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東京大学大学院農学生命科学研究科全体の取り組みについて

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化学と生物 Vol. 50, No. 9, 2012

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セミナー室

放射性降下物の農畜水産物等への影響-1

東京大学大学院農学生命科学研究科全体の取り組みについて

中西友子

東京大学大学院農学生命科学研究科

東京大学大学院農学生命科学研究科では,被災地の農 業復興支援研究を原発事故直後からシステマティックな 活動として進めてきている.この研究には,約40人に のぼる教員が参加し,その分野も農学の全分野に及んで いる.発端は,事故後,研究科長のリーダーシップの 下,教員から農業の現場で役立つ研究計画の提出をお願 いしたことに始まる.各種提案は,穀物,畜産物,魚介 類,フィールドなどの分野に分類してグループ化し,実 際の農業現場に寄与する研究を進めることとなった.こ の研究グループは,農学部にある圃場,牧場などの各種 附属施設,ならびに,各専攻すべてを串刺しにした教員 で構成されている.つまり,今まで馴染みが薄かった異 分野の研究者が,復興支援のための研究を効果的に推進 するため,集合して研究を始めたのである.

農業現場での研究とは自然相手の研究でもある.その ため,一つの専門分野の研究者だけなく,いくつかの異 なる専門の研究者が集まって初めて解析が可能となる.

たとえば,稲作については稲の栽培の専門家,土壌の専 門家,水利の専門家などが集まって検討・議論を行うこ とにより,初めて,どうやって汚染米ができたのかが見 えてくるのである.

研究は被災地のみならず,全国に広がる演習林や牧場 などの附属施設でも行われてきている.そのため,たと えば作物や家畜を対象とした研究では,高レベルから低 レベルに至る放射能汚染地における影響を調べてきてい

る.また,魚介類では海水や淡水に住む魚への放射能の 動態解析や加工過程における放射能の残存率について,

さらに野生動物では現地調査が展開されてきている.特 にキノコについては,今回の事故による放射能のみなら ず,かつての核実験など,事故前に蓄積していた放射性 セシウムも測定されてきている.

研究成果については,なるべく多くの関係者に読んで いただきたいことから,そのほとんどが日本語の論文と してまとめられ,主に,日本アイソトープ協会から出さ

れている学術誌 誌等に掲載され,

そのホームページに主なデータが公表されてきてい

図1東京大学農学部における震災復興支援への取り組み

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.また成果報告会は昨年11月と今年2月,5月と

すでに3回開催され,農学部のホームページにはその講 演内容を動画として掲載した(7)

.第1回は,作物,土

壌,畜産,水産,野鳥などについて,第2回は,その後 の成果も含め,作物生産,畜産,水産,果樹やキノコに ついて,第3回は,農畜産・水産物等の研究に加え,被 災地農業再生のデザインやサイエンスコミニュケーショ ンについても報告を行ってきた.

福島第一原子力発電所の事故では,被災地のほぼ8割 にあたる地域が,森林も含め,農業関連地といわれてい る.しかし被災地はその面積が広くまた植生を含め多様 性に富む土地であることなどから,現場に根差した研究 についてはまだ情報が非常に少ない状況である.私たち が通常得ることができる情報の多くは,被災した「場所 の放射能測定値」と,生産された「食品の放射能測定 値」である.測定器で放射能を測定していくことは非常 連載開催にあたって:放射性下降物の農畜水産物等への影響

昨年3月11日に起きた東日本大震災および津波により,

福島第一原子力発電所の大事故が発生した.それによって 大量の放射性物質が降下し,市街地のほかに農地,林地,

海洋を汚染した.当然,農畜水産物が汚染され,大きな問 題となった.当初,ヨウ素131(半減期8日)

,セシウム

134(半減期2年)およびセシウム137(半減期30年)が 問題になったが,ヨウ素131は半減期が短いためにしばら くして測定限界以下になった.セシウム134と137は当初 ほぼ同量検出されていたが,1年経った今セシウム134は 半減期が短いためにセシウム137のほうが主に検出される ようになってきている.生産者にとっての生産物の安全の 確保および風評被害,ならびに消費者にとっての食の安全 は最重要課題の一つになっている.食品,水,牛乳などに 含まれる放射線量は本年4月から暫定基準値が下げられ,

昨年度であれば超過しなかったもので,この下げられた基 準値を超えるものがすでに出てきているのが現状である.

東京大学農学生命科学研究科では,原発事故発生以来,多

くの教員・技術職員がそれぞれ専門的な立場から,汚染放 射性物質の土壌,植物体内での挙動,ウシの飼料と牛乳の 汚染,魚肉の汚染,環境中での動態などを調査研究してき た.その過程では,福島県農業総合センターと連携して試 験や測定においてお互いに協力してきた.初期に得られた 成 果 は,日 本 ア イ ソ ト ー プ 協 会 の 機 関 誌

誌に掲載され,またその後に得られた結果も併せ て,一般市民向けの報告会を3回開催し,データを公開し てきた.本セミナー室には,報告会で報告された内容を中 心に最近得られた結果も含まれている.菌根菌について は,東北大学の齋藤雅典先生にお願いした.汚染は今後長 く続くことが予想されるが,現状を知ることこそが次の対 策につながるはずである.当面は放射性物質が農作物にど のようにして取り込まれるか,また農作物に吸収されない 方法を模索することになろう.

  (長澤寛道,東京大学大学院農学生命科学研究科長)

図2被災地支援研究を行っている 主な場所

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に大切ではあるが,単に測定することだけでは,被害の 影響を予測しその対策を講じることは困難である.放射 能汚染が時間の経過とともにどう動いていくか,そこで 育つ作物や動物への影響はどう変化していくのかなど,

現場に根差した放射能汚染の実態や汚染原因を科学的に 知ったうえで,初めて有効な対策を考えていくことがで きるのである.

農業現場における科学的知見がわかることこそが,農 業復興への第一歩であろう.30年という長い半減期を もつ放射性セシウム汚染を考える際,われわれの研究は まだ端緒についたばかりといえるのかもしれないが,こ れからも途切れることなく継続して各分野での研究を推 進していくつもりである.

文献

  1)  野川憲夫,橋本 健,田野井慶太朗,中西友子,二瓶直 登,小野勇治: , 60, 311 (2011).

  2)  田野井慶太朗,橋本 健,桜井健太,二瓶直登,小野勇 治,中西友子: , 60, 317 (2011).

  3)  塩沢 昌,田野井慶太朗,根本圭介,吉田修一郎,西田 和弘,橋本 健,桜井健太,中西友子,二瓶直登,小野 勇治: , 60, 323 (2011).

  4)  大下誠一,川越義則,安永円理子,高田大輔,中西友子,

田 野 井 慶 太 朗,牧 野 義 雄,佐 々 木 治 人:

60, 329 (2011).

  5)  橋本 健,田野井慶太朗,桜井健太,飯本武志,野川憲 夫,桧垣正吾,小坂尚樹,高橋友継,榎本百合子,小野 山一郎,李 俊佑,眞鍋 昇,中西友子:

60, 335 (2011).

  6)  田野井慶太朗,中西友子:遺伝,66, 13 (2012).

  7)  http://www.a.u-tokyo.ac.jp/rpjt/index.html

児嶋長次郎(Chojiro Kojima) <略歴>

1990年大阪大学理学部化学科卒業/1995 年大阪大学大学院理学研究科博士課程修了

(博士(理学))/1995年カリフォルニア大 学サンフランシスコ校博士研究員/1998 年東京都立大学博士研究員/2001年奈良 先端科学技術大学院大学バイオサイエンス 研究科助教授/2010年大阪大学蛋白質研 究所准教授,現在に至る<研究テーマと抱 負>構造生物学的手法によるブレークス ルーの創出<趣味>旅行,読書

佐  藤   努(Tsutomu Sato) <略 歴> 1995年日本大学農獣医学部応用生物科学 科卒業/2000年新潟大学大学院自然科学 研究科博士後期課程修了(農博)/同年日 本学術振興会特別研究員/2001年新潟大 学 助 手 /2004年 同 准 教 授,現 在 に 至 る

<研究テーマと抱負>ユニークな天然物と 生合成経路の発見および生合成工学の発展 柴 田  重 信(Shigenobu Shibata) <略 歴>1976年3月九州大学薬学部薬学科卒 業/九州大学薬学研究科博士課程終了,九 州大学薬学部助手,同助教授,早稲田大学 人間科学部教授,早稲田大学先進理工学部

電気・情報生命工学科教授,現在に至る

<研究テーマと抱負>体内時計と健康・疾 病に関わる研究,体内時計と生活習慣病,

体内時計とがん増殖・転移,時間薬理学,

時間栄養学,時間運動学<趣味>テニス,

魚釣り,散歩,庭いじり

島 本  功(Ko Shimamoto) <略歴> 現在,奈良先端科学技術大学院大学バイオ サイエンス研究科教授

正 山  征 洋(Yukihiro Shoyama) <略 歴>昭和41年福岡大学薬学部卒業/昭和 43年九州大学薬学研究科修士課程修了/

同年同助手/昭和50 〜 51年マサチュー セッツジェネラルホスピタル博士研究員/

昭和53年九州大学薬学部助教授/平成3年 同教授/平成19年九州大学特任教授・名 誉教授,長崎国際大学薬学部教授,現在に 至る<研究テーマと抱負>天然薬物に対す るモノクローナル抗体の作成と応用研究・

薬用植物の育種研究・生薬の薬理活性成分 の探索研究等の蓄積を生かした社会貢献

<趣味>野性ツツジのコレクション・古い ボタニカルアートのコレクション・化石の コレクション

須 藤  洋 一(Yoichi Sutoh) <略 歴> 2005年新潟大学理学部生物学科卒業/

2010年学術振興会特別研究員 (DC2)/

2011年北海道大学大学院医学研究科博士 課程修了/2011年学術振興会特別研究員 

(PD)/2012年北海道大学学術研究員/

<研究テーマと抱負>脊椎動物の免疫系の 進化.特に無顎類の抗原受容体VLRに関 する研究<趣味>読書,音楽鑑賞,TV ゲームなど

瀬 戸  治 男(Haruo Seto) Vol. 44, No. 

10, p. 680参照

左右田健次(Kenji Soda) <略歴>1956 年京都大学農学部農芸化学科卒業/1961 年京都大学大学院農学研究科博士課程農芸 化学専攻単位修得/1962年京都大学農学 部農芸化学科助手/1965年京都大学化学 研究所助教授/1981年同教授/1996年定 年退官,関西大学工学部教授,2003年定 年退任<研究テーマと抱負>D-アミノ酸 の生化学,ホモキラリティー発現機構,生 命の起源<趣味>登山,観劇,隷書

プロフィル

Referensi

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プロフィル 岸野 重信 (Shigenobu KISHINO) <略歴>2000年京都大学農学部生物機能 科学科卒業/2002年同大学大学院農学研 究科応用生命科学専攻修士課程修了/2005 年同博士後期課程修了,博士(農学)/同 年同大学大学院農学研究科産官学連携研 究員/2006年同大学農学研究科産業微生 物学講座寄附講座教員/2009年同特定助

東京大学大学院農学生命科学研究科社会連携講座「栄養・生命科学」 キックオフシンポジウム 2016年4月に東京大学大学院農学生命科学研究科に社会連携講座「栄養・生命科学」(佐藤隆一郎 特任教授(兼任)・山内祥生特任准教授)が開設されました。本講座は、健康維持に資する食品機 能に注目し、特に骨格筋機能調節を分子レベルで明らかにすることで、健康寿命の延伸に寄与する