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復興技術 マイクロ波で アスベスト処理 - pweb

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318 セラミックス 49(2014)No. 4 1. はじめに

 東日本大震災が発生してから 3 年が経過した.発生 当時に比べ震災に対するニュースや報道は著しく減り,

震災当時のことを思い出す人は少なくなっている.筆 者は震災が発生した直後の 2011 年 4 月に東京理科大 学から上智大学へ移動し,物不足の中で多くの方々の 協力によって研究室の立ち上げを行うことができた.

このことから,年の節目には必ず震災の頃を思い出す.

また,本稿で解説するマイクロ波によるアスベストの 処理装置は,津波ですべてが流されてしまった被災地 で実証実験を行ったため,慰霊祭などの行事にも参加 させていただいた.テレビで見る被災地の状況とは 違った災害の恐ろしさを目の当たりにした.

 震災後,上智大学からも多くの学生が被災地復旧の ためのボランティアとして参加したが,私たちは科学 技術の力で復興や未来の災害対策を行いたいと考え,

環境省環境研究総合推進費(復興費)の下で,瓦礫に 含まれるアスベストの迅速処理技術の開発を行った.

プロジェクトメンバーは,京都大学(電波:篠原真毅,

樫村京一郎),東北大学(金属材料:吉川 昇),中部 大学(大型装置:佐藤元泰),上智大学(化学・環境:

堀越 智)で,各メンバーはマイクロ波化学の共通点 を持っている.また,協力企業として日本スピンドル 製造(株),日工(株),高砂工業(株)の技術的サポート により開発を進めた(図 1).

2. マイクロ波

 マイクロ波でアスベストの処理?と思われる読者も あると思うが,マイクロ波加熱は化学,材料,環境保 全分野で有効的な技術であることが知られている.既 存の加熱(燃焼,スチーム,電熱線など)は,試料の 外から伝熱によって内へと徐々に温めていく,いわゆ る外部加熱と呼ばれる方法であるが,マイクロ波加熱 は容器や試料雰囲気を温めることなく試料が自己発熱 することから内部加熱と呼ばれている.たとえば,電 子レンジでお弁当を温めると,驚くぐらい早く食品

(誘電体)だけが選択的に温まるが,お弁当の容器や レンジの庫内は全く温まらない.当たり前のように日 常的に使っているが,この温めたいものだけを迅速に 加熱する技術は,既存の熱源では達成することができ ない(図 2).

3. アスベストの処理

 東日本大震災では地震による被害に加え,津波に よっても多くの家屋が倒壊し流された.この瓦礫には,

法令で規定された有害物質が多数混入しており,復興 作業に伴う瓦礫の処理の妨げになっている.特に,ア スベスト(石綿)建材が津波によって大量の瓦礫の中 に一色単となってしまい,震災瓦礫全体の処理スピー ドや経費を著しく悪化させた.アスベストにはいくつ かの種類があるが,これら建材に含まれる主なアスベ ストの種類はクリソタイル(Mg3Si2O(OH)5 4)で,化 学物質としては無害である.アスベストは耐久性,耐 熱性,耐薬品性,電気絶縁性などに優れ,安価である ことから,「奇跡の鉱物」としてさまざまな用途に使用 されてきたが,1970 年代頃から人体や環境への有害 性が問題となり,我が国では 2011 年度から全廃する ことが進められている.アスベストは繊維状の鉱物で,

その直径は 0.02~0.35μm(髪の毛の 1/5000)程度であ る.したがって,これを大量に吸入すると肺癌や中皮 腫の誘因となり,健康に大きな悪影響を与える.建材 におけるアスベストの主な用途は,セメントや微粉け い石などの補強繊維として屋根用化粧石綿スレート(ス レート瓦)に使用されてきた(累積出荷量 4300 万 t).

これらのスレート瓦の処理は埋め立て処理も行われて いるが,埋め立て前に無害化はされていないため,未 来に対する安心を確保しているわけではない.一方,

堀越 智

復興技術 マイクロ波で アスベスト処理

図 1 プロジェクトメンバー 左から樫村・堀越・吉川・佐 藤・篠原・木嶋(日本スピンドル製造(株))

図 2 既存加熱とマイクロ波加熱の熱移動イメージ

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セラミックス 49(2014)No. 4 319

アスベストの無害化法として加熱溶解処理 による形状変化が処理施設行われているが,

もともと断熱材や耐熱材として使われてき たアスベストを加熱処理することは,熱伝 導性や加熱温度の観点から効率が非常に悪 く,従来法では長時間の処理が必要である.

4. 実験室レベルでの実証実験  廃棄物中に含まれていたスレート瓦の SEM 写真を以下に示す(図 3).アスベス ト繊維状の表面には針状物が大量に吸着し ている様子が見てとれる.これをマイクロ 波で 900℃に加熱すると表面や内部には針 状物がなくなり,溶解固化している様子が 観測された.また,JIS A 1481 の評価方法 より,位相差・分散顕微鏡や X 線回折分析 からクリソタイルがマイクロ波処理で消失 していることが確認された.一方,900℃

の電気炉加熱を行った試料からは,クリソ タイルの処理があまり進んでいないと判明 した.既存法(電気炉)に比べマイクロ波

法では,より低温で迅速に処理できるとわかった.こ の理由として,廃棄物スレート瓦に対するマイクロ波

(2.45GHz)の浸透深さ(マイクロ波出力が 36.8%減 衰する深さ)は 4.0cm であり,スレート瓦を粉砕しな くても中心から自己発熱による溶解固化が進行するた めである.一方,既存法では,アスベスト建材が保温 性に優れていることから,表面のアスベスト繊維が溶 解固化したとしても,内部まで溶解温度に達するには,

更なる高温場で長時間加熱しなければならない.また,

針状アスベストが数マイクロ以下で接近していると,

マイクロ波の電場が集中してほかの成分との相乗効果 からホットスポットが発生することが,電磁界シミュ レーションの結果から予測されている.このような局 所高温場の影響も,迅速にアスベストが処理できた理 由と考えられる.

5. アスベスト含有廃棄物のオンサイト処理  本プロジェクトでは,宮城県閖上市にある閖上中学 校跡地に全長は 19 メートル以上におよぶマイクロ波 低温迅速アスベスト処理装置を時限設置し実証実験を 行った(図 4).アスベスト含有廃棄物をロータリー キルン型マイクロ波炉内へ投入し,そこへマイクロ波 を照射することで瓦礫の連続加熱処理を行った.既存 のアスベスト処理工場では,160kg のアスベスト処理 に 1500℃以上の温度で 10 時間加熱する必要がある.

しかし,本装置ではロータリーキルン内を数十分間通 過させることで,マイクロ波によるアスベスト含有廃 棄物の連続無害化が可能であることが実地試験からわ かった.また,処理温度を 950℃に設定しても,アス ベストを迅速に処理できるため,炉の寿命も長くなる 利点がある.

 本装置では復興地での利用を目的としていることか ら炉の後段に燃焼炉を接続し,木材瓦礫も同時に焼却 できる装置構成になっている.この時,木材瓦礫の燃焼 により発生した熱は,アスベスト処理炉に熱風として 送り込み庫内の保熱の役割を担っている.現在,2t/日 の処理を達成しており,処理後のスレート瓦のアスベ ストはほぼ法令基準以下に無害化できた.

 本技術は国内外企業の視察やテレビ番組や新聞等で 紹介され,この新しい処理装置の関心が高いことが示 された.このシステムはトレーラーなどに積み,移動 可能なサイズで,また他の廃棄物熱処理炉として応用 することができることから,さまざまな現場において 将来起こり得る災害に備える装置としても期待が高ま る.古くて新しいマイクロ波加熱技術が社会的ニーズ に合致する事例であったと言えるだろう.

 謝 辞 この実験の成功は,京都大学,東北大学,上智大学 の学生の協力と努力の賜物でもあったことを最後に記します.

図 4 マイクロ波迅速アスベスト含 有廃棄物連続処理装置

(宮城県名取市閖上中学校廃校 跡地で実地試験)

■筆者紹介 堀越 智

 兼務 日本電磁波エネルギー応用学会副理事長,材料技術研究協会理事,(独)科学技術振興機構研究成果最適展開支援 プログラム専門委員,無機マテリアル学会編集委員,Journal of Microwave Power and Electromagnetic Energy エディター,

Chemical Engineering エディター,東京理科大学客員准教授,東京学芸大学非常勤講師.

[連絡先] 〒 102-8554 東京都千代田区紀尾井町 7-1 上智大学理工学部物質生命理工学科 E-mail:[email protected] URL http://pweb.cc.sophia.ac.jp/horikosi/

[投稿歓迎-編集委員会では「ほっと」spring 欄への会員からの投稿を歓迎します.編集事務局までご一報ください.]

図 3 未処理アスベスト(上)と マイクロ波処理により溶解 し た ア ス ベ ス ト( 下 ) の SEM 画像

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