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使用済み自動車処理システムへの提言

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(1)

使用済み自動車処理システムへの提言

〜  認証機関と拡大生産者責任  〜

慶應義塾大学経済学部 山口光恒研究会 自動車パート

4年 亀井  弘子

4年 木村  哲也

4年 野村  哲也

4年 蛭田  伊吹

(2)

Ⅰ  使用済み自動車処理の現状と問題点

使用済み自動車(以下ELV:End of Life Vehicle)のリサイクルは、自動車が鉄、非鉄金 属を豊富に含んでいることや、部品市場がある程度発展していることから、ビジネスとし て従来から成立しており、他の製品に比べ、回収ルートも整備され、リサイクル率も高い。

しかし、その量が毎年 500 万トンと非常に大きいことから、依然問題視されている分野で ある。さらに近年では香川県豊島の最終処分場における鉛流出の問題から、適正処理の徹 底に関して、一層の取り組みが望まれている。以下ではまず従来のELV処理におけるフロ ーを見ていくとともに、その現状を述べる。

ELVのリサイクルフローは図で表すと以下の様になっている。

図表1  ELV処理フロー

出所:『使用済み自動車リサイクル・イニシアティブの策定・公表について』通産省 及び、『豊かな環境を次の世代に』日本自動車工業会  より作成

日本の従来のシステムでは、ELV はディーラーや中古車へ有償(最終ユーザーへ料金が 支払われる)で引き取られ、その後有価物としてシュレッダー事業者まで取引されていく 状態となっており1、現在のリサイクル率は75%〜80%と言われている2

1 これはあくまでも一般的な例であり、解体業者からシュレッダー業者の間で逆有償になっていたりする場合も存在 する。 

2  『豊かな環境を次の世代に』日本自動車工業会  p.27 より 

最終ユーザー

新車ディーラー及び

中古車ディーラー 新車ディーラー及び中古車ディーラー 解体事業者 シュレッダー事業者 最終処分︵安定型︶

部品として再使用

または

素材にリサイクル 素材にリサイクル

  ・・・  物の流れ   ・・・  金の流れ

(3)

次に、フローに基づく各主体の現状を述べたい。

(1) 最終ユーザー

最終ユーザーは、上記のシステムにおいては、自らが使用した自動車を販売会社である ディーラーへ持ち込む。一般的にその際ディーラーは最終ユーザーに対して対価を支払う が、廃車手続き3には諸費用が必要になるため、ここで逆有償になるケースも存在する。

(2) 新車ディーラー及び中古車ディーラー

各ディーラーはユーザーより引き取ったELVを解体事業者へ持ち込む。ここでは解体事 業者から見てELVは資源の塊であるため、有価物として引き取られる。

なお、最終ユーザーから解体事業者へ直接持ち込まれるケースもある。

(3) 解体事業者

解体事業者は、引き取ったELVから有用な部品や、非鉄金属、バッテリーなどを抜き取 り、有用な部品は中古利用(以下リユース)、または海外へ輸出され、非鉄金属、バッテリ ーは素材としてリサイクル(以下マテリアルリサイクル)する。リユース製品やリサイク ルされた製品の販売収入が解体事業者の収入となる。

解体事業者にてリユース・マテリアルリサイクルされる割合は自動車一台全体の中で

25%程度なっている4。また、日本の解体事業者は約5,000社と推定されている5

(4) シュレッダー事業者

シュレッダー事業者とは、主にマテリアルリサイクルを行う主体であり、具体的には、

解体事業者から引き取ってきたELVを粉々に潰すなどして、鉄、非鉄金属を分別する。可 能な限り鉄、非鉄金属を分別した後の残りは、シュレッダーダストと呼ばれる産業廃棄物 となり、最終処分場にて埋め立てされる。実際は埋立処分事業者へ処理費を支払い、引き 渡す形となる。シュレッダー事業者の収入は鉄、非鉄金属の販売によることとなる。シュ レッダーダストは解体事業者より引き取ってきたELVの25%程となっており、シュレッダ ー事業者は残りの75%をマテリアルリサイクルしていることになる6。また、日本のシュレ ッダー事業者の数は約140社と言われている7

ELVのリサイクルは上述のように、そのシステムがある程度出来上がっている。しかし、

年間500 万台とELVの量が多いことから、75%〜80%というリサイクル率をさらに上昇さ せなくてはならない。と同時に、ELV に関してはこれ以外にもさまざまな問題があり、近

3 廃車手続きを行うことで、最終ユーザーは自動車の所有権を手放すと共に、自動車税の支払い義務もなくなる。 

4  『使用済み自動車リサイクル・イニシアティブの策定、公表について』  通産省作成資料  p.Ⅰより 

5  『使用済み自動車処理技術の開発と実証に関する取り組みについて』  日本自動車工業会  資料 1 より 

6  注 5 に同じ 

7  注 4 に同じ 

(4)

年それが顕在化している。以下Ⅰ章の残りでは、そうした問題を明確にし、対策への問題 提起とする。

ELVが注目された契機は、1990年に発覚した香川県豊島のシュレッダーダストからの有 害物質による汚染問題である。同時にこのころから処分場の不足といった問題も浮上して きた。上述のように、ELV は販売事業者等を経て解体事業者、シュレッダー事業者等に渡 り、そこで解体・破砕処理される。この過程で有用部品がリユース、鉄・非鉄金属等がマテ リアルリサイクルされ、残りがシュレッダーダストとして埋め立て処分されている。使用 済み自動車の処理ルートは以上のように確立されているのだが、以下に述べるような問題 が明らかになってきている。

1.最終処分場の逼迫

2.ELVの有価物から逆有償化への変化

3.シュレッダーダストに含まれる有害物質による汚染 4.不適正処理・不法投棄

5.不明瞭な静脈産業8の実態

1.の最終処分場の逼迫という問題の背景は二点ある。まず、近年全体的に産業廃棄物 最終処分場が少なくなっていることである9。これに加えて、廃棄物処理法施行令の改正に より、1995 年4月から使用済み自動車から発生するシュレッダーダストについては、それ までの安定型ではなく管理型最終処分場で処分することが義務づけられたことである。 2 によると、安定型処分場は漸増しているのに比べ、管理型処分場は明らかに減少して いる。つまり、管理型においては、最終処分場の新規立地が難しくなっているのである。

最近ではそれがさらに顕著になってきている。

8 静脈産業とは、ELV 処理を行う産業のことであり、図表 1 においては「解体事業者」、「シュレッダー事業者」、「最 終処分」の部分を示す。 

9 『産業廃棄物の排出及び処理状況等について』によると、1996 年時点の全国の産廃最終処分場残余年数は 3.1 年となっており、首都圏ではさらに少なく、1.0 年となっている。 

(5)

図表2  産業廃棄物最終処分場残余容量(単位:万 )

0 5000 10000 15000 20000 25000

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 安定型

管理型 合計

出所:『産業廃棄物の排出及び処理状況等について』  厚生省ホームページより

2.のELVの有価物から逆有償化への変化は、1.の最終処分場の逼迫と密接な関係が ある。従来、解体事業者やシュレッダー事業者はELVを有価物として金銭を支払って引き 取り、解体した中古部品や、マテリアルリサイクルされた鉄、非鉄金属の販売収入を通じ て利益を上げていた。しかし上記の通り、シュレッダーダストは管理型の最終処分場で処 分することが義務づけられたことで処分費用が高騰し、これまで自動車を有価物として引 き取ってきた解体事業者は、逆に処理費用として料金を取らないと適正な処理ができない という逆有償の状況になっている。以下図表2 は逆有償化した場合のフロー図である。

図表 2  逆有償化した際のELV処理フロー(現在)

出所:図表1に同じ

最終ユーザー

新車ディーラー及び

中古車ディーラー 新車ディーラー及び中古車ディーラー 解体業者 シュレッダー業者 最終処分︵安定型︶

部品として再使用

または

素材にリサイクル 素材にリサイクル

  ・・・  物の流れ   ・・・  金の流れ

(6)

3.のシュレッダーダストに含まれる有害物質の主要なものは鉛であるが、この点に関 しては自主行動計画にもあるように有害物質使用量の数値目標が明確に規定されている。

しかしながら、使用量の削減だけでなく使用済み自動車の処理プロセスにおける適切な処 理を同時に進めていく必要がある。

4.の不適正処理と不法投棄は、シュレッダーダストの管理型処分場における処分の義 務付けによる最終処分場の逼迫、それに伴う処理費用の高騰という問題が大きく関わって いる。従来、ELV は有価物として取引されてきたが、埋め立て処分にかかわる規制の強化 に伴い処分費用が上昇し、処理を依頼する側が費用を支払う逆有償化が発生し、不適正処 理、不法投棄増大の懸念が生じており、対策が必要になってきている。上記の 4 つの問題 点に関しては、通産省が使用済み自動車リサイクル・イニシアティブを策定し、それに従 い関係者の取り組みが始まっている。以下図表 3 は通産省の使用済み自動車リサイクル・

イニシアティブにおける数値目標である。

図表3  リサイクルならびに有害物質使用の数値目標

目標年 2002年以降 2015年以降 新型車(重量) リサイクル可能率90%以上

使用済み自動車(重量) リサイクル率85%以上 リサイクル率95%以上 埋立処分容量(容積) 1996年の5分の3以下 1996年の5分の1以下

目標年 2000年末までに 2005年末までに 鉛使用量(重量) 1996年の2分の1以下 1996年の3分の1以下

(参考  通産省  使用済み自動車リサイクル・イニシアティブ)

しかしながら、5.の不明瞭な静脈産業の実態ということに関しては、現状では特別な 対応がとられていない。この問題は、これらの実態を十分に把握できていないというとこ ろに問題がある。現在全国で5000社以上の解体事業者と約 140のシュレッダー事業者が存 在している。欧州における解体事業は認証制度になっているが、日本では解体事業は誰で も、どこでも、どんなやり方でもできるという状態である。つまり日本では5000社以上も の解体事業者と、約 140 社のシュレッダー事業者が組織化されていないのである。そのた め使用済み自動車が適正に処理されているかを把握することが難しくなっている。廃棄物 処理法上、排出事業者は、産業廃棄物を自らの責任において適正に処理するか、または埋 立事業者に適正に処理を委託しなければならないことになっている。しかし現状では、よ り安い処理料金といったことにのみ注目して解体事業者、シュレッダー事業者が選ばれる ことも少なくない。このような状況は、悪質な解体事業者等による不適正処理につながる のみならず、適正処理を行おうとする事業者の操業を困難にするといった問題にもつなが る。さらには、本来適正な処理コストが支払われていたら選択されていたかもしれない高 度処理やリサイクル等の可能性を少なくすることにもなり、高度な処理技術やリサイクル 技術の開発・普及に対する実質的な障壁になっているとも考えられる。そこでⅡ章では、

(7)

現在何の対策もとられていない、解体事業者とシュレッダー事業者に焦点を当てて具体的 な提案をしたい。

Ⅱ  新しい E L V リサイクルフローの提言

解体事業者が組織されていないことによる問題を解決する為には、逆有償の場合のみで はなく静脈産業であるすべての解体事業者、シュレッダー事業者を組織化すべきであろう。

現段階においては逆有償の場合のみ、解体事業者等の認定制度があり、県(政令市)によ って業許可が与えられるシステムになっているが、これはあくまで逆有償の場合であり、

特に「解体事業者」、「シュレッダー事業者」としての組織がつくられているわけではない。

よって我々は解体事業者・シュレッダー事業者を統括する組織を作ることを提言する。そ の組織をEnd of Life Vehicles Organization(以下ELVO)と呼ぶことにし、その組織に解 体事業者・シュレッダー事業者が加入する為にはある程度のリサイクル率を達成していな ければならないなどの条件を設けることにする。この認証システムを設けることによって 社会全体のリサイクル率の水準が自ずと高められ、最終的にはシュレッダーダストの埋め 立て量を減量することを目的とする。ELVO は容器包装リサイクル法を施行する為にある 日本容器包装サイクル協会に似通っていると言え、容器包装リサイクル法と同様にこの新 しいシステムでは、大前提にメーカーが自分の生産した自動車をライフサイクルを通して 製品が適正に処理される責任を負うこととする10。つまり、自動車がどのユーザーに渡り、

どこで処理されたのかを明確にしなければならないのである。もちろん既に自社ブランド のELVが適正処理されていることを確認できるシステムをもっているメーカーの場合はな らばこの義務を課されても問題はないが、まだないメーカーの場合、従来のままのシステ ムでは自社の生産した自動車が適正処理されているかどうかが不明瞭なだけではなく、適 正処理をせずに処理料金だけを安くしている解体事業者などが多く選択されるという逆選 択の状況が発生する可能性がある。現にある解体事業者は逆有償にしないことをだけをモ ットーに手広く商売を行い、廃油などを不法に垂れ流ししている作業場で解体業務を行っ ているケースもある11。このような逆選択の状況の改善、ひいてはメーカーが上記の責任を 果たすためにはELVOのような組織が必要なのである。以下では、ELVOを組み込んだ新 しいシステムのフローを説明する。

10 この考え方は OECD における拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility)の提案に基づいている。

http://www.oecd.org 

11  日刊自動車新聞  1996 年 5 月 20 日 

(8)

  まずこのフローでは新車がメーカーから新車ディーラーに引き渡され、その新車の移動 をメーカーがELVOに登録する。この時点からELVOにその自動車の情報が記録されるよ うになり、自動車の所有者が変わっていく度にその履歴が情報として ELVO に蓄積されて いく。新車は個人A(新車ユーザー)へと売り渡され、個人Aはメーカーに新車の代金とそ の購入時点において処理される同メーカーのELVの処理費用を支払うことになる。個人A は新車を何年か使用した後、この自動車をディーラーに持ち込み、ディーラーは無料もし

入札

認証 入札

認証

自動車メーカー 新車ディーラー 個人A

︵新車ユーザー︶ 中古車市場 個人B

︵最終ユーザー︶ 新車ディーラー中古車ディーラー

ELVO

(End of Life Vehicle Organization)

解体事業者プール

部品として再使用 または 素材にリサイクル シュレッダー事業者プール

素材にリサイクル 埋め立て

図表 4   新しいELVリサイクルフロー提案

(9)

くは有価物としてこれを引き取る。この時点で、ディーラーはその自動車の所有者になっ たとし、ELVO に登録する。そしてその自動車が中古車として販売可能と判断した場合、

中古車市場に乗せ、またそこからその自動車が個人Bへと販売されていく。ここでも個人B へ販売されたことが ELVOに登録される。このようにして自動車は最終ユーザーまで取引 されていくのだが、新しいフロー図(図表4)では簡略化の為、最終ユーザーを個人Bとす る。個人Bからディーラーに自動車が渡ると、ディーラーはその自動車を再び中古車市場 に乗せる価値がないと判断し、ここでこの自動車はELVとなる。従来ならば今まで取引の あった解体事業者に引き渡すところだが、新しいシステムではここでもELVOに登録する。

この際、例えば BMW のように既に高いリサイクル率を確保出来ている適正処理のルート を持っているメーカーの場合は独自のルートを使っても構わないが、そういったルートが 確立されていないメーカーの車の場合はELVO に登録することで適正処理をする解体事業 者を紹介してもらえる。ELVO にて処理先が決定すると、ディーラーから直接解体事業者 へとELVが運ばれ適正処理が行われる。その後にELVはELVOに認証されたシュレッダ ー事業者に運ばれ、処理される。最後にELVO に登録された車が処理済ということで抹消 されることになり、ELVが適正処理されたということがわかる。

では、各主体の役割はどのように変化していくのか。それを見ていくとともに、各主体 に及ぼす影響やメリットを挙げて行きたい。

(1) 自動車メーカー

自動車メーカーにおいては、ELVO を設立することに付随し、拡大生産者責任を適用さ せるため、ELV に関する処理費用を支払わねばならない12。それによって自動車メーカー に働くインセンティブとしては、自らの支払いを減らすか、または有償での取引から利益 を得るために、最終処分に至る量が減るような設計を行うことや、リサイクルが低コスト で最大限に出来るような設計を行うことが挙げられる。

(2) 最終ユーザー

最終ユーザーは自らが使用したELVを販売会社へ持ち込み、販売会社は最低無料でそれ を引き取ることとなる。

ELVの処理費用についてはELVOを通じて逆有償を解消されるので、最終ユーザーが支 払う廃車費用がゼロ以上となる。そのため、不法投棄の減少に対して一助を与える事とな る。

(3) 販売会社(新車ディーラー及び中古車ディーラー)

販売会社では、ELV を無料で最終ユーザーから引き取った後、従来ではその処理をする

12 ここでの支払いは一時的な「支払い」であって、最終的な負担とは必ずしもならない。詳細については、『わが国 の廃棄物政策と拡大生産者責任』  山口光恒  pp.7-10 を参照願う。 

(10)

解体事業者に引き渡すこととなっていたが、新システムでは ELVO にまず登録する。その 上でELVOより指定された解体事業者にELVを引き渡すという形を取る。

ELVOによって静脈産業が組織化されると、販売会社にとっては、ELV の引き取り先が 明確化される。従来では相対取引であったため、逆有償の際の処理費用が安定的でなかっ たが、ELVO を通すことで、低コストで適正処理をしている解体事業者を容易に見つけ出 し、そこへ引き渡すことが出来る。また、逆有償化している処理費用を ELVOが負担する ため、販売会社にとっては必ず無料で引き取ってもらえることとなり、ここでも不法投棄 減少に効果が望める。

(4) 解体事業者

解体事業者は適切な処理をし、かつ高いリサイクル率を達成しているかどうか、ELVO に認証を受ける。ELVOの認証を通ると、優良な解体事業者であることが証明され、ELVO での入札に参加が可能となる。入札でELVリサイクルの権利を取得すると、一定量のELV を引き取る事ができる。

解体事業者においては、入札において競争が発生するため、それぞれの事業者に努力が なされることにより、全体的な適正処理の底上げ、ひいてはリサイクル率の上昇が図られ る。また、入札によりELVリサイクルの権利を取得した解体事業者にとっては、確実に一 定量のELVを引き取ることができるため、事業の安定化が図られることとなり、ひいては 低コスト化、適正処理徹底のインセンティブとなる。

(5) シュレッダー事業者

シュレッダー事業者は、解体事業者と同様の流れとなっており、認証、入札という手順 を経て、解体事業者から一定量のELVを受け取ることができる。

シュレッダー事業者にとっては、解体事業者と同様に入札でリサイクルの権利を決定し、

かつ権利を取得すれば一定量のELVが確保できることから、そこには低コスト化、及び適 正処理徹底へのインセンティブが働くこととなる。

(6) ELVO

ELVO は入札と認証を行い、かつ情報のデータベース機能と資金配分機能を持つ機関で ある。具体的な入札の方法は、まず前年度までの実績から、シュレッダー事業者や解体事 業者は1tあたりの価格(または処理費用)を提示し、そこで入札価格を決定する。決定さ れた入札価格と次年度におけるELVの量の予測をもとに、次年度の処理費用を計算し、メ ーカーからその料金を徴収する。メーカーに費用徴収をする場合は、各メーカーの自動車 のリサイクル可能率を指標として、費用を分割する。

以上各主体の役割とその効果を述べてきたが、この新システムによって社会的に達成さ

(11)

れることを挙げると、

・  認証制度による各主体の質の安定化からの高いリサイクル率の達成

・  静脈産業の事業安定化(量、コストの安定化)

・  逆有償の際の適正な処理費用の徴収、転嫁(文末資料を参照)

となる。

Ⅲ  まとめ

本稿における提案は、法制化を目的としているものであり、それに当たって最も重要と なる項目を挙げ、それをもって簡単ながらガイドラインとしたい。

1.認証機関の設立

静脈産業を統括できる認証機関を設立する。この認証機関が持つ機能としては、「静脈 産業の事業者に対する認証」、「入札機能」、「情報データベース機能13」「資金配分機能」

が挙げられる。

2.拡大生産者責任の適用

OECDで議論されている拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility)14を適 用させ、適正処理の責任を自動車メーカーに負わせる。費用負担については補論として 載せている文末資料を参照のこと。

以上の二点が最も重要と考えられる項目であるが、法制化には多岐にわたって詳細の 問題点が存在することは確かである。ここでは解決の方策まで議論をしているには至ら ないが、以下にそれを記述し、詳細な議論の問題提起としたい。

・  逆有償の際の費用徴収方法

・  入札における取引費用の問題

・  フリーライダーの存在が可能かどうかの検証

・  マニフェスト制度全体の是非を含めた見直し

ELV リサイクルは、すでに達成されている高いリサイクル率から見ても、産業廃棄物 の適正かつ理想的な処理システムの例を示せる可能性を持っている。産業廃棄物の中に 占める使用済み自動車の割合は比較的低いが、循環型社会というものを目指す際に、最

13 データベースに当たっては、入札等によって得られた各産業の情報、及び適正処理されているかどうかの情報 などが蓄積されていく 

14  詳細は、 Extended and Shared Producer Responsibility Phase 2 FRAMEFORK REPORT  OECD  を参照 

(12)

も重視されるべきであろう動脈産業と静脈産業の連携を図るためには、その間を取り持 つ主体が必要であると我々は考えるのである。

<参考文献>

・  『使用済み自動車リサイクル・イニシアティブの策定・公表について』

1997年5月23日  通産省

・  『豊かな環境を次の世代に』  1999年10月  社団法人日本自動車工業会

・  『使用済み自動車処理技術の開発と実証に関する取り組みについて』

1996年3月21日 社団法人日本自動車工業会

・  『欧米における使用済み自動車流通実態調査』  1999年3月  社団法人自動車工業会

(欧州ELV流通実態調査チーム・米国ELV流通実態調査チーム)

・  『産業構造審議会廃棄物処理・再資源化部会廃自動車処理・再資源化小委員会 中間報 告』  1996年4月1日  環境立地局再資源化対策室 機会情報産業局自動車課

・  『廃自動車のシュレッダーダスト 埋め立て処分方法が強化』

1996年5月20日 日刊自動車新聞

・  『BMWジャパンのリサイクル』  2000年3月1日  BMWジャパン広報室

・  『環境報告書1998』  1998年12月  トヨタ自動車株式会社

・  『環境報告書1999』  1999年8月  トヨタ自動車株式会社

・  『JAMAGAZINE』  1999年3月  社団法人自動車工業会

・  『1999日本の自動車工業』  1999年5月  社団法人自動車工業会

・  『使用済み自動車の現状と課題』  沼尻  到

<インターネットリソース>

・  『産業廃棄物の排出及び処理状況等について』  1999年2月 

厚生省  水道環境部産業廃棄物対策室 http://www.mhw.go.jp/search/docj/houdou/1102/h0218-3_14.html

・  Extended and Shared Producer Responsibility Phase 2 FRAMEFORK REPORT  1998.5.13 OECD  http://www.oecd.org NV/EPOC/PPC(97)/20/REV2

・  『わが国の廃棄物政策と拡大生産者責任』  1997年7月  山口光恒 http://www.econ.keio.ac.jp/staff/myamagu/

<お世話になった方々>

梶原  拓治  様 トヨタ自動車株式会社  プラントエンジニアリング部  主査

加藤  忠利  様 トヨタ自動車株式会社  環境部  渉外グループ  東京技術部  担当課長 伊勢  淳  様  豊田メタル株式会社  常務取締役

水野  貞雄  様  豊田メタル株式会社  ASRリサイクル事業部  参与

(13)

*****  様  西日本オートリサイクル株式会社  代表取締役

(社名50音順)

(14)

Annex

逆有償の際の費用徴収方法について

本論で挙げられた我々の提案では、拡大生産者責任により、逆有償の際の費用がメーカ ーから支払われることとなっている。つまり、価格内部化による先払いとしている。以下 では、費用徴収の議論に際して詳細な議論が必要なことを認識しつつも、我々がなぜ本稿 にて価格内部化を選択したのかを説明したい。

まず、本論のほうでも挙げたように、価格内部化と最終ユーザーによる後払いの二つの 費用徴収方法においては、本来的に同値である15。そして、費用負担の割合は、需要や供給 の価格弾力性によって、まったく別の方向から決定されるのである。

そして、費用徴収の問題とは別に、負担の問題として自動車に置き換えた場合、自動車 の価格弾力性はいかなるものとなり、かつそれがどのように影響するのか。自動車はブラ ンドイメージが強いため、価格に対する行動の変化がおきにくいと考えられる。つまり、A 社のB車という自動車が欲しい個人にとっては、B車の値段が少々上がろうともB車を買 うことは変更しない。つまり、全体としてみても、すでにある B 車への需要が価格によっ て大幅に変化する可能性は少ないと考えられる。そして、実際の支払額を考えてみると、

現在の使用済み自動車から発生するシュレッダーダストの処理費用の一例では、輸送費を 含めた場合、地域差はあるにしても、トンあたり 4,000 円〜21,000 円となっている16。自 動車の新車の値段は平均的なセダンで 100 万円を超すため、新車購入費用に比べればその 処理費用は多くて2%強であるが、中古購入費用と比べた場合は、その費用が比較的高い割 合となってしまう。

ここで、消費者心理を考えると、後払いにした場合中古車を買うディスインセンティブ が発生することになってしまう。自動車は中古市場が他の製品より比較的活発であること によって、製品を長く使う習慣が生まれているにもかかわらず、それを阻害するような制 度は好ましくないことは明らかである。

しかし、先払いにすることでの大きな問題が存在することは確かである。自動車という 製品は、生産と廃棄の間にタイムラグが存在し、新車時の処理費用と廃車時の処理費用が 違ってしまうということがある。自動車の場合は現在の状況を見てみると、日本国内の保 有台数が7000万台であることに対して、ELVは毎年500万台と、上記のタイムラグがほ ぼ12年となっている。これでは先払いにするとその自動車の適正な処理の料金徴収ができ ない。これに対して我々は、年金方式で資金循環を行うことを提言したい。つまり、これ までの日本の年金のように、現在徴収する資金をそのまま現在処理する資金に当てるとい うものである。

15  『わが国の廃棄物政策と拡大生産者責任』  山口光恒  pp.7-10 

16  『使用済み自動車処理の現状と課題』  沼尻到 

(15)

以上の議論より、費用徴収方法について、我々は価格内部化による先払いによって費用 を徴収し、年金方式でそのリサイクル資金を配分することを提言する。まったく持って議 論の余地が残ることは間違いないが、我々のこの提言がELVリサイクルの議論に一助を与 えられることができれば、本望である。

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