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福島県裏磐梯地域におけるオオシマトビケラの生活史(昆虫綱

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磐梯朝日遷移プロジエクト

福島県裏磐梯地域におけるオオシマトビケラの生活史(昆虫綱:トビケラ目)

大平 創(福島大学大学院・共生システム理工学研究科)

  塘 忠顕(福島大学・共生システム理工学類)

       要 旨

 福島県裏磐梯地域の長瀬川に生息するオオシマトビケラの生活史を推定した.裏磐梯地域の長瀬川 では,年1世代であると考えられ,年2世代の生活史を示す西日本とは異なっていた.これは幼虫の成 長が西日本と比べて遅いこと,成虫の羽化時期が遅れることが原因であり,水温がこれに関係している

ものと思われる.

1.はじめに

 オオシマトビケラMacroste〃ium radiatUm

(McLachlan)は福島県内では裏磐梯地域のみから記 録されている(日本自然保護協会,1993;塘・大平,

2012).福島県だけでなく,東北地方における本種の 分布はかなり局地的であるが,西日本では普通種と

して知られている(塘・大平,2012).筆者らは,東 北地方における局地的分布の原因を解明するにあた

り,福島県裏磐梯地域の長ma llにおける生息範囲や 生息密度を報告したが(大平・塘,2013),本種に関 する基礎的な知見は未だ不足している.今回は裏磐 梯地域の長ma llにおいて実施した定期的な調査によ

り,本種の生活史の一部を推定したので,ここに報 告する.

ll.方法

 長瀬川の小野川橋付近(N37.6678, E140.0771)

にて,2012年12月6日から2013年12月27日まで の期間に,およそ月1回の頻度(12月〜4月は2月 に1回の頻度)で調査を行った.

採集は25cm角のサーバーネット(目合0.3㎜)

を使用したコドラート・サンプリングによって実施 し,底生動物を河床の土砂とともに回収した.水深 30cm未満の平瀬にて3ヶ所をランダムに選択し,3

ヶ所のコドラートで連続して採集を実施した.採集 したサンプルは70%エタノールで固定し,実態顕微

鏡を使用して土砂中からオオシマトビケラの幼虫と 蜻を選別した.

 ピンセットを使用してオオシマトビケラ幼虫の 頭部を外し,これを台紙に固定して乾燥させた,乾 燥後,実態顕微鏡と接眼ミクロメS・・一一一・タを使用して最 大頭幅を0.01㎜単位で測定した(図1).シマトビ ケラ類は頭サイズを測定することで齢期を推定でき

ることから(Mackay, 1978),全個体の頭幅からヒス

トグラムを作成し,齢期を推定した.齢期別の個体 数を採集月ごとに示すことにより,生活史を推定し

図1.オオシマトビケラ幼虫の頭部模式図と        頭幅測定位置

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福島県裏磐梯地域におけるオオシマトビケラの生活史(昆虫綱:トビケラ目)

た.蠕は幼虫同様に個体数を計数し,成虫は現地に おける生息の確認を目視で行った.

 オオシマトビケラの採集地点にて,水温測定を行 った.各採集月の水温は,測定値が安定した後に5 回測定し,最大値と最小値を除いた3回分の測定値 を平均した値とした.

皿.結果と考察

1.オオシマトビケラの齢期推定

 今回の調査によって採集した合計849個体のオオ シマトビケラ幼虫の頭幅からヒストグラムを作成し た(図2).その結果,一山型の5つのセグメントが 形成された.各セグメントが,オオシマトビケラ幼 虫の各齢期に相当すると考えられるため,各齢期の 頭幅の範囲が明らかとなった(表1).また,若齢幼 虫(1齢幼虫)は採集数が少なく,ヒストグラムか

ら見ても過小評価となっていると考えられる.

表1.オオシマトビケラ幼虫の齢期別頭幅

齢期 頭幅(mm)

1齢 2齢 3齢 4齢 5齢(終齢)

0.30−0.34

0.46−0.68

0.78−1.08

1.22−1.62

1.88−2.38

2.オオシマトビケラの生活史推定

 表1に示した頭幅の範囲にしたがって齢期別に個 体数を計数し,採集月ごとに示したのが図3である.

若齢幼虫(1〜2齢幼虫)は8月から9.月にかけて採 集され,他の月には採集されなかった.これは採集

された1齢幼虫の個体数が非常に少なく,上述した 通り過小評価されている可能1生が高い.成虫が6月 に出現していることから考えると,実際には6月あ るいは7月から既に1齢幼虫が出現していると思わ れる.踊は5月から7月にかけて採集された(5月 は4個体,6.月は6個体,7月は15個体).成虫は6 月に多数の個体を確認したが,その後8月にオオシ マトビケラと思われる個体(1個体)が調査地の上 空を飛翔している姿を認めたのみで,他の月にはこ れを確認することができなかった.しかしながら,

2012年は6月から8月まで成虫が確認され,その後 9月19日には河畔林の葉上で死んでいる成虫のオオ シマトビケラを多数確認していることから(大平,

未発表),成虫の出現時期は6月〜8月と推定した.

以上述べてきた若齢幼虫の出現時期,蠕期,成虫期 を考慮すると,裏磐梯地域の長瀬川におけるオオシ マトビケラは年1世代であると推定される.

 裏磐梯地域の長瀬川における本種の生活史の概 略は次の通りである,(1)8月(あるいはそれ以前)

に艀化した幼虫は,9月,10月にかけて成長する,

(2)年内に蝋化や羽化することはなく,幼虫で越冬

50

40

th 30

理2ひ

1_」、

    川

10

。正。諒庶翻1

 0.3  0.5

      IV

N=849

        V

    Ir

O.7    0.9    1.1    1.3    1.5    1.7    1.9

図2.オオシマトビケラ幼虫の頭幅のヒストグラム       1−Vは幼虫の齢期を示す.

1 }棚L訓甑

      2.1  2.3

107

(3)

大平創塘忠顕

本研究

成虫

     12     2012 岡崎(2005)

V

IV l鈍ll

l

 22013 4  5   6 7 8 9 40 11   12

成虫

 1112123456

2001     2002

上段,本研究(長潮ll).

7 8

 図3.採集月別の齢期構成図

下段,岡崎(2005)(大和吉野川).

9 10 11

1−Vは幼虫の齢期を示す.

する.(3)翌年5月から踊化し,6月には羽化,産 卵する.

3.西日本の生活史との比較

 岡崎(2005)は奈良県五條市の大和吉野川で行っ た調査結果に基づいて,オオシマトビケラは年2世 代(越冬世代と非越冬世代)であると推定している.

これにしたがえば,長瀬川は非越冬世代が存在しな いことになる.長瀬川の個体群は大和吉野川のそれ に比べて,越冬世代成虫の出現時期が遅く(図3),

新世代はその年のうちに羽化できないのであろう.

このような違いを生じさせる原因は何であろうか.

 水生昆虫の生活史は水温と関連が深いことが知

られている(Sweeney et aL,1986).そこで,大和吉

野川の水温(岡崎,2005)と長ma llの水温を比較し た(表2,図4).その結果,大和吉野川の年平均水 温は15.5℃でおり,長瀬llのそれは10.8℃で4℃以

表2.長瀬川と大和吉野川の水温(°C)

上も差があった.また,大和吉野川の最高水温は8 月の27.3℃,長瀬川のそれは8月の23.3℃であった.

さらに,最大の水温差は4月で14.9℃もあった.こ の水温の違いから考えると,長瀬川は大和吉野川に 比べて幼虫の成長速度が遅く,特に長瀬川は4月で も水温がかなり低いために蜻化あるいは羽化までに 時間がかかると考えられる.また,艀化した幼虫は

30

25

 20

t

Q i5

 10

5

0

1112123456789101112

         採集月

  図4.長瀬川と大和吉野川の水温

採集月

11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 平均

長瀬川

(2012・・2013年)

大和吉野川

(2001−2002年)

2.5      0.6      2.8 16.3 19.6 19.0 23.0 17.3 12.3 4.3  1.7  10.8

11.5 6.0  5.3  5.8  8.3  17.7 17.6 22.2 25.1 27.3 22.8 17.4 9.9

15.5

水温差 3,5 5.2

14.9 1.3  2,6  6.1  4.3  5.5  5.1  5.6

4.7

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福島県裏磐梯地域におけるオオシマトビケラの生活史(昆虫綱:トビケラ目)

水温が高くないため年内に羽化できるほど成長でき ず,幼虫のまま越冬しているものと考えられる.こ のように水温が,日本国内で同種のトビケラの生活 史に影響を与えることは知られており(鶴石,2004,

2008),オオシマトビケラにおいても水温が地域によ る生活史の違いに深く関連していると考えられる.

 オオシマトビケラと同じシマトビケラ科に属す るコガタシマトビケラでは,発育ゼロ点や有効積算 温度などの見積もりから,正確な生活史の推定が試

みられている(Moch伽ki 8∫鳳,2006;望月,2008).

オオシマトビケラについても,発育ゼロ点や有効積 算温度を推定し,正確な生活史を明らかにする必要 がある.また,オオシマトビケラの幼虫は,河川水 中の植物プランクトンなどのミクロセストンを主と して摂食する可能性が指摘されており(古屋,1998),

夏季の高水温や冬季・春季の低フk温がオオシマトビ ケラの採餌効率に影響を与えている可能性もある.

裏磐梯地域の長渕llに生息するオオシマトビケラに ついては,生活史と水温の関係のほか,餌資源と水 温の関係についても調査を行う必要があると考えら

れる.

引用文献

古屋八重子(1998)吉野川における造網性トビケラ  の流程分布と密度の年次変化,とくにオオシマト  ビケラ(昆虫,毛翅目)の生息拡大と密度増加に

 ついて,陸水学雑誌,59,429−441.

Mackay, R. J.(1978)Larval identification and instar

 association i l some species ofHydroρSソche and

 CheumatopSyche(Trichoptera:Hydropsychidae),

 Annals Entr)mol. Soc. America, 71(4),499−501.

望月聖子(2008)コガタシマトビケラの発育と温度

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MochiZUki, S.,Y. Kayaba and K. Tanida(2006)Larval

 growth and development in the caddisfly

Cheumatopsyche brevilineara under natural themial

 reg㎞es, Ent Sci.,9,129−136.

日本自然保護協会(1993)裏磐梯の自然観察.46p,

 日本自然保護協会.

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  Ihe relative importance of temperature and diet to

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 Soyedina carolinensiS(Plecoptera:Nemouridae),

 Freshwater Biol.,16,39−48.

鶴石 達(2004)オオナガレトビケラの分布と生活

 史,昆虫と自然,39(6),23−25.

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 Macroste〃2um radiatum(McLachlan)(トビケラ目:

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