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福島県農業総合センターの取り組み - J-Stage

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Academic year: 2023

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セミナー室

放射性降下物の農畜水産物等への影響-2

福島県農業総合センターの取り組み

吉岡邦雄

福島県農業総合センター生産環境部

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所

(以下,「第一原発」という.)の事故により放射性物質 が拡散し,農業生産へ大きな影響を与えている.福島県 農業総合センターでは農地・農作物への影響を明らかに するとともに,放射性物質の除去低減および吸収抑制に 関する研究に取り組み,一定の成果を得ることができ た.今まで得られた研究成果の概要について報告する.

研究方針

本県は,生産量が全国4位の米をはじめ,果樹や野菜 など園芸作物や畜産物などの生産が行われている農業県 であることから,放射性物質の拡散がこれらの農畜産物 の生産に大きな影響を与えると考えられるため,放射性 物質の具体的な影響を把握し,その対策を確立すること を目的に,以下に示す7本の柱により,放射性物質の除 去・低減対策技術の開発について研究を進めることとし た.

①県内農用地土壌の放射性物質の分布状況の把握,② 放射性物質の簡易測定法の開発(土壌),③各種作物の 放射性物質吸収量の把握,④放射性物質の除去・低減技 術の開発,⑤放射性物質吸収抑制技術の開発,⑥農産物 加工における放射性物質の除去技術の開発,⑦農作業に おける放射線被曝低減技術の開発.

なお,研究に当たっては,データの蓄積がなく,専門

の研究者もいないことから,独立行政法人農業環境技術 研究所等の放射性物質の農業への影響を継続的に研究し ている機関や大学などに協力をいただきながら研究を進 めた.また,農業総合センター内の各部,各研究所の研 究者による横断的な放射性物質対策チームを組織し,情 報収集および研究に取り組んだ.

研究成果の概要

1.  県内農用地土壌の放射性物質の分布状況の把握 調査は,平成23年3月31日から8月6日まで8回にわ たり,警戒区域39地点を含む県内371地点の農地につい て実施した.データは農地土壌の放射性物質濃度分布図

(農水省作成,8月30日公表)にマップ化された.放射 性濃度分布図からは,第一原発から北西方向の地域およ び中通り地方の西寄りの地域が周辺より放射性物質濃度 が高く,第一原発からの距離にかかわらず土壌の放射性 物質濃度の高い地域が帯状に分布することが明らかに なった.

農地における放射性物質の垂直分布については,野菜 栽培が行われていた畑地で,耕耘前の5月15日と耕耘後 の7月12日に調査を行った結果,耕耘前においては深さ 2.5 cmまでに95%以上の放射性セシウムが分布してい たが,耕耘後は深さ別の偏りがなくなり10 cmまでの深 さにおいて分布はほぼ均一になっていた.果樹園では,

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ナシ園において4月15日から5月25日に調査を行った結 果,表層の0 〜6 cmに99%以上分布していた.

2.  放射性物質の簡易測定法の開発(土壌)

ゲルマニウム半導体検出器による放射性物質濃度分析 の簡便化,低コスト化,迅速化を図るため,土壌の簡易

測定法の開発に取り組んだ.

1の県内土壌調査2回目(平成23年4月6 〜 7日実施 分)の土壌を用い,NaIシンチレーションカウンターと ゲルマニウム半導体検出器で放射性セシウム濃度につい て測定したところ,それぞれの測定値の間には高い相関 があったことから,NaIシンチレーションカウンターと ゲルマニウム半導体検出器の放射性物質濃度測定値につ いて関係式を作成し,NaIシンチレーションカウンター を用いた簡易測定法とした(図

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.県農林水産部は県 内の農林事務所農業振興普及部など14カ所にNaIシン チレーションカウンターを配置し,農地土壌の放射性物 質濃度について簡易測定による調査を行った.いわき農 林事務所農業振興普及部においては,市内500点以上の 農地土壌を採取し,簡易測定法のデータから農地土壌の 放射性濃度分布図を作成しマップ化した.

3.  各種作物の放射性物質吸収量の把握

水稲,畑作物,野菜,果樹などについて収穫後の放射 性物質濃度を調査した.

農業総合センター内圃場(灰色低地土)で栽培した水 図1土壌の放射性セシウム濃度とNaIシンチレーションカウ

ンター指示値の関係

図23種類の土壌で栽培した果菜類の放射性物質濃度

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稲(玄米),コンニャクイモ,ソバ,大豆,ナタネ,大 麦,小麦について調査を行った.水稲(玄米),コン ニャクイモ,ソバ,大豆の移行係数は0.01より小さかっ たが,ナタネおよび大麦,小麦の移行係数は水稲などよ り大きい0.03から0.07であった.これは,ナタネおよび 大麦,小麦は放射性物質が飛散した時期に露地で生育中 であったため,放射性物質の付着により移行係数が水稲 などより大きくなったと考えられた.特に小麦について は,播種時期が早いほど子実の放射性物質濃度が高い傾 向を示した.これは,播種時期が早いほど,放射性物質 飛散時の植物体が大きいため,放射性物質の付着量が多 くなり,子実の放射性物質濃度が高くなったと考えられ た.

野菜については県内で栽培される主要な品目の31種 類について収穫後の放射性物質濃度を調査した.野菜の 移行係数はキュウリなどの9種類において0.0002から 0.009の範囲だった.いずれの移行係数も農水省が平成 23年7月に発表した「農地土壌中の放射性セシウムの野 菜類及び果実類への移行の程度」で示された移行係数の 範囲内の値だった.果菜類(トマト,キュウリ,ピーマ ン,ナス)において,果実の放射性物質濃度は葉および 茎の放射性物質濃度に比べて低い傾向であった(図

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ブロッコリー,ジャガイモ,ニンジンについても茎葉の 放射性物質濃度は可食部である花蕾,塊茎,根に比べ高 い値であった.キャベツについて,灰色低地土,黒ボク 土,褐色森林土,褐色低地土の4種類の土壌で検討した ところ,粘土の少ない褐色森林土で放射性物質濃度が高 くなる傾向があった.

果樹については,オウトウ,モモ,ブドウ,ナシ,リ

ンゴ,カキについて収穫後の果実の放射性物質濃度を調 査した.移行係数は0.010から0.041の範囲で,オウトウ でほかの樹種より高い値を示した.

4.  放射性物質の除去・低減技術の開発

剥ぎ取る表土の厚さ(深さ)を所要の厚さに少ない誤 差でできるレーザーレベル装置付きのレーザーブルドー ザーおよびレーザーバックホウにより水田表土の剥ぎ取 り試験を行い,剥ぎ取り厚さ別に土壌の放射性物質の減 少率,作業能率について検討した.剥ぎ取り厚さを3 〜 8 cmまで1 cm単位で調整し試験した結果,土壌の放射 性物質濃度減少率は,レーザーブルドーザーでは剥ぎ取 り厚4 cm以上で60%以上,レーザーバックホウでは剥 ぎ取り厚3 cm以上で80%前後だった.25 〜50 m2の小 面積の剥ぎ取り試験から算出した10 a当たりの作業能率 は,レーザーブルドーザーで1.0時間,レーザーバック ホウが2.3時間とレーザーブルドーザーがレーザーバッ クホウより短い時間で処理することができた.レーザー バックホウは旋回が自由で小回りが効くため,レーザー ブルドーザーに比べ作業時間はかかるものの,放射性物 質の減少率がレーザーブルドーザーより大きかったこと から,剥ぎ取りをする区画条件と面積などにより作業機 械を使い分けて効率的な作業を行うことが可能である.

ターフスライサー(芝剥ぎ機)による表土の剥ぎ取り 試験を牧草(リードカナリーグラス)を栽培している転 換畑(土壌の放射性物質濃度が10,000 Bq/kg以上)で 実施したところ,厚さ3 cm以上を剥ぎ取ることにより 土壌の放射性物質濃度が95%以上減少した(図

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.牧 草がルートマットを形成していることにより土のこぼれ

図3ターフスライサー(芝剥ぎ 機)による転換畑の除染状況

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落ちがなく,表面の高濃度汚染土が剥取時に処理後の土 壌に残らないため,減少率が高くなったと考えられる.

10a当たりの作業時間はおおむね表土の切り取りに135 分,切り取った部分の剥ぎ取り搬出に113分であった.

また,牧草を含む剥ぎ取った土の重量は10a当たり41.6 トンであった.なお,ターフスライサーは,開発した メーカーで製造中止となっているため,福島県と井関農 機(株)および(株)ササキコーポレーションが協力して,

同等の性能を有する機械を開発し,井関農機(株)より発 売される予定である.

草地においては,有機物が集積した土壌表面に近いリ ター層と牧草の根が多く存在するルートマット層の放射 性物質濃度が高いことから,放射性物質濃度の高いリ ター層およびルートマット層の処理方法について検討し た.リター層およびルートマット層を下層に埋め込み下 層の濃度の低い土壌を表面に移動させる処理,リター層 およびルートマット層を耕耘により下層の放射性物質濃 度の低い土壌と混合する処理,リター層を除去する処理 により,表面から5 cmの深さの土壌の放射性物質濃度 が38 〜95%減少した.

果樹については樹体の放射性物質濃度が高いことか ら,樹体の粗皮剥ぎや洗浄による放射性物質濃度の減少 効果について検討した.ナシやブドウの粗皮剥ぎによ り,主枝上部の樹体の放射性物質濃度が80%以上減少 した(図

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.モモについては,高圧水による洗浄効果 について検討した.水圧5 MPaで,1樹当たり20リット ルで洗浄した結果,放射性物質濃度は50%以上減少し た.

ヒマワリの放射性物質の吸収について調査した結果,

灰色低地土で栽培したヒマワリのTF(植物体の放射性 セシウム濃度/土壌の放射性セシウム濃度)は0.03で あった.土壌からヒマワリの吸収により除去できた放射 性セシウム濃度は最大でも土壌中の放射性セシウム全体 の濃度の1/1724だった.カリの施用の有無によるヒマ ワリの放射性物質濃度について検討したが,土壌中の交 換性カリ含量が25 mg/100 g前後のため,カリ施用の有 無による差は見られなかった.

5.  放射性物質吸収抑制技術の開発

土壌中の交換性カリ含量の異なる褐色森林土でキャベ ツを栽培した結果,土壌中の交換性カリ含量が高いほど キャベツの移行係数が小さくなる傾向があり,交換性カ リ含量を確保することにより放射性セシウムの吸収が抑 制できると考えられた.

ゼオライトによる放射性物質の吸着について検討する ため,ゼオライトを汚染土壌に添加し酢酸アンモニア 1N溶液により放射性セシウムを抽出したところ,添加 量が土壌の1%以上で抽出割合がゼオライトを添加しな い処理に比べ少なくなった(図

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6.  農産物加工における放射性物質の除去技術の開発 小麦の放射性物質はふすまに多く,製粉により小麦粉 は原料の1/2程度となった.

開花時に放射性物質が付着したウメは果皮の濃度が高 く,もみ洗いにより50%程度低減できた.放射性物質 拡散時に未開花だったモモ,リンゴ,ブルーベリーでは もみ洗いの効果はなかった(図

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果実のジャムやコンポートなどの加工では,放射性物 図4ナシ(幸水)の粗皮剥ぎによ る放射線量の減少

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質を含まない副材料の添加やシロップへの溶出により放 射性物質濃度は減少した.

7.  農作業における放射線被曝低減技術の開発

水稲の収穫・籾すり作業,大豆の収穫作業,草刈り,

耕耘作業において,それぞれの作業を行う前と作業中の 空間線量について調査を行った.いずれの作業において

も,空間線量の増加は見られなかった.

これらの内容は放射性物質対策チーム員を中心に多く の研究員がまとめた成果を紹介したものであり,混乱の うち短期間で多くの成果を上げた研究員に敬意を表する とともに,調査や分析にご協力いただいた学習院大学村 松康行教授,東京大学中西友子教授をはじめとする多く の皆様に厚く謝意を表する.

図5ゼオライトの土壌への添加量 と放射性セシウムの抽出割合

図6果実の洗浄による濃度の変化

Referensi

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