基礎物理Ⅱ/電磁気学
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直線電流が作る磁場
永久磁石の磁荷(磁極)は,単独では取り出せない。
正極(N極)だけ,負極(S極)だけ,では存在できない。
永久磁石の磁荷は磁力線の源としては,本質的なものではない?
磁力線の本当の源はであろうか? ⇒ 電流である 直線電流が作る磁場
導線に電流を流すと,まわりの空間に磁場が生じる。
(エルステッド 1820年)
例えば,電流の近くに方位磁石をもってくれば,方位磁石が振れる。
基本的な例として,十分に長い直線状の導線を流れる電流(直線電流)の まわりにできる磁場(磁力線)について学ぶ。
右ねじの法則
電流が作る磁力線(磁場)の向きは,電流の向きに右ねじを進めるとき,
右ねじを回す向きになる。
電流が作る磁力線に,始まり(湧き出し),終わり(吸い込み)は存在しない。
必ず,輪を描く。(電荷が作る電気力線との最大の違い!重要)
右手
(右ねじ)
I
B
電流
磁力線
I
B
I
B
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I
[A]の直線電流がつくる磁場の,磁束密度の大きさ
B
[T]を調べてみると,直線電流から距離
r
[m]だけ離れた位置では,=
B r
I 2 π
µ
[T]となっている。(距離
r
に反比例する!)µ
:透磁率・・・導線のまわりを満たしている物質によって決まる 真空の透磁率は
µ
0= 4 π × 10
−7[N/A2] である。強磁性体(磁石)以外の物質中では,
µ = µ
0と見なして問題ない。練習
I = 1.0
[A]の直線電流から,r = 1.0
[m]だけ離れた位置での,磁束 密度の大きさB
は?(真空中で考える)=
B =
r I 2 π
µ =
×
×
×
−[m]
0 . 1 2
[A]
1.0 ] [N/A 10
4
7 2π
π
710 0 .
2 ×
− [T]平行電流に働く力
導線1に電流を流すと,まわりに磁場(磁力線)が生じる。
では,その近くで別の導線2に電流を流すとどうなるか?
→ 導線2(電流)に,磁場から力が働く
2本の導線を平行に置き,それぞれI1[A],I2[A]の電流を流す。
(a)I1とI2が同じ向き (b)I1とI2が逆向き向き
右ねじの法則と,フレミングの左手の法則を使うと,
(a)同じ向きの平行電流は,引力
(b)逆向きの平行電流は,斥力 となることが分かる。
I
B r
I2
I1
Br Fr
I2
I1
Br Fr
r r
上から見ると
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平行電流の間隔を
r
[m],導線の長さをl[m]とすれば,I1[A],I2[A]の平行電流に働く力の大きさは,
=
B
rI 2
π
1µ
[T]とF =I2lB[N]を使って,F =
r l I
I 2
2
π
1⋅
µ
∴
F =
l rI I1 2 ⋅ 2
π
µ
[N]と表すことができる。
(クーロンの法則と似たような形をしているが,違いに注意する。)
練習 真空中で,長さl =1.0[m]の導線を,r =1.0[m]の 間隔をあけて平行に置き,同じ向きにI1 = I2 =1.0[A] の電流を流す。平行電流間に働く力の大きさ
F
と向きは?=
F
lr I I1 2 ⋅ 2
π
µ
[m]
0 . [m] 1
0 . 1
[A]
1.0 [A]
1.0 2
] [N/A 10
4
7 2× ×
= ×
−π π
10
70 . 2 ×
−=
[N]MKSA単位系
国際単位系(SI)では,電流の単位[A]を基本単位として,
その他の電磁気学の単位を,
[m],[kg],[s]と[A]の組み合わせ(積と商)
で表す(組立単位)ことにしている。・・・MKSA単位系
1
[A]の定義 (上の練習の状況を使って決める)真空中で,r =1.0[m]の間隔をあけて,同じ強さの平行電流を流す。
長さl =1.0[m]あたりに働く力が
F = 2 . 0 × 10
−7[N]のとき,その電流を
1
[A]とする。(真空の透磁率の値も自動的に決まる。)
練習 ①電荷の単位[C],②電圧の単位[V]を[m],[kg],[s],[A]の組み 合わせで表せ。
①
Q = I ⋅ ∆ t
より,[C]=[A]・[s]=[A・s]② V =W qより,[V]=[J]/[C]=[kg・m2/s2]/[A・s]=[kg・m2/A・s3] I2
I1
F F
r
l
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2本以上の直線電流が作る磁場(重ね合わせの原理)
直線電流が2本ある場合に,そのまわりにできる磁場(磁力線)は どうすれば求められるか。
磁束密度
B r
はベクトルである。
それぞれの直線電流が作る磁束密度を,右ねじの法則と
B = r I 2 π
µ
で求めて,ベクトルの和の規則を用いて合成する。
B r B r
1B r
2+
=
例題 1辺がa[m]の直角二等辺三角形の頂点A,Bを通るように,同じ強さ
I
[A]の直線電流を流す。頂点Cでの磁束密度B r
の向きと大きさ
B
は?(a) (b)
=
= B
A B
B
a
I 2 π
µ
[T]→B = 2 ⋅ B
A=
a I a
I 2 2
2
π
µ π
µ
=⋅ [T]
復習 1辺がa[m]の直角二等辺三角形の頂点 A,B に,絶対値が
Q
[C] の電荷を置く。頂点Cでの電場E r
の向きと大きさ
E
は?=
= B
A E
E
4
21 a Q
πε
[N/C]→E = 2 ⋅ E
A= 4
22
a Q
πε
[N/C]a a
A B
C
I I
B r
AB r B
BAB
BB r = r + r
a a
A B
C
I I
B r
AB r
BB
A
B
B B r r r
+
=
a a
A B
C
Q
− − Q
E r
AE v
BB
A
E
E E r r r
+
=
a a
A B
C
Q
+ − Q
E r
AE v
BE r = E r
A+ E r
B