代数学 II 演習 2
松本 眞 R加群Mの部分R加群Nが直和因子(direct summand)であるとは、MのあるR 部分加群N0が存在してM =N⊕N0(部分加群としての直和、レジュメ5P下の方)
となることを言う。
[2-1]Kを体とし、V をK線形空間とする。V には基底が存在することを示せ。
[2-2]上の[2-1]において、V の任意のK部分線形空間は直和因子であることを示せ。
[2-3] R=Zとし、M =ZをZ加群と見る。このとき、Mの直和因子は、{0}とM しかないことを示せ。
[2-4]
0→N →g M →h L→0
をR加群の短完全系列とする。次が同値であることを示せ。
1. NがMの直和因子.
2. あるh0 :L→Mが存在してh◦h0= idL. 3. あるg0 :M →N が存在してg0◦g= idN.
[2-5] R=Z[√
−5]とする。Rのイデアル(2,1 +√
−5)は自由R加群でないことを示 せ。(従って、Rは単項イデアル整域ではない。)
[2-6]Rを環とする。Rn,Rmをそれぞれをランクn,mの縦ベクトルのなす自由R加 群とする。R加群準同形f :Rn→Rm に対し、あるA∈Mm,n(R)が存在して任意の x∈Rnに対して
f(x) =Ax
となることを示せ。また、そのようなAはただ一つであることを示せ。
[2-7] Rを可換環とする。A ∈Mn(R)が可逆行列、すなわちAB =BA=Enとなる B ∈Mn(R) が存在する必要十分条件は、det(A)∈R× であることを示せ。
[2-8] R を零環でない可換環とする。全射R 加群準同形Rn → Rm が存在すれば、
n≥mを示せ。
[2-9]Rを整域とする。単射R加群準同形Rn→Rmが存在すれば、n≤mを示せ。
[2-9’] Rを零環ではない可換環とする。単射R加群準同形Rn →Rmが存在すれば、
n≤mを示せ。
[2-10] R =Z, M :=Z2とする。(a, b)∈M が生成する部分加群がランク1の直和因 子である必要十分条件は、gcd(a, b) = 1であることを示せ。
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[2-11]M, N ⊂Lを部分R加群とする。同形M/(M∩N)→(M+N)/N を構成せよ。
[2-12] N ⊂M ⊂Lを部分R加群とする。同形L/M →(L/N)/(M/N)を構成せよ。
[2-13] R 加群準同形s1 : M1 → N, s2 : M2 → N が与えられた時、s1 とs2 の pull-back(あるいはcartesian product, あるいはfiber product)とは、pr1 :L→ M1, pr2:L→M2なるR加群とR加群準同形の組で、s1◦pr1=s2◦pr2を満たし、次の universalityを満たすもの:任意のp1 :T →M1, p2 :T →M2でs1◦p1 =s2◦p2を 満たすものに対し、h:T →Lが存在してp1= pr1◦h, p2 = pr2◦hを満たす。また、
そのようなhはただ一つである。このようなLをM1×N M2と書く。Lは {(m1, m2)∈M1×M2 |s1(m1) =s2(m2)}
と同形となることを示せ。
[2-14]
0→M1→M2 →M3 →0
をR加群の短完全系列とし、N3 →M3をR加群準同形とする。N2 :=M2×M3N3, N1 := Ker(N2→N3)とおく。このときN1 ∼=M1を示せ。
[2-15] 可換図式
0 → N1 → N2 → N3 → 0
↓ ↓ ↓
0 → M1 → M2 → M3 → 0
があり、二つの行はR加群の短完全系列とする。右の正方形においてN2がM2×M3N3 を与えることと、N1 →M1が同型であることとが同値であることを示せ。
[2-16] R加群M =M1⊕M2とする。pr1 :M →M1を(m1, m2)7→m1で定義する。
pr1◦pr1 = pr1を示せ。逆に、一般のMに対し、もしp:M →Mであってp◦p=p を満たすものがあれば(冪等元, idenpotentという)、M = Im(p)⊕Ker(p) となるこ とを示せ。
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