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海洋バイオマスからのバイオディーゼル燃料生産 - J-Stage

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はじめに

海洋の有効利用は,資源の限られたわが国にとって重 要なテーマである.わが国の海域面積は世界で6番目の 広さを誇っており,海底資源に加えて医薬品や化成品の もととなる海洋生物資源の宝庫でもある.特に,海洋の 微細藻類バイオマスが海洋エネルギー資源として改めて 注目されるようになった.これは,微細藻類が高いオイ ル生産性を有すること(表1,二酸化炭素の排出削減 効果が見込めること,食物原料と競合しないことに加え て,海洋という広大なスペースを利用できることが理由 として挙げられる.微細藻類からオイルを大量製造する ためには,メガヘクタールオーダーの面積を微細藻類の 培養に必要となるが,その培養に国土の10倍以上ある 海域が注目されている.微細藻類を用いたバイオ燃料生 産においては,オイル生産藻類の探索,エネルギー収支 を考慮した生産プロセスの検討,培養リアクターの設計

など,実用化に向けた課題は多い.本稿では,微細藻類 利用と燃料生産についての現状と課題を概説し,ゲノム 解析などの分子生物学的なアプローチによる課題解決に 向けた取り組みについて紹介する.

微細藻類から生産されるバイオ燃料

藻類は酸素発生型光合成を行う生物のうち,有胚植物 を除いたものとして定義される.このなかには,原核生 物である藍藻,単細胞の真核生物である緑藻やケイ藻,

多細胞の真核生物である大型藻類など,多様な生物が含 まれる.したがって,藻類から生産されるバイオ燃料も 多岐にわたる.たとえば,海藻などの大型藻類は多糖を 蓄積するという点では陸生植物と同じであり,バイオエ タノールの原料として利用できる.海藻からのバイオエ タノール生産への期待は高まっており,藻類に特徴的な 多糖,単糖を有効利用するための取り組みが行われてい る.

一方,真核微細藻類は脂質合成系が発達しており,細 胞内にオイルボディーと呼ばれる油滴を蓄積する(図 1.これらの油滴の多くはトリグリセリドであり,メチ ルエステル化することにより軽油代替燃料 (Biodiesel  fuel ; BDF) への利用が可能となる.微細藻類のなかに は重量あたり70%のトリグリセリドを蓄積するものも あるが,このオイル含有量は藻類の種類によって大きく

セミナー室

海洋生物資源への期待:マリンバイオテクノロジーの現場から-2

海洋バイオマスからのバイオディーゼル燃料生産

田中 剛,吉野知子,武藤正記

東京農工大学大学院工学研究院

表1作物および微細藻類のオイル生産性の比較

バイオマス オイル生産性

(L/ha/year)

大豆      544

アブラナ   1,560

ヤトロファ   2,700

13,200

sp. 60,000

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異なる.ただし,オイル含有量だけでBDF生産に適す るかどうかを判断することはできない.トリグリセリド に含まれる脂肪酸の鎖長,不飽和度は燃料の性状,燃焼 特性などに大きく影響するため,脂肪酸組成もBDFを 生産するうえでは重要な要素である.緑藻ではパルミチ ン酸 (C16 : 0) やオレイン酸 (C18 : 1), ケイ藻ではパル ミチン酸やパルミトオレイン酸 (C16 : 1) が主要脂肪酸 であり,高等植物由来の脂肪酸組成と大きな違いはない ように考えられる(表2.一方,微細藻類は,生理活 性物質として付加価値が高いEPAなどの高度不飽和脂 肪酸をもつものも多い.わが国で定めているBDFの品 質規格では,そのまま利用できる BDF (B100) は,リ ノレン酸 (C18 : 3) メチルエステルを12% 以下,二重結 合が4つ以上の高度不飽和脂肪酸メチルエステルを1% 

以下にすることが定められている.このような観点から 考えると,表2に示す微細藻類の多くは,BDF (B100) 

への直接利用に適さないことになる.そのために,オイ ルの抽出過程やBDFの製造過程において不純物を除く 操作を行う,または遺伝子組換え技術を利用して脂肪酸 組成を改変(このことについては,後述する)するなど の方法が講じられている.

微細藻類からのBDF生産を実用化するうえでは,微 細藻類を植え,育て,収穫し,オイル製造するまでのラ イフサイクルアセスメント (LCA) を行う必要がある.

現在,想定されている微細藻類を用いたBDFの生産モ デルでは,藻体の回収とオイルを抽出する過程におい て,生産されるエネルギーのほとんどを消費しているこ とが判明している.最も低コスト化を図れる屋外・開放 系培養槽を用い,生育が良好でオイル生産性に優れる緑 藻 からBDFを製造するモデルでは,

乾燥プロセスを経ない湿藻体からのオイル抽出プロセス が正味のエネルギー収支比 (EPR) をプラスにするため には必須であることを示している(1).当然のことではあ るが,EPRは微細藻類種(オイル含量,生育速度)や 細胞破砕方法により大きく変動することが示されてい る(2).これらのことから,EPRの向上を目指した微細 藻類の大量生産技術の開発や分子育種(遺伝子組換え)

などの取り組みがなされるようになっている.

微細藻類のトリグリセリド蓄積機構の解析

微細藻類の基本的な代謝は高等植物と類似している.

高等植物と異なる点は,微細藻類では一連の代謝反応が 単一細胞内で起こることである.図2に微細藻類のトリ

図1海洋珪藻 属JPCC DA0580株の顕微鏡写真

A : 光学顕微鏡像,B : 蛍光顕微鏡像.矢印で示された箇所が BODIPY 505/515で染色した細胞内のオイルボディー.

表2作物および微細藻類種におけるオイル生産性および脂肪酸組成比の比較

バイオマス オイル含有量

(% d wt)

脂肪酸組成比(%)

C14 : 0 C16 : 0 C16 : 1 C18 : 0 C18 : 1 C20 : 5 高等植物

 大豆 18 10.5   4.1 24.1

 パーム 36   1.1 41.9   0.2   4.6 41.2

緑藻

45   0.7   7.2   1.6 77.2

28   0.6 40.3   8.0 29.9

sp. 15   1.6 50.8   0.3 11.5 13.8

17   1.1 52.1   7.5 21.5

13   0.7 35.0   4.4   1.0 42.9 0.8

ケイ藻

32   5.7 34.9 35.3   9.2 2.8

sp. JPCC DA0580 60 37.9 51.4   1.6 6.6

28   5.8 26.3 48.8   7.1 9.0

正眼点藻

 sp. 35   6.5 36.1 27.6   1.1 19.7 4.5

ハプト藻

15 25.4 17.2   3.0   1.0 34.1 1.4

(3)

グリセリド代謝経路を示す.微細藻類では栄養欠乏条件 において,トリグリセリド蓄積が誘導されることが知ら れている.このとき,細胞内のタンパク質合成や光合成 活性の低下による代謝の変化が起きる.さらに細胞内の 炭素フラックスにも変化が起き,貯蔵物質として蓄積さ れる炭水化物とトリグリセリド量が変動する.これらの 応答は微細藻類の属,種間によっても大きく異なり,ト リグリセリド蓄積の誘導メカニズムについてはいまだ十 分に解明されていない.微細藻類によるバイオ燃料生産 性向上に向けて,トリグリセリド蓄積の誘導メカニズム を理解することが極めて重要であり,オミックス解析に よる網羅的な代謝パスウェイの解析が進められている.

特に,高速シークエンス技術の大幅な進歩により,

での代謝解析も可能となり,利用できる微細藻類 の遺伝子情報は格段に増加している.真核微細藻類のゲ ノム解析は,ドラフトシークエンスを含めると約30株 報告されている.そのなかで,BDF生産に利用が期待 されるトリグリセリド高蓄積の微細藻類として,

CCMP526  株(3),および筆者らの 研究グループが進めている 属 JPCC DA0580  株(4) のゲノム解析が挙げられる.

ゲノム情報に加え,さまざまな条件下で培養した細胞 内の転写レベルの理解は,代謝経路の解析を行ううえで 極めて重要である.緑藻 

は,全ゲノム解析も終了していることよりDNAマイク ロアレイによるトランスクリプトーム解析が進められて

いる(5).さらに次世代シーケンサーを用いて,定量的か つ網羅的に発現解析できるRNA-seq法が,DNAマイク ロアレイ技術に代わり次世代のトランスクリプトーム解 析技術として注目されている.そのなかでトリグリセリ ド合成経路に着眼した報告例として,緑藻 

  のオイル蓄積条件においてmRNAの網羅的 な発現解析が行われ,脂肪酸合成を含むトリグリセリド 代謝に関連する酵素の同定とその代謝経路が示されてい る(6).さらに緑藻  においてLC/MS/MSを 用いた比較プロテオーム解析が行われ,トリグリセリド が蓄積する窒素欠乏条件において変動したタンパク質が 決定されている.筆者らは,海洋ケイ藻 属を 対象としてゲノム解析に加え,トランスクリプトーム,

プロテオーム,メタボローム解析を進め,その代謝機構 の解明に取り組んでいる.特に脂肪酸合成経路を理解す ることで,現状の脂肪酸組成に加え,炭素鎖長や不飽和 度を制御した脂肪酸を付加したトリグリセリドの創出に もつながると考えられる.

このようにゲノム解析を含む網羅的な解析を進めるこ とで,これまで微細藻類において共通の代謝を保持する と推測されていた経路においても微細藻類の属,種間に よって差異があることがわかってきた.たとえば,ケイ 藻   の解糖系をモデル微細藻類である緑 藻   と比較すると,一般的に解糖系が局在 すると考えられている細胞質において,経路が不完全で あることが示されている.さらにケイ藻 

図2微細藻類内でのトリグリセリ ド代謝経路

FA : 脂肪酸,GPAT : グリセロール-  3-リ ン 酸 ア シ ル 基 転 移 酵 素,

LPAAT : リゾホスファチジン酸アシ ル基転移酵素,DAGAT : ジアシルグ リセロールアシル基転移酵素

(4)

  においては,ミトコンドリア内に解糖系の一部が 存在していることも推測されている(7).このような違い は多糖合成経路でも見られ,炭水化物として貯蔵する物 質が異なることが遺伝子レベルで示されている.窒素同 化代謝においてもケイ藻と緑藻とは異なる機構を有する ことが近年明らかになってきた.特に,ほかの真核微細 藻類には見られない後生動物型の完全な尿素回路を有す ることが報告されている.この尿素回路の役割には諸説 があるが,後生動物のように排出機能を担うのではな く,細胞内の炭素や窒素の再分配の要として機能してい るといった説が提唱されている(8).これまで高等植物の 知見をもとに推測されていたトリグリセリド蓄積機構 は,微細藻類のオミックス解析から得られた情報を基に 書き直す必要があり,属ごとの代謝マップの完成が求め られている.

微細藻類の遺伝子組換えによるバイオ燃料生産 藻類からのバイオ燃料生産を効率化するうえでは,遺 伝子組換え技術が担う役割は大きい.これまでに原核藻 類である藍藻においてはホスト株の選定やベクター系の 構築など,遺伝子組換え技術は汎用的な手法となってい る.一方で,バイオエタノールやBDF生産への応用が

期待される真核微細藻類や大型藻類における遺伝子組換 えの成功例は少なく,その技術向上が急務である.真核 微細藻類の遺伝子組換えに関する研究は,緑藻 

  をモデル生物として進められているが,トリグ リセリド高含有の微細藻類に対しても遺伝子組換え技術 の確立が求められている.

1.  真核微細藻類の遺伝子組換え技術

オミックス解析により得られた知見を利用すること で,遺伝子組換えによるバイオ燃料生産性の向上が臨め る.現在報告されている安定的な形質転換体が作製可能 な微細藻類種を表3にまとめた.真核微細藻類の遺伝子 組換え方法は,株ごとに最適な方法が異なり,エレクト ロポレーション法やガラスビーズ法,アグロバクテリウ ム法,パーティクルガン法などさまざまな方法が用いら れる.パーティクルガン法は最も多くの微細藻類種の形 質転換に適用されている手法である.本手法は,タング ステンや金粒子(粒子径:0.6 〜 1.6 

μ

m)の粒子上に遺 伝子導入用プラスミドベクターを沈着し,細胞中に粒子 を導入する方法である.細胞壁の有無やケイ藻のような 硬いケイ殻に覆われているような細胞においても,遺伝 子導入が可能である.しかしながら,粒子が細胞中に導 入されることから,細胞の損傷が大きく,形質転換効率

表3形質転換体の作出が可能な微細藻類

微細藻類 ノックインが確認さ

れている細胞小器官 RNAiによる ノックダウン ケイ藻

̶

̶

sp. ̶

̶

̶

 sp.

緑藻

核/葉緑体/ミトコンドリア

spp. ̶

 spp.

̶

̶

渦鞭毛藻

 sp.  ̶

̶

紅藻

spp. 葉緑体 ̶

ユーグレナ

葉緑体 ̶

正眼点藻

spp.  ̶

(5)

は低い.一方,エレクトロポレーション法は高電圧パル スにより細胞膜上に一時的に穴をあけ,プラスミドベク ターを細胞内へ導入する方法である.厚い細胞壁に覆わ れた細胞には適用できず,細胞壁が欠損した 

  および細胞壁をもたない      に対し,遺 伝子導入が可能である.しかしながら,いずれの方法に おいても形質転換効率は10−7〜10−5と極めて低く,真 核微細藻類における遺伝子組換え系の汎用化への大きな 障壁となっている.さらに,形質転換体のコロニーが得 られるまでには,通常2 〜4週間程度を要するため,細 胞内への遺伝子導入の有無やその活性評価のボトルネッ クとなっている.そこで,筆者らは一過性のGFP遺伝 子の発現の有無を単一細胞レベルで蛍光イメージングす ることにより,簡便かつ迅速に形質転換体を確認するこ とに成功している(9).本手法はプロモーター活性の評価 などにも利用することができる.

上記手法により導入された遺伝子は核ゲノムまたは細 胞小器官内のゲノムDNAに取り込まれることで持続的 に発現し機能する.相同配列を導入ベクターに設計する ことで,葉緑体ゲノムやミトコンドリアゲノムに相同性 組換えにより遺伝子導入が可能であるが,核ゲノムへの 遺伝子導入の多くはランダムに挿入されてしまい,挿入 位置や挿入数を制御することは困難である.近年,

 属に対し,高い効率で相同性組換えが 達成されたことが報告されている(10).2倍体の微細藻類 では核ゲノムへの相同性組換えは達成されていない.そ のため,遺伝子組換えによる特定の遺伝子のノックアウ トは不可能であり,RNA 干渉 (RNAi) による目的遺伝 子発現のノックダウンがいくつかの藻類で報告されてい る(11〜14)

導入した遺伝子の発現効率と形質転換効率を上昇させ るため,転写制御・mRNAスプライシング・翻訳制御 などの発現プロセスの効率化が試みられている.特に外 来遺伝子の転写を誘導するプロモーターや,mRNAの 安定性や翻訳の制御に関与する非翻訳領域 (UTR) など のシス作用エレメントの探索が進められている.Mi- cheletらは緑藻   におけるシス作用エレメ ントの探索を行い,発現量増加に成功した(15).またケ イ藻においては,松田らが高発現プロモーターの探索に よりウィルスプロモーターを使用し, の 発現技術の向上が示された(16).また,  

属や    属においては,全ゲノム解析・発現解 析により得られた情報をもとに,ホスト細胞で高発現の 遺伝子プロモーターを利用して形質転換の効率化が達成 されている(3, 9).近年, を中心に,メタ

ボリックエンジニアリングによる脂質生産性向上に寄与 する報告が行われ,微細藻類におけるゲノム機能解析や バイオ燃料生産の新たな展開を迎えている.

2.  バイオディーゼル燃料生産向上に向けた真核微細藻 類の代謝改変

遺伝子組換え技術を利用して,微細藻類のトリグリセ リド生産性向上を目指した取り組みが始まっている.

BDF生産においては,藻体内のトリグリセリド蓄積量 の増加に加え,脂肪酸組成の改変やバイオマスの向上な ど,遺伝子組換えへの期待が高まっている.微細藻類の トリグリセリド代謝経路は植物における知見をもとに推 測されており,その経路から脂質代謝に関与するアセチ ル-CoAカルボキシラーゼ (ACCase) を過剰発現させる ことでその蓄積量の向上が期待された.最初の取り組み は1996年にDunahayらによるケイ藻    のACCase遺伝子を   またはケイ藻 

  に導入した実験である.ACCase遺伝子を過 剰発現させた安定株の取得に成功したが,期待された中 性脂質の蓄積量向上は見られなかった(17).高等植物に おいてはACCaseの過剰発現により,トリグリセリド蓄 積量の向上した例が報告されているが,微細藻類の代謝 経路を考慮したデザインが重要であると考えられた.近 年,緑藻   において,多糖形成に関与する ADP-グルコースピロホスホリラーゼ遺伝子のノックア ウトによるトリグリセリド蓄積量の増大に関する研究が 報告された.デンプン合成への流れを抑制することで,

野生株における脂質含有量は乾燥藻体中2%であった が,変異株では20.5%であり,10倍程度の脂質含有量の 増加が達成された.脂質合成に直接関与しない経路を改 変することで脂質合成量の増加が見られた(18)

さらに光合成独立栄養性のケイ藻に遺伝子組換えを施 すことで従属栄養性に転換させ,バイオマスを増加させ る試みが行われている(19).   は細胞内へ のグルコース輸送系をもたないため,生育に必要な糖の 供給は光合成に依存している.そこで,グルコーストラ ンスポーター遺伝子を導入し,人工的なグルコース取り 込み能を付加した.その結果,遺伝子組換え体はグル コースを添加することで暗条件下でも培養が可能とな り,そのバイオマスは通常の培養(明条件)の3倍程度 増加が示された.バイオマスが増加することで最終的な トリグリセリド生産量が向上するため,細胞内の蓄積量 のみではなく,増殖速度や最終菌体数の向上などさまざ まなアプローチが検討対象となる.

さらにBDF生産において,トリグリセリドに付加さ

(6)

れた脂肪酸組成のデザインも重要な課題の一つである.

脂肪酸の鎖長は燃料特性にも大きく影響することから,

鎖長の制御が求められる.高等植物や藍藻において短鎖 脂肪酸に特異的なアシル-ACPチオエステラーゼを用い ることで短鎖の脂肪酸蓄積が増加することが示されてい る.そこでRadakovitsらは   にこの酵素 を発現させることで,ラウリン酸 (C12 : 0) やミリスチ ン酸 (C14 : 0) などのより短い脂肪酸含量が増加したト リグリセリドの生産に成功した(20).本研究は,微細藻 類のトリグリセリド生産における脂肪酸の鎖長を制御し た初めての報告となる.高等植物においてはトリグリセ リドの改変に向けた遺伝子工学的な手法による研究が先 行している.高等植物で得られた知見と微細藻類のオ ミックス研究から得られた知見を元に藻体内でのトリグ リセリド代謝経路の改変に関する研究がますます進むこ とが予想される.

おわりに

本稿では,微細藻類が産生するトリグリセリドからの 脂肪酸メチルエステル生産を目指した研究を中心に述べ た.微細藻類は,トリグリセリドだけではなく直鎖アル カンやイソプレンを構成単位とする多様なオイルの生合 成も担っている.また,化学プロセスによって,BDF だけではなく,バイオジェット,Green dieselなどの多 様な液体燃料として提供することも可能である.これら の多様なプロセスに適応するためにも,その供給源とな る微細藻類の代謝パスウェイの知見蓄積や遺伝子組換え 技術の開発が進むことが重要であり,微細藻類バイオ燃 料の実用化プロセスに不可欠と言える.

文献

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プロフィル

田 中  剛(Tsuyoshi TANAKA)    

<略歴>2000年東京農工大学大学院工学 研究科物質生物工学専攻修了/同年7月

〜 2002年3月ヘリオットワット大学研究 員/2002年4月〜2005年1月東京農工大学 工学部助手(2004年4月より大学院共生科 学技術研究部助手)/2005年2月〜 2008年 1月同大学大学院共生科学技術研究部講師

(2006年4月より大学院共生科学技術研究 院)/2008年2月〜現在,同大学大学院共 生科学技術研究院准教授(2010年4月より 大学院工学研究院)<研究テーマと抱負>

藻類を用いたバイオ燃料・有価物生産<趣 味>釣りと読書

吉野 知子(Tomoko YOSHINO)    

<略歴>2005年東京農工大学大学院工学 教育部生命工学専攻修了/同年4月〜2006 年9月早稲田大学生命医療工学研究所助 手/2006年10月〜 2011年3月東京農工大 学大学院共生科学技術研究院生命機能科学 部門・若手人材育成拠点特任助教授(2007 年4月より特任准教授)/2011年4月〜現 在,東京農工大学大学院工学研究院生命機 能科学部門准教授<研究テーマと抱負>微 生物を用いたバイオマテリアル生産,医療 計測<趣味>スポーツ,映画鑑賞 武藤 正記(Masaki Muto)    

<略歴>2010年東京農工大学大学院工学 府生命工学専攻修了/同年4月〜現在,東 京農工大学大学院生物システム応用化学府 共同先進健康科学専攻<研究テーマと抱 負>真核微細藻類の分子育種およびバイオ 燃料生産<趣味>ランニング,釣り

Referensi

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