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古典的分析化学手法の現代天然物化学研究への活用 - J-Stage

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822 化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015

古典的分析化学手法の現代天然物化学研究への活用

溶液内イオン平衡を使いこなす

最初にピロリン酸(PPi)の比色分析とその応用例と してのアデニル化酵素のアッセイ法を紹介する.モリブ デン酸がほかの酸素酸を取り込んで有色のヘテロポリ酸 を生成する反応は,古くからオルトリン酸(Pi)の分析 法などとしてよく知られている.他方,PPiは酸性条件 下の有機溶媒‒水混合溶媒中において黄色の18-モリブド ピロリン酸([(P2O7)Mo18O544−)を生成することから,

PPiを比色定量できる(図

1

a).この反応を利用すれば,

アミノ酸のアデニル化酵素(図1b)のようにATPを消 費してPPiを生じる酵素活性を測定することが可能であ

(1〜3).その操作法は,まず,反応液にアセトニトリル

とモリブデン酸を加え[(P2O7)Mo18O544−を生成させた 後,4級アンモニウムとの沈殿を得る.これをアセトニ トリルないしはプロピレンカーボネートに再溶解しアス コルビン酸を加え還元すると,8電子還元体となり判別 が容易な青色を呈する(図1b).一方,反応液に残存し たATPは,モリブデン酸を加えた際に非酵素的に微量 のPiを放出し[(PO4)Mo12O363−を生じるが,この生成 反応とアスコルビン酸による還元反応は比較的遅いため

Piによるバックグラウンドは無視できるほど小さい.

また,アデニル化酵素の反応液にヒドロキシルアミンを 加えることで逆反応を抑制でき(不可逆的にacyl- - AMPよりヒドロキサム酸を生じる),高感度に酵素活 性を測定できる.従来,この種の酵素活性測定は,リン の放射性同位体を利用したRI法に頼らざるをえなかっ たことから,本法を開発できた意味は大きいと考える.

次に,単糖の比色分析とそれを応用した糖化酵素・異 性化酵素の活性測定法について紹介する.上記のPPi アッセイで利用したように,黄色を呈するポリ酸を還元 することで青色のポリ酸を得ることができる.還元糖一 般の比色分析法としてよく知られるSomogyi法は,ア ルカリ性条件下で還元糖によってCu(II)をCu(I)とし た後,Cu(I)を還元剤として青色ポリ酸を生じる分析法 である.われわれは,たとえば,50 mM Na2SiO3, 600   mM Na2MoO4, 1.5 M CH3COOH(pH 4.9),30% DMSO の組成からなる弱酸性条件下の溶液中に還元糖を加え,

70 Cで反応させると黄色のポリ酸種(この場合,12-モ リブドケイ酸,[(SiO4)Mo12O364−)が生成することを

図1aPPi比色分析と(b)アデニル 化酵素アッセイ

今日の話題

(2)

823

化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015

見いだした.さらに,単糖であれば比較的速くMo(VI)

種を直接還元して青色ポリ酸を生成する.従来の還元糖 の化学的分析法は,所定の時間,反応液を煮沸する必要 があるものや,操作に熟練を要するものが多いが,本法 の操作は極めて簡便であり再現性が高いことが利点であ る.本法のグルコースに対する感度は,デンプンのみな らずマルトース,セロビオースといった二糖のそれより も格段に高く,デンプンまたはセルロースをグルコース にまで分解する糖化酵素のハイスループットスクリーニ ングに適用できる(4).また,酸および有機溶媒の濃度な ど溶液条件の調整によりフルクトースの感度をグルコー スの20倍程度に向上でき,グルコースを基質としたグ ルコースイソメラーゼの活性測定にも適用可能とな る(5)

つづいて,

ε

-ポリ-L-リジン(

ε

PL)の検出への本手法 の利用も興味深い.

ε

PLは,25〜35残基のL-リジンが直 鎖上につながったポリカチオン性ホモポリアミノ酸であ り放線菌によって生産される.

ε

PLの定量法として,ア ニオン性色素であるメチルオレンジとの沈殿生成反応を 利用するものがあるが,

ε

PLに対し特異的かつ定量的に 反応し,感度良く分析できる沈殿試薬は知られていな かった.[(SiO4)Mo12O364−は,酸性条件下でも多価ア ニオンとして存在するが,その表面電荷密度は低く疎水 性である.このため,酸性条件下で

ε

PLを定量的に沈 殿させることができ,これを利用した

ε

PL合成酵素の アッセイが可能となる(6).また,同法はポリカチオン性 の

β

-リジンペプチドを有する抗生物質ストレプトスリ シンの合成酵素アッセイにも適用できることから(7),よ り強力な抗菌活性が期待できる長鎖

β

-リジンペプチド のストレプトスリシンを合成できる変異型合成酵素のス

クリーニングに利用できる.また,塩基性ポリペプチド 抗生物質の分析にも有用と考えられる.

最後に,以上述べてきた溶液内イオン平衡を応用し,

溶液での操作のみによる天然有機化合物の単離精製につ いて紹介する.一般に,天然物化学の研究において,対 象物の単離精製はカラム精製に頼る場合が多いが,通 常,時間がかかりその収率も乏しい.一方,沈殿生成反 応,再溶解,イオン交換反応などを組み合わせた,いわ ば溶液操作のみによる天然物の精製方法を用いることが できれば,簡易で迅速な単離精製法となる.テトラフェ ニルボレートアニオン(TPB)は,古くからKや NH4イオンの沈殿試薬として用いられてきたが,ポリ カチオン性の

ε

PLも定量的に沈殿回収できることを見 いだした.これを培養液に添加すれば,

ε

PLだけでなく NH4イオンなどとの混合沈殿が得られるが,その沈殿 物にアセトンを加えると,1価や2価のカチオンとの塩 はこれに易溶であるのに対し,高分子電解質であるポリ カチオン性の

ε

PLとTPBとの塩は難溶のため遠心分離 により単離できる.そして,これに塩酸を加えれば TPBはベンゼンとトリフェニルボランに分解するた め,この混合物を有機溶媒に加えれば,高純度の

ε

PLが 塩酸塩として析出し,回収できる.本法は,遠心操作を 主として30分程度で操作が完結するため(8),マイクロ プレートを用いる

ε

PLの同定が可能である.また,本 法は,4〜15残基程度の短鎖長

ε

PLの単離精製にも利用 でき,このような短鎖長

ε

PLを生産する菌株のスクリー ニングにも応用利用できた(9)

さらに,本法は,ほかのポリカチオン性の天然物にも 適用できる.たとえば,オリゴキトサンはビス(2-エチ ルヘキシル)リン酸アニオンと水に難溶の沈殿を形成す

図2Soyaponin Bbの単離精製

今日の話題

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824 化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015

るが,この沈殿をエタノールと接触させると,四量体以 上の塩が溶解する.このエタノール画分に塩酸を加えれ ば,同オリゴキトサンを塩酸塩として得ることができ る.同法はキチンを含む粗精製物からの単離に適用で き,キチンキトサン化学の研究分野に有用なオリゴキト サン試料を与えている(10)

これら疎水性イオンとの沈殿生成反応を利用する手法 は,従来精製が難しいとされる強極性天然有機化合物に 関する研究のブレークスルーとなり,また,低コストで の精製にも寄与すると考えられる.なお,溶媒抽出のよ うに,溶質と溶媒との相互作用に基づく分離法は天然物 化学の分野でも古くから行われてきたが,最近,われわ れは有機溶媒‒水混合溶媒への溶解性の違いに基づき,

心血管系保護作用などが報告されている大豆サポニンの 粗精製物から生体利用性が良好で大豆中の含量も高いソ ヤサポニンBbが簡単に単離できることを示した(11).同 粗精製物はソヤサポニンBbを10 wt%程度含むが,ほか のソヤサポニン(Aa, Ab, and Ba)も含まれる.従来の カラム精製では,これを出発物質としても,ソヤサポニ ンBbを得るのに2週間の期間を要し,また精製収率は 5%程度と容易ではなかった.一方,本法では,まず出 発物質を3 : 7(v/v)アセトン‒水で洗浄することで,主 としてソヤサポニンBbおよびBaを含む沈殿を得た後,

次に,この沈殿を1 : 1(v/v)アセトン‒水と混合する と,ソヤサポニンBbがいくぶん溶解する一方,ソヤサ ポニンBaの多くはこの混合溶媒に溶解できない.その 上澄みに大過剰の純水を加えて生じた沈殿を回収するこ とで,90 wt%純度のソヤサポニンBbを得ることができ る.本法の収率は30%であるが,全操作を30分程度で 完了できる優れた手法と言える(図

2

以上,簡単ではあるが,天然物研究のための溶液内イ オン平衡に基礎を置く分離・分析法のいくつかを記し た.これらの構築は分析化学者と共同で行い,個々の研 究における目的にかなうよう,古典的分析法を選択し,

溶液条件の最適化を試みたものである.また,その過程 で,ここで取り上げた天然物の新しい応用や物性研究法 も見いだされているが,これらは後日項を改めて述べた い.いずれにせよ,本稿が天然物化学における分離・分 析の方法論に新たな視点を与えられれば幸いである.

  1)  H. Katano, R. Tanaka, C. Maruyama & Y. Hamano: 

421, 308 (2012).

  2)  H. Katano, H. Watanabe, M. Takakuwa, C. Maruyama & 

Y. Hamano:  , 29, 1095 (2013).

  3)  H.  Katano,  K.  Uematsu,  C.  Maruyama  &  Y.  Hamano: 

30, 17 (2014).

  4)  H. Katano, S. Taira, K. Uematsu, H. Kimoto & Y. Hama- no:  , 29, 1095 (2013).

  5)  H. Katano, M. Takakuwa, T. Itoh & T. Hibi: 

79, 1057 (2015).

  6)  H.  Katano,  C.  Maruyama  &  Y.  Hamano: 

16, 542 (2012).

  7)  C.  Maruyama,  J.  Toyoda,  Y.  Kato,  M.  Izumikawa,  M. 

Takagi, K. Shin-ya, H. Katano, T. Utagawa & Y. Hamano: 

8, 791 (2012).

  8)  H. Katano, T. Yoneoka, N. Kito, C. Maruyama & Y. Ha- mano:  , 28, 1153 (2012).

  9)  Y. Hamano, N. Kito, A. Kita, Y. Imokawa, K. Yamanaka, 

C.  Maruyama  &  H.  Katano:  , 

80, 4993 (2014).

10)  H. Katano, A. Fujiwara & H. Kimoto: 

2, 75 (2014).

11)  H. Katano, N. Okamoto, M. Takakuwa, S. Taira, T. Kam- be & M. Takahashi:  , 31, 85 (2015).

(濱野吉十,木元 久,高橋正和,片野 肇,福井県立 大学生物資源学部)

プロフィル

濱野 吉十(Yoshimitsu HAMANO)

<略歴>2002年富山県立大学大学院工学 研究科博士課程修了/同年アリゾナ大学博 士研究員/2003年福井県立大学生物資源 学部助手(助教)/2008年同講師/2011年 同 准 教 授/2015年 同 教 授,現 在 に 至 る

<研究テーマと抱負>天然有機化合物の生 合成研究<趣味>自転車

木 元  久(Hisashi KIMOTO)

<略歴>1996年福井医科大学大学院医学 研究科博士課程修了/同年同大学医学部生 化学第一講座助手/2006年福井県立大学 生物資源学部助教授/2012年同教授,現 在に至る<研究テーマと抱負>糖質分解微 生物の有効利用に関する研究<趣味>ソル トルアーフィッシング

高橋 正和(Masakazu TAKAHASHI)

<略歴>1990年京都大学農学部食品工学 科卒業/1995年同大学大学院農学研究科 博士後期課程修了(農学博士)/同年岡崎 共同研究機構基礎生物学研究所非常勤研究 員/1999年福井県立大学生物資源学部助 手/2006年同講師/2012年同准教授<研 究テーマと抱負>食素材由来機能性化合物 の単離・解析<趣味>自然鑑賞

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化学と生物 Vol. 53, No. 12, 2015

片 野  肇(Hajime KATANO)

<略歴>1994年神戸大学大学院自然科学 研究科博士課程修了/同年福井県立大学生 物資源学部助手/1997年同講師/2005年 同助教授/2007年同准教授/2011年同教 授,現在に至る<研究テーマと抱負>天然 有機物の単離精製法,比色分析とHTアッ セイ<趣味>洋楽

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.822

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Referensi

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はじめに 近年,多くの食品由来成分の代謝改善作用が明らかに なり,その作用機構が精力的に解析されている.食品成 分のもつ抗酸化能がその代謝改善作用に寄与することは 広く知られているが,それ以外の作用機構も明らかにな りつつある.本稿ではフラボノイドに分類されるルテオ リンを取り上げ,これまでに知られている代謝改善作用