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巻頭言 Top Column - 化学と生物

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化学と生物 Vol. 53, No. 3, 2015

人を見る目

西森克彦

東北大学農学研究科分子生物学分野

巻頭言 Top Column

Top Column

研究者としての成功・成就を目指してい た若き頃から,すでに30年あまりが過ぎ,

自分のことはさておき,自分が育てること となった人々,先輩・同輩・後輩として出 会った人々がその後たどった人生が気にな る年齢となってしまった.20年,30年,

あるいはそれ以上も前に研究とのかかわり で出会った人々の,出会いでの印象や評価 と,その後,彼・彼女がたどった道筋,そ してどのように成長し,今いかなる社会的 立場に立つのか,を,顧みるとき,深い感 慨と,時に呵責の念を否定しえない.指導 的立場にいた人の, 人を見る目 が曇っ ているなら,教え子や後輩たちの人生を狂 わせかねない,という重い現実を知るから である.

恩師 たりえなかった人物からの厳し過 ぎる評価への反発をモチベーションとした,

としか思えない劇的な復活劇を経て,研究 教育者としても社会的にも成功を収めたあ るケースを最近知ることとなった.そして 上に立つ人 の軽々しくも否定的な人物評 価が,時に対象者の人生を葬りかねない罪 深さを包含する場合さえあることを,もっ とわれわれは自戒すべきと気づかされた.

基礎医学系の 研究指導者 (仮にO教 授とでもしておこう)と,そのスタッフか ら,研究者としての能力を否定された大学 院生がいた.「君には,研究者としてみるべ きものは何もないね」とまで酷評され,果 てはストレスからか体を壊し,追われるよ うにその所属を去ったN氏は,その後元の 所属地から500 kmも離れた,国立大学医学 部に復学し,医師となった.その後も精力 的に臨床業務と研究をこなし,米国留学を 経験して,今では臨床でもまた基礎研究の 場でもその実力を知られる研究医となった.

そのN教授は,かつての 師 のO教授で すら滅多に投稿できなかった高インパクト の雑誌に責任著者として論文を発表し,ま た多くの大学院生を育てつつある.専門医 としてたびたびテレビにも出演・解説する など,社会的にもまた大活躍している.

これを「めでたしめでたし」の劇的復活 ストーリーと片づけることは容易い.が,

復学に遠方の大学を選んだ理由を彼は,

「もとの上司たちからの影響力を恐れたか ら」

,と言う.

「一時の絶望から逃れ,その 評価を覆すこと」をネガティブなしかし強 力な動機として,猛烈な頑張りをした,と も吐露する.酷評に対する孤独な戦いがモ チベーションとなり,大いなる成功を収め たN教授のケースを.単なるサクセスス トーリーと片づけて良いのだろうか.

指導者の 人を見る目 の欠如が,時に 能力がある者の成長の芽を摘んでしまうこ とを示すこの例は,教育する立場にあるわ れわれに重い課題を突きつけている.かつ て投げつけた言葉の重さを,O教授は自覚 などしているまい.一方,N教授は「教育 者する立場となってから,弟子を 見捨て る ようなことは一度たりともしていな い.教え子の大学院生は,一人も落後させ ていない」と強く言う.

当の私は「自慢ができるぐらいに人を見 る目がない」

,と自覚する人間である.ヒト

を判断する責任の重さに恐れをなしている 面も否定できない.おまけに,研究室に やってくる学生たちの誰にでも,潜在的な 能力を感じてしまう.それで失敗したこと も少なくない.それでも,少なくとも,僅 かな時間での 面接 や, 短い付き合い くらいで,彼や彼女がもつ(かもしれない)

潜在能力を判断,否定することなど無理と 確信する.短期間での人物判断に自信を示 す人こそ信用できないし,傲慢である.

幸いにも大学院時代をわが研究室で過ご し,研究・勉学に励んで学位を取得し卒業 していった 教え子 たちの多くは,今,

所属する領域を担う若手のホープとして輝 いている.

経験を積み教育者としての自信をおもち の先生方も,謙虚さをもってもう一度教育 の原点に戻ることをお薦めする.

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会

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化学と生物 Vol. 53, No. 3, 2015 プロフィル

西森 克彦(Katsuhiko NISHIMORI)

<略歴>1977年東京大学農学部農芸化学 科卒業/1982年同大学大学院農学系研究 科博士課程修了(農学博士)/1983年同大 学応用微生物研究所助手/1988年東北大 学農学部・助教授/2001年同大学農学研 究科・教授,現在に至る.その間,1994 年‒1996年,米国テキサス州ヒュースト ン・ベイラー医科大学病理学部(客員助教 授)<研究テーマと抱負>オキシトシン・

オキシトシン受容体系が動物や人の向社会 行動(子育て,夫婦関係維持,同情や共 感,友好関係,帰属意識)を制御する仕組 みを明らかにすることを主な研究領域とし ている.これからは内在性のオキシトシン のみならず,食品や天然物,合成物に同様 活性をもつ物質を探して行きたい.一方 で,元来興味のあった器官発生や幹細胞の 遺伝子制御について,LGR4という一風変 わった膜受容体を中心とした研究も続けて いる<趣味>アウトドアースポーツ,特に 無雪期の登山(夏山縦走)と冬のスキーは いまだに続けています.

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12, 2012 914 調に酵素の研究を進め,成果を学会発表とともに論文にする ことになっていた.ある日,大学院生のSimmons氏が最近 出た論文だと言ってKennyらの「DPP4がエンドペプチダー ゼ活性ももつ」(2) とタイトルに書かれた論文のコピーをもっ てきて,私が研究しているPOPはDPP4と同じ酵素ではな