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将来温暖化に伴う名古屋都市圏の健康被害予測

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Academic year: 2024

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将来温暖化に伴う名古屋都市圏の健康被害予測

明星大学 理工学部 環境・生態学系

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13t7-053 長谷川諒

指導教員 亀卦川 幸浩 1. はじめに

近年、地球温暖化やヒートアイランド現象によ り気温上昇が問題となっている。我が国でも、東 京等の大都市域の気温が著しく上昇している。そ れに伴い、健康影響(熱中症、デング熱等の感染 病)の顕在化が見られ、東京における熱中症救急 搬送者数が年々増加していることなどが問題とな っている。それによって熱中症は温暖化に伴う代 表的な健康被害として社会的に認知され、様々な 対策がとられている。その他に気温上昇により発 生する健康影響として、熱的疲労や睡眠障害もあ げられる。このように気温上昇に伴う軽度の健康 被害も研究対象として着目されつつある。

2.先行研究

(1)岡野他 1)では、東京 23 区居住者を対象にイ ンターネット調査を行い、睡眠障害者の 51.2%

が夜間高温化と関係があると推定された。また、

就寝時の気温が 25.2%を超えると睡眠が悪化す る傾向があることが推定された。

(2)井原他2)では、東京を対象とした仮想評価法

(CVM)による支払意思額のアンケート調査に基 づき熱中症よりも睡眠障害に伴う健康被害のほ うが大きいとの推定がなされている。熱中症に よる被害額は 9.32 億円で、睡眠障害による被害 額は、21.8 億円と推定された。

(3)井原 3)では、東京を対象に熱中症被害量を DALY(障害調整生命年)で定量化している。

3.研究目的

近年、最も猛暑日の出現頻度が高く、更なる高 温化が懸念されている名古屋を対象に夏季の暑熱 環境がもたらす健康影響として睡眠障害と熱中症 に着目し、その現況被害額を推計する。加えて今 後の気候変動を加味した将来被害額を推定する。

そして、熱中症に比べ睡眠障害の被害が大きいと 推計した先行研究の結果を検証し、温暖化適応策 としての睡眠障害の被害軽減の重要性について考 察することを目的とした。

4.研究手法

気候変動に伴う健康被害量の推計手法として、

DALY 称される指標を用いる。DALY(Disability Adjusted Life Year)とは障害調整生命年と言わ れる指標で、病的状態、障害、早死によりもとも と生存するはずだった年数が失われた年数を意味 し、疾病負荷を総合的に示すものである。この手 法は、世界保健機関が使用している指標であり、

定義は次式の通りである。

DALY = YLL + YLD (1) YLL = N × L (2)

YLD = I × DW × L (3)

上式中、YLL(早死による損失余命)、

YLD(障害生命年数)、

N(死亡数)、L(死亡年齢における平均余命)、

I(疾病の事例数)、DW(重篤度)、

L(治癒・死亡までの平均期間)である。

YLD(障害生命年数)とは障害によって健康的な生 活送ることのできなかった年数を意味する。

5.研究の流れ

5.1 健康被害の DALY に基づく定量化

先行研究と同様、睡眠障害の場合は DALY と夜間 気温(0 時)、熱中症の場合は DALY と WBGT(14 時) の関係式(被害関数)を作成し、健康被害を DALY を 用いて定量化した。

(1)睡眠障害による被害量の算出

睡眠障害は、死亡にいたるほどの被害ではない ため、DALY=YLD が成り立つ。よって①I(疾病の 事例数)と②DW(重篤度)と③L(治癒・死亡まで の平均期間)の 3 つが必要となる。

① I(疾病の事例数)の算出

疾病の事例数の算出には、SQIDS(Sleep Quality Index for Daily Sleep)と呼ばれる毎日の睡眠の 質をアンケート得点化したものを使用した。SQIDS とは PSQI-J(日本語版ピッツバーグ睡眠質問票)

を参考に作られた毎日の睡眠の質を評価する質問 票である。SQIDS の質問項目として、(1)睡眠の質

(2)入眠時間(3)睡眠時間(4)睡眠効率(5)

中途覚醒(6)睡眠剤の使用(7)日中覚醒困難 の 7 項目を使用する。各 7 項目とも 0~3 点の 4 段階 で評価し、合算(21 点満点)することで睡眠を評 価する(得点が高いほど悪い睡眠)。以降この合算 点を S と表す。

表1 使用したアンケート概要

調査年 2011 年 2012 年 調査方法 インターネット調査 調査期間 8/2~8/11 8/2~8/16 調査対象 名古屋在住の 20 歳以上の男女 対象数 636 人 700 人 対象外 旅行者、鬱病・高血圧症を患っ

ている人、睡眠剤の使用者

アンケート結果に基づき、アンケート回答者の住 居地域における午前 0 時気温(θ)と S 得点の関係 式を回帰分析により求めた。

具体的には以下の式を導出した。

S=S

0

+[ ∆ S/ ∆ θ](θ-θ

0

)・・・式 1

※whenθ>θ0

(2)

式 1 中、(ΔS/Δθ)が気温上昇に伴う S 得点の 増加率(睡眠の質の低下の度合い)であり、一方 S

0

は気温に依存しないベース得点である。この得点 S

0

の回答者群の中には気温とは無関係に睡眠障害 を発症する慢性的罹患者数が含まれる。この慢性 的 罹 患 者 数 に つ い て は 、 先 行 研 究 (Doi et al.,2011)4)における罹患率(28.79%)をもとに推 計し、得点が S

0

の回答者群の中の慢性的罹患者に ついて期待される S 得点の下限値(S

L

)を推定し、

θ

θ

0

の気温範囲で S

L

を超える S 得点の回答者を 気温上昇のみの影響を受けた睡眠障害の発症事例 とみなした。

以上の方法による S の回帰分析結果を表 2 に示す。

表 2 回帰分析結果

項目 算定値

気温感応度

(ΔS/Δθ[点/℃]) 0.178 ベース得点 S

0

[点] 5.45 閾値気温θ

0

[℃] 26.9 睡眠障害者得点(S) 7.17

さらに、I とθの関係式を最小二乗法により求 める。この関係式は将来気候下でも成り立つもの と仮定し、気温上昇のみの影響を受けた睡眠障害 者の発生確率を正規分布より求め、閾値気温θ

0

℃ から 29℃における各気温での発生確率を平均傾き (睡眠障害者の増加割合[Δy])から求めた。この 増加割合に名古屋市の総人口をかけることにより 疾病の事例数(I)を算出した。

DW(重篤度)の設定

重篤度は 0~1.0 の間の数値で表される(1.0 に 近づくほど症状が重い)。重篤度は先行研究 Fukuda et al5)より 0.1 とした。

(治癒・死亡までの平均期間)の算出 治癒・死亡までの平均期間は Fukuda et al5)よ り罹患期間を 1 日とした。

(2)熱中症死亡による被害量の算出

熱中症死亡は障害生命年数を考慮しないため、

DALY=YLL が成り立つ。よって①N(死亡数)と②L(治 癒・死亡年における平均余命)の 2 つが必要となる。

N(死亡数)の算出

N(死亡数)は年間の熱中症搬送者数と熱中症死 亡数の比を用いて、搬送数を死亡数に変換した。

L(治癒・死亡までの平均期間)

L(治癒・死亡までの平均期間)は先行研究2)より 15.736 年とした。

5.3 被害量の将来予測

先行研究(高根他,2015)6)において将来気候シミ ュレーションにより推計された将来の気温上昇量 を、I とθの関係式に代入する方法で将来の I の 増加量(将来的な睡眠障害の発症事例の増加量)を 推計した結果、26.9℃以上において、深夜 0 時の 気温が1℃上昇するに伴って Δyは 1.78%の住 民が新たに睡眠障害になると推定された。

熱中症の将来予測には現況(2010~2014 年の 5 年間の夏季の 14 時 WBGT の平均)に先行研究(青 木,2013)7)で推計された WBGT の上昇量を足すこと で将来的な熱中症による搬送者事例の増加量を推 計した。

6.解析結果とまとめ

解析の結果、名古屋市の睡眠障害に伴う夏季(8 月)の健康被害額が、2011 年は 40.9 億円、2012 年 は 18.7 億円と推定された。また、将来的な被害額 として 2030 年代には 53.9 億円、2070 年代には 129.5 億円と推定された。

熱中症死亡による現況被害額は 6.4 億円と推定 された。また、睡眠障害と同様に将来的な被害額 として 2030 年代には 7.1 億円、2070 年代には 16.6 億円と推定された。

人口は将来的に減少していくと予測されている が、被害額は睡眠障害、熱中症ともに増加してい く結果となった。また、先行研究と同様に、睡眠 障害においてより大きな被害額が推計されたため、

社会的に熱中症が注目されている中、睡眠障害に ついても同様の視点での対策を検討していく必要 がある。そして、将来的な温暖化への健康被害軽 減の為の適応策として、昼間気温の低減(熱中症 対策)だけでなく、夜間の屋外・屋内気温の低減 による睡眠障害対策が重要であることが示せた。

7.参考文献

1.岡野他 2 名,2008,日本ヒートアイランド学会 論文集,Vol.3, pp.22-33.

2.井原他 4 名,2011,日本建築学会環境系論文集,

第 76 巻,第 662 号,pp.459-467.

3.井原智彦,バイオクリマ研究会第 18 回研究成果 発表会要旨集 pp.14-17, 2015.

4.Doi et al.Psychiatry and Clinical Neurosciences,Vol.55,pp.213-215,2001.

5.Fukuda S et al. Int J LCA, Vol.18, No.5, pp.1089-1097, 2013.

6.髙根雄也, 他 6 名,日本建築学会環境系論文集, Vol.80, No.716, pp.973-983, 2015.

7.青木翔平,疑似温暖化手法を用いた名古屋都市 圏の暑熱環境適応策に関する研究,明星大学卒 業修士研究論文,2013.

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