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油脂の脂肪酸分布を分析する新規リパーゼ法 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 54, No. 4, 2016

油脂の脂肪酸分布を分析する新規リパーゼ法

2 位脂肪酸組成の新分析法

2015年6月,米食品医薬品局(FDA)は,油脂加工 工程で生じ,循環器性疾患の要因と懸念される人工トラ ンス脂肪酸を含む部分水素添加油を2018年以降GRAS 対象外とするとした.天然のトランス脂肪酸は乳脂など に含まれ,抗がん作用など有益な効果をもつ異性体もあ り,欧州では規制対象外である.一方,人工のトランス 酸は,油脂の物性を調整するための部分水素添加工程で 生じる.部分水添油(硬化油)は,ショートニングや マーガリンに多用されてきた主要な加工油脂だが,今回 のFDAの規制を受けて,その使用量はさらに縮小する と予測される.代わって,ショートニングやマーガリン に必要な融点や結晶性などの物性は飽和脂肪酸を含む油 脂によって調整されると予想されるが,物性には,単に 飽和脂肪酸含量などの脂肪酸組成だけでなく,トリアシ ルグリセロール(TAG)におけるαβ位の脂肪酸分布も 大きな影響を及ぼす.

身近な代表例はチョコレートで,原料のカカオ脂が取 りうる6種の結晶構造のうち1種の結晶構造のみが口溶け よく「美味しい」とされ(1),テンパリングによりこの理想 的な結晶構造形成が目指される.その結晶構造を既定す るのが,カカオ脂を構成する脂肪酸の組成と分布である.

カカオ脂の脂肪酸は,炭素数16や18の飽和脂肪酸と炭素 数18不飽和結合1を有するオレイン酸,約2 : 1で構成され るが,飽和脂肪酸はTAGのα位に,オレイン酸はβ位に 選択的に分布する.すなわち,油脂自体に甘味,旨味な どと表現可能な「味」はないが,その「美味しさ」や機 能と油脂の物性は密接に関連しており,その物性を決定 づける重要な要因が油脂の脂肪酸組成と分布である.

油脂中の脂肪酸分布を測定する方法としては,主に化 学法,NMR法と酵素法がある.1960年代から開発され てきた酵素法では,従来ブタ膵臓リパーゼやリゾプス属 など微生物由来のα位選択的リパーゼが使用され,α位 脂肪酸を加水分解して生じたβ(2)位モノアシルグリセ ロール(MAG)の脂肪酸組成を決定する原理が適用さ れてきた.しかし,これらのリパーゼは炭素数6以下の 短鎖脂肪酸や炭素数20以上不飽和結合4以上の高度不飽 和脂肪酸に対する加水分解速度がほかの脂肪酸種に比べ て遅いために,これらの脂肪酸を含む乳脂や魚油などに

従来の酵素法は適用できない課題があった.

一方, ( ) リパーゼは短

鎖や不飽和脂肪酸に対する選択性は低い.また,当初 αβ位を区別せず位置非選択的とされてきた本リパーゼは,

油脂と過剰量のエタノールで行うエステル交換反応では極 めて高いα位特異性を示すことをIrimescuらが見いだし た(2).筆者らは,本リパーゼのα位特異性がエタノール添 加量の増加に伴う反応系の極性の増加に相関して上昇する メカニズムを明らかにし,本リパーゼのα位特異性が高く 脂肪酸特異性が低い性質を組み合わせることで,新しい油 脂の脂肪酸構成分析法を構築するに至った(3)

本分析法では,1)標的油脂と10重量倍のエタノー ル,固定化   リパーゼ(Novozym 435・ノ ボザイムズ社またはChirazyme L-2 C2・ロシュダイア グノスティクス社)を30 Cで3時間反応後,2)生じた 2-MAGを市販の固定相順相カラム(例:Sep-Pak silica・

Waters社)で分画し,3)2-MAGをメチル化後にGC分 析により決定する.エステル交換反応で生じた脂肪酸エ チルのGC分析により,α位の脂肪酸組成も推定できる.

本法の特長として,まず従来法を克服し乳脂や魚油に も適用可能なことが挙げられる.また開発当初,標的油 脂は30 Cで液体の油脂であったが,融点40 Cの乳脂,

50 Cの固体脂(パーム油)(4)へと適用範囲は拡大された.

次に,操作が簡便である.酵素反応は3時間,つづく分 画操作は5〜10分,メチル化とGC分析は1時間程度と 実際の操作に要する時間は短い.さらに,2-MAG収率 が良く,再現性の良いデータが得られる.化学法による β位脂肪酸組成分析では,グリニャール試薬により非特 異的な加水分解を行って生じる全分子種(MAG 2種,

ジアシルグリセロール2種,TAG,脂肪族アルコール)

か ら2-MAGを 分 画 す る 必 要 が あ る.特 に1(3)-と 2-MAGは極性が近似しており分画困難で,高度不飽和 脂肪酸を含む場合はさらに困難になる.一方,本新規法 では,1(3)-MAGはほとんど検出されず,構造既知の合 成脂質を対象にして評価した場合の2-MAG回収率は原 料油脂に対して28モル%(理論値33モル%)(4)と,他法 に比べて高い.上述したように本リパーゼのα位特異性 が,溶媒の極性に依存するメカニズムに基づけば,反応

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に使用するエタノールをメタノールに置換することでモ ル回収率の上昇と分析精度のさらなる向上が期待された が,実際には残念ながらメタノールでは不可逆な酵素失 活を招いた(3).リパーゼの脂肪酸特異性が低い観点か ら,脂肪酸種の偏りなく一定量の2-MAGをロスするた めに,現回収率が実際の脂肪酸分布分析に及ぼす影響は 小さいと考えている.また,数十種類の脂肪酸の分布を 一斉に推定できる利点もある.NMR法は標的油脂を前 処理せず直接分析するので便利である.しかし,NMR 法では油脂中の高度不飽和脂肪酸の分布は容易に推定さ れるが,その他脂肪酸のシグナルは重複し,分布の推定 は容易ではない.一方,本法では,含量1%以下の微量 な脂肪酸を含め数十種類の脂肪酸の分布を一斉に推定で きる特長をもつ.現在,本法は,日本油化学会規格試験 法委員会の下で合同試験に付されており,室内・室間再 現性を検証いただいている.

本法開発に当たり,多くの方々からご支援をいただい ている.本稿を借りて篤くお礼を申し上げる.また本誌 読者の皆様のご研究に本分析法をお役立ていただく機会

と,分析法の改良や適用範囲の拡大へ向けたご意見を頂 戴できれば幸甚である.

  1)  古谷野哲夫:日本結晶学会誌,56,319 (2014).

  2)  R.  Irimescu,  K.  Furihata,  K.  Hata,  Y.  Iwasaki  &  T.  Ya-

mane:  , 78, 285 (2001).

  3)  Y. Watanabe, T. Nagao & Y. Shimada:  ,  26, 23 (2009).

  4)  Y. Watanabe, S. Sato, S. Sera, C. Sato, K. Yoshinaga, T. 

Nagai, R. Sato, H. Iwasaka & T. Aki: 

91, 1323 (2014).

(渡辺 嘉,大阪市立工業研究所生物・生活材料研究部)

プロフィール

渡 辺  嘉(Yomi WATANABE)

<略歴>1993年京都大学理学部卒業/同 年大阪市立工業研究所研究員/2004年博 士(農学,京都大学)<研究テーマと抱負>

実用化を目指したバイオマスや油脂加工な どの開発研究<趣味>4歳児とお歌とピア ノレッスンを始めました

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.235 図1酵素による2位脂肪酸組成の新分析法概略とそ の有用性

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