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微生物学 - 化学と生物

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化学と生物 Vol. 54, No. 5, 2016

微生物学

大木 理 著

B5判162頁本体価格2,400円 東京化学同人2016年

「化学と生物」誌 46巻5号の巻頭言「人間の未来と農 芸化学」の中で,私は次のように書いた.「農芸化学は,

自然の事物を常にパートナーと考える,いわば『性善説の 自然科学』である.医学の世界では微生物と言えば病気を 起こす悪玉だが,農芸化学では微生物は有用物質を作って くれる善玉と考える」と.同じ頃,中学や高校で「役に立 つ微生物」を学ぶ機会が少ないことを問題視する声が農芸 化学者たちから上がり,文科省への働きかけも行われた.

その活動に効果があったかどうかはあまり自信がないが,

昨年の大村先生によるノーベル賞受賞は,われわれがご ちゃごちゃ言うよりもはるかに能弁に微生物の有用性を国 民に理解させたのだろうと思う.

その追い風の中で,われわれは胸を張り,学生たちに 微生物の面白さをきちんと教えていかなければならない が,教えるためには良い教科書が必要である.私自身は微 生物分野の研究者にはならなかったが,農学部に進学して いくつかの微生物関係の講義を聞いた.当時の最新知見を 含むレベルの高い講義が多く,メバロン酸を発見したT教 授による微生物代謝の講義では,「リプレッション!」と いう言葉が唾とともに力強く飛んでくるなか,最前列で聴 講して興奮はしたものの,なかなか理解は困難であった.

適切な教科書もなく,結局,微生物学の勉強は全体像を把 握しないうちに終わってしまったような気がする.

今回紹介する大木博士の「微生物学」は,初心者がま ず微生物の全体像を捉えるうえでたいへん有用な書籍であ ると感じた.本書では,I.微生物学の歴史から始まり,

II.微生物の性質(基本構造,代謝,増殖,変異,生態), III.微 生 物 の 分 類(細 菌,古 細 菌,原 生 生 物,菌 類,

ウィルス),IV.微生物と人間生活(病気・腐敗,発酵,

環境)というように,微生物学の基礎から応用までのほぼ すべてがコンパクトに整理されている.さらにVとして

微生物学の実験技術の章があるのも学生にとってはありが たいだろう.I〜IVに相当する部分は全部で15章からな り,これを毎週講義していけば2単位の講義となるわけ で,教員にとってもたいへん使いやすい本と言える.各章 の最後には,重要事項が10項目ほど,それぞれ1〜2行で まとめてあり,そこをきちんと把握すれば期末試験の勉強 も楽になるだろう.一方,怠惰な教員はこのまとめの文章 を少しいじるだけで試験問題が作れそうである.本文は丁 寧でわかりやすい記述になっており,各ページの欄外には 重要なキーワードが英語表記とともに示されているので,

関連英語の習得にも役立つ.図表もたいへんわかりやす い.

このわかりやすさは何なのだろうか? その理由は,

著者の大木博士が実は微生物の専門家ではないことによる のだろう.専門家ではないがゆえに書きうる「わかりやす い微生物学」なのである.実は大木氏は私にとって大学の 同じサークルに属した後輩で,学生の頃,ともに野山を歩 き植物や動物を観察する日々を過ごした.私は農芸化学科 に進学したが,大木氏は農業生物学科(当時)の植物病理 学研究室に進んだと記憶している.進む方向は違ったが,

博士課程のとき,私の試料の電子顕微鏡写真を大木氏に 撮ってもらったことがあった.そのとき,彼はたいへん丁 寧にわかりやすく電子顕微鏡の手法を解説してくれたのだ が,この「微生物学」を読んで,彼の優しい口調とわかり やすい説明を思い出した.書評らしくない書評になってし まったが,微生物を知りたい幅広い分野の方々にお薦めの 一冊である.

(清水 誠,日本農芸化学会前会長)

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.369

日本農芸化学会

● 化学 と 生物 

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