き {
f 平成25年度学長裁量経費報告書
学類・大学院の実践的カリキュラム
の充実のために
福島大学人間発達文化学類
201 4年3月
** 目 次 **
はじめに_.__.___.____..__.____._._.___._.__.___.,___._._____..__...・1・
第一部 学校ボランティアの取り組み.____...._____._._._..____._...__.___.・3・
はじめに 一学校ボランティアの意ee−一............_........_..............__..............._....__...・3・
1 活動の状況................._....._...................._.....__...........................................∴.・...・・..・・..°4
2 学生の「学び」の姿.__._._._...______..______..___.._.._._・∴……・……・.°7
3 これからの学校ボランティア__..._..._...___.__.____.._.._____._.._.・10・
4 学生のボランティア体験記..._____._.__.__..._.___.._.______.___...・16・
第二部 就職直前教員講座の取り組み....._....,,....................,........_................................_.._・23・
はじめに___._.__.____._._._____.._.___..___...______._.___.__.._・23・
1 講座コーディネーターによる説明......∴..........................................................................・24・
2 斎藤「4月1日」を安心して迎えるために.____._..___..___.._.__..1__._._・25・
3 1年間のスケジュールをつくる____;.__._._____._____.._.____.__..,・25・
4 まとめ(図解化).__..___..__....___....,_.___._..__.._.__.__.._.__..・25・
5 学生の感想........................._....._.................__...__........._.....................................・26・
おわりに_._.____.._._..___..______...___..___...______.___._.._.._・29・
第三部 教職大学院の事例調査..........._...._..........__..._......_..........._................._.........・ 31・
はじめに____._._.___.___..______...____..__.__.____.._.._____.._・31・
1 先進校の事例調査..............1.............................._._........._.._................._......_._._.・32・
2 成果と課題.......................................................................................................................・40・
はじめに 1
本報告は、大学・大学院の実践的カリキュラムを充実させるためには、どのような施策が必要か を探求するために、実務家教員の力を借りて実施してきた「学校ボランティア」のこの2年間の 実施状況と本年度開催した「就職直前教員講座」の取り組み状況、そして実務家教員からみた「教 職大学院の実態」を明らかにしようとするものである。
ところで大学・大学院の実践的カリキュラムの充実を考えるに至った経緯を述べておこう。
第一に、本報告のなかでも紹介されるし、大学関係者には周知のことだが、文科省が1県1教 職大学院の方針を明らかにしたことが背景にある。教職大学院とはなんぞやという元々の問題は
あるが、福島大学においても教職大学院の設置を検討することが避けて通れない状況になりつつ ある。その際、制度設計をどうするかはそれとして大きな問題だが、それ以上に制度設計された 内容をどのように実践していくかがもっと大きな問題だと考えている。なぜなら、どんなに優れ た制度設計がなされても、それを実践する側の教員(研究者教員と実務家教員)が、異見を超え て積極的に手をつなぎ、学生・院生を「実践的j「省察的」に育てない限り、絵に描いた餅にしか ならないからである。そう考えると、これまで大学が不得意としてきた実践家サイドの見方を、
制度設計する段階から活かすためには、実務家がどのような得手・特質をもっているのかを実践 的に理解することが必要となってくる。その例として本報告書の執筆者の一人、齋藤幸男(教育 実践コーディネーター)が取り組んできた「学校ボランティア支援活動」がある。
また、教職大学院の現状がどうなっているかを検証することも必要だと言える。しかしそれは、
研究者教員から見たそれだけでは不十分である。この点でも実務家が教職大学院の現状をどう見 えるかが将来の具体的な制度設計のときに必要となるであろう。これまでの大学院の実践的カリ キュラムは、まったく教育実践に疎い研究者教員が作って、大学院生に押しつけてきたのであっ て、その延長線上に新たな実践的カリキュラムを作っても、空疎な中身にしか、あるいは、理念 的な中身にしかならないだろう。それを回避する手段は、本気に教育改革、教師改革を願う実務 家教員と手を握り、どのような実践的カリキュラムが「現場」に必要なのかを検討することが必 要となろう。それに応えようとしたのが、執筆者の二瓶洋允の教職大学院分析である。
第二に、第一の論点の中で、うっすらと見えてきたものが、現在いる実務家人財のネットワー クができなかということであった。現在進行形の定員削減・人件費削減は、学類・大学院にとっ て不幸と言うほかないが、しかしそのおかげで、実務家として特任教授が多くにいるようになっ た。しかし、その実務家もそれぞれの与えられた授業という仕事をこなしながら「たこつぼ」的 に学生を育てている。しかし、実務家教員同士の協働も、ましてやかれらと研究者教員の協働も ほとんどないのが現状である。研究者教員が実践講座に呼ばれて、自らの実践性を現場教員の前 で語ることはあるし、逆に、研究者教員が実務家を講義に呼び講義してもらうことも教職科目で は普通に行われている。しかし、そこに「協働」はない。それぞれがそれぞれに与えられた部分 で仕事をこなしているだけである。これは人財の活用として適切だろうか。少なくとも、現場で 強調される「チーム性」の重要さから言えば不適切である。なぜなら、どのようなカをつけたか を学生任せにする現在のシステムは、学生・院生の実践的力量形成の一面しか明らかにしていな いからである。それを超えるためには、研究者教員と実務家教員と学生のコラボレーションを実 現することが必要であり、それがなされて初めて真の教育改革・教師改革がもたらされるのでは
・1・
ないだろうか。この点を意識して、「就職直前教員講座」は開かれた。
本報告は、平成25年度学長裁量経費「拠点校を中心としたアクティブラーニングの開発プロジ ェクト」(前期)と「教員専修免許取得のための連携実践的なカリキュラムの開発に関するプロジ ェクト」(後期)がなければ実現することはなかった。感謝したい。
なお、後者は4ヶ月という短期間で調査報告するというタイトなスケジュールになったが、毎 週のように執筆者の三人(松下、齋藤、二瓶)は、学生教育のこと、教師教育のことを語り合っ た。また本報告には時間の関係上、掲載することはできないが、協働で授業参観をし、語り合っ た。三人のコラボレーションは、保原小学校で実践されている『学び合い』での議論から始まっ
ている。
本報告書を出発点として「実践と理論の往還」の議論を新たな段階に進めたいと考えている。
・2・
第一部 学校ボランティアの取り組み
福島大学人間発達文化学類 教育実践支援コーディネーター 齋藤幸男 はじめに 一学校ボランティアの意義一
学校では様々な課題をかかえていて人手がたりなく、新任教員にも即戦力が求められている。
そこで、大学は、教育実習とあわせて、人手のたりない学校を支援しながら学生の実践的指導力 を高める活動として、平成17年度から福島市、そして現在は郡山市、伊達市と協定を結び、学校 ボランティア活動を推進している。
活動までの手順は、各市教委が各学校の活動内容を集約し大学に伝え、大学は説明会を開き学 生に周知を図り、学生が申し込みをして活動に入る。
学生は、活動をとおして教育実習とは異なった学びを体験している。
教育実習は、教員免許を取得するため受けなくてはいけない必修科目である。この実習は、教 員になったときに教育活動が円滑にできるように、教育活動全般に万遍なく学ぶ機会で、大切な 実習である。
学校ボランティアは、学校現場で活動することは教育実習と同じだが、活動が学生の意思に委 ねられているところが異なる。教育実習はあらかじめ活動内容が計画準備されているが、学校ボ
ランティアは自ら課題をもち判断し実践する「学び」をしている。
学生の一番のハードルは、活動のスタート地点に立っところにある。私の調査では、本学類の 7割の学生がこの活動に興味を持っているが、講義やアルバイト、サークルが忙しく時間が取れ ないという理由で踏み込めないでいる。
一方で、その中でも時間をやりくりして見つけ活動している学生もいる。子どもと触れ合いた い、自信をもって教壇に立ちたい、本当に先生になれるのだろうかという、自分べの問いと課題 をもち、決断をするのである。
決断後も、教務への申込書の提出や学校との連絡などを自分一人で判断し行動する。学校に行 けばどういう活動をするのか不安だらけである。そこを、学校の先生方や子どもたち、友人、支 援員が後押しをするが、継続するかしないかも自分で判断するのである。
保原小学校では、はじめに活動の拠点となる学級を決める。支援員はそれぞれの学級の情報を 提供するが、最終的にホームベースを決めるのは学生自身である。
不安をかかえ悩みながらも、課題に向き合い自分の意思で一つ・一つ決めながら前に進むという 「学び」をしている。
もう一つの「学び」が、省察と実践である。 ,
活動の途中、空き時間や昼休みの時間に複数の時も一人の時もあるが、ミーティングをして活 動を振り返り学びの意味づけをして、次の活動につなげるようにしている。これも結論を伝える のではなく、探究する手立てを支援することにしている。担任の先生やゼミ担当の先生に相談し たり文献にあたったりして、ここでも悩みながら課題に向き合い判断し実践するという、理論と 実践の往還をしばらく長い期間自分の問いと向き合いながら繰り返して探究を深めている。
21世紀を創るこれからの教育は、「教え・覚える』指導から「思考・判断・表現」する「学びj
・ 3・
への転換が求められているが、学生は学校ボランティア活動をとおして、「課題、協働による省察・
探究、実践・表現」という「学び」を体験している。この学生が教壇に立ったときに、目の前の子 どもたちとともに創造的な「学び」が展開されると期待される。
学生は、教育実習とあわせて学校ボランティア活動をとおして、実践的指導力を高めていると
いえる。
1 活動の状況
(1)活動の概要
登録人数・実施人数・実施園校は、福島市7名・6名・1園4小1中、郡山市2名・3名・1小 1中、伊達市7名・14名・1小、合計16名・23名・1園6小2中である(表1)。 未実施者
が1名いるのは、活動日が学校と合わなかったことによる。登録はしていないが実施しているの は、手続き等の問題かと思われる。
1年間の活動日数では、最大34日間から10日以上が11名と、大部分が週1日を活動日にあ てて継続して活動している。
学年別にみると、4年・院生は11名で最も多く、3年4名、2年も1名いる(表2)。 4年・
院生は、授業時間にゆとりがあり、就職が目前にあるためと思われる。
登録時期は、5月の説明会後、7月の教育実習後、10、月の後期開始後にみられた(表3)。5 月は、昨年度からの継続組4名と昨年度から計画して活動時間を確保していた前期計画組5名で、
7月は実習体験で感動した感動組2名、10.月は後期から計画して時間を確保していた後期計画 組5名である。
活動動機・内容は、どの学生も「子どもに接したい、教えたい、学校に役立ちたい」という思い を共通に持ちながら、4月から教壇に立っ実践型活動、発達障がい児への対応、『学び合い』の研 究など理論と実践を往還す「6探究型活動、学校からの要請による要請型活動になるようだ。
主な活動内容は、学習支援、気になる子の個別支援、行事や体験活動の補助、休み時間の遊び 等である。
学生は、伊達市立保原小学校(以下 保原小)を例にすると、参観をしてホームベースにする 学級を決め、自分の支援活動内容と自己課題を明確にする参観から参加の段階、課題をもって計 画的継続的に積極的に参加する段階、自分の特性を生かして活動する参画の段階とステップアッ プを図るように活動を行った(表4)。
学年ごとに見ると、2年では活動をとおして学校教育全般を理解する段階、3年生で教育実習と あわせて自己課題を焦点化して探究する段階、4年・院生は採用を目前にして実践の段階と大ま かに目標を設定しているが、それぞれの学生の課題や特性に応じて活動した (表5)。
(表1)活動人数と活動日数
福島市 郡山市 伊達市 合計
登録人数※① 7 2 7 16
実施人数※② 6 3 14 23
実施校※③
1園4小1中 1小1中 1小 1園6小2中活動のべ日数 94 30 115 239
・ 4・
、低 冨郷町罰円 、ノ、ノ
学年 福島市 郡山市 伊達市 人数 月 福島市 郡山市 伊達市 備考
2年 1 1 4
3年 1 2 1 4 5 5 1 4 継続組
4年 4 5 9 6 1 実習組
院生 1 1 2 7
合計 7 2 7 16 8
9 2 1 実践組
10 2 実践組
11
合計 7 2 7
※①実人数15名(複数登録者1名) ※②未登録者が実施している。
※③園:幼稚園 小:小学校 中:中学校
※平成25年度1年間の1人の活動総日数
34日(1名),29日〜20日(3名),19日〜10日(7名),9日〜2日(4名),1日(8名),0日(1名)
(表2)学年別登録人数(人) (表3)登録時期(人)
(表4) 学校ボランティア活動目標段階
段階
到 達 目 標 備 考ステップ1 学校の概要を理解し、ボランティア活動の具体的 な課題と展望を持つことができる。
参観から参加へ
ステップ2 課題をもって、計画的に活動支援する。 積極的な活動参加 ステップ3 学生(大学)の特性を学校教育活動に役立て、 学
校文化を高める。
参加から参画へ
(表5) 学年と学校ボランティア活動内容
学年
内 容 備 考2年生 広く活動しながら、学校教育活動の理解を深める。 理 解 3年生 教育実習とあわせて、自己課題を焦点化し深める。 探 究 4年・院生 採用を目前にし、実践力を高める。 実 践
(2) 学校ボランティア支援員(以下 支援員)の活動
支援員は、相談、支援、広報、調査、助成金事務などの活動をしてきた。
相談活動では、来室相談、メールでの相談があった。来室では、活動前の内容や様子の確認、
活動中での疑問等を相談する例があった。メールでは、課題や悩みや学校への連絡の仕方などを 相談する例があった。
支援活動は、主に保原小を拠点に、学生がホームベースを決めるときの学校との調整や活動日、
給食申し込みの学校との連絡確認などのサポート、学生の活動の様子を観察しミーティングのと きの資料収集、活動の振り返りのミーティングを行った。
10月からは6名の学生が活動するようになり、活動曜日がまちまちになったが、活動同には
・ 5・
朝の登校時からミーティングの時間までいっしょに保原小で活動するようにした。
福島市、郡山市の活動は、4小学校2中学校を訪問し、活動の状況を把握し学生と話したり助 成金申請のときに相談したりしたが、十分な支援ができなかったと反省している。
保原小には学校ボランティアの研究霊があり、ミーティングを行うときや支援員の控え室とし て活動しやすかったが、他の学校にはなく、活動の充実のためにも実施校と検討していきたい。
支援活動では、学生が気持ちよく活動しやすい環境を整えるように心がけた。
広報活動では、学生の参加拡大のために、「学校ボランティア通信」【資料1】を作成し大学構 内の専用掲示板に掲示してきた。学生が作成したり、途中からは学類全教員に配布したりして学 生への周知勧誘をしてきた。
8月のオープンキャンパスで、学生活動を紹介する展示が催されたが、学校ボランティアも他 の活動といっしょに参加して広報した【資料2】。
調査活動では、6月下旬に学類学生を対象に実態把握と啓蒙を目的としてアンケー一・・一ト調査を行 った。保原小学校では、訪問日ごとに全校『学び合い』などの授業参観をして学校情報を収集整 理して、支援できるように準備した。また未来創造教育について、文献研究調査も行った。
年度末には、活動学生、実施校、保原小学校を対象に、評価のためのアンケート調査を実施し
た。
学類後援会は、福島市、郡山市の活動学生を対象に助成金を支給しているが、申請事務を行っ
ている。
学習の遺み具合を見取りながら支援をしています。 学年会の練習間題の印刷をしていまナ。
(3)学生の意識調査実施結果概要と課題【資料3】
① アンケート調査結果概要
6月下旬から7月上旬にかけて学校ボランティアの意識等のアンケート調査を実施したところ、
2年生214名、3年生58名、4年・院生15名合計287名からの回答があった。
その結果、77%の学生が教員を希望していて70%の学生が学校ボランティアに関心を持っ ていることや、学校ボランティア体験者は10%と少ないが震災ボランティアなど他のボランテ
ィアに積極的に取り組んでいることがわかった。
また、学生の多くは子どもが好きで将来役に立つので学校現場を体験したいと思っているが、
アルバイトやサークル、授業で時間がないことや、学校ボランティアの内容や学校ボランティア 助成金、学校ボランティア支援室についてはあまり知られていないことがわかった。
②学生の現状と学校ボランティアの課題
学生の学修環境をみると、2年生は授業でうまり、3年生は授業、教育実習があり、4年生は
6・
採用試験と卒論がある。そこにサークル、アルバイト、他のボランティア活動等があり、時間に ゆとりがあるわけではない。
そんな中で、学校ボランティア活動をしている学生もいる。3年生2名は、水曜日の午後をあ てている。4年・院生は、授業を週1日あけて組み活動している。それは、やってみたいという 強い意思をもち時間を捻出しているところにあるようだ。
学生の課題として、「時間がない」「必要感がない」「他のボランティアをしているから」がある ようだ。
(4)活動支援
活動支援として、伊達市では往復の交通費として活動回数分の実費分を予算化している。学類 後援会では、今年度から福島市、郡山市の活動を対象に奨励支援の目的で、前後期ごとに活動回 数にかかわらず1人1,000円の助成金を予算化して、前期4名後期5名計9名が受給した。
2 学生のr学び」の姿
学生の「学び」を具体的にみてみよう。
(1) 実践型活動(学生 学年 クラス名 活動校学年)
①就職前の実践的探究例(T、H:4年人間科学クラス保原小3年)
T、Hの2名は、教員採用試験に合格し4、月から教壇に立っことが約束されている。
Tは、教職に就く考えがなかったが、教育実習で教職の魅力を知り採用試験を受験する。
受からなくても講師になって教員になろうと決意し、これまでの「学び」では教壇に立つには不 安なので、ボランティア活動をしながら実践力を高めたいという思いで取り組んだ。
9月下旬に支援室を訪問し、相談してその足で教務課に行って申込みをする。10月上旬から 3の1をホームベースに活動を始め、ほぼ毎週18日間活動した。
始業式や土曜日のミュージックフェスタの行事、ムシテックワールドへの校外学習、授業参観 日にあてて活動するなど、学校の教育活動をすべて経験しようと目的意識を高く持って活動に取 り組んでいた。
はじめ、「3年生は元気がよくてざわざわしている」という漠然とした観察が、活動を継続して いく中で、ムシテックワールドの引率では「集合場所で一人トイレに行きたいと言われたときの 対応のしかたはどうするか」という具体的な問いに変わっていく。
現在では、「始める前に感じていた不安はなくなったというよりも、何をすべきかみえたからこ そ大きくなったが、不安だからこそ学ぽうという意識になれた。(…)担任の先生から目標とした い先生像、教務の先生から学び続けることの意味、子どもたちからは学びの力を教えてもらった』
と、振り返っている。
Hは、Tに誘われて10月中旬にTといっしょに支援室を訪問し、翌週から活動することを決 意し、これまで16日間活動した。
1日目に、悩んだ末に3の1をホームベt・・…一スに決め活動が始まった。その日、6校時の授業で、
女児が一人の女児を学習に加えないところを観察し、いじめではないか、自分は何もできなかっ た、涙が出そうになったと深く悩み、次の日に支援室を訪問し相談する。
カンファレンスを受けて、次回の活動日に担任がどう見ているのかを自分で聞いてみることに
7・
し、担任と話をして2人の性格と関係性を聞き、しばらく観察をすることになった。
このところを現在Hは、「たった1日見ただけではわからなく、日々の積み重ねで信頼関係ができ るからこそわかってくることがある」と、振り返っている。
2月の活動日に、3の2の担任が休みで不在であった。2人は、学年総合の時間の後片付けを 頼まれるのだが、うまく指示や注意ができなくて課題になった。その後2人は、先生方の指示や 注意の仕方を注意深く観察し深めるようになった。
Hは、「実際に目の前で起こっている学校の中の出来事を、継続的な活動中で自分の目で見て考 えて、様々な方の意見を聞けたという経験はこの活動でしかできなく、本当に貴重な今後の自分 の糧となります」と、振り返っている。
②教育実習後の実践的探究(S:3年言語文化クラス日和田中3年)・
Sは、教育実習では生徒と打ち解けられてきたところで終了してしまい物足りなく感じ、中学 生ともう一度ふれあい教えたいという思いと、教職に就くかを判断するために取り組んだ。7月 に支援室を訪問し活動に入り、20日間活動した。
日和田中には保健室登校生がおり、中学3年の2名は高校受験を控えて受験教科の個別学習を 希望していた。Sは、2年間学校に通えなかった生徒なので、肯定・受容・共感のカウンセリン
グマインドの学びを生かして「親しみやすいお姉さん」を心がけて接するうちに、筆談でしか会 話できなかった生徒が、自分から声を発し笑顔も見せるように変化する。
Sは、次のようにふりかえる。
筆談でしか他人と会話できなかった生徒が、自分から声を発し、笑顔も見せるようになった。
また、生徒2名を担当しているが、両者とも英語の勉強に意欲的な姿勢を見せており、学ぽうと する意志の素晴らしさを感じた。校長先生が、私の関わりが生徒にとって安らぎとなり、プラス
に働いているとおっしゃってくださった。(アンケート調査から引用)
そして、「リアルな学校の教育現場を経験することができる。生徒ともに私も学ぶことができた ので、生徒だけでなく自分の成長の糧として、さらに活動を続けたい」と、継続を決意している。
(2)探究型活動
①通常学級における特別支援を要する児童の交流b探究的実践 (N:3年 特別支援クラス、保原小2年)
Nは、特別支援クラスに所属し発達障がい児への援助行動に関心をもち、実際に現場で体験し ながら研究と実践力を深めたいという動機で取り組んだ。10月上旬に支援室を訪問し保原小に 決めて活動し、14日間活動した。
2年生男子児童Aは、高機能広汎性発達障がいがあり日常的に友だちとトラブルを起こし、担 任も支援をもとめていて、その学級の学習・生活支援に入ること・になった。
2回目の活動時に、教室を移動することになったがAは本読みに夢中になり担任が声をかけて も動かなかったので、Nは担任にあとから連れてくるように頼まれる。 Nも初めは「早く行こう」
と声をかけるが動く気配がないので、「1頁読み終わったら行こうね」と声をかけたところ、Aは
。8・
1頁を読み終えるとすんなり移動した。
Nは、講義などから障がい児の特性を知識としては知っていたが、実際の場で理論が生かされ たことに驚き、Aの特性にあった働きかけに興味をもつ。
その後も、ゼミ担当教員の指導助言を受けて、付き人支援が子どもにとってストレスになるの で少し距離を置いて支援をするなど理論と実践を往還した学びをしている。
Aがいくぶん落ち着きを見せるように変化してくると、他にも学習に参加できないでいる子ど もたちに支援対象を広げたり、3年生の学級を観察し比較をしたりするなど意欲的に取り組んで
いる。
Nは、はじめのころは自分から何かをするのが苦手と言っていたが、担任は休み時間や昼休み 時間に付き添ってほしいと思うのでミーティングは3校時に行うと申し出るなど、自分で判断し 行動するように変化している。「子ども一人一人の実態は様々で、障がいの有無に関係なく全員に 個に応じた指導を行うべきだと分かった」と振り返り、「今後も学校ボランティア活動を続け、子 どもと同じ目線で物事を考え、子どもと共に成長できる教員になれるよう努力していきたい」と 述べている。
② 上越教育大 西川純教授『学び合い』(以下『学び合い』)実践校での探究的実践 (E:4年教育探究クラス 保原小5年、SR:4年教育探究クラス 保原小6年)
保原小は、震災を経て昨年度から全校で『学び合い』を取り入れて学級、学年、全校『学び合 い』を実践している。E、 SRの2名は、『学び合い』を卒論テーマにして研究をしており、ゼミ担 当教員の指導を受けて昨年度から継続して観察記録を取り、研究と実践の検証をしながら担任の 補助活動をした。Eは15日間、 SRは34日間活動した。
継続して観察していく中で、Eは担任よって『学び合い』のとらえ方や指導の仕方が異なるこ とに注目し、「学び合いの途中で注意するより、少し子どもたちの意思にゆだねた『学び合い』に 徹したい」と考えをまとめていく。SRは、「子どもたちは、自分が思ったよりできることがわか
った。どんどん子どもに任せていいと思う」と、振り返っている。
2月の卒諭発表会では、これまでの記録をまとめ発表していたが、直接現場から収集した事例 と考察はリアル感があり説得力をもち、2人には自信が感じられた。
(3)要請型活動
幼稚園からの支援要請による活動実践(K:4年 幼稚園クラス 笹谷幼稚園)
幼稚園から大学にボランティア支援の要請があり、Kは担当教員から3年次にその幼稚園で教 育実習をしていたこともあり依頼され、7月から火曜日ほぼ毎週活動に入り、20日間活動した。
3歳児の個別支援の要する園児の個別支援にあたり、はじめは体当たりしたり引っかいたりし ていたのが、園の先生に相談しながら活動をしていく中で次第に言葉で語りかけるようになり、
現在は落ち着いて生活するようになった。
Kは、「実習の短期間では気づかなかった子どもの成長の変化を見ることができてよい学びにな った」と振り返っている。
園からは、「南福島の自宅アパートから電車を2本乗り継ぎ、その後20分徒歩で通っていただ きました。その熱意に大変感謝しています」と、調査に記されていた。
・9・
3 これからの学校ボランティア
(1)活動の評価
2月に学生15名、福島市郡山市の実施校(以下 実施校)9校、保原小33名に、学i生にはメ ールで、実施校、保原小には調査用紙で活動評価のアンケート調査を依頼したところ、学生7名
(院生4年4名、3年2名、2年1名)(46.7%)、実施校7校(77.8%)、保原小33名(100%)の回
答があった。保原小は、活動の拠点校でもあり、学生が入っている学級担任にかかわらず、管理 職(2名)、担任外も含め先生方全員に行った。【資料4アンケート用紙】
① 学生・実施校保原小共通項目 ア)活動の効果
学生には、「あなたの活動が学校の教育活動に役立ったと思っていますか」、学校には「学校ボ ランティア活動は、効果がありましたか」とたずねたところ、どちらも効果があったとしている。
(図1)。
学生は、「役立ったと思うときもあれば、もっとこうしていればとよかったと、役立たなかった と思うときもあった」と少し控えめな評価4名と、「算数の授業等TTにはいらせていただき、子 どもたちを学習に向かわせることができたと感じている」と高く評価している評価3名である。
全員が学校に役立ったのではないかと自負心を持っことができたようだ。
実施校は、6校が「学習支援が必要な子どもに丁寧にかかわり学習内容の理解が大変効果的で あった」のように、高く評価している。
保原小は、23名が「効果があった」としている。直接の担任は、はじめ「少し助かる」2、「そ の他」2だったのが、「大変助かる」4、「少し助かる」2と効果を実感している。「あまり効果が なかった」は、「目的を十分に理解して効果が表れるようにしたい」と「学年の中に入っていない こともあるが、学校側での予定と合わせてボランティアを活用することができないため」の2名 であった。全職員に学校ボランティアの趣旨、内容を共有する機会を設けていく必要を感じた。
「わからない」7名は、直接学生に接していないことによる。
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(図1)学校ボランティア活動は、効果がありましたか
10・
ボランティア先生の情報がたくさんありまナ。
イ)教員と学生、子どもたちと学生の関係と学生のことばつかいやマナー
学生と実施校、保原小の管理職に、「学生と教員との関係はどうでしたか」と担任との関係をた ずねたところ、学生は「大変よい」が1、「よい」が6、実施校・管理職は「大変よい」が7、「よ い」が2と、双方とも良好な関係だったととらえている。
次に、学生には「子どもたちとの関係はどうでしたか」、学校には「子どもたちと学生の関係は どうでしたか」とたずねたところ、どちらも良好だった(図2)。
同じように学校に、言葉遣い、マナーについてたずねたところ、高いい評価で安心をした(図 3)。保原小では、ホームベースの担任は全員が「大変よかった」と評価していた。
子どもたちと学生の関係(人)
8642
0
8642
0
1よ
1 1
噌⊥¶←ーム 11_vtt.、
6
曲騒
大変よい
L
圏
4麟圏
16
よい
0 0 0
悪い
0 0 0
大変悪い 國学生麗実施校團保原小
(図2) 子どもたちと学生の関係はどうでしたか
6
。。1
わからない
11・
言葉遣いやマナー(人)
25
20 20
15
10
5
0
6
圏騒
大変よい
9
調
よい
0 0 悪い es実施校X保原小
0 0 大変悪い
(図3) 学生の言葉遣いやマナー
4
・闘
わからない
② 学生
ア)活動前と活動後の意識の変化
「活動を始めるときはどのように思いまししたか」「しばらく継続してみて現在はどのように思 いますか」とたずねたところ、「積極的だった」3、「少し積極的だった」2、「少し不安があった」
1、「大変不安だった」1だったのが、現在は「大変よかった」6、「よかった」1と、大きく変化 している。
「大変不安から大変よかった」に変化した学生は、自由記述に「さまざまな学びがあり、自分 の成長や教職への思いの高まりを感じることができたから」と書いている。「少し不安から大変よ かった」学生は、「日々の活動で得た学びや不安は、この活動をしなければえられなかったから」
と書いている。「積極的だった」学生も「大変よかった」としているが、「当初は生徒とうまく関,
われるか不安でしたが、校長先生や周りの先生方の補助もあり、スムーズに交流できるようにな った」と、達成感があったようだ。
イ)一番感動したこと
意識の変化は、活動をとおして感動を味わったこととも関係がありそうだ。自由記述で「一一ts 感動したことはどんなことですか」とたずねたところ、次のように書いている。
・ 筆談でしか他人と会話できなかった生徒が、自分から声を発し、笑顔を見せるように なった。(…)校長先生が、私の関わりが生徒にとって安らぎとなり、プラスに働いていると 仰ってくださった(3年)
生徒の好転と校長からの励ましが、心に火をっけたようだ。
・叱るとき真剣に叱り、子どものために叱っている先生を見たこと(4年)。
・学習に集中できない子が、関わり方しだいで子どもの「伸び」は変わっていくものだと 身を持って実感した(院生)。
真剣に教える教師の姿や、教え方で変化する子どもの様子に教師の姿を見て、感動している様子 がうかがえる。
12・
ウ)わかったことややってよかったこと
「活動して学校や教育、子どもについてわかったことや、やってよかったことはありますか」
とたずねたところ、次のような自由記述があった。
・児童は1日見ただけではわからなく、日々の積み重ねで信頼関係ができるからこそ分か ってくることがある。教師の雰囲気によって教室の雰囲気が変わる(4年)。
・子ども一・人一人の実態は様々で、障がいの有無に関係なく全員に個に応じた指導すべき だとわかった。教育実習と同じくらい(またはそれ以上に)大きな学びを得た(3年)。
・子どもたちは自分が思ったよりできることがわかった。どんどん子どもに任せていいと 思う(4年)
・校長先生や教員の裏側の仕事や、授業外での時間の使い方、教育や生徒指導におけるリ アルな現状など、教育実習では学べない「学校の姿」を知ることができた(3年)。
子どもや教員、学校の姿をよく見ていることがわかる。また、教育実習とくらべて学びの違いも 指摘している。
エ)活動内容
どんな活動をしたかでは、「教師補助」5、「気になる子の個別支援」4、「行事や体験活動の補 助」6、「授業観察」6、「休み時間の遊び」6と、学校活動全般に活動していたことがうかがえ
る。
オ)次年度の活動
「来年度もやってみたいと思うか」とたずねたところ、3年2年3名全員が、やってみたい」
と回答した。
カ)支援室
「学校ボランティア支援室は、あなたの活動に役立ちましたか」では、「大変役立った」5、「役 立った』1、「あまり役立たたなかった」1となった。
自由記述には、「大変役立った」には、「悩みや相談したいことを気軽に聞くことができたため」
「とても親切でもっと学校ボランティアを頑張ろうと思えたから」「ボランティア先の学校に足を 運んでくださり活動しやすいようにサポートしていただいた』と、身近な相談相手になったよう だ。「あまり役立たなかった」には、「存在をほとんど認知していなかった」とあり、もっと積極 的な関わりが必要だったと反省している。
キ)交通費、助成金
交通費、助成金については、7名全員が「大変役立った」と高く評価している。自由記述には、
「金銭的にあまり余裕がなく、交通費は往復で1000円以上かかっているので、大変ありがた かった」「自費で毎週通うのは経済的に負担が大きく、助成金があることで活動できている」と、
学生の経済的な援助になっていることがわかった。
ク)心がけたこと
「活動をとおしてあなたが一番心がけたことは何ですか」では、次のような自由記述があった。
・学校ボランティアという立場で自分が学校にできることや、子どもにできることを探し て積極的に行動する(院生)
・子ども一人ひとりだけでなく、子どもたちの作品や人間関係はうまくいっていそうかな
・ 13・
ど、意識して子どもたちと関わった(2年)。
・ 子どもの気持ちに寄り添うこと。自分が担任だったらどうするかを考えること(3年)
・ その日その日の目的意識を持つこと(4年)
・ 教授行為の観察(4年)
・ 子どもにくっついて、子どもの会話を聞くこと(4年)
活動動機と心がけたことは、重なるようだ。
学校も学生も活動の意義を積極的にとらえ、学校は高く評価し一人でも多くの学生の活動を期 待している。学生は、一人ひとり「気付き・探究、判断・実践」の「学び」を繰り返し往還し、不 安を自信に変えている。
(2)これからの学校ボランティア
学生は、調査で「杉妻小の先生がもっとボランティアに来る学生が増えてくれると助かるとい っていた」「訪問先の校長先生から、教育現場は人手が必要だという言葉を聞いた」と、現場の声 を書いている。
実施校からも「どの学校にも軽度発達障がいと診断され、不登校や保健室登校状鰹こ陥る子ど もたちが少なからずいる。個別のニーズに応える学習支援計画とそれを実践する人材は必要不可 欠だ」に代表されるように、ボランティア活動の期待は大きい。
保原小でも、「今年度定期的にボランティアに入っていただいたが、次年度もそのような形にな ればありがたい」と、書いている。
また、「年度当初から協力体制を整えてほしい」「せっかく現場に来ているのだから授業参観や 行事にいっしょに参加できるように大学の授業の融通があればよい」「学生への情報提供をお願い
したい」などの要望があげられている。
教員養成についても、学校は「学生にとっても様々な子どもの姿、よい学習指導を見る経験は、
教員を目指すうえで役に立つと考える」と活動の意義をとらえている。
そして、「学生のうちから教育現場の生の姿にふれ、自己有用感を味わい教師としての適性を自 己認識している学生を育成するために、学校ボランティアを学校現場で活かしていきたい。大学 の単位の一つとして認定されるとか、採用試験の模擬授業を練習する場の提供とか、学生が魅力 を感じるファクターが見いだせないか」「学校ボランティアを受け入れて5年になり、支援内容も 明確になり学生に還元することも多くなった」と、学校現場から積極的な提案があげられている。
そこで、これからの学校ボランティアの課題と方策を整理しておきたい。
①参加拡大の工夫
学校のニー一ズに応えるためにも、学生の参加拡大が急務である。学生は、学校ボランティアの 存在自体知らない学生が多いので、知ってもらうために講義での告知や資料配布などをあげて いる。説明会や体験報告会、相談会の複数回開催や友人同士で誘い合うのも効果がありそうであ
る。
未経験の学生にとって活動の決断をするのにはハードルが高いので、体験した学生自身による 呼びかけなどを計画的に行っていきたい。
② 観察・参加型活動から参画型活動とミーティングの充実
・ 14・
学級観察や子どもの生活・学習支援、掲示物の展示作業支援等は、普通に行われるようになっ た。これからは、学校からの提案にもあるように、学生自身が課題をもちながら解決のためにTT 指導や授業を実践するなどの参画型の活動へ発展させ、より高次の学校貢献へと役立てたい。
そのために、ミーティングでは絶えず各自の課題意識を整理しながら計画的意図的に支援する など「学び」の内容の充実を図っていく必要がある。
複数参加による学生同士のミーティングは情報交換だけでなく活動理解が深まり、学級担任と のミーティングは担任と学生が理解し合い信頼関係を深めるので活動効果も上がり、学生自身も 要望しているので、環境整備も行っていきたい。
③ 大学と学校との往還探究とクラス、ゼミ担当教員の積極的関与
学生は、活動をとおして学校現場の様々な教育課題と向き合うことになる。その課題を引き受 けて向き合い、判断し実践する活動を繰り返し継続して行う。支援員やクラス・ゼミ担当教員が、
専門的な視点から絶えず学生をフォローすることによって「学び」が深まるので、活動への誘い とあわせてカンファレンスを積極的にできる体制を整えることが大切である。
おわりに
3月の活動最後の日、保原小の3の1と3の2のクラスでは、ボランティア学生を囲んで感謝 の会が催されていた。花束が贈られ、お礼の言葉を聞いて、いっしょに写真をとるとき、子ども たちの笑顔に囲まれた学生の目には涙があふれていた。2人は、この活動から実践的指導力と自 信を得て立派な教員になれると確信した。
どの学生も、よい教師になりたいという強い願いをもって活動して、子どもたちからも先生方 からも信頼される関係を築いてきた。悩みながら辛抱強く、子どもたちの笑顔と先生方の励まし をエネルギーに変えて探究し活動してきた学生にエールを送りたい。
また、これから同僚になる学生を温かく見守っていただいた学校現場の先生方、このような機 会を与えていただいている各市教委、助成いただいている後援会に深く感謝を申し上げる。さら に連携を深め、充実した活動にしていきたい。
子どもたちからのメッセPtジがありました。
15・
4 学生のボランティア体験記
学校ボランティアを体験して
大学院2年 玉木 宏樹 私は教職に就くにあたり,実際の学校現場で子ども達と関わりたい,学校現場をより理解した いと思い学校ボランティアをはじめました。学校ボランティアでの活動は主に毎週一回終日,一 年生から六年生,特別支援学級とさまざまなクラスにおいて,TTのような形で授業に入り学習支 援を行いました。授業においてつまずいていたり,学習に集中できなかったりする場合に担任の 先生と協力して学習ができるよう個別に支援しました。このように学習に向かうことができない 子どもであっても,個別に関わると集中力が持続すること,またすすんで学習に取り組もうとす る姿勢を見ることができました。ボランティアを通し,学習面だけでなく生活面も含めて,子ど もの様子を見ながら関わり方を変えるとことで,子ども達の変化の様子を感じることができたこ とは貴重な経験となりました。関わり方を変えると子どもは自分の気持ちを素直に表したり,自 分の課題に向かって頑張ろうとしたりしていました。しかし,すぐに変化が見られる場合もあれ ば,週一回しか関わりをもてないということもあり,すぐには変化が見られないということもあ りました。学校には本当にさまざまな子ども達がいました。なかなか登校することができない,
友達と仲良くしたいと思っているのに上手くいかない,勉強が分からない,家族のことで悩んで いるなど,自分自身の無力感を感じることもありました。そのような中でも試行錯誤しながら子 ども達と関わる中で,すぐに変化は無くとも関わりを続けることで,心を開いてくれていること を実感することもありました。実際の学校現場におけるさまざまな子ども達の様子について,教 職に就く前に知ることができたこと,そして実際に関わることができたことは大変貴重な経験と
なりました。
また学校ボランティアを経験し,改めて一日を通しての先生や子ども達の様子が分かったこと も貴重な経験となりました。朝自習,朝の読書,朝のボランディア,朝の運動など,登校後の朝 の活動は学年や季節によってもその内容は異なっています。その他,委員会の活動であったり係 の活動であったり,昼休みには上級生が下級生に鼓笛を教える活動をしている時期もありました。
本当に学校現場で子ども達は様々な活動をしています。学校現場の一日の様子,そして一日の中 で行われる様々な活動を指導する先生方の様子を見ることができたことは大変勉強になりました。
加えて運動会,文化祭,遠足,マラソン大会などの学校行事への参加も大変勉強になりました。
特に学校行事には保護者の皆さん,地域の皆さん方が協力してくださる姿が印象的でした。運動 会においては会場作り,用具の出し入れ,マラソン大会の時にはマラソンコースに沿ってたくさ んの方が応援に来てくださったり,大会後は芋煮を行ってくださったりとここには書ききれない くらい,学校に協力されている様子を実際に見ることができました。学校と保護者の方,地域の 方とのつながりを学校行事を通して実際に見ることができたことは貴重な経験となりました。
学校ボランティアは教育実習以外の場として学校現場を改めて知ることができる有意義な体験 になると思います。多くの方に学校ボランティアを体験し,実際の学校現場で子ども達と関わっ て欲しいと思います。
・ 16・
不安を学びの原動力に
人間発達専攻4年 高梨春那 0活動の動機0
教員採用試験、第一志望の自治体に無事に合格することができ一安心…と息をつく暇はありま せんでした。4月からの自分を想像すると、技術も知識も全くない私は子どもたちを目の前にし
て何ができるのだろうか…何もできない。喜びもっかの間、不安ばかりが大きくなっていきまし た。そんな不安をきっかけに始めたのが学校ボランティアです。
そもそも私が小学校教員になろうと決めたのは、3年次の教育実習後でした。それまで大学で の授業は、高い意識を持って取り組むことはできていなく、さらに学校教育専門のクラスに所属
していないため、実習後「周りの人たちよりも知識や実戦力の部分で劣っている。どうにかしな ければ…」と焦りを感じていました。そんな時に、学校ボランティアの掲示を見て、斎藤先生に 相談しに行きました.勉強や部活動、輔のことを考えると時間がないのではと醗している部 分もあったのですが、「拘束するのは自分だけ」と仰ってくださった言葉が後押しとなり、学校ボ
ランティアに行くことを決意しました。
O活動内容O
毎週水曜日に保原小学校に通っていました。朝7:00に家を出て、東北本線、阿武急行線に乗っ て保原小学校に通っていました。いつもより起床時間は早くて大変だったのですが、教室のドア の向こうに見える子どもたちの笑顔を悪像すると、早起きも苦にはならなかったです。
保原小学校では、3年3組に入って子どもたちを見ていました・最初・齋藤先生力 らどの学級 に入っても構わないと仰っていただき、非常に迷いました。学級の雰囲気や『学び合い』の取り 組み方などで勧めていただいた学級もあったので勃監、「私は4Aからどんな先生になりたv のだ
ろうか」と考え、目標としたい先生のいる学級を選ばせて頂きました・3年3組の先生は・笑顔 がとても素敵で、いつもニコニコしていて、子どもたちへのほめ言葉も多様で、学び取りたい技 術がたくさんある先生です。
授業中は、教育実習の時と同じような立ち位置で子どもたちと関わっていました・学習1こ遅れ のある子どもや指示についていけていない子どものそばで指導したり・先生から子どもたちのノ
_
トに丸つけやサインを頼まれたりしました.授業以外では・ずっと子どもたちと遊んでいまし た.オ_プンスペースや校庭、教室の中などで休み時間やちょっとした時間でもおにごっこやく すぐり合いっこなどをして児童理解に努めました。
O活動して学んだこと、嬉しかったこと、悩んだこと、困ったことO
活動してみて、始める前に感じていた不安はなくなったというよりも・何をすべきか見えたカ らこそ、本当に自分にできるのだろうかとより大きなものになった気がします・しかし・今の不 安は恐くありません.不安だからこそ学}まうという意識になれることが大切なのだと分かり・自 分の中のこの不安はそんなに悪くないものだと分力・ったからです・保原小学校では・担任の先生 から目標としたい先生像、教務の先生力・ら学び続けることの意味・子どもたちからは学びのカを
・17・
教えてもらいました。
10月から5ヶ月間続ける中で嬉しかったことは、毎朝教室に入った時に見せてくれる子どもた ちの笑顔でした。「先生、おはようございます」とニコニコしながら振り返ってくれる顔が、今日 も一一一日頑張るぞ、と元気をくれるものとなっていました。小学校へ通う回数を重ねていく中で、
だんだんと子どもたちとの距離が縮まっていくのを実感できた時も非常に嬉しかったです。始め はあまり関わりがなかった子どもでも、最近は子どもの方から遊びに誘ってきてくれたり、手紙 を書いてきてくれたりして心がほっこりする経験がたくさんありました。
O学生へのメッセージ○
迷っている人はぜひ学校ボランティアに参加してほしいと思います。必ず全ての経験が教員採 用試験にもその後の教員生活にも役に立ってくると思います。悩みや不安なことがあるときは齋 藤先生や二瓶先生に話に行ってみてください。親身になっていろんな話をしてくださいます。
卒業論文の執筆などで忙しい時もありましたが、私は学校ボランティアを行えて本当によかっ たと思います。この5ヶ月間で学べたことは、4月からの教員生活に必ず活かせると思います。
ホームベースが決まり、子どもたちと対面です。 学校公開では、受付を手伝いました。
保原小学校での活動を通して
人間発達専攻 4年原田東 く活動の動機・今後に向けて〉
私は、同じく4月から教員として働く友達の誘いで保原小学校のボランティアへ行くことを決 めました。始めた際は、教員になれるかどうかも分かりませんでしたが、どういう形にしろ、少
しでも自信をもって子ども達の前に立ちたいと思ったからです。3年生の時から学校ボランティ アには興味があり、資料はもらっていたものの、勇気がなかったり、勉強や部活動を理由にした
りしてなかなか踏み出せませんでした。友達のおかげで決心することができ、一緒に頑張ること ができる仲間がいて本当によかったです。このような実践的な活動をもっと早く始めていればよ かったという反省もありますが、残りの大学生活の約5ヵ月間の中で、齋藤先生や小学校の先生 方、子ども達、一緒に活動した学生のおかげで有意義な学びができたことに本当に感謝していま
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す。あと2回活動も残っているので、感謝の気もちを込めて、また自分のスタートにつなげられ るようによりよいものとしたいです。
〈活動内容〉
私は3年1組のクラス担当となりました。このクラスに決めた1番の理由は、子どもから初め て話しかけてくれたのが1組の児童だったからです。1組に訪問させてもらいながら授業参観を 主として、他にもミュージックフェスタの補助、校外学習(ムシテックワールド)の付添、学校公開 の受付、保護者懇談参加といった充実した活動でした。1組の中では、朝の会・帰りの会の進め 方、授業の進め方、先生の言葉がけや子ども達の様子を観察したり、観察するだけでなく話を聞 いたり質問したり注意したりなどかかわったり、休み時間に子ども達と一緒に遊んだり、給食を 準備して一緒に食べたり、宿題のチェックをしたりしました。その中で、その日に考えたことや 疑問を、齋藤先生や他のクラスで活動している学生と共有し、振り返りとして改めて考えられた ことが学びへとつながりました。4月からも記録を生かしながら、振り返りを大切にし、自分の 糧としていきます。
〈活動して学んだことやうれしかったこと、悩んだこと、困ったこと〉
③魏礫働縛の短惑レ〜
このようなことを体験記に書いてよいのだろうかと迷ったのですが、初日の想いがあってこそ 今振り返って学べたことがあるので、たった1日しか見てない中で自分の中で考えたこととして 書きます。
初日はクラスも決まっていなかったので、自由に参観していました。教育実習とは授業や子ど も達の様子も異なり、学校によって雰囲気は違うのだなと実感しました。初めて見たのが全校学 び合いで、学び合いについて何も知らなかった私は正直驚きました。できたら帽子の色を変える ため、できない、わからない子どもは目に見えてわかります。その子どもは劣等感を感じてしま うのではないか?できないことは悪いことなのか?できないしわからないから学ぶのではない か?学び合いという言葉は双方向で成り立つものだと以前に聞いたことがあったが・双方向なの だろうか?初めて見た時は特にこのような疑問も浮かびました。また、クラスの中のできなかっ た3人対して周りの子どもは冷たかったように感じます。別の授業でその1人に着目すると、班 の中でも冷たい関係が続いていました。目の前に辛く感じているであろう子どもがいるのに、何 もできなかった自分が悔しくて、情けなくて、その日は帰りながら泣きながら、たった1日なの にこのように戸惑って今後教員としてやっていけるのか考えてしまいました。
しかし、次の日齋藤先生にこれらの不安や考えを相談できたからこそ、3月まで活動を続ける ことができました。また、継続的な活動の中で見方や考え方、意味、視点を少しずつ理解し、た った1日だけで、自分め色眼鏡だけで、決して決めつけてはいけないのだと実感しました。
上記とかかわって、子どもはたった1H見ただけではわからなく、日々の積み重ねで信頼関係 ができるからこそわかってくることがありました。実:習では1ヵ月の中で変化する子ども達を見 ましたが、保原小では約5ヵ月間という長いスパンの中で身体的にも精神的にも日々変化し成長 している子ども達、新たな一面を見せる子ども達を見ることができました。
例えば、Mさんに初めて会った時の印象は、強気なリーダー的存在で逆らえる子どもはいるの
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