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承認を求める若者たち

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Academic year: 2025

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卒業論文

承認を求める若者たち

——「塾講師」アルバイトに従事する大学生の実態分析から——

2016年度入学

九州大学 文学部 人文学科 人間科学コース 社会学・地域福祉社会学専門分野

2020年1月 提出

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要約

本論文では、承認不安の時代を生きる若者が、他者から承認を得る機会として、アルバ イトがその役割を果たしているのではないかと考え、アルバイトをする中で生じる困難や やりがい意識などを通して、アルバイトによる承認について、塾講師アルバイトに従事す る大学生の実態から考察を行った。

はじめに、先行研究において、承認の社会理論の代表格とされるアクセル・ホネットの 承認区分説を中心に、人間の持つ承認欲求がどのようなものであり、私たちの社会生活に どのように関係しているのか整理を行った。また、承認をさらに細かく区分するため山竹 伸二による「集団的承認」と「一般的承認」を用い、承認が自己価値に与える影響や、社 会共通の価値観が大きく揺らいでいることについてまとめた。また、働くことで得られる 承認についてとその承認欲求を利用した「ブラックバイト」問題についても言及した。

次に、アルバイトについて、発展した経緯や現在の学生アルバイトの現状を確認した。

九州大学の学生生活実態調査からは、アルバイトと上手く付き合っている学生もいる一方 で、アルバイトをせざるを得ない経済状況に置かれている学生や、アルバイトが生活の中 心のような働き方をしている学生の存在を指摘した。

調査は、個別指導塾の講師といった塾業界でアルバイトをした経験がある九州大学の学 生5人にインタビューを行った。調査からは、塾講師という仕事にやりがいを感じ、熱心 に業務に励む人がいる一方で、やりがいを感じられず、ある一定の距離を保ちながら、講 師としての役割を果たしている人が見られた。熱心に業務に励む人については、自身の労 働を生徒の頑張りや、自分の授業を受けてくれていることへの対価として捉えており、「生 徒からの承認」に加え、生徒を通して「自身の能力に対する承認」も獲得していた。また、

塾講師の仕事にやりがいを感じられない人については、自身の仕事について大したことで はないといった認識を持っており、これは、仕事において「自分は生徒にとって必要な存 在」「自分でなくてはいけない」といった評価を求めているからこそ起こることであると 分析した。このような評価は、生徒という他者から講師としての承認を得ることで、「自分 でいなければならない」理由が成立しており、この「自分でなくてはならない」という思 いは不特定多数の人を相手にするアルバイトよりも、塾講師のような、ある程度特定され た人を相手にするアルバイトの方が評価や承認を得やすい環境にあるといえる。

そして、塾講師の仕事に対する熱量の違いには、生徒を「自分の能力や仕事の実績を理

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解し、評価できる人」とみなしているかが関係しているとし、承認における「評価する側」

と「評価される側」の相互的関係について考察した。生徒を「自分の能力や仕事の実績を 理解し、評価できる人」とみなしている場合、アルバイトにおける承認や、仕事に対する やりがいを得やすいことが分かったが、一方アルバイトで得られる承認ややりがいを利用 して、学生をアルバイトに組み込もうとしている企業側の思惑について指摘した。

今回調査対象者となった学生は、経済的貧困によってアルバイトを始めざるを得なかっ たわけでもなく、学歴も高く、塾講師の仕事も比較的上手にこなしている学生であり、ア ルバイトが実生活に支障をきたしていることはなかったものの、今日の学生アルバイトに 求められる質の高さは、学生の負担となるものであり、「ブラックバイト」として語られる 問題が生じていてもおかしくない状況であるといえる。共通の価値観が大きく揺らいでい る現在、身近な人間の承認は、社会共通の価値観とは関係なく、身近な人間同士で共有さ れた価値観が承認の基準となっているが、そういった身近な他者からの承認や評価にとら われすぎていると、アルバイトにおけるやりがい搾取のような問題に巻き込まれてしまう 恐れがある。承認欲求というのは、様々な行為の原動力になるものであり、承認獲得のた めに努力することで自身の可能性を広げることもあるが、そういった他者からの承認にと らわれすぎずに、また、承認が得られずとも揺らがない自己を確立していくことが重要だ と考える。

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目次

1 はじめに ...1

2 先行研究 ...3

2.1 承認の三形式 ...3

2.1.1 「自己関係」からみる承認形式 ...3

2.1.2 三つの承認の関係性 ...6

2.2 集団的承認と一般的承認 ...6

2.2.1 他者との関係性による区分 ...6

2.2.2 承認される価値の一般性 ...8

2.2.3 承認と自己価値 ...8

2.3 現代の承認欲求と共通の価値の喪失 ...9

2.4 承認と働くことの関係性 ... 11

2.4.1 仕事と承認 ... 11

2.4.2 学生アルバイトと承認 ... 12

3 「アルバイト」について ... 15

3.1 アルバイトの雇用形態 ... 15

3.2 アルバイトの発展 ... 16

3.3 学生アルバイトの現状 ... 18

3.3.1 全国の学生アルバイトの傾向と要因 ... 18

3.3.2 九州大学の学生アルバイトの現状と傾向... 21

4 調査概要 ... 23

4.1 調査目的 ... 23

4.2 調査対象 ... 23

4.3 調査方法 ... 24

4.4 調査期間 ... 24

5 分析・考察 ... 25

5.1 調査対象者の概要 ... 25

5.2 はじめたきっかけ ... 26

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5.2.1 「大学生になる」ということ ... 26

5.2.2 教えることの身近さ ... 27

5.3 働くことで得る承認 ... 28

5.3.1 塾講師の裁量性 ... 28

5.3.2 生徒からの承認 ... 29

5.4 「大したことではない」という思い ... 33

5.5 権威として認めている他者からの承認 ... 34

5.6 賃金との関係 ... 38

5.7 「質」を求められる学生アルバイト ... 40

5.8 学生にとってのアルバイトと職業観 ... 41

6 結論 ... 44

[参考文献]............................................. ... 46

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