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工学系大学院の留学生を対象とした漢字語彙教育の実践

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遠藤 直子, 伊藤 夏実, 菅谷 有子, 古市 由美子, 森 幸穂,

工学系大学院の留学生を対象とした漢字語彙教育の実践

-「工学系話し言葉コーパス」のデータを用いて-

遠藤 直子

1

伊藤 夏実

2

菅谷 有子

2

古市 由美子

2

森 幸穂

1

1

東京大学大学院工学系研究科 日本語教育部門 〒113-8656 東京都文京区本郷

7-3-1(2012

3

月末まで)

2

東京大学大学院工学系研究科 日本語教育部門 〒113-8656 東京都文京区本郷

7-3-1 E-mail: jp-class@t-adm.t.u-tokyo.ac.jp

概要 2011 年から東京大学大学院工学系研究科日本語教室で行っている「専門語彙・漢字クラス」について報告 する。当クラスは中級レベルの工学系留学生を対象とし、 「工学系話し言葉コーパス」のデータに基づいた単漢字(以 後、 「学習漢字」と称す)や、それを含む語などを導入した。また、クラスで学んだ漢字語彙を使って文を作成する 際、 「読む・書く」だけでなく、「聞く・話す」ことを意識するよう、学習者が自ら文脈を設定できるようなアイコ ンを付したタスクシートを用いた。このような漢字語彙教育の新しい試みについて、

2012

年に学習者に行ったアン ケート、インタビューの分析結果から①共起表現を含む様々な例文提示に対する高い評価を得たこと、②漢字語彙 のアクセントが意識化されることの示唆を得たこと、さらに③アイコンのあるタスクシートは文脈を意識した産出 に結び付き、実用的な表現を身につけるのに効果があることがわかった。

Kanji and vocabulary class in the engineering fields

-using Engineering Spoken Japanese Corpus-

Naoko ENDO 1 Natsumi ITO 2 Yuko SUGAYA 2 Yumiko FURUICHI 2 and Sachiho MORI 1

1 The University of Tokyo, School of Engineering, Japanese Language Class 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku Tokyo, 113-8656 Japan(by the end of March, 2013)

2 The University of Tokyo, School of Engineering, Japanese Language Class 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku Tokyo, 113-8656 Japan

E-mail: jp-class@t-adm.t.u-tokyo.ac.jp

Abstract This paper reports learning kanji and vocabulary in the engineering fields in the Japanese Language Class at the University of Tokyo, graduate school of Engineering. The target kanji characters and its vocabulary words were chosen based on the results of the analysis of Engineering Spoken Japanese Corpus. The students could choose a context by using a variety of icons to make a sentence with the target kanji, so that not only their reading and writing skills but also their listening and speaking skills were enhanced in the kanji and vocabulary class. The results of the questionnaires and interview show that the attempt to learn kanji and vocabulary in spoken context was successful in 1) providing a variety of example sentences including collocations, 2) raising students’ awareness towards accents in the kanji vocabulary words and 3) enhancing student’s productive skills through a contextualized approach.

1. は じ め に

本 論 文 は 、「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の デ ー タ を も と に し た 漢 字 語 彙 教 育 に つ い て 報 告 す る 。 大 曾

(2006)[ 1 ]は 、「 コ ー パ ス は 豊 富 な 実 例 の 宝 庫 で あ り , こ れ が 日 本 語 研 究 , 日 本 語 教 育 に 利 用 で き る よ う に な っ た こ と 」 を 歓 迎 す べ き こ と と し 、 コ ー パ ス の 利 用 は

「 日 本 語 の 実 態 を 客 観 的 に つ か む の に 有 効 で あ る 」 と 述 べ て い る 。 当 研 究 チ ー ム で は 留 学 生 の 研 究 生 活 の 支 援 を 目 的 と し 、ゼ ミ 内 で の 発 話 デ ー タ を も と に し た「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 を 構 築 し て い る 。 当 該 コ ー パ ス が 話 し 言 葉 を 集 積 し た も の で あ る こ と か ら そ の 特 性 を 活 か し た 漢 字 語 彙 教 育 を 行 う 試 み と し て 2011 年 か

(2)

ら 「 専 門 語 彙 ・ 漢 字 ク ラ ス 」 を 開 講 し た 。 こ の ク ラ ス で 使 用 す る タ ス ク シ ー ト に 工 夫 を こ ら す こ と で 、 話 し 言 葉 の 中 で ど の よ う に 漢 字 語 彙 が 使 わ れ る か と い う こ と を 学 習 で き る よ う に す る も の で あ る 。

2.1.で は 漢 字 語 彙 の デ ー タ に 使 用 し た 「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の 概 要 に つ い て 述 べ 、2.2.で は 先 行 研 究 を 概 観 す る 。

2.研 究 背景

2.1.「工 学 系話 し言葉コーパス」とは

本 研 究 チ ー ム は2007年 よ り 工 学 系 研 究 室 の ゼ ミ 内 の 日 本 語 に よ る 発 表 、 質 疑 応 答 を 含 む 自 然 発 話 を 収 録 し 、「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」を 構 築 し て い る 。収 録 し た 音 声 デ ー タ は 、 文 字 起 こ し の 専 門 業 者 に 依 頼 し 、 聞 き 取 れ る 音 は す べ て 文 字 化 し た 。文 字 化 に つ い て は 、 本 研 究 チ ー ム で 指 定 し た 表 記 に 関 す る 統 一 ル ー ル に 沿 っ て 行 い 、 イ ン ト ネ ー シ ョ ン や ア ク セ ン ト な ど の 情 報 は 入 れ て い な い 。 こ れ ら の 情 報 が 必 要 な 場 合 は 、 音 声 デ ー タ に 立 ち 戻 り 、 確 認 し て い る 。 な お 、 頻 度 の 高 い 語 に つ い て は 、 正 確 な 表 記 で あ る か ど う か 、 デ ー タ を 収 集 し た 研 究 室 に 確 認 を 依 頼 し て い る 。 こ れ ま で に 、 工 学 系 の4分 野 ( 電 気 系 工 学 、都 市 環 境 工 学 、 都 市 計 画 、 建 築 学 ) に お い て 約 80時 間 収 録 し 、 形 態 素 解 析 に はKH Coder( 日 本 語 の テ キ ス ト 型 デ ー タ を 計 量 的 に 分 析 す る た め に 開 発 さ れ た ツ ー ル 。 茶 筌 の 形 態 素 解 析 情 報 を 元 に し て い る 。http://khc.sourceforge.net/)

を 使 用 し 、延 べ 語 数1,177,834、異 な り 語 数51,277が 得 ら れ て い る 。現 在 、 新 た に3分 野 ( 社 会 基 盤 学 、化 学 シ ス テ ム 工 学 、 電 子 情 報 学 ) の デ ー タ を 加 え 、2011 年 度 か ら は 「 理 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス (SESJコ ー パ ス )」と 名 称 を 変 え て い る が 、今 回 の 実 践 報 告 は 前 述 の4分 野 を カ バ ー し た 「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」の デ ー タ を 対 象 と し て い る 。「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の 詳 細 に つ い て は 伊 藤 ほ か(2013)[ 2 ]を 参 照 さ れ た い 。 2.2.先行 研 究

従 来 の 漢 字 語 彙 教 育 は 、 中 ・ 上 級 以 上 の 読 解 の た め の 漢 字 語 彙 教 育 を 除 い て 、「 初 級 の 基 本 語 彙( 動 詞 や 形 容 詞 、 名 詞 な ど ) や 文 型 練 習 の た め の 語 彙 ( 基 本 動 詞 や 形 容 詞 な ど と 文 中 で 共 起 す る 語 ) を 一 定 量 ず つ 導 入 す る 」( 加 納2000)[3 ]方 法 が と ら れ て い る 。同 論 文 は 、

「 積 み 上 げ 方 式 」 へ の 批 判 か ら 「 コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ な 学 習 法 へ の 転 換 」 を 唱 え 、 さ ら に 、 教 材 の オ ー セ ン テ ィ シ ー が 重 視 さ れ て い る 状 況 の 問 題 を 指 摘 し て い る 。 さ ら に 、 本 稿 は そ の 結 果 、 教 材 で 多 く 取 り 上 げ ら れ る 日 常 生 活 の 語 彙 の 学 習 に 偏 り が ち な 現 状 も 一 つ の 問 題 で あ る と 考 え る 。 な ぜ な ら 、 工 学 系 留 学 生 に と っ て 、 日 常 生 活 で 使 わ れ て い る 語 彙 も さ る こ と な が ら 、 一 日 の 大 半 を 過 ご す 研 究 室 内 で 使 用 さ れ て い る 語 彙 も 重 要

で あ り 、 専 門 分 野 の 漢 字 語 彙 教 育 も 視 野 に 入 れ な け れ ば な ら な い か ら で あ る 。

理 工 系 留 学 生 の 語 彙 教 育 の た め の 研 究 と し て 、 小 宮

2005)[4]、曹 ・仁 科(2006) [5 ]な ど が あ り 、書 き 言 葉 コ ー パ ス 、 専 門 用 語 辞 典 な ど 、 書 き 言 葉 を 資 源 と し た 専 門 用 語 の 基 礎 研 究 や 教 材 研 究 が 多 く な さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 理 工 系 留 学 生 の 中 に は 「 ゼ ミ 発 表 や デ ィ ス カ ッ シ ョ ン 内 容 を 理 解 す る こ と が 求 め ら れ る 」

( 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 国 際 交 流 室 日 本 語 教 室 , 工 学 系 研 究 科 日 本 語 教 室 報 告 書 2010年 度 ,pp.19-20)

[ 6 ]場 合 も あ る こ と か ら 、 書 き 言 葉 と し て の 漢 字 語 彙 教

育 だ け で な く 、「 聞 く・話 す 」に つ な げ る 漢 字 語 彙 教 育 も 必 要 で あ る こ と が わ か る 。

理 工 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス に 基 づ い た 研 究 で は 、 林 ほ か(2012)[ 7 ]が 日 英 の 理 工 系 口 頭 発 表 コ ー パ ス の 構 築 を 試 み 、 研 究 や 発 表 に 用 い る 表 現 を 検 索 で き る サ イ ト JECPRESE を 開 発 し て い る 。 こ れ ら の 検 索 サ イ ト も 英 語 学 習 者 の み な ら ず 日 本 語 学 習 者 の 「 聞 く ・ 話 す 」 能 力 を 効 果 的 に 伸 ば す も の で あ る と 考 え ら れ る が 、 日 本 語 で 検 索 す る 場 合 、 カ タ カ ナ 表 記 や 漢 字 語 彙 の 読 み 書 き が 十 分 で な い 学 習 者 に は 使 い こ な す こ と が 困 難 で あ る と 思 わ れ る 。

邱(2002)[ 8]は 、 日 本 語 母 語 話 者 と 漢 字 圏 と 非 漢 字 圏 の 日 本 語 学 習 者 を 対 象 に 、 意 味 判 断 課 題 を 用 い 、 漢 字 熟 語 の 意 味 ア ク セ ス に 形 態 情 報 及 び 音 韻 情 報 が ど の よ う に か か わ っ て い く か を 明 ら か に し て い る 。 同 論 文 は 、結 論 と し て 、漢 字 圏 日 本 語 学 習 者( 韓 国 人 学 習 者 ) は 「 漢 字 熟 語 の 意 味 を 暗 記 す る だ け で は な く , 音 読 練 習 の よ う な , 漢 字 熟 語 の 形 態 と 日 本 語 の 音 と の 連 結 を 強 化 す る 学 習 が 必 要 」 で あ り 、 非 漢 字 圏 日 本 語 学 習 者 は 、「 日 本 語 漢 字 の 学 習 が あ る 程 度 進 ん で か ら ,漢 字 熟 語 の 形 態 と 意 味 と の 連 結 を 強 化 す る こ と が 重 要 」 と 述 べ て い る 。 漢 字 語 彙 を 学 ぶ 学 習 者 に と っ て 形 態 と 音 と 意 味 を 連 結 さ せ る 作 業 が 重 要 で あ る こ と が わ か る 。 邱

2002)も 指 摘 し て い る よ う に 、非 漢 字 圏 日 本 語 学 習 者 は 漢 字 熟 語 の 意 味 ア ク セ ス に 音 韻 処 理 の 経 路 を 使 用 す る 傾 向 が あ る こ と か ら 、 同 音 異 義 語 が 多 い 漢 字 語 彙 を 理 解 す る こ と が 難 し い と 考 え ら れ る 。

「 容 量 」 と い う 漢 字 熟 語 を 授 業 で 取 り 上 げ た 時 、 学 習 者 か ら 「 そ の 『 よ う り ょ う 』 は 『 よ う り ょ う が い い 人 』 と 使 い ま す か 。 研 究 室 で 聞 い た こ と が あ り ま す 。」

と い っ た 質 問 を 受 け た こ と が あ る 。 こ の こ と は 、「 容 量 」 も 「 要 領 」 も 同 じ 音 と ア ク セ ン ト を 持 つ た め 、 ど の よ う な 漢 字 が 使 わ れ る か と い う 知 識 が 必 要 で あ る こ と を 示 し て い る 。 こ の よ う に 漢 字 を 読 ん だ り 、 書 い た り す る だ け で な く 、「 耳 か ら 聞 い た 音 と 漢 字 を 結 び つ け る 」、「 自 ら が 話 す 言 葉 と 漢 字 を 結 び つ け る 」 と い っ た 作 業 も 学 習 者 に と っ て は 重 要 な の で あ る 。

(3)

3.

コー パ スデ ー タ を用 い た 漢字 語 彙ク ラ ス

3.1.

漢 字 語彙 ク ラス の 概 要

東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 日 本 語 教 室 で は 2011 年 度 よ り 中 級 の 二 つ の レ ベ ル( 中 級1・中 級3)で「 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 ク ラ ス ( 以 後 、 両 レ ベ ル の ク ラ ス を ま と め て 指 す 場 合 は 「 漢 字 語 彙 ク ラ ス 」 と 称 す ) を 前 期 15回 、 後 期15回 開 講 し て い る 。 前 期 と 後 期 の 授 業 内 容 は 同 一 で あ る た め 、 中 級 1・ 中 級 3レ ベ ル の 学 習 者 は 何 れ も 前 期 か 後 期 、 ど ち ら か の 授 業 を 選 択 す る こ と に な る 。 本 ク ラ ス で は 以 下 の よ う な 、 基 準 で ク ラ ス を 設 定 し て い る 。

〈 中 級1専 門 語 彙 ・ 漢 字 ク ラ ス 〉

レ ベ ル : 初 級 1・2 レ ベ ル を 終 え た 人 。 日 本 語 を 200-250時 間 程 度 勉 強 し た 人

学 習 内 容 : 工 学 系 の 学 生 が 研 究 す る う え で 必 要 な 専 門 分 野 の 語 彙 を 勉 強 す る 。旧 日 本 語 能 力 試 験3級 の 学 習 漢 字 を 含 む 語 の 意 味 を 理 解 す る と と も に 、 そ の 語 を 用 い て 文 を 作 成 で き る よ う に す る 。

〈 中 級3専 門 語 彙 ・ 漢 字 ク ラ ス 〉

レ ベ ル:中 級 レ ベ ル2を 終 え た 人 。日 本 語 を 500時 間 程 度 勉 強 し た 人

学 習 内 容 : 工 学 系 の 学 生 が 研 究 す る う え で 必 要 な 専 門 分 野 の 語 彙 を 勉 強 す る 。旧 日 本 語 能 力 試 験2級 の 学 習 漢 字 を 含 む 語 の 意 味 を 理 解 す る と と も に 、 そ の 語 を 用 い て 文 を 作 成 で き る よ う に す る 。

3.2.

漢 字 語彙 ク ラス の 目 標

漢 字 語 彙 ク ラ ス の 目 標 は 、 工 学 系 分 野 の ゼ ミ 発 表 で 用 い ら れ て い る 旧 日 本 語 能 力 試 験3級 及 び2級 漢 字 を 含 む 漢 字 熟 語 な ど を 書 き 言 葉 と し て だ け で な く 、 話 し 言 葉 と し て も 理 解 し 、 産 出 で き る よ う に す る こ と で あ る 。 上 記 の 目 標 を 以 下 の 4点 に ま と め 具 体 的 に 示 す 。

第 一 に 、 工 学 系 分 野 の ゼ ミ 発 表 で 用 い ら れ て い る 学 習 漢 字 や 漢 字 熟 語 な ど の 字 形 や 表 記 な ど の 形 が わ か る 。

第 二 に 、 工 学 系 分 野 の ゼ ミ 発 表 で 用 い ら れ て い る 漢 字 語 彙 の 意 味 が わ か る 。

第 三 に 、 工 学 系 分 野 の ゼ ミ 発 表 で 用 い ら れ て い る 漢 字 語 彙 の 読 み 方 、 拍 お よ び ア ク セ ン ト が わ か る 。

第 四 に 、 学 習 し た 漢 字 語 彙 と 共 起 す る 表 現 を 使 用 し 、 話 す 場 面 や 書 く 場 面 に 応 じ た 文 を 作 る こ と が で き る 。

こ の よ う に 語 の 漢 字 表 記 を 確 認 し 、 語 の 正 し い 音 を 認 識 し 、 正 し い 意 味 を 理 解 す る と と も に 、 学 習 し た 語 と 共 起 す る 表 現 を 用 い て 文 を 産 出 す る こ と が で き る よ う に し て い る 。

3.3.

漢 字 語彙 ク ラス の 学 習漢 字 と 学習 語 彙

ま ず 、 学 習 漢 字 な ら び に 漢 字 熟 語 な ど の 選 択 方 法 で あ る 。「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の 4 分 野 ( 電 気 系 工 学 ・ 都 市 環 境 工 学 ・ 都 市 計 画 ・ 建 築 学 ) の デ ー タ の 中 で 頻 度 の 高 い( 頻 度 20以 上 )語 彙 か ら 、「 中 級1専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 で は 旧 日 本 語 能 力 試 験 3 級 の 漢 字 を 、

「 中 級 3専 門 語 彙・漢 字 」で は 旧 日 本 語 能 力 試 験2級 の 漢 字 を 学 習 漢 字 と し て 選 択 し た 。 さ ら に 「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の デ ー タ の 中 か ら 学 習 漢 字 を 含 む 動 詞 や 副 詞 、 形 容 詞 、 漢 字 熟 語 な ど を 、 学 習 語 彙 と し て 選 択 し た 。 こ れ ら の 学 習 語 彙 に は 、 特 定 の 分 野 で 使 用 さ れ る 語 彙 、 複 数 分 野 に 共 通 の 語 彙 、 日 常 生 活 で も 使 わ れ て い る 語 彙 が 含 ま れ て い る 。 特 定 の 分 野 で 使 用 さ れ る 語 彙 、 複 数 分 野 に 共 通 の 語 彙 に つ い て は 、 各 分 野 の 専 門 家 の 協 力 の も と 学 習 優 先 度 を 検 討 中 で あ る 。

初 級 を 終 え た 学 習 者 に と っ て 、 旧 日 本 語 能 力 試 験 3 級 の 漢 字 は 既 習 漢 字 で あ る こ と も 多 い 。 し か し 、 初 級 で 文 型 や 文 法 と 並 行 し て 学 習 す る 漢 字 語 彙 は 初 級 の 総 合 教 科 書 に 頻 出 す る 語 が 中 心 と な る 。 た と え ば 、「 風 」 と い う 漢 字 の 場 合 、初 級 レ ベ ル の 漢 字 学 習 で は「 北 風 」

「 台 風 」な ど の 語 を 学 習 す る こ と が 多 い と 思 わ れ る が 、 工 学 系 で は 「 風 力 」「 風 速 」 と い っ た 語 が 重 要 に な る 。 初 級 の 教 科 書 で 学 習 さ れ る 語 彙 と 研 究 用 の 語 彙 は 同 じ よ う な レ ベ ル の 漢 字 を 使 用 し て い て も 、 そ の 内 容 は 異 な る の で あ る 。 そ の よ う な 問 題 を 解 決 す る た め に 、 既 習 漢 字 を ふ た た び 、 専 門 分 野 の 熟 語 と し て 学 習 す る 機 会 を 設 け る こ と が 重 要 に な る 。

以 下 に 「 中 級1専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 の 授 業 に 使 用 し た 学 習 漢 字 75字 を 例 と し て 示 す 。

【 中 級 1専 門 語 彙 ・ 漢 字 】 学 習 漢 字 (3級 漢 字 75字 ) 力 ・ 風 ・ 発 ・ 会 ・ 開 ・ 送 ・ 転 ・ 体 ・ 質 ・ 問

自 ・ 究 ・ 研 ・ 画 ・ 計 ・ 意 ・ 味 ・ 明 ・ 強 ・ 言 多 ・ 少 ・ 同 ・ 物 ・ 用 ・ 建 ・ 場 ・ 事 ・ 工 ・ 業 理 ・ 料 ・ 験 ・ 試 ・ 思 ・ 考 ・ 度 ・ 安 ・ 動 ・ 作

早 ・ 急 ・ 代 ・ 世 ・ 界 ・ 真 ・ 写 ・ 別 ・ 集 ・ 特 図 ・ 空 ・ 店 ・ 広 ・ 通 ・ 主 ・ 知 ・ 地 ・ 心 ・ 方 重 ・ 切 ・ 終 ・ 起 ・ 手 ・ 近 ・ 去 ・ 着 ・ 元 ・ 住

正 ・ 新 ・ 使 ・ 持 ・ 目

す で に 学 習 し た こ と が あ る 和 語 動 詞 ( 例 :「 動 く 」 な ど ) や 形 容 詞 に つ い て も 、 特 定 分 野 に お け る 和 語 動 詞 や 形 容 詞 の 使 い 方 を 学 ぶ こ と が で き る 。 山 口 ほ か

2010)[ 9 ]は 「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 の デ ー タ を も と に 、工 学 系 4分 野 に 共 通 し て 使 用 頻 度 が 高 い 動 詞 が 旧 日 本 語 能 力 試 験 3,4級 レ ベ ル の 基 本 的 な 語 彙 で あ る こ と 、 そ れ ら の 動 詞 と 共 起 す る 名 詞 は 分 野 に よ る 特 徴 が あ り 、旧 日 本 語 能 力 試 験 2級 ま た は 級 外 の 難 解

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な 語 彙 で あ る と 指 摘 し て い る 。

例 え ば 「 重 い 」 と い う 形 容 詞 は 通 常 、 初 級 レ ベ ル の 漢 字 学 習 で は 「 荷 物 が 重 い 」 と い う 形 で 学 習 す る こ と が 多 い が 、電 気 系 工 学 分 野 で は「 負 荷 が 重 い 」、都 市 計 画 分 野 で は「 負 担 が 重 い 」と い う 表 現 が 使 わ れ て い る 。 こ の よ う に 、 当 漢 字 語 彙 ク ラ ス で は 、 初 級 で 学 習 で き な か っ た 共 起 表 現 を 学 習 す る こ と が で き る の で あ る 。 次 に 授 業 の 方 法 で あ る 。1 コ マ(90分 )で 学 習 漢 字 を5字 導 入 し 、各 学 習 漢 字 の 音 読 み 、訓 読 み を は じ め 、 学 習 漢 字 を 含 む 動 詞 、 形 容 詞 、 副 詞 や 熟 語 な ど の 漢 字 語 彙 教 育 を 行 う 。漢 字 熟 語 の 中 に は 2級 以 上 の 漢 字 を 含 む も の も あ り 、 中 級 レ ベ ル に ふ さ わ し い 内 容 と な っ て い る 。 次 に 複 合 語 を 含 む 漢 字 語 彙 の 拍 お よ び ア ク セ ン ト の 指 導 で あ る 。 ア ク セ ン ト の 違 い に よ っ て 意 味 が 変 わ る 場 合 は 、 同 音 異 義 語 を 例 と し て 挙 げ 、 弁 別 で き る よ う に す る ( 例 :「 切 る 」 と 「 着 る 」 な ど )。 学 習 者 に 音 声 を 意 識 さ せ 、 実 際 に 学 習 者 に 発 音 さ せ る こ と も あ る 。

次 に 漢 字 語 彙 を ど の よ う に 用 い る か と い う こ と を 学 習 す る 。例 え ば「 重 い 」と い う 漢 字 の 場 合 、「 負 荷 が 重 い 」 な ど 、 ど の よ う な 名 詞 が 「 重 い 」 と い う 形 容 詞 と と も に 使 わ れ る か と い っ た 共 起 関 係 を 学 習 す る 。 教 師 が 共 起 す る 表 現 を 含 む 例 文 を 提 示 す る だ け で な く 、 学 習 者 に も ど の よ う な 共 起 表 現 が 考 え ら れ る か を 積 極 的 に 発 表 さ せ る 。 こ の 場 合 の 共 起 関 係 と は 、 砂 川

(2011)[ 1 0 ]が 述 べ て い る「 語 と 語 の 結 び つ き だ け で な く 、 副 詞 と モ ダ リ テ ィ 要 素 と の 結 び つ き や 、 句 と 文 末 の 否 定 辞 や ヴ ォ イ ス と の 関 わ り な ど 、 語 を 超 え た 節 レ ベ ル や 、 語 よ り 小 さ い 形 態 素 レ ベ ル の 共 起 関 係 」 を 指 し 、 広 い 意 味 で 当 該 漢 字 語 彙 と 共 に 使 わ れ る 表 現 を 学 習 対 象 と し て い る 。

共 起 表 現 ( ま た は 、 コ ロ ケ ー シ ョ ン ) に つ い て 、 日 本 語 教 育 で は 三 好(2007[ 11 ]、三 國・小 森(2008)[ 1 2]

が 、 母 語 話 者 に よ っ て 産 出 さ れ た 言 葉 の 共 起 関 係 を 提 示 す る こ と は 、 学 習 者 が 文 を 産 出 す る た め に 有 効 な 指 導 法 で あ る と 述 べ て い る 。 当 ク ラ ス で も 漢 字 語 彙 を 含 む 共 起 表 現 の 学 習 は 学 習 者 の 文 の 産 出 に つ な が る 指 導 法 で あ る と 考 え て い る 。

3.4.

漢 字 語彙 ク ラス の 授 業の 方 法

5 つ の 学 習 漢 字 及 び 学 習 漢 字 を 含 む 漢 字 語 彙 の 字 形 、 表 記 、 意 味 、 ア ク セ ン ト を 含 む 読 み 方 、 共 起 表 現 な ど を 学 習 し た 後 、 最 後 に 学 習 者 が 漢 字 語 彙 を 用 い て 自 分 で 短 文 や 少 し 長 い 文 を 作 成 す る 。

文 作 成 に は 添 付 の【 資 料 1】【 資 料 2】に 示 す よ う な 漢 字 タ ス ク シ ー ト を 用 い た 。タ ス ク シ ー ト の 表 側 が【 資 料1】、裏 側 が【 資 料 2】(2012年 度 中 級1レ ベ ル の 漢 字 語 彙 ク ラ ス の 学 習 者 が 作 成 し た も の )で あ る 。【 資 料 1】は5つ の 学 習 漢 字 を 用 い て 短 文 を 作 成 す る も の で 、

学 習 漢 字 を 含 む 漢 字 語 彙 ( 必 ず し も 授 業 で 学 習 し た も の で な く て も よ い ) を 用 い て 文 を 作 成 す る 。【 資 料 2】

は 、 時 間 に 余 裕 が あ る 場 合 に 長 文 を 作 成 さ せ る た め の も の で あ る 。 学 習 者 が 選 ん だ 漢 字 語 彙 を 中 央 の ボ ッ ク ス に 一 つ 書 き 込 み 、 そ こ か ら 連 想 す る 語 を つ な い で い く こ と で マ ッ プ を 作 成 し 、 少 し 長 い 文 章 を 書 く 練 習 が で き る よ う に な っ て い る 。 学 習 者 は 、 短 文 ま た は 長 文 を 作 成 す る 際 、 ど の よ う な 場 面 で の 文 を 想 定 し て い る か を 明 確 に す る た め に 【 図 1】 に 示 し た よ う な ア イ コ ン を チ ェ ッ ク す る こ と に な っ て い る 。 こ の ア イ コ ン は 文 を 作 成 さ せ る 際 に 、 学 習 者 に 文 脈 設 定 を さ せ る こ と を 目 的 と し 、2012年 度 の ク ラ ス よ り タ ス ク シ ー ト に 設 定 さ れ た も の で あ る 。

新 聞 レポート 手 紙 スピーチ ニュース 会 話

【図 1】 漢 字 タスクシートの ア イコンの一 部

ア イ コ ン は 左 か ら 「 新 聞 」「 レ ポ ー ト 」「 手 紙 」 と い っ た 書 き 言 葉 、「 ス ピ ー チ 」「 ニ ュ ー ス 」「 会 話 」と い っ た 話 し 言 葉 で あ る こ と を 明 示 す る も の で あ る 。 学 習 者 は ア イ コ ン を 自 由 に 選 択 す る こ と が で き る 。 な お 、 会 話 の ア イ コ ン を 選 ん だ 場 合 は 、 対 話 形 式 に す る こ と に な っ て お り 、「 ( が に 話 し て い る )」 と い っ た 話 者 の 情 報 を 記 入 す る よ う に な っ て い る 。 ま た 、 ア イ コ ン 以 外 の そ の 他 の 状 況 ( 例 :「 小 説 の 地 の 文 の 一 部 」 等 ) も 自 由 に 設 定 で き る よ う に な っ て い る 。

学 習 者 は 漢 字 語 彙 を 用 い て 文 を 作 成 す る 際 、 必 ず

【 図 1】 の ア イ コ ン に チ ェ ッ ク を 付 け 、 自 分 が 作 成 し た 文 が 「 話 す 際 に 使 用 す る 」 か 「 書 く 際 に 使 用 す る 」 か 、と い っ た こ と を 明 確 に し な け れ ば な ら な い 。「 話 す 際 に 使 用 す る 」 場 合 は 、 ス ピ ー チ ま た は ニ ュ ー ス で 使 用 す る の か 、 会 話 の 中 で 使 用 す る の か 、 ま た 、 会 話 の 場 合 は 「 だ れ が だ れ に 向 か っ て 話 し て い る か 」 を 明 確 に さ せ る こ と に よ っ て 、 適 切 な 語 の 選 択 、 適 切 な 終 助 詞 、 ノ ダ の 有 無 、 適 切 な ス ピ ー チ レ ベ ル な ど の フ ィ ー ド バ ッ ク を 教 師 が 行 う こ と が で き る 。「 書 く 際 に 使 用 す る 」 場 合 も 同 様 に 、 レ ポ ー ト や 新 聞 の 記 事 、 手 紙 な ど 媒 体 に よ っ て 、 適 切 な 語 で あ る か ど う か 、 適 切 な 文 体 レ ベ ル で あ る か ど う か な ど の フ ィ ー ド バ ッ ク な ど を 行 う こ と が で き る 。

こ れ ら の ア イ コ ン を 設 定 し た 理 由 は 、以 前 の タ ス ク シ ー ト で は 学 習 者 の 作 成 し た 短 文 が ど の よ う な 意 図 で 作 成 さ れ た か を 教 師 が 知 る こ と が 困 難 で あ り 、 適 切 な フ ィ ー ド バ ッ ク を 与 え る こ と が で き な か っ た か ら で あ る 。 2011 年 度 の ク ラ ス で は ア イ コ ン を タ ス ク シ ー ト に 設

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定 し て い な か っ た た め 、 作 成 し た 文 が 文 法 的 に 正 し い か 、 意 味 が 通 じ る か な ど を 基 準 に フ ィ ー ド バ ッ ク を 行 っ て い た 。し か し 、当 ク ラ ス が 学 習 者 の「 聞 く・話 す 」 こ と を 意 識 さ せ る ク ラ ス で あ る な ら ば 、 ス ピ ー チ レ ベ ル や 文 体 、 ノ ダ や 終 助 詞 の 適 切 な 使 用 を 促 す 教 育 も 必 要 で は な い か と い う 観 点 か ら 2012 年 度 よ り タ ス ク シ ー ト に ア イ コ ン を 加 え る こ と に し た 。

徳 弘(2005)[ 1 3]は「 語 彙 を 文 中 ,文 章 中 ,談 話 中 等 そ の 場 に 応 じ て 適 切 に 理 解 , 使 用 で き る よ う に な る こ と が 漢 字 教 育 の 大 き な 目 標 と な る 」 と 指 摘 し て い る 。 漢 字 語 彙 教 育 も 使 用 文 脈 を 明 確 に す る こ と で 効 果 的 な 学 習 が 得 ら れ る 。北 村・木 村(2013)[14 ]は 、漢 字 授 業 に お い て 、 文 脈 を 明 確 に す る た め に 、2 文 以 上 の 文 を 作 成 さ せ る な ど の 工 夫 を こ ら し た 「 短 文 作 成 シ ー ト 」 を 用 い る こ と で 、 学 習 者 の 「 運 用 力 」 の 育 成 を 目 指 し て い る 。 ま た 、 漢 字 語 彙 教 育 だ け で な く 文 型 ・ 文 法 教 育 に お い て も 学 習 者 に 短 文 作 成 を さ せ る 際 に 文 脈 を 考 え さ せ る こ と の 必 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。遠 藤(2010)

[1 5 ]は 学 習 者 に 文 脈 を 設 定 さ せ る 作 業 を 「 メ タ 文 脈 化 」

「 文 脈 化 」と い う 工 程 に 分 け て い る 。「 メ タ 文 脈 化 」の 作 業 に よ っ て 「 書 く た め の こ と ば 」 か 「 話 す た め の こ と ば 」 か な ど を 明 確 に し 、 次 に 「 文 脈 化 」 の 作 業 に よ っ て「 だ れ が だ れ に 向 か っ て 」、ど う い う 状 況 で あ る か を 明 確 に さ せ る こ と で 、 学 習 者 に 適 切 な フ ィ ー ド バ ッ ク が 与 え ら れ る と し て い る 。 こ の ア イ コ ン 導 入 の 効 果 に 関 し て は 、 ア イ コ ン 導 入 以 前 と 導 入 以 降 の 授 業 を 受 け て い た 学 習 者 に 両 授 業 の 違 い に つ い て 、 イ ン タ ビ ュ ー を 行 っ て い る 。 そ の 結 果 は4.2.で 述 べ る 。

4.

授業 ア ンケ ー ト 及び イ ン タビ ュ ー調 査

4.1.

授 業 アン ケ ート の 分 析結 果

漢 字 語 彙 ク ラ ス で は 各 学 期 に お い て 学 習 者 に ア ン ケ ー ト を 配 付 し 、( 前 期 は6月 実 施・後 期 は11月 実 施 ) 授 業 に つ い て の 評 価 を 得 て い る 。 本 稿 で は 、 タ ス ク シ ー ト に ア イ コ ン を 付 与 し た 2012 年 度 の 前 期 ・ 後 期 の 授 業 ア ン ケ ー ト 調 査 に つ い て 報 告 す る 。

実 施 時 期:2012年6月( 前 期 )・2012年11月( 後 期 ) 対 象 者 :

「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」( 前 期 ・ 後 期 計11 名 )

【 国 籍 】タ イ3名 、ル ー マ ニ ア 1名 、ベ ト ナ ム1名 、 マ レ ー シ ア1名 、 フ ラ ン ス 1名 、 オ ー ス ト ラ リ ア 1 名 、イ ン ド ネ シ ア 1名 、ド イ ツ 1名 、ネ パ ー ル 1

「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」( 前 期 ・ 後 期 計11 名 )

【 国 籍 】タ イ 5名 、中 国4名 、韓 国1名 、フ ィ ン ラ ン ド1

ア ン ケ ー ト の 回 答 方 法 の 指 示 や 質 問 事 項 は 日 本 語 と 英 語 で 併 記 し 、 回 答 者 が 選 択 肢 か ら 一 つ 答 え を 選 ぶ 形 式 の 質 問 と 、 日 本 語 ま た は 英 語 で 回 答 す る 自 由 記 述 形 式 の 質 問 を 用 意 し た 。

選 択 肢 の あ る 質 問 は 以 下 の 8つ の 項 目 で あ る 。

① 漢 字 の 専 門 語 彙 が 前 よ り 読 め る よ う に な っ た 。

② ゼ ミ の 資 料 が 前 よ り わ か る よ う に な っ た 。

③ 漢 字 の 専 門 語 彙 が 前 よ り 書 け る よ う に な っ た 。

④ 学 習 し た 漢 字 や 語 彙 を 使 っ て 文 が 前 よ り 書 け る よ う に な っ た 。

⑤ ゼ ミ で の 話 し こ と ば が 前 よ り 聞 き 取 れ る よ う に な っ た 。

⑥ 専 門 語 彙 の 漢 字 の 発 音 や ア ク セ ン ト を 前 よ り 意 識 す る よ う に な っ た 。

⑦ 学 習 し た 漢 字 の 専 門 語 彙 を 使 う 機 会 が あ る 。

⑧ 漢 字 の 専 門 語 彙 に 前 よ り 興 味 を 持 つ よ う に な っ た 。

上 記 の 8 つ の 質 問 に 対 し て 「 全 く 思 わ な い 」「 あ ま り 思 わ な い 」「 少 し そ う 思 う 」「 非 常 に そ う 思 う 」 の 4 つ の 選 択 肢 か ら 選 ぶ と い う も の で あ る 。

な お 、 選 択 形 式 の 質 問 の 結 果 を ま と め た も の が 次 の

【 表 1】 及 び 【 図 2】 で あ る 。

【表 1】「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」・「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 クラスア ンケート結 果 のまとめ

①漢字の語彙が前より読めるようになった。

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 0名 9 名 2名 0名

中級3 0名 1名 6 名 4名 0名

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 3名 6 名 2名 0名

中級3 0名 1名 8 名 2名 0名

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 2名 7 名 2名 0名

中級3 0名 2名 6 名 3名 0名

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 1名 6 名 4名 0名

中級3 0名 2名 5 名 4名 0名

⑤ゼミで話しことばが前より聞き取れるようになった。

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 5 名 5 名 1名 0名

中級3 0名 4 名 3名 4 名 0名

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 4名 2名 5 名 0名

中級3 0名 3名 2名 5 名 1名

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 3名 5 名 2名 1名

中級3 0名 1名 4 名 4 名 2名

全く思わない あまり思わない 少し思う 非常に思う 回答なし

中級1 0名 1名 4名 5 名 1名

中級3 0名 1名 4名 4 名 2名

⑧漢字の専門語彙に前より興味を持つようになった。

②ゼミの資料が前よりわかるようになった。

③漢字の専門語彙が前より書けるようになった。

④学習した漢字や語彙を使って文が前より書けるようになった。

⑥専門語彙の幹事の発音やアクセントを前より意識するようになった。

⑦学習した漢字の専門語彙を使う機会がある。

※太 字 の 数 字 は 最 も 回 答 が 多 か った も の

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0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

1

3

1 2 2

1 2

5

4 4

3 3

1 1 1

9 6

6 8

7 6

6 5

5

3

2 2

5

4 4 4

2 4

2 2 2

3

4 4

1

4

5 5

2

4 4 5

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

1 1

2 2

1

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

中級1 中級3 中級1 中級3 中級1 中級3 中級1 中級3 中級1 中級3 中級1 中級3 中級1 中級3 中級1 中級3

①漢字の語彙が前より 読めるようになった。

②ゼミの資料が前より わかるようになった

③漢字の専門語彙が前 より書けるようになっ

た。

④学習した漢字や語彙 を使って文が前より書 けるようになった。

⑤ゼミで話しことばが 前より聞き取れるよう

になった。

⑥専門語彙の漢字の発 音やアクセントを前よ り意識するようになっ

た。

⑦学習した漢字の専門 語彙を使う機会があ

る。

⑧漢字の専門語 彙に前より興味 を持つように

なった。

回答なし 非常に思う 少しそう思う あまり思わない 全く思わない

【図 2】「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」・「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 ク ラスア ンケート結 果 のまとめ

【図 2】の 結 果 か ら 、質 問 項 目 ① ~ ④「 読 む・書 く 」能 力 の 向 上 に つ い て は 、「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」、「 中3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 両 ク ラ ス 共 に 肯 定 的 な 回 答 を 得 る こ と が で き た 。 一 方 、 ⑤ の 質 問 「 ゼ ミ で の 話 こ と ば が 前 よ り 聞 き 取 れ る よ う に な っ た 」に つ い て は 、「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 で は 5名 、「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」で は4名 の 学 生 が「 あ ま り 思 わ な い 」と 回 答 し た 。 当 漢 字 語 彙 ク ラ ス が 一 部 の 学 生 に 対 し て 、 ゼ ミ で 話 さ れ て い る 言 葉 の 聞 き 取 り 能 力 を 伸 ば す 教 育 を 十 分 に 行 え な か っ た こ と を 示 し て い る 。 し か し な が ら 、 ⑥ の 質 問 「 専 門 語 彙 の 漢 字 の 発 音 や ア ク セ ン ト を 前 よ り 意 識 す る よ う に な っ た 」 と い う 設 問 に 対 し て 、 両 ク ラ ス 共 に7名 の 学 習 者 が「 少 し そ う 思 う 」・「 非 常 に そ う 思 う 」 と 回 答 し た 。 こ の こ と は 学 習 者 が 音 声 と 漢 字 の 関 係 に 注 意 を 向 け 始 め た こ と を 示 し て い る の で は な い だ ろ う か 。い ず れ に せ よ 、「 聞 く・話 す 」こ と を 意 識 さ せ る 授 業 の 内 容 や 方 法 に つ い て は 今 後 も 検 討 す る 余 地 が あ ろ う 。

自 由 記 述 形 式 の 質 問 は 以 下 の2つ で あ る 。

① こ の 専 門 語 彙 ・ 漢 字 ク ラ ス と ほ か の 漢 字 ク ラ ス や 語 彙 ク ラ ス と の 違 い は あ る か

② こ の 授 業 の 良 い と こ ろ と 、 改 善 し た ほ う が い い と こ ろ は 何 か 。

自 由 記 述 形 式 の 回 答 に は 次 の よ う な も の が あ っ た 。 今 ま で 受 け た 他 の 漢 字 の 授 業 と の 違 い に つ い て は 、

「 今 ま で の ク ラ ス で は 、 タ ー ゲ ッ ト の 漢 字 を 一 つ の 語 で 学 習 し た 。 こ の ク ラ ス は 漢 字 を た く さ ん の 語 と 一 緒 に 学 習 で き る 」「 今 ま で 漢 字 を 使 っ て 文 を 作 っ た こ と が な か っ た 」「 例 文 が 実 用 的 だ 」な ど が あ り 、様 々 な 漢 字 熟 語 や 共 起 表 現 を 含 む 実 用 的 な 例 文 と 共 に 漢 字 を 学

ぶ こ と や 文 づ く り が 他 の ク ラ ス と の 違 い で あ る こ と を 指 摘 し て い る 。

漢 字 語 彙 ク ラ ス の 良 い と こ ろ に つ い て は 「 例 文 が 多 い の で 理 解 し や す い 」「 漢 字 の 一 般 的 な 使 い 方 に つ い て よ り 深 く 学 習 で き た 」「 漢 字 を 使 っ た 作 文 を 書 い た り す る こ と は い い 練 習 に な る 」「 漢 字 の 発 音 が 勉 強 で き る の が い い 」「 自 分 で 作 っ た 文 を 添 削 し て も ら え る の が い い 」「 少 な い 漢 字 に た く さ ん の 例 文 が あ る の が い い 」「 漢 字 を 含 む 語 彙 や そ れ ら を 含 む い ろ い ろ な フ レ ー ズ が 勉 強 で き る 」 と い う 回 答 が あ っ た 。 共 起 表 現 を 含 む 多 く の 例 文 の 提 示 が 評 価 さ れ 、 文 づ く り と そ れ に 対 す る フ ィ ー ド バ ッ ク が 役 に 立 っ た よ う で あ る 。 一 方 、 改 善 し た ほ う が い い こ と に つ い て は 「 単 漢 字 は 簡 単 だ が 、 語 が 難 し す ぎ る 」 と い っ た 難 易 度 に 関 す る も の や 、「 こ の ク ラ ス の 語 の い く つ か は 専 門 的 で は な い 。『 原 子 』『 電 子 』 な ど と い っ た 語 を も う 少 し 加 え て ほ し い 」「 期 待 し て い る ほ ど 専 門 的 な 語 彙 で は な か っ た 。実 際 に は も う 少 し 難 し い こ と ば が 使 わ れ て い る 」 と い っ た 学 習 し た 語 彙 が 専 門 的 で な い と い う 指 摘 が あ っ た 。 た し か に こ の 時 点 で は 「 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス 」 は 4分 野 し か カ バ ー し て お ら ず 、4分 野 以 外 の 研 究 室 に 所 属 す る 学 習 者 に は 有 用 な 語 彙 で は な か っ た 可 能 性 が あ る 。 ま た 、 日 常 生 活 の 語 彙 も 多 く 含 ま れ て い た た め 、「 ア カ デ ミ ッ ク な 語 彙 ば か り で は な か っ た 」と い う 不 満 が あ っ た と 思 わ れ る 。

4.2. 学 習 者へのインタビュー

授 業 ア ン ケ ー ト 以 外 に 、 授 業 で 用 い た 漢 字 タ ス ク シ ー ト に つ い て 、 学 習 者 へ イ ン タ ビ ュ ー を 行 っ た 。 本 項 で は イ ン タ ビ ュ ー の 内 容 に つ い て 述 べ る 。 今 回 イ ン タ ビ ュ イ ー と し て 、中 級 3レ ベ ル の ク ラ ス を 受 講 し た 学

(7)

習 者1名 ( 国 籍 : タ イ ) を 選 ん だ 。当 該 学 生 は 前 学 期 に 中 級1レ ベ ル の 漢 字 語 彙 ク ラ ス を 受 講 し て い る 。な お 、当 時 の 中 級 1ク ラ ス で は 漢 字 タ ス ク シ ー ト に ア イ コ ン が 付 さ れ て い な か っ た た め 、【 図1】の ア イ コ ン が あ る も の と 無 い も の 、 両 タ イ プ の タ ス ク シ ー ト を 使 用 し て 文 を 作 成 し た こ と が あ る 唯 一 の 学 生 で あ っ た 。

イ ン タ ビ ュ ー で は 5つ の 質 問 を 行 っ た 。

第 一 の 質 問 、「 ど ち ら の 方 が 文 が 作 り や す い か 」 を 尋 ね た と こ ろ 、「 ア イ コ ン が 無 い 方 が 簡 単 だ が 、漢 字 の 単 語 や 文 の 正 し い 使 い 方 を 知 り た い 場 合 は あ っ た ほ う が 作 り や す い 。チ ャ レ ン ジ に も な る し 、復 習 に も な る 」 と い う 回 答 を 得 た 。

第 二 の 質 問 に お い て 、 そ の 理 由 を 聞 く と 、「 ア イ コ ン が あ る 場 合 は 、 文 を 作 る 前 に 、 ど の よ う な 相 手 に 、 ど の よ う な 状 況 で こ の 文 を 言 い た い か を 考 え な け れ ば な ら な い 。例 え ば 、「 言 う 」と「 述 べ る 」は 意 味 が 似 て い る が 、 状 況 や 相 手 に よ っ て 使 い 方 は 違 う 。 言 葉 使 い や 言 葉 の レ ベ ル の 違 い が あ る の は 日 本 語 の 特 徴 で あ る 。 ア イ コ ン が あ れ ば 自 然 で 適 切 な 日 本 語 の 文 が 作 れ る 。」

と 回 答 し た 。 ア イ コ ン が あ る こ と で 、 文 を 作 成 す る 前 に 学 習 者 が 文 脈 の 設 定 を し な け れ ば な ら ず 、 そ の 作 業 は 容 易 で は な い が 、 適 切 な 表 現 を 学 習 す る た め に は 必 要 で あ る と 学 習 者 が 認 識 し て い る こ と が わ か る 。

第 三 の 質 問 で は 、「 ア イ コ ン が あ る 時 に 作 成 し た 文 と 無 い 時 に 作 成 し た 文 に 違 い が あ る か ど う か 。 そ の 違 い は 何 か 。」 に つ い て 尋 ね た と こ ろ 、「 ア イ コ ン が 無 い と き は 状 況 に つ い て 何 も 考 え ず 、 文 を 作 る こ と だ け が 目 的 で あ る 。ア イ コ ン が あ る 時 は 、イ ン フ ォ ー マ ル か 、 フ ォ ー マ ル か 、 誰 に 話 す か な ど 状 況 を 考 え る 。 ア イ コ ン が 無 い 時 作 っ た 文 は 、 文 法 的 に 正 し く て も 実 際 使 わ な い 、言 わ な い 文 章 に な っ て し ま う 。」と 回 答 し た 。ア イ コ ン が 無 い 状 態 で 文 を 作 成 す る 場 合 は 、 文 を 作 る こ と 自 体 が 目 的 と な っ て い る こ と を 指 摘 し て い る 。一 方 、 ア イ コ ン が あ る と き は イ ン フ ォ ー マ ル か フ ォ ー マ ル か と い っ た 待 遇 表 現 に つ い て も 学 習 者 が 意 識 し て い る こ と が わ か る 。

第 四 の 質 問 で は 、 ア イ コ ン の あ る シ ー ト へ の 改 善 点 を 尋 ね た と こ ろ 、「 学 生 の レ ベ ル に 応 じ て 個 々 の ア イ コ ン の 説 明 を も う 少 し し た ほ う が い い 。 状 況 に つ い て も う 少 し 詳 し く 書 け る よ う に し た ほ う が い い 。 そ の ほ う が 先 生 か ら さ ら に 多 く の フ ィ ー ド バ ッ ク が も ら え る 。」と い う 回 答 を 得 た 。現 状 の タ ス ク シ ー ト で は 学 習 者 が 文 脈 を 書 く ス ペ ー ス が 十 分 あ る と は 言 え な い 。 今 後 、 さ ら に 多 く の フ ィ ー ド バ ッ ク を 与 え る た め に も タ ス ク シ ー ト を 改 善 し な け れ ば な ら な い で あ ろ う 。

第 五 の 質 問 、 ク ラ ス を 受 け た 感 想 で は 、「 漢 字 の 勉 強 だ け で な く 、 い い 会 話 の 授 業 に も な っ て い る 。 文 の 書 き 方 や 言 葉 の 意 味 だ け で な く 、 言 葉 づ か い や 、 言 葉

の レ ベ ル な ど を 意 識 す る よ う に な り 、 日 本 語 の 特 徴 も わ か っ た 。」と 述 べ た 。本 イ ン タ ビ ュ ー は 、あ く ま で も 一 人 の 学 習 者 の 感 想 で あ り 、 タ ス ク シ ー ト に 付 さ れ た ア イ コ ン 自 体 の 学 習 効 果 を は か る も の で は な い 。 し か し な が ら 、 今 後 の 漢 字 語 彙 ク ラ ス の 有 効 な 授 業 方 法 を 検 討 す る う え で 多 く の 示 唆 を 与 え て く れ た と い え よ う 。

5.

まと め と今 後 の 課題

学 習 者 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 か ら 、 専 門 語 彙 漢 字 の ア ク セ ン ト に 対 す る 学 習 者 の 意 識 が 活 性 化 さ れ た こ と が わ か っ た 。 漢 字 語 彙 の 様 々 な 共 起 表 現 を 含 む 例 文 を 提 示 す る こ と や 文 作 成 と そ れ に 対 す る フ ィ ー ド バ ッ ク に つ い て も 概 ね 学 習 者 か ら 高 い 評 価 を 得 た 。ま た 、 イ ン タ ビ ュ ー の 結 果 か ら ア イ コ ン の あ る タ ス ク シ ー ト は 文 脈 を 意 識 し た 産 出 に 結 び 付 き 、 実 用 的 な 表 現 を 身 に つ け る う え で 効 果 が あ る こ と が わ か っ た 。 今 後 も 学 習 者 の 声 を 取 り 入 れ な が ら タ ス ク シ ー ト を 改 善 し た い 。

な お 、 今 後 の 課 題 を 以 下 に 三 つ あ げ た い 。

第 一 に 「 聞 く ・ 話 す 」 こ と を 意 識 さ せ た 漢 字 語 彙 教 育 の 方 法 を 検 討 し た い 。 今 後 は 、 漢 字 語 彙 教 育 に 音 声 学 習 も 含 み 、 同 時 に 強 化 し て い く 授 業 方 法 を 検 討 し て い く 必 要 が あ る 。日 本 語 教 育 の 発 音 指 導 で は 、「 ア ク セ ン ト や イ ン ト ネ ー シ ョ ン と い っ た プ ロ ソ デ ィ は 、 単 音 に 比 べ 、指 導 が 行 わ れ に く い 」( 須 藤2013)[ 1 6 ]と も 言 わ れ て い る 。須 藤(2013)も 指 摘 し て い る よ う に 、今 後 、 音 声 学 習 の 重 要 性 の 認 識 を 強 化 で き る 授 業 方 法 を 考 え て い か な け れ ば な ら な い 。

第 二 に 、 学 習 者 の レ ベ ル や 専 門 分 野 に 応 じ た 語 彙 を 導 入 す る こ と で あ る 。4 分 野 以 外 の 研 究 分 野 の 語 彙 を 取 り 入 れ る こ と 、 な ら び に 各 分 野 共 通 の ア カ デ ミ ッ ク な 語 彙 や 特 定 の 専 門 分 野 に だ け 使 用 さ れ る 語 彙 、 日 常 生 活 の 語 彙 な ど の 語 彙 の 位 相 あ る い は 使 用 領 域 を 各 分 野 の 専 門 家 と 共 に 検 討 し 、 学 習 者 の レ ベ ル や 専 門 分 野 に 応 じ て 提 示 す る 漢 字 語 彙 を 選 択 し て い き た い 。

第 三 に 、 漢 字 語 彙 ク ラ ス の レ ベ ル の 設 定 の 見 直 し で あ る 。 当 漢 字 語 彙 ク ラ ス は 、 旧 日 本 語 能 力 試 験 の 漢 字 の 級 別 に ク ラ ス を 設 定 し た が 、 語 彙 レ ベ ル に つ い て 言 え ば 、「 中 級 1 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」、「 中 級 3 専 門 語 彙 ・ 漢 字 」 の 学 習 語 彙 の 難 易 度 に 差 が あ ま り な い 結 果 と な っ た 。 実 は 、3級 漢 字 は 2 級 漢 字 よ り も 造 語 能 力 が 高 い 漢 字 が 多 く 、3 級 漢 字 を 含 む 語 彙 は 難 易 度 に 幅 が 出 た よ う で あ る 。 そ の た め 、 今 回 は 取 り 上 げ な か っ た 4 級 漢 字 を 含 む 語 彙 に も 同 様 に 、 重 要 語 彙 や 専 門 分 野 の 語 彙 が か な り 含 ま れ て い る 可 能 性 が あ る 。 今 後 は 漢 字 の 級 別 で は な く 、 語 彙 の 級 別 を 基 準 に ク ラ ス を 考 え て い く こ と も 検 討 し て い き た い 。

以 上 、三 つ の 課 題 解 決 を 念 頭 に お き 、よ り 効 果 的 な 漢 字 語 彙 教 育 を 追 求 し て い き た い と 考 え て い る 。

(8)

【 付 記 】 本 研 究 は 平 成 23 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 挑 戦 的 萌 芽 研 究 ( 課 題 番 号 23652113)「 研 究 支 援 を 目 指 し た『 理 工 学 系 基 本 口 頭 表 現 用 例 学 習 辞 典 』の 開 発 」 を 基 に 行 っ て お り 、 本 論 文 は 2013 年 3 月 17 日 日 本 英 語 教 育 学 会 第 43 回 年 次 研 究 集 会 に お い て 発 表 し た 内 容 に 加 筆 修 正 を 施 し た も の で あ る 。

[1] 大 曾 美 恵 子 ,“日 本 語 コ ー パ ス と 日 本 語 教 育,”日 本 語 教 育 ,130号 ,pp. 3-10, 日 本 語 教 育 学 会 , 2006.

[2] 伊 藤 夏 実 ・ 遠 藤 直 子 ・ 菅 谷 有 子 ・ 成 永 淑 ・ 古 市 由 美 子 ・ 森 幸 穂 ,“ 話 し 言 葉 コ ー パ ス を 用 い た 理 工 学 系 留 学 生 の た め の 日 本 語 学 習 支 援 シ ス テ ム

『 理 工 学 系 語 彙・用 例 学 習 支 援 シ ス テ ム レ イ ン ボ ー 』の 開 発,”横 浜 国 立 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 教 育 研 究 論 集 ,21号 ,pp. 115-136, 横 浜 国 立 大 学 留 学 生 セ ン タ ー ,2013.

[3] 加 納 千 恵 子 ,“中 上 級 学 習 者 に 対 す る 漢 字 語 彙 教 育 の 方 法,”筑 波 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 日 本 語 教 育 論 集 ,15 号 ,pp.35-46, 筑 波 大 学 留 学 生 セ ン タ ー , 2000.

[4] 小 宮 千 鶴 子 ,“理 工 系 留 学 生 の た め の 物 理 の 専 門 連 語 : 高 校 教 科 書 の 調 査 に 基 づ く 選 定,”講 座 日 本 語 教 育 ,41号 ,pp.18-40,早 稲 田 大 学 日 本 語 研 究 教 育 セ ン タ ー ,2005.

[5] 曹 紅 荃 ・ 仁 科 喜 久 子 ,“中 国 人 学 習 者 の 作 文 誤 用 例 か ら 見 る 共 起 表 現 の 習 得 及 び 教 育 へ の 提 言:名 詞 と 形 容 詞 及 び 形 容 動 詞 の 共 起 表 現 に つ い て,”日 本 語 教 育 ,130号 ,pp.70-79, 日 本 語 教 育 学 会 , 2006.

[6] 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 国 際 交 流 室 日 本 語 教 室 ,工 学 系 研 究 科 日 本 語 教 室 報 告 書 2010年 度 , pp.19-20,2011.

[7] 林 洋 子 ・ 国 吉 ニ ル ソ ン ・ 野 口 ジ ュ デ ィ ・ 東 條 加 寿 子 ,“日 英 の 理 工 系 口 頭 発 表 コ ー パ ス の 構 築 と 検 索 サ イ ト JECPRESE,”第 1 回 コ ー パ ス 日 本 語 学 ワ ー ク シ ョ ッ プ 予 稿 集 ,pp.273-282,2012.

[8] 邱 學 瑾, “ 漢 字 圏 ・ 非 漢 字 圏 日 本 語 学 習 者 に お け る 漢 字 熟 語 の 処 理 過 程 : 意 味 判 断 課 題 を 用 い た 形 態 ・ 音 韻 処 理 の 検 討,” 教 育 心 理 学 研 究, Vol.50, No.4, pp. 412-420,2002.

[9] 山 口 真 紀 ・ 菅 谷 有 子 ・ 単 娜 ・ 古 市 由 美 子 ・ 村 田 晶 子, “ 工 学 系 話 し 言 葉 コ ー パ ス に お け る 和 語 動 詞 の 使 用 実 態:名 詞 と の 共 起 パ タ ー ン の 調 査,” 専 門 日 本 語 教 育 研 究 12, pp.41-46. 専 門 日 本 語 教 育 学 会, 2010.

[10] 砂 川 有 里 子 ,“日 本 語 教 育 へ の コ ー パ ス の 活 用 に 向 け て ,”日 本 語 教 育 ,150号 ,pp.4-18, 日 本 語 教 育 学 会 ,2011.

[11] 三 好 裕 子 ,連 語 に よ る 語 彙 指 導 の 有 効 性 の 検 討,”日 本 語 教 育 ,134号 ,pp.80-89, 日 本 語 教 育 学 会 ,2007.

[12] 三 國 純 子 ・ 小 森 和 子 ,“コ ー パ ス を 用 い た 論 文 作 成 の た め の 慣 用 的 共 起 表 現 の 抽 出,”小 出 記 念 日 本 語 教 育 研 究 会 論 文 集 ,16号 , pp.55-68, 小 出 記 念 日 本 語 教 育 研 究 会 ,2008.

[13] 徳 弘 康 代 ,“中 上 級 学 習 者 の た め の 漢 字 お よ び 漢 字 語 彙 学 習 資 料 の 開 発,”講 座 日 本 語 教 育 ,41 号 , pp.41-63, 早 稲 田 大 学 日 本 語 研 究 教 育 セ ン タ ー , 2005.

[14] 北 村 尚 子 ・ 木 村 祐 子 ,“ 「 運 用 力 」 の 育 成 を 目 指 し た 漢 字 授 業 に 関 す る 考 察 :「 短 文 作 成 シ ー ト 」

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[15] 遠 藤 直 子 ,“初 級 文 型 を 用 い た 表 現 教 育 : 中 級 レ ベ ル 口 頭 表 現 ク ラ ス に お け る「 ミ ニ ド ラ マ 」の 実 践 を 通 し て,”日 本 語 / 日 本 語 教 育 研 究 ,1 号 , pp.31-47, コ コ 出 版 , 日 本 語 / 日 本 語 教 育 研 究 会 ,2010.

[16] 須 藤 潤 , “日 本 語 の ア ク セ ン ト・イ ン ト ネ ー シ ョ ン 学 習 に 対 す る 意 識 と 動 機 づ け,” Polyglossia : the Asia-Pacific's voice in language and language teaching 24, pp. 164-176, 立 命 館 ア ジ ア 太 平 洋 研 究 セ ン タ ー, 2013.

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