水透過性が著しく変化す る.塩ストレスなどを受けた際にPIPが細胞膜ではなく 細胞内の膜小胞にエンドサイトーシスにより取り込まれ

ることが報告されており(7),これが塩ストレス下におけ る根の水透過性の低下と密接に関わっている可能性があ る.

上記のような環境ストレスによるアクアポリンの量的 な変化,また開閉調節や細胞内局在性といった質的な変 化に加えて,数日単位の長いタイムスパンでは作物の形 態的な変化が重要である.植物が水分ストレスにさらさ れた場合,まずはアクアポリンや様々な関連遺伝子・タ ンパク質などの量的・質的な制御により初動的な対応を 行なうが,さらにストレスが長期間にわたる場合には,

根の表面積の拡大,葉身の形態的変化など様々な形態的 適応も行ないながら必要な水分量を確保する戦略をとっ ているものと考えられる.今後は,アクアポリンを含め た分子的・生理的な機能解析と並行して,形態的な変化 についても十分考慮しながら植物全体での水分ストレス 応答機構を明らかにしていく必要がある.

  1)  佐々木 成: 水とアクアポリンの生物学 ,中山書店,

2008, p86.

  2)  C. Maurel  : , 59, 595 (2008).

  3)  J. Sakurai  : , 46, 1568 (2005).

  4)  馬 建鋒ら:蛋白質 核酸 酵素,57, 1849 (2007).

  5)  Y.  Muto  : , 75,  114 

(2011).

  6)  J.  Sakurai-Ishikawa  : , 34,  1150 

(2011).

  7)  C. Maurel  : , , 12, 690 (2009).

(石川(櫻井)淳子,村井(羽田野)麻理,(独)農業・食 品産業技術総合研究機構東北農業研究センター)

図1蒸散要求による根のアクアポ リン遺伝子発現の誘導

明期におけるアクアポリン遺伝子発 現量の増加は加湿処理により抑制さ れることから,蒸散による地上部の 水分損失が何らかのシグナルとなり 地下部に到達し,根のアクアポリン 遺伝子発現を誘導すると考えられる.

Referensi

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