基礎数学A 第12回
12-1
2.7.2 座標の回転 【試験範囲外】 【動画】
ここからは三角関数が出てきて少しだけ難しくなります。本当に数学の苦手な人は飛ば しても試験に影響はありません。
行列の応用の例として座標の回転の話をしておきましょう。今、下の図のように、ある点 を角度だけ回転させた 2つの座標で見たとします。回転後の座標( ,x y )で見ると点は元 の座標( , )x y の位置から動いたように見えます。
x’
y
x y’
(x, y) (x’, y‘)
図1 座標の回転
この2つの座標の値の関係は以下のような式で与えられます。詳しい説明は省略します が、あまり気にする必要はないでしょう。重要なのはこれが行列を使って書かれるところで す。
公式
座標を だけ回転させると点( , )x y は以下の位置になる。
cos sin
sin cos
x x y
y x y
= +
= − +
この関係を、行列を使って書いてみましょう。掛け算の関係を使うと以下のようになります。
cos sin
sin co s
cos sin sin
s co
x y
x
x
y y y
x
+
= =
− + −
ここで、
x y
=
x , cos sin sin cos
=
−
U , x
y
= x
とすると、上の式は以下のように書けます。
= x Ux
この行列Uを回転行列といいます。今は2次元での回転ですが、3次元などの回転もこのよ うに回転行列を使って表すことができます。以下の例を見てみます。
例
x座標を 3(60度)回転させてxにする。(x =Ux) 1)回転行列Uを数式で表せ。
cos( 3) sin ( 3) sin( 3) cos( 3)
= −
U または、 cos 60 sin 60
sin 60 cos 60
= − U
基礎数学A 第12回
12-2
角度 =60をラジアンという単位で表したのが = 3です。覚えておくのは、 =180 という対応です。知っている人も多いと思うので、以後はこのラジアンという表示法で書い て行きましょう。
2)回転行列Uを数値で表せ。
0.5 0.8660 0.8660 0.5
= −
U
三角関数を使っていますので、これを数値で表してみましょう。例えばcos( 3)=0.5、 sin( 3)=0.8660ですが、これもパソコンを使って調べることができます。
まず、データとして図2のように入力します。
図2 行列の数式での入力
ここで、はソフトの中では「pi」と入力します。(角度にを使おうと思うと、sind(60), cosd(60)という方法もありますが、あまり使わないでしょう。)
図3 実行画面と結果
残念なのですが、行列計算プログラムは電卓なので、 などは表示できません。
3)逆に− 3(-60度)回転させた回転行列を求めよ。
cos( 3) sin ( 3) cos( 3) sin ( 3)
sin ( 3) cos( 3) sin ( 3) cos( 3)
t
− − −
=− − − = − =
B U
逆に回転させると、回転角度は− 3です。2番目の等号は、
cos(− =x) cos , sin(x − = −x) sinx
という関係を使っています。これを見ると行列Bは、回転行列Uの転置行列になっていま す。
4)tU=U−1であることを示せ。
1
tU=U− であることを示すには、逆行列の定義であるU Ut = tUU=Iの関係を示せばよ いでしょう。実際調べてみるには、ソフトに、u*mt(u)または、mt(u)*uと打ち込んでみま
基礎数学A 第12回
12-3 しょう。結果は以下のようになります。
図4 出力結果
t =t =
U U UU I のような関係を満たす行列を直交行列といいます。つまり、回転行列は 直交行列である、といえます。
5)回転行列の行列式U の値を求めよ。
=1 U
ソフトの入力では mdet(u)です。実際にやってみて下さい。
6)回転行列の縦・横の成分を2乗して足すといくつになるか。【Skip OK】
11 12
21 22
u u
u u
=
U u112 +u122 =u112 +u212 =cos2+sin2 =1
回転行列にはまた、1行目と2行目または、1列目2列目の間で、以下のような性質もあり ます。
11 21 12 22 11 12 21 22
cos ( sin ) sin cos 0 cos sin ( sin ) cos 0 u u u u
u u u u
+ = − + =
+ = + − =
7)以下のx座標の点はx座標ではどこに移るか。(x =Ux) 1
2 x y
=
2.2321 0.1340 x
y
= =
Ux
ここでは、以下のように入力して、u*xとして実行します。
図5 入力画面
8)x =Uxを逆に x= の形で書くとどうなるか。
両辺に左からU−1 を掛けると
右辺:U Ux−1 =Ix=x 左辺:U x−1 よって、x=U x−1 となります。
基礎数学A 第12回
12-4
9)以下のx座標で与えられる点はx座標のどこから来たか。(x=U x−1 ) 2
5 x y
=
1 3.3301
4.2321 x
y
− −
= =
U x
データとして、x’という行列を作り、minv(u)*x’で計算できます。
注)8)、9)でU−1の代わりに、Uを使っても同じです。
演習
x座標を45度( 4)回転させてx座標にする。(x =Ux)
1)回転行列Uを数式と数値で表せ。
数式
=
U 数値
=
U 数値の解答で
① 0.7071 0.7071 0.7071 0.7071
−
②
0.8660 0.5 0.5 0.8660
−
③
0.7071 0.7071 0.7071 0.7071
−
2)以下のx 座標の点はx 座標ではどこに移るか。
2 5 x y
=
x y
= =
Ux
① 4.8595 2.3214
②
4.9497 2.1213
③
4.8595 2.3214
−
3)以下のx 座標の点はx 座標のどこから来たか。
3 2 x y
=
x 1
y
= − =
U x
① 0.7071 3.5355
−
②
0.7071 3.5355
③
0.7071 3.5355
−
【動画】
【C.Analysis: 基礎数学A_12】