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検 から購 まで
経済学部経済学科4年
A0841422 上田 聡史
2 目次
1.はじめに
2.EC市場について
ⅰBtoB市場について
ⅱBtoC市場について
ⅲCtoC市場について
3.Amazonと楽天市場について
ⅰ①Amazon.comとはどういう会社か ②Amazonのサービスの特徴
ⅱ①楽天とはどういう会社か ②楽天市場とは
③楽天のサービスの特徴
4.疑問点
5.日本のECユーザーの特徴
6.検証
7.まとめ
3 はじめに
現在、技術進歩に伴いWEB上で出来るアクションの領域が急速に拡大している。個人レベルでいえば、
「mixi」「twitter」「facebook」といった SNS の登場により自分の情報を簡単に世界に発信したり、ある いは相互にコミュニケーションを図ったり出来るようになった。近年では、文字や写真に限らず音声や映 像の配信も可能となり、より密な情報が伝えられるようになったといえる。
こうした高度な情報伝達が可能な環境において、個人的に興味のある分野がある。それは「オンライン ショッピング」である。インターネット人口が9500万人と言われている日本で約8割の人間がオンライン ショッピングを利用していると言われており、その利用率は世界でトップクラスである。市場規模も同様に 拡大しており、実店舗購入からネット購入への移行が見て取れる。電子商取引を行う企業も多種多様で、
「楽天」のような電子モールから農家の収穫物のネット販売、宝くじ販売までと多岐に渡る
ここで実店舗とオンラインの違いについて着目すると、「商品を実際に手に取って見ることが出来るか否 か」ということが挙げられる。当然ながら、オンライン上では「衣服などのサイズが自分とマッチしているの か」「商品写真で見えない部分はどうなっているのか」といった、実際に商品に触れてみなければわから ない情報を得ることが難しい。こうした部分の情報を埋めるために返品制度の整備や口コミなどで情報 の補填を行っている。また「プロモーション方法」違いも挙げられる。テレビ、ラジオ、雑誌といったマスメ ディアによるプロモーションは共通しているものの、実店舗においては主に店員のアナウンス・実演販売 であり、ネット上ではバナー広告やメールマガジン等が主に用いられている。特に会員制を敷いている サイトでは、各会員の趣味嗜好の情報を得ることが出来るため効率のよいプロモーションを行うことがで きる。
ここで着目したいのは、ネット上ならではの手法が EC サイト利用者の購買意欲にどの様な影響がある のか、特徴的な傾向が見られるのかという点である。この点について、EC 市場において大きなシェアを 誇る「楽天」と「Amazon」を用いて検証したいと思う。
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・電子商取引(Electric Commerce)とは
電子商取引とは、ネットを媒介とした売買や契約などを行う取引である。近年市場規模の拡大に伴いそ の取引様式・形態は多様化しているが、この言葉はそれらを包括的に捉えている。取引を行う主体は企 業(Business)と消費者(Consumer)であり、企業間(B to B)と企業・消費者向け(B to C),消費者間(C toC)取引が存在する。電子商取引の歴史自体は20年弱と浅く、ECサイトの中でも歴史の長い「eBay」
や「Amazon」でさえ 1995 年からの運営である。しかしその一方で市場規模の拡大が著しく早く、現在 のEC市場規模は約180兆円となっている。(市場規模拡大の推移は以下の図参照)
取引の決済方法は主にクレジットカード、代引き、銀行振込などが挙げられ、特にクレジットカードの普 及率が高いアメリカ・日本では取引の際クレジットカード決済が用いられている。こうした背景の中、近年 においては情報の漏えいを防止するための各ECサイトのセキュリティが重要な焦点になっている。
(ⅰ)BtoBについて
企業間取引はEC市場の大部分を占めており、その規模は2010年の段階で約170兆円となっている。
企業間で EC を用いるメリットは「受発注作業中に起こるミスの削減」「決済の簡素化・迅速化」「多様な 取引相手の確保」「取引先との関係強化」が挙げられる。上の図に見られるように、ここ10数年間で取引 額が30倍近くにまで増大している。各業種に着目すると、ほぼ全ての業種が毎年市場規模を拡大させ ており、特に 2010 年において衣料・アクセサリー小売と医薬化粧品小売を筆頭とした小売業が規模を 拡大させている。日本における主なBtoBECサイトには「アリババ」「楽天B2B」が挙げられる。
(ⅱ)BtoCについて
消費者向け取引は、BtoBと比較し一回当たりの取引額が少ないため市場規模は 2010年段階で 7.8 兆円とBtoB市場の約20分の1であるものの十数年で120倍近くにまで拡大している。「実店舗よりも
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多様な商品を取り扱えられる」「距離に依存しない取引が可能になる」という特徴をもっている。現在、国 内市場は寡占化しており「楽天市場」「Amazon」のみで全体の半分のシェアを占めているが(楽天は出 店・直営の合計)、価格.com やセブン&アイ、イオンなどの注目すべきオンラインサービスも登場してい る。(市場動向は以下の図参照)
(ⅲ)CtoCについて
消費者間取引とは具体的にはオークションの事を指し、企業は取引の場所を提供し手数料を徴収 するという形をとっている。経済産業省の資料によると、2004年段階で正式な市場規模が把握 され、その額は7840億円であり、2010年では9170億円となっている。日本の主なサイトには
「YAHOO!オークション」「楽天スーパーオークション」「eBay」などが挙げられる。(以下2004 年度オークション落札経験者の落札品目)
42.2%
39.9%
39.9%
14.1%
12.8%
11.0%
6.9%
7.5%
9.1%
8.7%
8.8%
12.2%
8.0%
7.9%
8.3%
7.1%
7.4%
6.7%
6.7%
7.9%
6.1%
3.0%
3.6%
2.6%
3.4%
4.2%
4.1%
2010 2009 2008
利用されている 利用されている 利用されている
利用されているEC EC ECサイト(直近一回) EC サイト(直近一回) サイト(直近一回) サイト(直近一回)
楽天 Amazon ヤフーショッピング
通販系 店舗系 メーカー・直販
ネット単独店 その他モール わからない
6 B to C EC/C to C EC の動向
-EC な ら で は の 付 加 価 値 を 提 示 で き る サ ー ビ ス へ の 支 持 -
(http://www.keieiken.co.jp/monthly/repo0511-2/index.html)から引用
近年ではECサイト構築サービスを行う企業が登場し、多くの企業がECを行う環境を整備 出来るようになった。こうした背景から、今後EC市場は一層急激に拡大していくと思われ る。
ⅠAmazon.comと楽天市場
1Amazon.comについて
■Amazon.comとはどういう会社か?
「Amazon.com」とは1995年にジェフ・ベゾスによって設立された通販サイト運営会社である。
公式サイトの説明を引用すると、「Amazon.comは、米国ワシントン州シアトル市を本拠地とす るフォーチュン500の一企業であり、eコマースにおける世界的なリーディングカンパニーです。
Amazon.comのCEOであるジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)が1995年に設立して以来、Amazon.com は商品の品揃え、インターナショナル・サイト、そして世界中に位置する物流センターおよびカ スタマーサービスセンターにおいて著しい拡大を行ってきました。現在では、本、エレクトロニ クス製品からテニ スラケット、宝飾品まで 様々な商品を豊富に取り 揃えています。また Amazon.com はイギリス、ドイツ、フランス、日本、カナダ、イタリア、中国(Joyo.com)で ウェブサイトを運営し、世界各地50カ所を超える物流センターを設置しています。その広さは 合計2,600万平方フィート(240万㎡)以上にも及びます。 」(※1)とある。日本におけるサ ービスは2000年11月1日からインターネット書店として開始され、現在ではDVD、家電、食 品、ファッションといった11のカテゴリーを取り扱っている。
■Amazonサービスの特徴
このサービスの主な特徴は、「格安販売」と「レコメンデーション機能」である。Amazonは専 門店舗というものを持たず、「フルフィルメントセンター」と呼ばれる専用倉庫を全国に7つ保 有し、大量の商品を一括で仕入・管理し、厳格なノルマの下アルバイトを用いて商品の選択・梱 包の作業を行っている。こうした経営体制を採用することで、仕入れコスト・賃貸料・人件費・
中間マージン等の削減がなされ、販売価格の引き下げを可能にする。
もう一つの特徴は「レコメンデーション機能」である。これは、顧客に対しその人の嗜好に合っ た商品を推奨する機能である。顧客が過去に訪れたページやチェック・購入した商品からその人 の好みを推測し、同じ嗜好をもった別の顧客がチェック・購入したものを勧めるという方式は、
Amazon のようなロングテールビジネスを行う会社にとって非常に有効な販売方法だといえる
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(ロングテールビジネスとは、一部の需要の高い商品の売り上げではなく、大部分の需要のあま り高くない商品の売り上げを増加させることで全体の売り上げを増やす形態のビジネスである。
非常に多くの品目を取り扱わなくてはならないという点で、実店舗ではなくオンラインでの販売 に適した手法である)。これは、ロングテールビジネスの性質上、多種多様な品目を取り扱う一 方で画面に表示可能な商品がスペース的に限られているため、より効率的に顧客に対し販促を行 う必要があるためである。その他にも、「国内配送無料」「Amazonポイント」「1-Click」といっ たサービスが行われている。
2.楽天について
■楽天とはどういう会社か?
「楽天」とは1997年に三木谷浩史によって設立されたインターネットサービス会社である。公 式サイトによると「1997 年、インターネットショッピングモールの多くが、ただカタログを Webにしただけのようなつくりとなっていました。我々は楽天市場を開設するにあたり、「シス テムに強い人間が商売をする」のではなく、「商売が上手な人が簡単に店を開ける仕組みを創る」
ということをまず考え、インターネット上にマーケットプレイスを設立することを目指しました。
そして出店者の皆様にはシステム、トラフィック、ノウハウの 3 つを提供し、ユーザーの皆様 にはネット上での買い物の楽しさを提供してきました。その後、楽天市場をはじめとする EC、
トラベル、ポータル、金融など、様々なサービスをグループに加え、あらゆるサービスをネット 上からワンストップでユーザーに提供する体制を強化しました。その結果、グループ各社の様々 なサービスを有機的に結びつけ、会員データベースを軸としたマーケティングの展開により、ユ ーザーの楽天グループ内での回遊性高め、他に類を見ないeco-system、「楽天経済圏」を実現し ています。」(※2)という説明がなされている。
■楽天市場とは
「楽天市場」とは1997年に楽天が運営を開始したインターネットショッピングモールサイトで
ある。Amazonとは異なり、楽天自身が仕入・販売を行うことはなく、販売者と消費者がインタ
ーネット上で取引を行うための場所を提供している。販売者に対しては、各ショップから出店料 を徴収する一方で様々な提携やコンサルティングなどの、いわば商社のようなサービスを提供し ている。消費者に対しては、会員登録で個人情報を得る一方で買い物に関する様々な情報提供や ポイントサービスを行っている。
■楽天サービスの特徴
このサービスの主な特徴は、「ポイント」と「品目数の多さ」である。楽天スーパーポイントと は楽天市場での利用額に応じて原則1%会員に付与されるポイントであり、1ポイント=1円の 計算で、楽天の運営するサービス利用の際に使うことができる。Amazonと比較し、ポイントを
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用いた消費者の購買を促す戦略を多く用いている。たとえば、「○○ショップ限定 エントリー
&○○○○円以上購入で○○万ポイント山分け」「○曜日はポイント○倍」といったバナーがト ップページやサイドバーに貼られており、メールマガジンからも同様の情報が提供される。
楽天市場には2012年現在出店・直営店舗を合計して88946141品目が取り扱われている。業界 2番手であるAmazonでさえ38983339品目(個別mp3ダウンロードを除く)と、楽天の約半 分しか取り扱われていないことをからもその品目の多さが際立つ。各カテゴリーで比較すると、
書籍を除いた全てのカテゴリーにおいて楽天市場はAmazonの8~10倍の品目を取り扱ってい る。洋書においては、Amazonは楽天市場の約22倍の品目を、和書においてはほぼ同程度の品 目を扱っている。
電子商店街という形をとっていることから、(特に売れ筋商品に対して)販売元と楽天とで共同 制作された宣伝ページが設けられている事も一つの特徴といえる。ページ内にはパンフレットに 似た内容が掲載されており、購入者のレビューや最高ランキングの表示、ポイントサービス情報 など楽天のサービスが併用されている。
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■疑問点
当初「商品の購入場所が店舗からネットへ移行しただけなので、総合的に商品を取り扱うサイトであれ ば売れ筋商品に差が生じない」という仮説を設けていたが、実際に調べてみると一部仮説と異なる結果 が出た。以下に示す表は2011年におけるAmazonと楽天の年間売上TOP10である。
各カテゴリーランキングの特徴を示すと以下のようになる
・書籍は、順位に多少の差はあるものの大まかには同じランキングであり、20 位までにランクインしてい る書籍に差異は無い
・PC・周辺機器は、両サイトとも「外付けハードディスクレコーダー」「インク」「プリンター」で大部分占めら れている。しかし製品の種類に差異が生じており、値段が高い方のサイトが高順位に位置するという現 象も見られる。
書庫 Amazon 楽天
1位 涼宮ハルヒの驚愕 カーヴィーダンスで即やせる!
2位 カーヴィーダンスで即やせる! カーヴィーダンスで部分やせ!
3位 体脂肪計タニタの社員食堂 体脂肪計タニタの社員食堂
4位 カーヴィーダンスで部分やせ! 続・体脂肪計タニタの社員食堂
5位 続・体脂肪計タニタの社員食堂 シリコンスチームなべつき使いこなしレシピBOOK
6位 女医が教える本当に気持ちのいいセックス ニッポンの嵐 ポケット版
7位 スティーブ・ジョブズ! もしドラ
8位 もしドラ ONE PIECE(61)
9位 心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣 ONE PIECE(63)
10位 マネジメント-基本と原則 KAGEROU
PC・周辺機器
1位 EPSON インクカートリッジ(6色セット) LHD-ENxxU2W 外付けハードディスク 2位 FUJITSU Scan Snap S1500 FI-S1500 WesternDegetalWD
3位 BUFFALO USB2 外付けハードディスクドライブ IC6CL50 互換 インク エプソン 4位 I-O DATA 東芝レグザ対応USB外付型ハードディスク インク福袋
5位 Canon インクジェット複合機PIXUS 外付けハードディスク(PS3・トルネ・レグザ対応)
6位 BUFFALO おまかせ節電 無線ルーター エプソン純正インク インクカートリッジ
7位 Canon インクタンク BCI-321 コピー用紙 白箱良品 A4 5000枚
8位 Canon インクタンク BCI-326 Norton Internet Security
9位 EPSON Colorio インクジェット複合機EP-803A WesternDegetalWD20EXTRA バルク品 10位 I-O DATA 縦置き・横置き両対応USB外付けハードディスク エプソン IC6CL50 6色セット 家電・AV・カメラ
1位 iPod touch 32GB 脱毛イーモリジュ
2位 Nikon デジタル一眼レフカメラ アゲツヤ プロフェッショナル チタニウム ヘアアイロン
3位 iPod touch 64GB アイロボット
4位 Canon デジタル一眼レフカメラ イオンアイロン ウルトラシャイニープロ
5位 TOSHIBA REGZA CSデジタルチューナー搭載ハイビジョンレコーダー ブラザー(電子ミシン)
6位 BUFFALO リモコン付きTV用地デジチューナー 扇風機
7位 Nikon デジタル一眼レフカメラダブルスキームキャスト 音波歯ブラシ
8位 Canon デジタル一眼レフカメラ ダブルスキームキャスト ヒューロムスロージューサー
9位 iPod touch 8GB ホームベーカリー 米粉 シロカ
10位 Nikon デジタルカメラ COOLPIX P300 くつろぎ指定席ファーストプレミアム
ジュエリー Amazon 楽天
1位 LAMOUR DIAMONDネックレス LMD-MC09 ピアスロック
2位 LOVE×LOVE×LOVE携帯ストラップ クリスタルベア ピンク リトルムーン(ヘアアクセサリ)
3位 Nicole メンズブレスレット パールネックレス
4位 Crossfor NewYork ネックレス DNPN158 レザーブレスレット 5位 Crossfor NewYork ネックレス DNPN228 ビッグリボンバナナクリップ 6位 LOVE×LOVE×LOVE携帯ストラップ クリスタルベア ホワイト ブラックスピネルネックレス
7位 me.ブレスレット オープンハート シンプル2連ロングネックレス
8位 POLICE ネックレス スペシャルセットプロ
9位 LAMOUR DIAMONDネックレス LMD-MC40 イニシャルネックレス 10位 LAEA Christie ネックレス トゥモロークロスネックレス シルバーアクセサリ スポーツ・アウトドア
1位 GENTOS LEDランタン エクスプローラープロフェッショナル LED63灯ランタン 懐中電灯
2位 バイクライトホルダー 折りたたみ自転車
3位 トータルフィットネス プッシュアッパー スウェットパンツ
4位 XYSTUS スリムトレーナー 匠アンダーシャツ
5位 GENTOS 閃 325 クロスバイク 自転車
6位 GENTOS 閃 355 折りたたみ自転車16インチ
7位 SCHWALBE チューブ 仏式バルブ XTERRA 厚手モデルアンダーウェア上下セット
8位 ヤーナリズムDVDセット サークルツイスター
9位 チョンダヨン FIGURE ROBICS XTERRA アンダーウェアハイネック上下セット
10位 トータルフィットネス エクササイズウィル ソーラーLEDランタン
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・家電、AV、カメラは、Amazonでは「iPod touch」と「デジタルカメラ」で占められているのに対し、楽天 では美容関係機器やキッチン用家電などがランクインしており、ランキングの内容はほぼ乖離している。
・アクセサリー・ジュエリーは、両サイトのランキングに出ている商品がほぼ完全に異なる。楽天のランキ ングに登場する商品はAmazonでは取り扱われていないものがほとんどであった。
・スポーツ・アウトドアは、Amazonでは「ランタン・ライト用品」「エクササイズ用品」がランクインしているの に対し、楽天では「折りたたみ自転車」「スポーツウェア用品」がランクインしており、こちらもランキングの 内容が異なる。
上記の現象を踏まえ、次のような疑問が浮かぶ。
『「Amazon」や「楽天」の様に総合的に商品を扱っている場合、市場のニーズがそのままランキングに 投影されるので両サイトのランキングも一致するはずなのに、何故差異が生まれているのか?』
この疑問に対し、いくつか仮説を立てて検証していきたいと思う。
1、ユーザー層の違い
それぞれのサイトを使っているユーザーの性別、あるいは年齢層などが異なっているのではないか 2、プロモーションの違い
サイトがユーザー全体に薦めている商品が異なっているのではないか 3、価格の違い
仕入れルートの相違から生じる商品ごとの価格の差によって購買場所のすみ分けがなされているので はないか
■日本のECサイトユーザーの特徴
議論を始める前に、日本のECユーザーにはどの様な傾向があるのかを明らかにする。いくつかの調査 から以下のデータが示された
ECサイトを利用したことはありますか?<必須・択一>(n=607)
【EC サイト利用経験者 限定】EC サイトでの購入頻度はどのくらいですか?<必須・択一>
(n=321)
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合
ある 321 52.9% 197 55.0% 124 49.8% 102 48.8% 112 56.3% 107 53.8%
ない ない ない
ない 286 47.1% 161 45.0% 125 50.2% 107 51.2% 87 43.7% 92 46.2%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
11
【調べる方 限定】商品情報を調べるのに最も多い手段は何ですか?<必須・択一>(n=288)
【インターネットで調べる方 限定】ネットで調べる際はどちらが多いですか?<必須・択一>
(n=283)
【インターネットで調べる方 限定】購入を検討している商品の価格をネットで比較しますか?
<必須・択一>(n=283)
【価格を比較する方 限定】どのような価格比較をしていますか?当てはまるものすべて教えて ください<複数回答>(n=274)
【EC サイト利用経験者 限定】ネット上のクチコミはあなたの商品購入意思に関係することが ありますか?<必須・択一>(n=321)
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 半 年 に 1 度 未 満
半 年 に 1 度 未 満 半 年 に 1 度 未 満
半 年 に 1 度 未 満 105 32.7% 65 33.0% 40 32.3% 36 35.3% 35 31.3% 34 31.8%
半 年 に 1 度 以 上 3 か 月 に 1 度 未 満 半 年 に 1 度 以 上 3 か 月 に 1 度 未 満 半 年 に 1 度 以 上 3 か 月 に 1 度 未 満
半 年 に 1 度 以 上 3 か 月 に 1 度 未 満 60 18.7% 36 18.3% 24 19.4% 20 19.6% 20 17.9% 20 18.7%
3 か 月 に 1 度 以 上 1 か 月 に 1 度 未 満 3 か 月 に 1 度 以 上 1 か 月 に 1 度 未 満 3 か 月 に 1 度 以 上 1 か 月 に 1 度 未 満
3 か 月 に 1 度 以 上 1 か 月 に 1 度 未 満 60 18.7% 35 17.8% 25 20.2% 17 16.7% 25 22.3% 18 16.8%
1 か 月 に 1 度 ほ ど 1 か 月 に 1 度 ほ ど 1 か 月 に 1 度 ほ ど
1 か 月 に 1 度 ほ ど 46 14.3% 31 15.7% 15 12.1% 12 11.8% 14 12.5% 20 18.7%
1 か 月 に 複 数 回 1 か 月 に 複 数 回 1 か 月 に 複 数 回
1 か 月 に 複 数 回 50 15.6% 30 15.2% 20 16.1% 17 16.7% 18 16.1% 15 14.0%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 イ ン タ ー ネッ トで調 べ る
イ ン タ ー ネッ トで調 べ る イ ン タ ー ネッ トで調 べ る
イ ン タ ー ネッ トで調 べ る 283 98.3% 182 98.4% 101 98.1% 85 97.7% 104 99.0% 94 97.9%
イ ン タ ー ネッ ト以 外 の 方 法 で調 べ る イ ン タ ー ネッ ト以 外 の 方 法 で調 べ る イ ン タ ー ネッ ト以 外 の 方 法 で調 べ る
イ ン タ ー ネッ ト以 外 の 方 法 で調 べ る 5 1.7% 3 1.6% 2 1.9% 2 2.3% 1 1.0% 2 2.1%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 商 品 名 検 索
商 品 名 検 索 商 品 名 検 索
商 品 名 検 索 269 95.1% 173 95.1% 96 95.0% 81 95.3% 97 93.3% 91 96.8%
T V 、雑 誌 、広 告 や パ ン フレ ッ ト上 の T V 、雑 誌 、広 告 や パ ン フレ ッ ト上 の T V 、雑 誌 、広 告 や パ ン フレ ッ ト上 の T V 、雑 誌 、広 告 や パ ン フレ ッ ト上 の メ ー カ ー U R L入 力
メ ー カ ー U R L入 力 メ ー カ ー U R L入 力
メ ー カ ー U R L入 力 14 4.9% 9 4.9% 5 5.0% 4 4.7% 7 6.7% 3 3.2%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 比 較 す る
比 較 す る 比 較 す る
比 較 す る 274 96.8% 177 97.3% 97 96.0% 81 95.3% 101 97.1% 92 97.9%
比 較 し な い 比 較 し な い 比 較 し な い
比 較 し な い 9 3.2% 5 2.7% 4 4.0% 4 4.7% 3 2.9% 2 2.1%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 ネッ トシ ョ ッ プ 同 士 の 価 格 比 較
ネッ トシ ョ ッ プ 同 士 の 価 格 比 較 ネッ トシ ョ ッ プ 同 士 の 価 格 比 較
ネッ トシ ョ ッ プ 同 士 の 価 格 比 較 228 83.2% 149 84.2% 79 81.4% 73 90.1% 84 83.2% 71 77.2%
店 舗 と ネッ トシ ョ ッ プ の 価 格 比 較 店 舗 と ネッ トシ ョ ッ プ の 価 格 比 較 店 舗 と ネッ トシ ョ ッ プ の 価 格 比 較
店 舗 と ネッ トシ ョ ッ プ の 価 格 比 較 207 75.5% 134 75.7% 73 75.3% 61 75.3% 83 82.2% 63 68.5%
店 舗 同 士 の 価 格 比 較 店 舗 同 士 の 価 格 比 較 店 舗 同 士 の 価 格 比 較
店 舗 同 士 の 価 格 比 較 106 38.7% 68 38.4% 38 39.2% 37 45.7% 47 46.5% 22 23.9%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 あ る
あ る あ る
あ る 282 87.9% 178 90.4% 104 83.9% 88 86.3% 101 90.2% 93 86.9%
ない ない ない
ない 39 12.1% 19 9.6% 20 16.1% 14 13.7% 11 9.8% 14 13.1%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
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【クチコミが関係する方 限定】ネット上のクチコミであなたの商品購入意思に関わる情報はど れですか?当てはまるもの全てを教えてください。<複数回答>(n=282)
上のデータで着目すべき点は以下の部分である
・商品を調べる際にインターネットを用いる人が全体の90%
・検索を行う際、企業のホームページに向かうのではなく直接商品名を入力して調べる人が全体 の95%
・サイトや店舗間での商品の価格比較を行う人が全体の97%
・商品の購入決定要因として口コミが大きく影響している人が全体の88%
ほとんどのECサイトユーザーは購入したい商品が明確な状態でネットを利用し、その商品につ いての多角的な情報を積極的に入手しようとしているといえる。日本人は「購入は自己責任。失 敗から学びとる事も大事」と考える傾向にあり、商品購入後の返品率が約3%と非常に低い。加 えてオンライン上での購入頻度が世界でも高いことから、商品知識に関する情報収集能力の高い 日本人像が浮かんでくる。
また、ニールセンのデータによれば、日本人はひと月の一人当たりの訪問回数が平均15回、滞 在時間が2時間半ほどであり、各ECサイト(Amazon、楽天、価格.com、YAHOO!ショッピン
グ、YAHOO!オークション)のユーザー男女比率がほぼ6:4であり、年齢層の割合も類似してい
る(20代:30代:40代:50代:60歳以上=7:15:31:25:14:8)。
■検証
・両サイトのランキングを細かく分析してみる。まず注目すべき点は、Amazonで高順位に位置 する商品の評価は楽天においても評価が高い一方で、楽天で高順位に位置する商品の評価は
Amazonにおいては必ずしも高くはないという点である。もっとも顕著だった一例を挙げてみる。
2011年度ベストセラーである「謎解きはディナーの後で」の両サイトの最新レビュー100の評 価とコメントについて見てみると、Amazon では「平均評価☆2.13 コメントの平均文字数
276.36文字」、楽天では「平均評価☆4.17 コメントの平均文字数71.01」となっている。さら
に、コメントの質に対して評価基準を設け(商品に合ったターゲット層に関する言及・商品の内
回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 回答数 割合 商 品 の 質
商 品 の 質 商 品 の 質
商 品 の 質 267 94.7% 168 94.4% 99 95.2% 85 96.6% 96 95.0% 86 92.5%
シ ョ ッ プ の 対 応 シ ョ ッ プ の 対 応 シ ョ ッ プ の 対 応
シ ョ ッ プ の 対 応 132 46.8% 74 41.6% 58 55.8% 40 45.5% 53 52.5% 39 41.9%
値 引 き 情 報 値 引 き 情 報 値 引 き 情 報
値 引 き 情 報 95 33.7% 59 33.1% 36 34.6% 30 34.1% 34 33.7% 31 33.3%
全体 男性 女性 20代 30代 40代
13
容・評価の判断基準)、それぞれがコメントに含まれているか否かで得点付けをする(有…1点、
無…0点)。するとAmazonでは、平均が順に「0.26点、0.25点、0.78点」であるのに対し楽 天では「0.11 点、0.02点、0.48点」だった。
このように、楽天のコメント・レビューはAmazon と比べて質量共に少ない、つまり商品につ いての情報を得るツールとしては機能しづらい。事実、この商品に限らず多くの商品のレビュー で同じような現象が起こっている。この差は各サイトにおけるレビュー書き込みのルールや役割 が異なっているためである。楽天は「レビューを書き込むことでポイント○倍や、プレゼントの 贈呈」等のサービスを行っているため、レビューの多くが「商品が届いていない状態」で書き込 まれており、商品に対する評価も高い。この為、商品についての情報というよりはむしろどれだ けの人に購入されたかの目安として機能するといえる。一方 Amazonでは、商品が届くまでに レビューを書き込むことが禁止されており、レビューを書き込むことで得られる特典もない。こ のため、いわゆるイノベーター・アーリーアドプター、あるいはチェンジエージェントが主に書 き込みを行っていると言え、内容的に充実はしているもののステルスマーケティングである危険 性も同時に抱えている。ユーザーに「有用性が高い」と評価されているレビューについても同じ事が言 える。「カーヴィーダンスでやせる」という書籍は,Amazonでは「評価の高いレビュー25の 平均評価☆
4.5 文字数753字」、楽天では「平均評価4.8 文字数279字」となっている。
・価格に着目すると、両サイトとも扱っている商品に関していえば大した差は見られなかった。しかし、例 えば『「折りたたみ自転車」では、Amazonでは50~60%offで1万円を切る商品があるもののTOP10 にランクインしていない一方で、楽天では13650円がランキングで2位を獲得している』、など価格の高 低と売上が必ずしも連動していないケースがある。両サイトが抱える中古市場をみると、(商品にもよるが)
Amazonの方が安価な中古品を揃えていた。
・商品を取り扱っているか否かをみると、前述の通り楽天はAmazonの2倍以上の品目を取り扱ってい るので、この要素は非常に影響力が大きい。ここで重要な点は、品目数の違いが主に1つの商品に対 するバリエーションの多さに起因している部分があるということである。例えばジュエリーについて、
Amazonでは12種類しか扱っていない商品でも楽天では37種類を扱っている、ということがある。
・目立つバナーを用いた特別セールで売られている商品について検証してみる。Amazon では衣服を はじめとした、1 万~4万円程度の商品が30~70%off セールが行われている。Amazon には総合ラン キングがないので、こうしたタイムセールがどれだけ影響があるのか判断が難しいが、数量限定の商品 が多く一瞬で売り切れてしまうことからランキングにあがる程の数量ではないことが予想される。一方楽 天では、多様なセールを行っており、「ポイント○○倍」といったものや各店舗で「送料無料」「50~90%
off」のセールがあるなど様々である。特に目立つのが食品関係である。季節に関係したものや遠地の 特産物などがあり、主に送料無料のタイムサービスを行っている。これらは年間ランキングの上位に位置
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することが多く、購入者のレビューから「タイムセールがきっかけで購入し、そこから定期的に購入するよ うになった」という傾向がみられた。
ここで一度立てられた仮説と照らし合わせてみたいと思う。
1.ユーザー層の違いについて
ニールセンのデータから利用者の構成に大きな差は見られないと判断できる。また、商品を購入する際 に他サイトとの比較を行う傾向にあることからECユーザー全体がそのサイトのユーザーと言えるのでは ないかと思う。
2.プロモーションの違いについて
ユーザー全体に対するPR商品については、Amazonは「数量限定の高価なものを販売」であるのに対 し楽天は「多様なものを数量限定せずポイントで刺激し販売」である。つまり楽天のほうが長期的に見て 購買欲を刺激する効果が高く、ポイントという要素があるためユーザーを選ばないという点でその影響力 も大きいといえる。この点で楽天ランキングのPR効果の依存度はAmazonに比べて高いと思われる。
3.価格の違いについて
サイト間での価格の違いが明確に表れており、カテゴライズできるものは「中古の書籍・CD・DVD」であ る。その他は一概にどちらのサイトが安価かとはいえず、個別に調べる作業が求められる。
■考察とまとめ
以上のことから、ランキングに違いが生まれている原因は場合によって異なるといえる。楽天において総 合ランキングの上位を占めている商品は日用消費財がほとんどである。これらは検索段階では具体的 な名称が入力されにくい類の商品であり、楽天市場内の検索エンジンでの検索やタイムセールなどの 購入から定期的な購入につながったと考えられる。楽天市場総合ランキング上位 30 位を Google や
YAHOO!などの検索エンジンを用いて検索したところ、ほとんどの商品において Amazon が先にヒット
したにも関わらず楽天での売上が上回っているためである。これは楽天市場が「非常に多種多様な商 品が揃っている」というイメージによるものだと思う。一方、Amazon は和書に関して言えば楽天よりも取 り扱っている数が少ないにも関わらず、楽天よりも書籍売上が高い。レビュー自体も充実していることか ら、「何を購入するか明確に決まっていて、それを実際に購入するか否か」を判断するのに適したサイト だといえる。このため購入者がそこまで明確な購入意思を持たずに商品を求めると、ポイントやタイムセ ールなどの商品自体の価値とはまた別のところで購入の是非を決めてしまい、これが市場原理に基づ かないラ ンキン グを生み出しているのではないだろ うか。楽天のスローガン である「shopping is Entertainment」のように買い物自体を楽しむことも必要だが、ネットという特殊な環境に惑わされず、
「本当に得した買い物なのか」立ち止まって考えることも大事である。
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■参考文献
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http://ec-strategy.jp/data-list
http://www.ntt.com/ict-research/members-only/pdf/06_marketingrashinban_data5.pdf http://ec-strategy.jp/column/japanese_mind
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/6210.html
http://jp.ibtimes.com/articles/20787/20110720/1311155750.htm
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.htm http://www.jftc.go.jp/pressrelease/06.december/06122702.html
http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/201104/2011-4-2.html http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/201103/2011-3-1.html http://mbres.jp/report/2009/12/161212.html
http://release.center.jp/2009/07/0701.html
http://www.macromill.com/r_data/20090327netshopping/index.html http://www.softbankhc.co.jp/press/release/fy2007/20080327/130000.html