レポート課題2(解答例)
科目: 線形代数学IA及び演習(1‐3組)
担当: 相木
[1] 以下の行列の逆行列を(存在すれば)求めよ.存在しない場合は存在しないことを 示せ.
(i)
(3 0 2 −1
)
(ii)
−1 0 −2 1 12 0 0 −1 3
(iii)
0 1 −2 4 0 −2 4 −8 3 0 −2 4 1 −2 4 0
解答.
(i) 問題の行列をAとすると
det(A) = 3·(−1)−0·2 =−3̸= 0 なので逆行列が存在する.余因子行列Cof(A)は
Cof(A) =
(−1 0
−2 3 )
で与えられるので,
A−1 =−1 3
(−1 0
−2 3 )
である.
(ii) 問題の行列をBとおくと
det(B) =
−1 0 −2 1 12 0 0 −1 3
=
−1 0 −2 0 12 −2 0 −1 3
= (−1)
12 −2
−1 3
= (−1) (1
2 ·3−(−2)·(−1) )
= 1 2
となり,det(B)̸= 0なのでBは逆行列をもつ.ここで,上の計算において2つ目の等号 では第1行目を第2行目に足し,3つ目の等号では第1列目に関する余因子展開を用いた.
余因子行列Cof(B)は
Cof(B) =
3
2 2 1
−3 −3 −2
−1 −1 −12
1
となるので,逆行列B−1は
B−1 = 1
det(B)Cof(B) = 2
3
2 2 1
−3 −3 −2
−1 −1 −12
=
3 4 2
−6 −6 −4
−2 −2 −1
である.
(iii) 問題の行列をC とおくと
det(C) =
0 1 −2 4 0 −2 4 −8 3 0 −2 4 1 −2 4 0
=
0 1 −2 4
0 + 2·0 −2 + 2·1 4 + 2·(−2) −8 + 2·4
3 0 −2 4
1 −2 4 0
=
0 1 −2 4
0 0 0 0
3 0 −2 4 1 −2 4 0
= 0
となる.ここで,2つ目の等号において第1行目の2倍を第2行目に足して計算した.
det(C) = 0なので逆行列は存在しない.
□
[2] Snをn次対称群とし,τ ∈Snを任意の置換とする.σがSnに属す置換を全て動く とき,σ·τもSnに属す置換を全て動くことを示せ.つまり,
{σ·τ | σ∈Sn}=Sn
を示せばよい.
解答. 集合Aを
A={σ·τ | σ∈Sn} によって定める.示すべきことは,Sn=Aである.
Sn⊂Aであること
∀x∈Snをとる.このとき,
x=x·(τ−1·τ) = (x·τ−1)·τ
であり,x, τ−1 ∈ Snなのでσ·τ−1 ∈Snである.したがって,x = (x·τ−1)·τ ∈ Aであ
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り,Sn ⊂Aが示された.
A⊂Snであること
∀x∈Aをとる.Aの定義から
∃σ ∈Sn, x=σ·τ
が成り立つ.σ, τ ∈Snなのでσ·τ ∈Snであるのでx∈Snとなり,A⊂Snが示された.
以上からA=Snである.
□ [3] n次行列Aが
A=
a1 0 · · · 0 0 a2 0 · · · 0 0 0 . .. ... ... ... . .. 0 0 0 · · · 0 an
で与えられるとき,det(A)を求めよ.
解答. A = [aij]とおく.nに関する帰納法によって det(A) =a1a2· · ·an (1)
であることを示す.
n= 2のときは
detA= a1 0
0 a2
=a1·a2−0·0 =a1a2
なので(1)は成り立つ.
n ≥3に対して,n−1まで成り立つと仮定してnのときに成り立つことを示す.第1行 目に関する余因子展開より
det(A) =
∑n j=1
a1j∆(A)1j
である.ここで,1≤ i, j ≤ nに対して∆(A)ij = (−1)i+jdet(Aij) であり,Aijは行列A から第i行目と第j列目を除いて得られる(n−1)次行列である.今,行列Aの形から
a1j =
a1, j = 1, 0, 2≤j ≤n,
3
であるので,
det(A) =a1∆(A)11 となる.A11は
a2 0 · · · 0 0 a3 0 · · · 0 0 0 . .. ... ... ... . .. 0 0 0 · · · 0 an
で与えられる(n−1)次行列なので帰納法の仮定から det(A11) = a2a3· · ·an なので
det(A) =a1∆(A)11 =a1{(−1)2a2a3· · ·an}=a1a2· · ·an が得られ,(1)が成り立つことが示された.
□
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