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日本周辺の海面水温分布がもたらす気温前日差の気候学的地域性

気象・気候ダイナミクス研究室 関陽平(立花義裕教授)

1 研究背景

近年,気象データを活用する動きが国を挙げ て進んでいる[1].ビジネスに活用する気象デー タとして,気温や湿度などの絶対量のほか,気 温の前日差や前年比などの相対量も利用され ている.気温の相対量は体感温度に関係してお り,常盤(2012)[2]では体感温度の変化に伴っ て売り上げが変わる商品が数多く存在するこ とを示している.このような相対量を用いるこ とで,より高精度の需要予測を可能にしている.

相対量の一つである気温の前日差は天気予 報などで用いられ,暑い寒いといった相対的な 感覚をわかりやすく理解する指標として広く 知られている.Fujibe et al.(2018)[3]では同じ 気温でも前日との気温差によって熱中症によ る死亡リスクが変化することを示している.ま た,前日差が大きいと体調を崩しやすいことか らも,前日差の気候学的理解は健康面において も重要である.

今後温暖化したときに,日々気温幅がどう推 移 し て い く の か は 関 心 の あ る 問 題 で あ る

(Fujibe et al., 2007[4]; Griffiths et al., 2005[5]). Fujibe el al.(2007)では,日最高気温の日々気 温幅(月内標準偏差)の長期変化はなく,日最 低気温の日々気温幅は減少していることを示 している.また,気候学的な日々気温幅の一部 地点の比較は行っているが,空間的にどの地域 で大きいか,また,なぜ地域によって差がある のかは述べていない.本研究で示す前日差の指 数は結果的にではあるが,日々気温幅と気候学 的に似ていることを確認した(図略).つまり,

前日差の気候学的特徴の理解は,気候変動への 理解を深めることにもつながるであろう.

本研究では,日本全国における日最高気温及

び日最低気温のそれぞれの前日差に着目し,季 節性・地域性を気候学的に理解すること,また,

それらの気候学的形成要因を探ることを目的 とする.修士の研究発表会においては,日最高 気温の前日差の気候学的形成要因と考えられ る海陸の温度コントラストの効果を探ること に重点を置いて発表する.

2 使用データ

本研究では観測値である気象官署データ及

び,AMeDAS[6]のデータを用いる.解析期間は

1986年から2015年までの30年分で(欠損日 を除く),対象の地点は8割以上のデータ日数 が存在する818地点とする.

世 界 の 日 最 高 気 温 の 観 測 デ ー タ と し て GHCND(Global Historical Climatology Network-

Daily[7])のデータを用いる.GHCNDデータに

は以下の方法でフィルタリングを施した.

(1)1986~2015 年まですべての年で少なくとも

データがある

(2)気温のデータが明らかにおかしい場合は欠 損値とみなす

(3)全期間のうち8割以上のデータがある (4)日 本 の 地 点 を 除 く ( 日 本 の デ ー タ は

AMeDASのデータを用いるため)

(5)南半球の地点を除く(計算速度の都合上)

以上のフィルタリングの結果,GHCNDデータ では5721地点が対象地点となる.

また,日平均海面水温のデータとして,水平 格子間隔 0.25 度の Optimum Interpolation Sea Surface Temperature (Reynolds et al., 2002[8])再 解析データを使用する.

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3 解析手法

前日差を気候学的に評価するために以下に 示す手順で気温急低下指数と気温急上昇指数 の二つの指数を定めた.前日差の30年分の各 月毎の10パーセンタイル値を求める.その後,

10 パーセンタイル値以下の前日差を条件とし て標準偏差をとったものを気温急低下指数と した.同様に,90パーセンタイル値以上の前日 差を条件としたものを,気温急上昇指数とする.

これらの指数の値が大きいほど,10日に1 回 ほどの頻度で起こる前日差が大きいことを示 す.ただし,10%という閾値は気温の急激な変 化に限定するためのものだが,本研究で示す結 果は,閾値に対して大きく手法依存しないこと は確認済みである.

海陸の温度コントラストを測る指標として,

各観測地点の日最高気温とその観測地点から 最も近い日平均海面水温のグリッドポイント の値の差を用いる.いくつかの地点では,同距 離のグリッドポイントが存在したが,全体の母 数に対して多くないため,本研究では無視する.

最高気温前日差の形成要因の確認のため,領 域 気 象 モ デ ル で あ る WRFver.4.0(Weather Research and Forecasting)を使用した.計算期間 は 北海道オホーツク海側に位置する紋別で前

日差 -19.8 度を記録した期間を含む 1998年 5

月4日18UTC~8日00UTCとし,大気場の初 期値・境界値として水平格子間隔 0.75 度の ERA-interim(Simmons et al., 2007[9])を,海面 水温の初期値境界値としては OISST のそれぞ れ6時間毎のデータを用いた.計算領域は北海 道を中心としたFig.1の外枠の範囲と赤枠で囲 われた範囲でそれぞれ 15km と5km の水平格 子間隔で計算を行った.本研究では,現実の場 を再現した実験(CTL_RUN)とFig.1の赤枠内 で 海 面 水 温 を 6℃ 上 昇 さ せ た 実 験

(SST+6℃_RUN)の2つの実験を比較し,オ ホーツク海が冷たいことによって前日差が大 きくなっているかを検証する.

4 結果と考察

前日差の地域性・季節性を評価するために,

各月毎に最高気温急低下指数と最高気温急上 昇指数の気候値を用いて,最高気温急低下マッ プと最高気温急上昇マップを作成した.ここで は特徴的な 5 月の最高気温急低下マップを示 す(Fig.2).様々な時間スケールの気温差の地 域性として,高緯度でかつ,内陸で大きいとい った特徴が挙げられる(日較差,年較差など). それに対して,5月の最高気温急低下マップは 内陸も一部周囲よりも大きいが,北海道オホー ツク海沿岸や三陸沿岸でも大きいことがわか る.

Fig.1 WRF の計算領域.ドメイン 1 が外枠,ドメ イン 2 が赤枠を示す.

Fig.2 5 月の最高気温急低下マップ[℃].

色は気温急低下指数の気候値を示す.

(3)

これらの地域の特徴として,冷たい海が近く にあることが挙げられる.5月の海陸温度コン トラストの値を見てみると(Fig.3),上記の地 域で非常に大きいことがわかる.冷たい海の存 在は移流や拡散の観点からも,低温をもたらす ことが想定される.

統計的に海陸温度コントラストが前日差に 効いているかを検討するために,GHCND と

AMeDASのデータを用いて,5月の海陸の温度

コントラストと最高気温急変指数との関係を

見た(Fig.4).海に近い沿岸域であるほど海陸

温度コントラストと気温急変指数とは線形的 な関係性を示すことが示し,距離が離れるほど 明確な関係性がないことが示唆された.

次に,数値モデルでも海の効果を確かめてみ

る.CTL_RUNとSST+6℃_RUNの北海道オホ

ーツク海側に位置する紋別の気温の時系列を 見ると(Fig.5),急低下する前日である5月6 日のほとんどの時間で2つのRUNの差はなく,

6 日 21 時 ご ろ か ら 7 日 の 終 日 に か け て

CTL_RUNのほうがSST+6℃_RUNよりも寒い

ことが示された.その結果,最高気温前日差と しても約3℃ほど異なり,オホーツク海が冷た いことによって前日差が大きくなっているこ

Fig.3 5 月の海陸温度コントラスト[℃].陸地の 観測地点の最高気温とその観測地点から最も近い SST グリッドそれぞれ気候値の温度差を示す.

Fig.4 海陸温度コントラスト[℃](横軸)と最高 気温急低下指数[℃](縦軸)の関係.それぞれ 5 月 の気候値を示しており,黒丸が GHCND のデータ を示し,赤丸が AMeDAS のデータを示す.海面水 温 の グ リ ッ ド ポ イ ン ト か ら (a)20km 以 内 (b)20~50km(c)50~100km にそれぞれ含まれる地 点である

(b)20~50km

(c)50~100km

(a)0~20km

(4)

とが示された.海面水温を6℃変化させて前日

差が 3℃変化することについての妥当性を考

察すると,実際の場として,北海道の東西で 6℃ほど海面水温は異なっており,急変指数も 3℃程度異なっていることからそれなりに妥当 な結果ということが考えられる.

以上より,統計的にも数値モデル的にも海に 近い沿岸域では,海陸の温度コントラストの大 きさが前日差に寄与していることが示された.

しかし,海陸温度コントラストも最高気温急変 指数もともに日最高気温から作られた指標で あり,独立した関係とは言い難い.つまり,フ ェーン現象のような昇温するメカニズムがあ って,それに加えて,冷たい海の有無が急変を 強めるという認識が正しいことに気を付ける 必要がある.

5 謝辞

本研究を進めるにあたり,立花義裕先生には 熱心にご指導をいただきました.いつも納得で きるまで丁寧に説明して頂いたこと,様々な意 見を頂きながらも意見を聞かず自分がやりた いようにやってきたこと深く感謝及びお詫び 申し上げます.同研究室の小松謙介氏にはモデ ルのデータを提供して頂きました.安藤雄太氏 にはデータの取得を行っていただきました.お 二方の先輩なしではここまで研究を進めるこ とができなかったと思います.また,様々な点 で助言を頂きました西井和晃先生,飯島慈裕先 生をはじめとした先生方,そしてその他研究室 の皆様に感謝の意を表します.

6 参考引用文献

[1] 出典:気象ビジネス推進コンソーシアム https://www.wxbc.jp/

[2] 常盤勝美(2012)マーチャンダイジングと 季節, 地球環境, 17, 99-106.

[3] Fujibe, F., Matsumoto, J., and Suzuki, H. (2018) Regional Features of the Relationship between Daily Heat-Stroke Mortality and Temperature in Different Climate Zones in Japan, SOLA, 14, 144- 147

[4] Fujibe, F., Yamazaki, N., Kobayashi, K., and

Nakamigawa, H. (2007) Long-term changes of temperature extremes and day-to-day variability in Japan, Paper in Meteorology and Geophysics, 58, 63-72.

[5] Griffiths, G. M., L. E. Chambers, M. R. Haylock, M. J. Manton, N. Nicholls, H.-J. Baek, Y. Choi, P.

M. Della-Marta, A. Gosai, N. Iga, R. Lata, V.

Laurent, L. Maitrepierre, H. Nakamigawa, N.

Ouprasitwong, D. Solofa, L. Tahani, D. T. Thuy, L. Tibig, B. Trewin, K. Vediapan and P. Zhai, (2005) Change in mean temperature as a predictor of extreme temperature change inthe Asia-Pacific region. Int. J. Climatol., 25, 1301-1330.

[6]出典:地域気象観測システム(アメダス)

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/amedas/kai setsu.html

[7] Menne, M.J., Durre, I., Vose, R.S., Gleason, B.E., Houston, T.G. (2012) An overview of the global historical climatology network-daily database. J.

Atmos. Ocean. Technol., 29, 897–910.

[8] Reynolds, R. W., N. A. Rayner, T. M. Smith, D.

C. Stokes, and W. Wang (2002) An improved in situ and satellite SST analysis for climate, J. Clim., 15, 1609–1625

[9] Simmons, A., C. Uppala, D. Dee, and S.

Kobayashi (2006) ERA-Interim: New ECMWF reanalysis products from 1989 onwards. ECMWF Newsletter, 110, 25-36

Fig.5 数値モデルによる紋別(北緯 44.34 東経 143.35)の気温の時系列[℃].1998 年 5 月 4 日 05 時から 8 日の 08 時までを示しており,黒線が CTL_RUN,赤線が SST+6℃_RUN

Referensi

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