• Tidak ada hasil yang ditemukan

巻頭言 Top Column - J-Stage

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2023

Membagikan "巻頭言 Top Column - J-Stage"

Copied!
2
0
0

Teks penuh

(1)

697

化学と生物 Vol. 54, No. 10, 2016

「化学と生物」と国際協力研究企画

吉田茂男

理化学研究所名誉研究員

日本農芸化学会 ● 化学 と 生物 

巻頭言 Top Column

Top Column

研究現場を離れたためか,あるいは高齢化 のせいか,最近になって本誌を手にすると懐 かしい事柄を思い出すことが多い.筆者が最 初に「化学と生物」の存在を知ったのは1967 年の春,東京大学大学院農学系研究科におい て本格的な学術研究に取り組むという緊張感 に浸っていた時期であった.当時は1964年 の東京オリンピック以降好景気が続いたこと もあって,一流企業に就職するための修士課 程進学希望者が増え始めていた.筆者は学部 時代の4年間をサッカー部活動に没頭してい たため,専門知識の修得に自信がなかった.

そこで,卒業論文研究の指導教官であった田 村三郎先生にお願いし,大学院で不勉強の遅 れを取り戻すという理由で推薦入学枠に入れ ていただいた.今の感覚では到底考えられな い懐かしい時代の大学制度運用であった.

当時,田村先生は農産物利用学講座を担当 されており,講座の名称と実際の研究対象と のギャップを解消しようと努力されていた.

その頃の事情については後のご著書『現象の 追跡̶生理活性物質化学を拓く』に詳しく記 しておられるが,新米大学院生であった筆者 も自分の研究課題と講座名との関係が気にな り始めていた.そうした疑問を抱えながらも 大学院生活に馴染んできた頃,「東大紛争」と して知られる過激な学生運動が勃発したため,

落ち着いて研究生活に没頭する雰囲気は失わ れていった.せめて文献で農芸化学の精神を 探れないかと考えた筆者は,5年前に創刊さ れた「化学と生物」が日本農芸化学会発行の 学術情報誌であることに気づき改めて読み直 したのである.創刊号では住木諭介先生が農 芸化学者への熱き想いを書かれていて,門下 生の末端に属する筆者にもその情熱が伝わり 大きな感銘を受けた.こうして筆者は折々に

「化学と生物」に目を通す習慣を身につけた.

1979年4月から1981年3月まで筆者はオー ストラリア国立大学(ANU)でユーカリの 成長調節物質に関する研究に従事していた が,幸運にも1980年10月に日豪科学技術協 力協定が締結された.そこで筆者は植物・微 生物に関する総合研究を本格的な国際協力プ ロジェクトとするためRI KEN‒ANU機関間 協定の締結を提案した.このときに苦労した のは農芸化学的学術用語の英訳であったが,

筆者の良き理解者であったANUのW. D. Crow

教授とともに「化学と生物」を開きながら熱 心に議論した日々を思い出す.

次に手掛けた国際協力協定は1985年に締 結された日韓科学技術協力協定に基づいて筆 者の上司であった高橋信孝教授とともに韓国 の発展に寄与する体制を作ろうとするもので あった.韓国側の責任者は韓国化学研究所

(KRICT)の趙匡衍博士で筆者とは同門の義 兄弟のような間柄であった.この頃の韓国は 自前の農薬開発研究基盤を確立すべく政府民 間一体となって懸命に努力していた.その中 核は米国で教育を受けた有能な研究者たちで あったが,彼らのほとんどは農芸化学流研究 の展開を理解できなかった.そこで筆者は頻 繁に「化学と生物」の記事を引用して彼らと 懇談を重ね,最終的には非常に良好な協力体 制が出来上がった.この頃の韓国では漢字教 育が軽視されたため「化学と生物」を英語訳 で伝えようとしたが意のままにならず,趙博 士がハングルで説明すると正確に理解された ことからアジア共通の情緒を実感した.

1997年にわが国の科学技術会議政策委員 会は「21世紀に向けた我が国の科学技術政 策の国際的展開について」という報告書を取 りまとめ,地球規模問題の解決に向けた科学 技術上の課題として,「環境負荷を増大させ ることなく食料を増産,確保するための課 題」や「生物機能を活用して環境の維持,修 復を図るための課題」などを例示した.この ことから筆者は政府の報告を「化学と生物」

的な視点で捉え,直ちに国内外の研究者たち に植物研究を軸にした国際的研究機関の企画 を呼びかけた.その結果,多くの研究者の協 力によって2000年4月に理化学研究所に植物 科学研究センターが開設され,遺伝子科学,

生物有機化学,情報科学,環境科学などを融 合的に取り入れたインパクトの高い研究を展 開し,国際的に極めて高い評価を得ている.

以 上 の よ う に「化 学 と 生 物」 は 筆 者 に とって最強の研究企画ツールであったが,今 日の学術領域で異分野連携の重要性はますま す高まっているので,若い方々も本誌を通じ て農芸化学の面白さを再発見するようお願い したい.

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.697

(2)

プロフィール

吉田 茂男(Shigeo YOSHIDA)

<略歴>1967年東京大学農学部農芸化学 科卒業/1970年同大学大学院農学研究科 博士課程中退/同年同大学農学部助手/

1987年理化学研究所副主任研究員/1990 年同研究所主任研究員/2000年同研究所 植物科学研究センターグループディレク ター/2006年大阪大学大学院工学研究科 特任教授/2011年横浜市立大学木原生物 学研究所所長/2015年まちラボ産学技術 ユニオン代表理事,現在に至る<抱負>農 芸化学的産学連携事業の確立

日本農芸化学会 ● 化学 と 生物 

Referensi

Dokumen terkait

4, 2014 巻頭言 Top Column研究の潮流と個人の研究 原 博北海道大学大学院農学研究院 Top Column 栄養化学という農芸化学の分野で研究し ている.私が所属している北海道大学の研 究室名は食品栄養学で,100年以上受け継 がれた名前であるが,研究対象としての食 品そのものを強く意識できる良い名前だ と,少し前の先輩教授から聞いた.農芸化

10, 2017 農芸化学大会の関心事 平 秀晴岩手大学名誉教授 日本農芸化学会● 化学 と 生物 巻頭言 Top Column Top Column 例年春の農芸化学大会の参加は,研究室 の先輩後輩や友人にお会いし,研究の進展 を知ることができるので,定年退官後の楽 しみになっております.農芸化学大会もパ ソコンによる発表,大会要旨閲覧用のアプ