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発熱植物ザゼンソウの生存戦略に手がかり

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Academic year: 2024

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発熱植物ザゼンソウの生存戦略に手がかり

〜ザゼンソウは積雪に強く多様性が高いことが明らかに〜

令和5年8月1日

植物の中には、花の温度を上昇させることができる「発熱植物」が100種近くあるこ とが知られています。発熱によって花を暖かくしたり匂いを拡散したりすることで昆虫を 誘引して、花粉を運ばせると考えられています。ザゼンソウの仲間は唯一北東アジアの寒 冷地に生息し、花が咲く1週間程度の期間中体温を 20℃近くに維持しています。一方、

近縁で小ぶりな花をもつヒメザゼンソウではこのような性質は見られません。また、なぜ ザゼンソウが他の発熱植物と異なり寒冷地で発熱するのかはわかっていませんでした。

かずさDNA研究所と宮崎大学は、国内に記録されているザ ゼンソウとヒメザゼンソウの分布情報と環境データを突き合わ せることで、発熱するザゼンソウの方が発熱しないヒメザゼン ソウより雪深い地域に生育すること、2万年前の最終氷期には ザゼンソウはすでに現在に近い分布を示していたことを明らか にしました。また、日本各地で採取した両種の葉緑体や核の DNAを比較すると、ザゼンソウの方が遺伝的な多様性が高い ことがわかりました。これらのことから、ザゼンソウは同じ地 域に留まり遺伝的多様性を蓄積していったのに対して、ヒメザ ゼンソウは分布域を現在の地域へと移動したことが示唆されま した。本研究の成果は、発熱する植物としない植物の異なる生 存戦略を解き明かすための重要な手がかりなります。

本研究成果は、国際学術雑誌 Ecology and Evolutionにおいて、7月15日(土)に オンライン公開されました。

論文タイトル: Potential contribution of floral thermogenesis to cold

adaptation, distribution pattern, and population structure of thermogenic and non/slightly thermogenic Symplocarpus species.

著者:Mitsuhiko P. Sato, Ayumi Matsuo, Koichi Otsuka, Kohei Takenaka Takano, Masayuki Maki, Kunihiro Okano, Yoshihisa Suyama, Yasuko Ito-Inaba

掲載誌:Ecology and Evolution 13:e10319 DOI: https://doi.org/10.1002/ece3.10319

写真:ザゼンソウ

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背景

すべての生き物にとって、生育環境の温度はとても重要です。変温動物は適した温度 を求めて場所を移動し、恒温動物は周囲の温度が変化しても体温を一定に維持する能力 を持っています。 これに対して、植物は移動することができず、また一般に体温を調 節することもできませんが、じつは花の温度を上昇させることができる「発熱植物」が 100種近く報告されています。その多くは温帯や熱帯地域に生育し、外気温よりも 20℃以上上昇することもあります。発熱によって花を暖かくしたり匂いを拡散したりす ることで昆虫を誘引して花粉を運ばせていると考えられており、花の発熱は植物の繁殖 戦略に深く関わっていると推測されます。

北東アジアに分布するザゼンソウの仲間は現在唯一寒冷地で発熱することが知られて います。雪解け直後の外気温が 0℃近い夜間に特に強く発熱し、花が咲く1週間程度の 期間中体温を 20℃近くに維持しています。一方、近縁で小ぶりな花をもつヒメザゼン ソウではこのような特徴は見られません。 ザゼンソウが寒冷地でなぜ発熱するのか、

他の発熱植物と異なる寒冷地特有の理由があるかどうかを知るために本研究を行いました。

1. 研究成果の概要

• ザゼンソウとヒメザゼンソウの国内の生育地点や博物館標本に記録されている分 布情報と詳細な環境データを突き合わせた結果、両者の分布は積雪量で決まり、

ザゼンソウの方がより雪深い地域に生育することがわかりました。

• また、最も新しい氷河期である約2万年前の最終氷期の予測気候データを用いた ところ、最終氷期にはザゼンソウの方がヒメザゼンソウよりも現在に近い分布を 維持できていたことが示されました。

• さらに、日本各地で採取されたザゼンソウとヒメザゼンソウの葉緑体や核のDNA を調べたところ、ザゼンソウの方が遺伝的な多様性が高いことがわかりました。

• 以上のことから、ほとんど発熱できないヒメザゼンソウは氷河期から現在分布域 へ適した積雪量の地域を移動したのに対し、発熱できるザゼンソウは同じ地域で 現在の遺伝的多様性を蓄積していったことが推測されます。

3.今後期待されること

本研究の結果、ザゼンソウがなぜ積雪地帯で発熱するに至ったか、さらに発熱植物が なぜ発熱するのか、その適応的な意義を理解するための手がかりが得られました。今後 さらに研究が進むと、植物の環境適応の仕組みの解明や大規模な環境変動下での植物の 保全方法の検討へとつながることが期待されます。また、環境変化への対応能力が高い 植物の開発へと発展するかもしれません。

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予算等

本研究はJSPS科研費(20H02917, 21K15149, 22H05172, 22H05181)および農 研機構生研支援センター 「イノベーション創出強化研究推進 事業」(30031C)の助成 を受けたものです。

用語解説

* 発熱植物:花の温度を外気温に対して0.5°C以上上昇させる能力をもつ植物のこ と。サトイモやソテツの仲間で多く知られている。

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