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今日の話題 - 化学と生物

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化学と生物 Vol. 52, No. 3, 2014

光質が根粒菌の感染を制御する

フィトクロムシグナリングを介した根粒形成のメカニズム

多くのマメ科植物は根粒菌との共生の場である根粒を 形成する.根粒菌は,空気中の窒素をニトロゲナーゼ系 によりアンモニアへ還元し,窒素源として宿主植物へ供 給している.一方,宿主植物は,光合成で固定した産物 を炭素源として根粒菌へと供給している.このことか ら,植物へ照射される光の量が共生関係成立にとって大 事であることは容易に想像がつく.それでは光の質につ いてはどうなのだろうか? 本稿では光の質が根粒菌と マメ科植物の共生へ与える影響について,先人や私たち の研究について概観する.

古くから効果的な根粒形成には,植物へ十分量の光を 照射することが重要であるとされている(1)

.さらにある

種の植物では光の量を制限して根粒形成を調べる際に,

培地へグルコースやスクロースを添加すると根粒形成が 促進されることが報告されている(2)

.これらの事実は,

根粒形成や根粒機能の維持にとって光合成によるエネル ギー供給が重要であることを物語っている.

一方,根粒形成に及ぼす光の質の影響は光合成活性と は独立しているとの報告もある.光周期の明期の終わり に赤色光 (Red ; R) または遠赤色光 (Far-Red ; FR) を マメ科植物へ短時間照射して根粒形成を調べたところ

(EOD実験,end of day)

,FR照射した植物の根粒数は

有意に減少した(3)

.さらにEOD実験において,最後に

照射する光がFRの場合,R照射した場合と比較して根 粒数が減少することが示され,光受容体であるフィトク ロムの関与が強く示唆されていた(4)

.フィトクロムは

R/FR比受容にも関与していることが知られている(5)

Kasperbauerらはササゲを栽培する際にポットの土壌表 面に色の異なる土壌を施すことで,異なるR/FR比の光 条件を作り出し根粒形成を調査した.その結果,レンガ 赤土壌のポット(低R/FR)における根粒数は,灰白土 壌を施したもの(高R/FR)と比較して有意に減少して いた.また,圃場にマメ科植物を植える際に,複数の個 体を東西方向に植えた場合と南北方向に植えた場合では それぞれの個体が感受するR/FR比が異なることを利用 してダイズおよびササゲで根粒形成が調査された.その 結果,いずれの植物でも南北方向に植えた植物(低R/

FR)の根粒数は東西方向(高R/FR)に植えたものと 比較して有意に少なかった(4)

.以上の結果は,いずれも

R/FR比が低い条件では根粒形成が抑制される傾向にあ ることを示している.しかしながら,これらの実験では 葉の総面積や光合成光量子束密度などの光合成産物量へ 影響を与えるパラメーターが処理区間で微妙に異なって おり,光合成産物量の違いが根粒形成に影響を与えた可 能性を排除するのが難しかった.

そこで私たちは光の質が根粒形成に及ぼす影響を調査 するため,ミヤコグサの赤色光/遠赤色光受容体をコー ドするフィトクロムB遺伝子の変異体 ( ) を用い た(6)

.この 

 変異体の特徴は,地上部や根の生重量 および根粒数が野生型 (MG20) と比較して減少するこ とである.  変異体とMG20で接木試験を行うと,

地上部の遺伝子型が   の場合に根粒数の減少がもた らされていることが明らかとなった.マメ科植物の根粒 形成にphyBによるR/FR比受容が関係するか否かを明

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らかにするため,光合成光量子束密度を一定にした異な るR/FR比条件下(低R/FR=0.1,  高R/FR=∞)で植物 体を生育させた.その結果,低R/FR処理区で生育させ たMG20では,根のスクロース含有量が増加したにもか かわらず,根粒数は減少した.また,  変異体では 光条件に関係なく,根粒数の減少が見られた.これら は,phyBによるR/FR比受容が根粒着生に強く影響を 与えることを示唆している.次に植物ホルモンの一つで あるジャスモン酸 (JA) が光シグナル応答に関与してい ることやJAが根粒形成の負の調節因子であるという報 告から,根粒形成が抑制された低R/FR処理区生育 MG20に お け るJA応 答 性 遺 伝 子 ( ,  , 

) の発現を調べた.その結果,予想とは反対に高 R/FR処理区と比較して,それらの遺伝子の発現は抑制

されていた.また,  変異体では白色光下でもこれ ら遺伝子の発現はMG20と比較して抑制されていた.そ し てMG20と   変 異 体 で は 内 生JA量 に は 差 が な かったが,活性型JAである内生ジャスモン酸イソロイ シン (JA-Ile) 量が   変異体ではMG20より低いこと が判明した.これにより,  変異体や低R/FR条件 にさらしたMG20における根粒数の抑制は,JA-Ile生成 阻害が原因であると考えられた.上記の根粒形成の抑制 が見られた条件で生育させた植物にJA処理を行うこと で,感染糸形成や根粒原基誘導に関与する   (

) 遺伝子の発現が上昇し,根粒数が回復するこ とが確認された.これらの結果から予想される避陰反応 と根粒形成におけるphyBシグナリングのモデルを図

1

に示す.太陽光が降り注ぐ高R/FR条件では,phyBは 避陰反応を抑制し,JA-Ile増加により根粒形成が促進さ れる.一方で,ほかの植物の影になるような植物生長に 不利な低R/FR条件では,phyBの不活性化により避陰 反応が起り,JA-Ile減少により根粒形成が抑制される.

このように低R/FR条件において,宿主植物は限られた エネルギーの有効利用のために積極的に根粒菌との共生 を抑制することで避陰反応間とのエネルギー分配を制御 している.そしてこの結果として優先される避陰反応 は,根粒の形成や維持にとって必要なエネルギーを光合 成によって得るためにも必要不可欠な応答なのである.

  1)  E.  B.  Fred,  P.W.  Wilson  &  O.  Wyss : , 24, 46 (1938).

  2)  D. A. van Schreven : , 11, 93 (1959).

  3)  M.  J.  Kasperbauer,  P.  G.  Hunt  &  R.  E.  Hunt : , 61, 549 (1984).

  4)  M.  J.  Kasperbauer  &  P.  G.  Hunt : , 161,  97 

(1994).

  5)  H. Smith & G. C. Whitelam : , 20, 840 

(1997).

  6)  A.  Suzuki,  L.  Suriyagoda,  T.  Shigeyama,  A.  Tominaga,  M. Sasaki, Y. Hiratsuka, A. Yoshinaga, S. Arima, S. Aga-

rie,  T.  Sakai  : , 108

16837 (2011).

(永田真紀

*

1

,鈴木章弘 *

1, 2

, *

1佐賀大学農学部,

*

2鹿児島大学大学院連合農学研究科)

図1マメ科植物の根粒形成が光の質によって制御される仕組 み

日向のような高R/FR条件では,フィトクロムは活性化し,避陰 反応は発動せず,JAシグナルを介し根粒形成は促進される.一 方,ほかの植物の陰など低R/FR条件では,フィトクロムは不活 性化し避陰反応が発動する.結果として,宿主植物はエネルギー を効率良く利用するため,根粒形成を回避する.

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プロフィル

永田 真紀(Maki NAGATA)    

<略歴>2004年鹿児島大学理学部生命化 学科卒業/2009年同大学大学院理工学研 究科博士後期課程修了(理学博士取得)/

同年理化学研究所植物微生物共生機能研究 チーム研究員/2011年東京農業大学応用 生物科学部生物応用化学科研究員,理化学 研究所植物微生物共生機能研究チーム客員 研究員/2012年佐賀大学農学研究科非常 勤博士研究員<研究テーマと抱負>光質に 対する植物や微生物の応答,植物微生物相 互作用<趣味>映画鑑賞,読書

鈴木 章弘(Akihiro SUZUKI)    

<略歴>1990年北海道大学理学部生物 学科卒業/1995年博士(理学)北海道大 学/農業生物資源研究所COE特別研究員

(〜 1998年3月)/鹿児島大学理学部助手

(〜2005年3月)/佐賀大学農学部助(准)教 授,(鹿児島大学大学院連合農学研究科併 任,〜 2013年3月)/2013年4月より現職

<研究テーマと抱負>高等植物と微生物の 共生,光の質の違いに対する植物の応答

<趣味>エアバンド,バイク

Referensi

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