安定な適応制御系の設計
田勝彦
一LL一
月u
岡山理科大学情報処理センター
(1997年10月6日受理)
1゜はじめに
制御対象の入力に無駄時間を含む適応制御系を設計する。有限時間整定系を設計して出 力を出来るだけ早く有限時間で目標値に一致させる。内部モデル原理によれば,目標値の 極はG(s)を制御対象とすると,G(s)/sの極に含まれていなくてはならない為,状態フィー ドバックにより極配置を行う。又フィードバック系が安定,特にフィードバック伝達関数 の極が全て零に成る様に制御装置を設計すれば,構造的に安定を有限時間整定系が設計で きる。その時同定誤差により制御装置を求める時,その係数が理想的に設計された場合,
即ちフィードバック伝達関数の極が零に成る様に設計すると,フィードバック制御系が安 定である限り,出力を目標値と誤差項に分解した場合,誤差項は設計通りZ-lの多項式にな らなくても,即ち有限整定しなくても,フィードバック系が安定である限り零に収束する。
更に環境の変化により制御対象の状態方程式の係数が変わった場合とか,時間がたって制 御対象の劣化が起った場合,逐次サンプル時間間隔毎にオンラインで同定をくり返して,
制御装置の係数や,状態フィードバックのゲインん計算して正しく変更していかねばなら ない。その考え方はKalman1)により発表されたものがある。その際制御装置を設計する 時,制御装置の分子と制御対象の分母の間に極零相殺が起り2),可制御性,可観測性の性質 が成り立たなくなり,制御対象が不安定の場合,出力は発散する。
更にオンライン同定には最少2乗法を使ってあるが,観測ノイズが存在する場合には,
同定結果に偏差が生じる。そこで,Landanの開発したオンラインモデル規範形同定装置を
利用する3)4)5)。所が閉ループ系の並列形同定法6)7)では,制御装置をオンラインで設定していない。制御 装置の分母と理想的フィードバック系の極の比が正実性を,満足する様に設定してある為,
いつも可能とは限らない。しかも有限整定しない。そこで先のLandanの先の同定法の様
に,プラントの出力とモデルの出力の誤差に補償装置を入れて正実性を満足する様に設計
すると,パラメータの同定結果は偏差は零に収束する。2.極配置
内部モデル原理により,状態フィードバックを使って,制御対象をG(s)=P(s)e-Tsとす る時,G(s)/sの極が目標値の極を含む様に変え,又有限整定してシステムが構造的に安定 に成る様に,制御装置を使ってフィードバック伝達関の極が全て零に成る様にペズー方程 式を使って制定する。サンプル値制御系では操作入力は区分的に定数になるので,無駄時 間をdTと置いて,ここにTはサンプル時間間隔とする。離散化実現は
に鱗(b川十ハル①
として表わせる。先の制御対象の極配置を行う為に,
噸化)-…+FIM〃…(Iに:|)
により,状態フィードバックと制御入力のフィードバックを行う8)。所がG(s)は状態フィー ドバックにより極は変えられても,零点は動かせない。その為に極配置して極は変えられ ても,拡張Z変換の分子は変えられない。所がパルス伝達関数の拡張Z変換の分母の極と 分子の問には一定の関係が成り立つ。その為に極配置されたパルス伝達関数の原像のラプ ラス変換が存在しない。その為にサンプル値時間間隔が小さくない時には,サンプル値制 御系を設計すると目標値と出力とは過度状態が経てばサンプル時点では一致する。之はZ 変換は極と零はラプラス変換の様に任意であるからであり,しかしながらサンプル時点間 では一致せずに影の振動が生じる。そこでサンプル時間間隔を短かくすると連続系に近付 いて影の振動は小さくなり,殆ど目立たなくなる。図1にはサンプル時間間隔T=5.0の 影の振動が起きる例を示した。
更にベズーの方程式を使ってフィードバック伝達関数の極が全て零に成る様に設計すれ ば同定された制御対象の同定誤差により設計された制御装置の設定誤差の為有限整定しな くても,安定である限り出力は目標値に収束する。誤差項のZ-1の多項式がフィードバック 伝達関数の極を含む安定な有理式に変わる為である。
3.適応制御系の同定法
図2に示した様に閉ループの再帰型同定法を用いて,オンラインで適応制御系を設計す
る。その場合出力にサンプル時間間隔毎に観測を受ける時の観測ノイズw(kT)が存在する
場合を考える。ここでw(kT)は白色ノイズとする。すると出力の観測値はHG(z)を制御
対象のパルス伝達関数,U(z)を入力とするとき「-----~ ̄---.-一-------------------~----…-…---1
FII r】洲」/‐ 刀一‐い研刊ji1i
Wが
図1 モデル規範形適応制御系
8
壁
〆】0已創ロロ日自国ロロ・ロ【0□。。。”0「コヨ
『
’’
匡已ン
i
00 T
ング時間間隔T=J,Oの場合の適応制御系の目標値と出力 図2サンフ
 ̄●q u、
80■
 ̄
⑥0
g■■
 ̄
 ̄
・・
● す
 ̄ U
・
・
●
■
 ̄。■
0
・・
●
●
 ̄
=_
U ■ U
0.0030.0060-0000.00120.00150.00180.00210.00200.00270.00300.
/ 、 ‘P、し
へ 八
〆Ⅱ
i/〔■ (
[、 j/し 1 I ]/
Ⅲ〈 プ
「、 ' ' 、
、 ノ
、「
I
、 ’
「’ 、
L負’ 『 !
I Ⅲ愚
、J' ■ヒグ
v し
P凡
y(t)=HG(z)U(t)+w(t)
である。所がフィードバック系では,操作量U(z)は
U(昨丁〒て器而R(z)-丁≦f淵可
出力Y(z)は
Y(z)一丁鵠言飴R(z)一丁旱筈鵲釜TW(z)
と成って
何れも有色ノイズを含む様になる。ここにC(z)は制御装置である。その為に最小2乗法と
か補助変数法は閉ループ系では同定結果に偏差が生じる。そこで並列形モデル規範形同定法を使って見る3)4)5)。離散カルマンフィルタを使ってノイズを軽減し,状態変数,出力を推 定して同定を行えば出力にノイズの影響は殆ど無くなる。この同定法は非線形を含むフィ
ードバック同定法であり,超安定の条件を満足する様に,即ち正実性の条件が満足される 様にプラントとモデルの出力との誤差に補償装置を組み込めば,パラメータは真値に収束 する8)。真値に収束させる為には操作量の周波数のrichnessが必要であり,それは過度状 態で実現される事になる。そこで,図3,図4,5では制御対象
G(s)-T百千百m百千5万丁e-2Ts
1.O目
,I
。.ⅡⅢ
ⅡⅡZ万一■
T
図3最小2乗法による適応制御系 観測ノイズ平均0.0分散0.001
隼
■ 巨U 凹
目●
目
g●’
・
 ̄
>●●
●
 ̄ ̄ 0
。
●
●
◎画 0
■
○・
●
且0
0oUuこ・7,5.ⅡDB、1,10.8013.sol6-BO18.m’21.'ぬ20J麺27.OOU
11.,‐
'111
I鰯lll
■
、
llll 八 1N
■110】UBF●▽B■BaⅡ征■二P■5■■■▲〃▽。。O■■■0■MIMI
LilIlll
'、 Loゴー ̄ ̄ ̄似レームロロ~の-.'1
「U
! iI 淵 〆 /
----7 I ( 、 ''1 lIIll
八/ )
■ ̄の●■-.-( 7
』 }一●
! |lIII Ill 〆 (
「! ( ||I ||’ 、 ノ
|llI ''1 II
Iノ
U
、
、
手
--11
Ⅱ
11 (
1'''1 '1
lllil
'''''11
---PC江と~.臼
、 ソ '
に対して,図3,4では目標値
r(t)=25.Osint
サンプル時間間隔T=0.1で平均値0.0分散0.001の白色ノイズが観測値に含まれる場合の 最小2乗法と補助変数法の同定による応答を示してあり,パラメータの偏差の為影の振動
8
産△ン
T
図4補助変数法による適応制御系の目標値と出力 観測ノイズ平均0.0分散0.001
目
ロロロロ②。□・ロゴ。□。。。。”
軋皿
ロー ̄「--〒-
コろ8.m01.0010日、00135.00162.00186.00,2】6.002U幻-,囮 00
図5モデル規範形適応制御系の応答
観測ノイズ平均0.0分散1.00白色雑音サンプル時間間隔T=1.0
●
 ̄u、
gQq
g
8●q
 ̄
 ̄
・
・
□
● ロ
 ̄ 0
■
・
・
●
■テロ 0
.口●
●
●ロー_
00.002.705.8OB・1010.8018.麺16.so18.80.21.“20J麺27J00 lノ
M
I
、
、
=オーー ̄0
( 、
一』
一
! 戸
、
、
(
I 、
'一
' / ノ /
八
( 、
(
---+--
マー 1
----
( ?// Z
。■-----Ⅱ
、 キ / 111
111 と
IV
、  ̄〒 ̄----
ノ 、‐′
v
が生じている。図5には,モデル規範形並より同定法による適応制御系の応答,即ち目標 値r(t)=25.OsinO1tサンプル時間間隔T=1.0の場合を示してある。観測ノイズは平均値
0.0,分散1.0の白色ノイズで,パラメータの初期誤差は0.001である。4.結び
無駄時間入力を持つ制御対象に対して適応制御系を設計した。出力に観測ノイズが含ま れる場合,今迄のオープンループ系に対して作られた同定法を,閉ループ系に用いると問 題が生じる。モデル規範形並列同定法を使って,超安定の条件が満足される様に適応制御 系を構成すると,制御対象のパラメータは真値に偏差なく収束し,出力は目標値に収束す る。制御対象のパラメータの同定誤差が僅かの場合は,制御装置のパラメータ設定誤差も 僅かで,フィードバック系は安定である限り出力は目標値に有限時間でないが,時間と共 に収束する。たとえ制御対象が安定でなくてもフィードバック回路の制御装置により安定 化できるが,同定誤差が大きい場合には,フィードバック伝達関数の極がZ平面の単位円 外に出て,系が不安定となると出力は発散してしまう。之が初期誤差が0.001と小さくし か取れない理由である
参考文献
1)RE・Kalman:Designofaself-optimigingcontrolsystemTrans・ASMEVoL80pp、468-478
(1958).
2)Arthur,R・Bergen,JohnRRagazzini:Sampled-dataProcessingtechniquesforfeedbackcontrol systemdiscussionofreference(1)TransAIEEVoL73partllpp、236-247November(1954).
3)LjungandSoderstrom:JheoryandpracticeofrecursiveidentificationTheMITPress(1981).
4)LBLandan:UnbiasedrecursiveidentifieationusingmodelreferenceadaptivetechniqueslEEE Trans.A,CVoLAC-21No、2pp、194-202(1976).
5)1.,.Landar:AnasymptoticunbiasedrecursiveidentifierforlinearsystemsinProclEEEConf decisionandcontrolpp288-294(1974).
6)LDLandanandAlirezaKarimi:Anoutputerrorrecursivealgorithnsforunbiasedidentification inclosedloopAutomaticaVoL33No5pp、933-938(1997).
7)LDLondanandAlirezaKarimi:RecursiuealgorithmofidenticationinclosedloopAunified approachandevaluationAutomaticaVoL33NoBpp、1499-1523(1997).
8)渡辺慶二:むだ時間システムの制御計測自動制御学会(1993).
9)高橋安人:システムと制御第2版下岩波書店(1978).
Thedesignofstructuallystableadaptivecontrol systemwithexternaltimedelayinput
KatsuhikoMAEDA I"/bmaj伽Pmcessj"gα"花γ
Ftzczu/tyq/E"gj"cc""g oノヤ(Zyzz"α肋/zノc)鋤ICI/Scje"CC R/Cl/tzノーc〃01-1,0/bZZyα”αm0-0005,ノヒZノウα〃
(ReceivedOctober6,1997)
Thepurposeofthisresearchistodesigncontrolsystemwithexternaltimedelay inpurtastheoutputofcontrolledobjectcoincideswithreferenceinputassoonas
possible・
Whenthepolesoffeedbacktransferfunctionaresettozero,finitesettlingtime
controlsystemisrealized
Whenwedesignfinitesettlingtemecontrolsystemitisnecessarytousepole
placementinordertosatisfyinternalmodelprincipleashiddenoscillationdoes、't
occurAndwedecidetheparamentersofcontroller,idenlifyingtheparametersof
controlledobjectateverysamplingtimeWhenwedesighcontrollerforthefeedback
systemtobecomestable,struchUallystablesystemisdesigned