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ビタミン B1発見 100 周年 祝典・記念シンポジウム

鈴木梅太郎博士  

鈴木梅太郎博士ビタミンB

1

発見 100 周年に寄せて

化学と生物 Vol. 50, No. 3, 2012

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鈴木梅太郎先生のこと

応用から基礎へ,そして高度の応用へ ―農芸化学 の歴史を顧みると,応用指向の各論的テーマを現場(社 会)に求め,次にこれを深く掘り下げて学術的普遍性を 見いだし,より大きな応用(社会貢献)への道を導き出 したという事例が多いのに気付く.その初例こそ,鈴木 梅太郎先生のビタミン研究だったと思う.

先生は当初,食による脚気 (beriberi) の予防という 目的指向型の研究を開始し,米糠からAberisäure(抗 脚気酸;私訳)と名付けた有効成分を分離した.ちょう ど100年前のことである.が,先生は当時の栄養学に一 大欠陥があることを見抜いていて,タンパク質・糖質・

脂質・ミネラルの他に動物の栄養を補完する 何か  

(etwas) があると予想し,Aberisäureの効果・効能を 徹底的に解析した.その結果,この米糠成分は脚気予防 の域を超えた,普遍的な栄養生理学的意義(現在でいう ビタミンB1効果)をもつこと,そして脚気は糖代謝の 変調で起こる一ケース(現在でいう栄養欠乏症の一類 型)に過ぎないことを見いだし,コメの学名 

 L.  に因んでオリザニンと名称変更した.このこと をドイツ生化学誌(1) に記述した65ページもの大論文が 評価され,1914年,先生はノーベル医学生理学賞候補 に推挙された.このビタミン研究は後世,人々の栄養改 善やビタミン工業の発祥に寄与した, 応用から基礎へ,

そして高度の応用へ の典型的事例といえよう.記念切 手も発行された(図

1

鈴木梅太郎先生の高弟で,先生ご逝去のそのときまで お仕えしたのは櫻井芳人先生であった.戦後,東大農芸 化学科の食糧化学講座(現在,清水誠教授が担当)の実 質的初代教授で,私の最初の恩師である.

櫻井教授は栄養学者だったが,研究テーマを食品の 色・味・香りの化学という,当時としてはきわめて斬新

な領域への道を開いた.食糧不足の時代にありながら食 の未来像を見通しての大転回だったといえよう.これを 発展させたのは後任の藤巻正生・加藤博通の両教授で あった.このようにして日本では,栄養の研究に嗜好

(おいしさ)の研究が加わり,2つの学術体系の潮流が 築かれた.海外でもほぼ同様の二大潮流があった.

プラステインから機能性食品へ

話を戻して,櫻井教授から「大豆のフレーバーを改善 せよ」という各論的な応用研究テーマを示唆された私 は,ヘキサナールなど30数種のフレーバー成分を同定 したが,とくにカルボニル類は大豆タンパク質と結合し やすく,完全除去は困難なので困っていた.私はその 頃,刊行されたばかりの『蛋白質 核酸 酵素』誌を愛読 しており,これからの食品研究をタンパク質・酵素の面 からアプローチしようとする異端児的な発想を抱き始め ていた.藤巻教授はこれをサポートしてくださった.

私は大豆タンパク質をプロテアーゼ(たとえばペプシ

農芸化学に育まれた私の食品科学

荒井綜一

東京農業大学総合研究所客員教授

図1農芸化学者・鈴木梅太 郎先生の記念切手

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化学と生物 Vol. 50, No. 3, 2012

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ン)で限定分解してみたところ,結合していたフレー バー成分が遊離し,ほぼ完全に溶媒抽出できることを見 いだした.ところが,タンパク質から苦味ペプチドが生 成してしまった.ロイシンをC末端にもつ疎水性オリゴ ペプチド類であった.しかし,苦味を消去できる 偶 然 が私を待っていた.

その頃(1960年代)は大学紛争華やかな時期だった.

ある日のこと,ゾル状のタンパク質分解物(ペプチド混 合物)を冷蔵庫に入れて帰宅した.が,その後しばらく 研究室が封鎖されてしまった.封鎖解除後,冷蔵庫を開 けると,そこには思いもよらぬゲル状の,しかも苦味の ないタンパク質分解物があった.このゾル・ゲル転移の why-because を同僚の渡辺(山下)道子博士(後に 東京学芸大学教授)と, を頼りに考 究したところ, plastein synthesis   というのが出てき た.タンパク質分解酵素逆反応である.しかし,その詳 細は文献的にも模糊として判じ得なかった.私どもは実 験にのめり込んだ.

上記のペプチド混合物のC末端を網羅的に18O標識 し,逆反応の進行しやすい条件を探った上で,キモトリ プシン処理したところ,H218Oの遊離(脱水縮合)

,平

均分子量の増加,苦味の低減が同時並行的に起こっ た(2)

.当時としては先端的なこの研究は,食品科学分野

のみならず酵素化学分野でも国際的なトピックスとなっ た.

この反応は,ペプチジル酵素中間体が別のペプチドの アミノ基によって親核攻撃(アミノ分解)を受ける一般 酸塩基触媒で進行するはずである(図

2

.しかも一般

にアミノ分解はチオエステルに対してのほうが効率よく 進行するとされる(3)

.言い換えればキモトリプシン(セ

リン酵素)を用いるよりもパパイン(システイン酵素)

を用いるほうが効率的のはずだ.しかも,アシル酵素の アミノ分解は親核物質としてアミノ酸エステルを用いて も起こると考えた.実験の結果,dl-メチオニンエチル エステルを用いるとl-メチオニンが効率よくペプチド結 合状に導入され,多くの食品タンパク質の栄養価を大幅 に改善することができた.副次的にはラセミ分割も同時 に可能であった.また,乳タンパク質をペプシン処理し てフェニルアラニンを切り出した後,相当量のチロシン

を上記のように導入して,先天性代謝異常であるフェニ ルケトン尿症の幼児のための低フェニルアラニン・ペプ チド乳を開発し,実用化することができた.病気の予防 を目的とする機能性食品の初例の1つであろう.

プラステイン合成はヘテロ系の酵素反応で,渡辺博士 と私はその扱いのノウハウを習得していた.折も折,皮 膚科学会からコメを低アレルゲン化してアトピー性皮膚 炎を予防して欲しいという依頼があった.そこで,米粒 の水浸漬物という典型的なヘテロ系の基質を特殊条件下 でプロテアーゼ処理したところ,グロブリンの一種であ るアレルゲンを特異的に分解・除去することができ(4)

ヒト介入試験で90%という高い有効性も確認された.

私は,もう1つの機能性食品の実例が生まれたことを喜 んだ.厚生省は1993年,これを特定保健用食品第1号に 認定した(図

3

.ネイチャー誌

(5) はわが国の学術・行 政面でのこうした新側面を 日本は食と医の境界に踏み 込む と報道した.

オリザシスタチンと分子農学

ところで,すでに100年前に鈴木梅太郎先生は日本人 にとってコメの研究がいかに重要であるかを唱道されて いて,櫻井先生(前述)もこのお考えを継承しておられ たことを学生時代から私は知っていた.長年このことが 頭にあった私は,助教授の頃,それを実践する気になっ た.具体的には,パパイン反応(上記)を制御するコメ 由来のシスタチン(システインプロテアーゼ・インヒビ ター)の探索であった.共同研究者の阿部啓子博士(現 在,東京大学名誉教授,農学生命科学研究科特任教授)

は当時めずらしかった分子クローニングを駆使し,植物 からは最初のシスタチン(オリザシスタチンと命名)を 得,全構造を提示した(6)

.これが引き金になったかのよ

うに他の研究者たちによって植物のシスタチンが続々と 図2エステルのアミノ分解

図3特定保健用食品第1号 に認可された低アレルゲン米

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発見され,従来知られている動物シスタチン群に 植物

シスタチン・ファミリー が登録された(表

1

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私のグループはコメからオリザシスタチンの標的酵素 オリザインを見いだし(8)

,発芽制御の分子モデルの1つ

を提出した.ジベレリンなどの植物ホルモンによるオリ ザイン・オリザシスタチン系の調節の実体を解明した.

さらに,消化管にセリン酵素をもつ哺乳類と違って昆虫

はシステイン酵素をもつので,オリザシステインの投与 は種子の食害を抑止し得ることも観察した.これらはコ メ以外の種子でも同様で,シスタチンとその標的酵素系 は植物にとって普遍的な代謝・防御システムであること が判明した(図

4

.カナダでは殻実増収へのシスタチ

ンの高度利用の産業化を国を挙げて開始し始めてい る(9)

ここでも私は 応用から基礎へ,そして高度の応用 へ の農芸化学的パラダイムを分子農学というかたち で,ちょっぴりではあったが,実践できたと思ってい る.農芸化学分野では,すでに多くの同様の研究が行な われている(10)

農芸化学が教えてくれたこと

1. 研究テーマを文献ではなく現場に求めることが非 常に重要

2. その研究を,たとえ応用研究であっても,深く解 析して普遍性を見いだすことが高度の応用開発への道

3. 普遍性の証明を もの で示すことが大切.百の 状況証拠よりも1つの物証のほうが強いから

4. 研究は,伝統を踏まえながらも刻一刻新たな息吹 き(先端科学・技術)で満たしていくことが必要

私の食品科学 で,なし得ぬ部分が多々あったこと を反省し,農芸化学での食の研究の あるべき未来像 に想いを馳せて,2012年の新春を迎えた次第である.

表1シスタチン・スーパーファミリー

シスタチン 存在

動物

 ファミリー1

  シスタチンA ヒト白血球   シスタチンB ラット表皮  ファミリー2

  鶏卵シスタチン 卵白   シスタチンC 腎不全患者尿   シスタチンS ヒト唾液   初乳シスタチン ウシ   ヘビ毒シスタチン ヘビ  ファミリー3

  高分子キニノーゲン ヒト血清   低分子キニノーゲン ヒト血清  昆虫

  ザルコシスタチン ハエ 植物

 オリザシスタチンI, II コメ種子  トウモロコシシスタチン トウモロコシ種子  アルファルファシスタチン アルファルファ種子  ポテトシスタチン ポテト塊茎  トマトシスタチン トマト果実

図4オリザシスタチンの広範な生 理作用

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文献

  1)  U. Suzuki, T. Shimamura & S. Okada : , 43,  89 (1912).

  2)  M. Fujimaki, S. Arai & M. Yamashita : ,  160, 156 (1977).

  3)  M. L. Bender : , 73, 1626 (1951).

  4)  荒井綜一,池澤善郎,渡辺道子,宮川淳子:小児内科,

22, 415 (1990).

  5)  D. Swinbanks & J. OʼBrien : , 364, 180 (1993).

  6)  K.  Abe,  Y.  Emori,  H.  Kondo,  K.  Suzuki  &  A.  Arai :

262, 16793 (1987).

  7)  鈴木鉱一: プロテアーゼとインヒビター ,現代化学増

刊22,東京化学同人,1993, p. 97.

  8)  H.  Watanabe,  K.  Abe,  Y.  Emori,  H.  Hosoyama  &  S. 

Arai : , 266, 16897 (1991).

  9)  M.  Benchabane,  U.  Schlitter,  J.  Vorster,  M.-C.  Goulet  & 

D. Michaud : , 92, 1657 (2010).

  10)  鈴木昭憲,荒井綜一(編集): 農芸化学の事典 ,朝倉書

店,2003.

土 居  克 実(Katsumi Doi) 略 歴1990年九州大学農学部農芸化学科卒業/

1992年同大学大学院農学研究科遺伝子資 源工学専攻修士課程修了/ 1993年同大学 農学部教務員/ 1997年同講師,現在にい たる.この間,2004 〜 08年(独)科学技術 振興機構研究開発戦略センターフェロー

(兼任)<研究テーマと抱負>微生物遺伝 子資源の利用,特に極限環境微生物の探索 と遺伝子利用,染色体外遺伝因子の構造・

機能解析と伝播<趣味>温泉巡り,写真,

読書(歴史小説)

長 澤  透(Toru Nagasawa) <略歴>

1969年京都大学農学部農芸化学科卒業/

1974年同大学大学院農学研究科農芸化学 専攻博士後期課程修了/ 1978年同大学農 学部助手/ 1991年名古屋大学農学部助教 授/ 1994年岡山大学農学部教授/ 1997年 岐阜大学工学部教授,現在にいたる.この 間,1975年西ドイツ・フライブルグ大学 医学部生化学研究所員<研究テーマと抱 負>微生物反応の開発と工業的利用<趣 味>トレッキング,山岳写真

藤野 泰寛(Yasuhiro Fujino) <略歴>

2005年九州大学理学部化学科卒業/ 2007 年同大学大学院理学府凝縮系科学専攻修士 課程修了/ 2010年同大学大学院生物資源 環境科学府博士後期課程修了/同年同大学 基幹教育院助教,現在にいたる<研究テー マと抱負>微生物と無機物質の相互作用,

その応用展開<趣味>釣り,野球観戦 松井 博和(Hirokazu Matsui) <略歴>

1972年北海道大学農学部農芸化学科卒業

後,同大学大学院農学研究科修士課程修 了,同博士課程中退,1976年同大学農学 部助手,助教授,教授を経て,2011年同 大学大学院農学研究院長,同学院長,農学 部長,現在にいたる<研究テーマと抱負>

糖質関連酵素の利用,科学技術と社会のあ り方

松浦 英幸(Hideyuki Matsuura) < 歴>1988年北海道大学大学院農学研究科 農芸化学専攻修了/ 1996年日本学術振興 会特別研究員/ 1998年北海道科学・産業 技術振興財団雇用研究員/ 2001年北海道 大学大学院農学研究科助手/ 2003年同助 教授/ 2007年同准教授,現在にいたる.

この間,1993年カナダ・ブリティッシュ コロンビア大学博士研究員(〜 1995年)

<研究テーマと抱負>植物の傷害応答に関 わるシグナル物質の有機化学的研究.植物 の生きる知恵を有機化学的に解明したい

<趣味>柔道(得意技:崩れ上四方固め)

満 倉  浩 一(Koichi Mitsukura)  歴>1995年岡山大学工学部生物応用工学 科卒業/ 2000年同大学大学院自然科学研 究科物質科学専攻博士後期課程修了/同年 岐阜大学工学部生命工学科助手/ 2007年 同助教,現在にいたる<研究テーマと抱 負>生体触媒(微生物・酵素)による有用 物質合成と魅力的な酵素触媒開発<趣味>

読書(推理,歴史,時代小説),散歩 宮原 盛雄(Morio Miyahara) <略歴>

2004年日本大学大学院生物資源科学研究 科応用生命科学専攻修了/ 2005年東京大 学農学部酵素学研究室研究員/ 2010年同

大学先端科学技術研究センター研究員,現 在にいたる<研究テーマと抱負>カセット 電極型微生物燃料電池の実用化にむけた研 究.微生物燃料電池のスケールアップと実 用化をやり遂げたい.微生物燃料電池の 日々の電圧の出力と電力の測定で一喜一憂 しています<趣味>微生物燃料電池のリア クターづくり

宮道 和成(Kazunari Miyamichi) <略 歴>2001年東京大学理学部生物化学科卒 業/ 2006年同大学大学院理学系研究科生 物化学専攻博士課程修了(理博)/同年米 国スタンフォード大学生物学部博士研究 員,現在にいたる<研究テーマと抱負>神 経回路から機能を研究するための一般化可 能な方法論の開発と実装<趣味>創作動画 投稿サイトを介したネットワークの構築 守 屋  央 朗(Hisao Moriya) 略 歴1993年神戸大学理学部生物学科卒業/

1998年同大学大学院自然科学研究科博士 後期課程修了(理博)/同年三菱化学生命 科学研究所特別研究員/ 2004年(独)科学 技術振興機構 ERATO-SORST北野共生シ ステムプロジェクト研究員/ 2006年(独)

科学技術振興機構さきがけ「生命システム の動作原理と基盤技術」領域研究者/

2009年岡山大学異分野融合先端研究コア 特任助教/ 2011年同特任准教授,現在に いたる.この間,2001年米国ワシントン 大学医学部リサーチアソシエイト<研究 テーマと抱負>細胞システムのロバストネ スに関する研究.酵母でできること,酵母 でしかできないことにいろいろチャレンジ したい<趣味>テニス

プロフィル

Referensi

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(鈴木博紀,イムラ・ジャパン株式会社) プロフィール 鈴木 博紀(Hironori SUZUKI) <略歴>2005年名城大学農学部応用生物 科学科卒業/2010年名古屋大学大学院生 命農学研究科博士課程修了/同年高エネル ギー加速器研究機構物質科学研究所構造生 物学研究センター研究員/2012年Univer- sity of Canterbury