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第2部 授業研究ワークショップ - 国立大学法人 福岡教育大学

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第2部 授業研究ワークショップ

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34 1.ワークショップの目的と方法

1)目的

ワークショップの目的は,第一に日本の授業研究による授業改善の実際を海外ゲストに 体験,評価してもらうこと,第二に,海外ゲストと日本の参加者とが授業に対する協議を 共に行うことで日本の授業研究の意義や課題を再確認すること,そして第三にこれらを踏 まえ,今後,責任ある暮らしを担う生活者育成のために,レッスン・スタディの国際連携 の可能性を探ることである。

本ワークショップのために研究グループによって実施されたレッスン・スタディの概要 は図1に示すとおりである。このうち,ワークショップ参加者には,過程の「3.研究授 業の実施・参観」および「4.協議と省察」を追体験できるようプログラムを企画した。

図1 研究グループによる授業研究の流れ 1. レッ スン・スタディの

テーマ設 定 2016 .10

2. 授 業 の計 画 2016.11~2017.2

よりよい消費生活を考 えよう」5 時間

3 .研 究授 業の 実施 ・参 観 2017.2.14

「売る側と買う側を経験して チョコを選ぼう」(中学校第 1

学年 2 クラスでの実施)

4.協議 と省 察 2017.2~3 研究授業直後の協議会

および研究会の開催

Nov. 2016-Feb. 2017

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2)方法

2時間のワークショッププログラムの流れは,表1に示すとおりである。

表1 授業研究ワークショップの流れ 時間 内容

14:45-15:00 ワークショップの概要説明(進め方と授業について) (10 分) 15:00-15:30 授業のビデオ視聴 (30 分)

中学 1 年家庭科:「売る側と買う側を経験してチョコを選ぼう」

授業者:神澤志乃 麹町学園女子中・高等学校教諭 15:30-16:25 グループ協議 (30 分)

(議論の柱)・授業目標達成に対して、本時の学習活動は有効であったか?

・「責任ある生活」に貢献する生徒育成のために,どのような改 善が必要か?

協議の共有 (20 分) 自評 (10 分)神澤志乃

16:25-16:45 協議の振り返りと授業研究(レッスン・スタディ)について (20 分) 高木幸子 新潟大学教授

キャサリン・マクスウィニィ セントアンジェラス大学講師

視聴したビデオは,この会議のために研究グループのメンバーによって実施された授業 研究における研究授業である。ビデオ作成にあたり,記録した50分の授業を,ワークシ ョップで用いるために約30分に編集を加えた。また,海外参加者に理解しやすくするた めに冒頭に対象校の校内の様子を挿入し,授業中の発話には全て英字幕をつけた(撮影,編 集協力者 荒井拓氏)。

また参考資料として,参加者には,学習指導案とワークシートの一部,実際に生徒が作 成した作品の一部,生徒のワークシートの記述(抜粋)を配布した。

グループ協議では,限られた時間の中,生活者育成との目的に向けた授業改善をめざす 共通視点をもって協議が進むように,「授業目標達成に対して、本時の学習活動は有効であ ったか?」「「責任ある生活」に貢献する生徒育成のために,どのような改善が必要か?」

の二つの協議の柱を設定した。

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36 2.研究授業の概要

1)学習指導案

中学校 技術・家庭(家庭分野)学習指導案 指導者 神澤 志乃

1 日 時:平成 29 年 2 月 14 日(火)7限 2 学 級:1 年蘭組 20 名

3 題材名:よりよい消費生活を考えよう(学習指導要領内容 D身近な消費生活と環境)

4 題材の目標:

①自分が本当に必要なものを主体的に選択することができる。

②生産・販売者と消費者の視点、倫理的な視点などを理解し、自覚ある消費行動を することができる。

5 題材設定の理由 (省略)

6 授業計画(計5時間)

時間 小題材名 ねらい 学習活動

1 冬 休 み に 使 っ た お 金 について振り返ろう。

満足度の高い買い物を するために消費行動に 関心を持つ。

小遣いの収支記録をもとに、支出項 目をサービス、モノに分類し、購入 した商品満足度と理由を書き出す。

2 福 袋 に つ い て 考 え よ う。

必要なものを主体的に 選択するための留意点 を認識する。

福袋が売れる理由について、販売者 側、消費者側のメリット、デメリッ トをあげる。

3 ネ ッ ト シ ョ ッ ピ ン グ について考えよう。

消費者の基本的な権利 と責任を理解する。

消費者にかかわるトラブルの例を もとに、消費者の権利の回復や救済 法を話し合う。

4 フ ェ ア ト レ ー ド と は 何だろう。

商品の背景や、生産者 の労働環境に気づく。

DVD「おいしいチョコレートの真実」

を視聴し、フェアトレードの情報を 集める。

5 本時

バ レ ン タ イ ン デ ー の チ ョ コ レ ー ト を 選 ぼ う。

売る側と買う側の両方 の立場を経験して商品 選択し,その結果を評 価する。

チョコレートの宣伝と選択の活動 から、商品を選ぶ理由を考え共有す る。

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7 題材の評価規準 生活や技術への 関心・意欲・態度

生活を工夫し創造す

る能力 生活の技能 生活や技術について の知識・理解 自分の消費生活につ

いて関心をもってと りくんでいる。

収集・整理した情報 を活用し、物資・サ ービスの選択、購入 及び活用について工 夫している。

物資・サービスの選 択,購入及び活用に ついて必要な情報を 収集・整理できてい る。

消費者の基本的な権 利と責任について理 解している。

8 本時の目標

・売る立場と買う立場の両方を体験する活動を通して、違いに気付く。

・商品情報を吟味して消費者としての自覚をもった商品選択ができる。

9 授業展開(50分)

時間 学習活動と内容 指導・支援上の留意点 評価(●)資料など

導入 5 分

前時のふりかえりと本時課題の確認 バレンタインデーに向けて準備した チョコレートの有無と種類を想起す る。

○事前にチョコレートア レルギーの有無を確認し ておく。

○どんな情報をもとにチ ョコを選んだか問いかけ,

本時課題を提示する。

展開

20 分 2.売る立場になってチョコレートの POPを作成する。

(1)5人×4グループ(A~D)に 分かれ(発表者2人、書記2人),書 き方の約束を確認する。

・配布されたチョコレートのセールス ポイントを考えながら A4 用紙に必 要な情報を整理して、10 分で書く。

A 板チョコ 50g100 円

○班は教師が指定する。

○工夫の幅を持たせるた め、売る相手は中学生に限 定しない。

○POP にのせる言葉は2つ に絞ってみるよう助言す る。

学習プリント①、プロ ジェクター,PC 4 種のチョコ(実物,

空き箱)

A4 用紙・マジックペ ン

タイマー

チョコレートを売る立場と買う立場を経験し、商品選択について考えよう。

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15 分

B 高濃度カカオのチョコ 130g408 円 C フェアトレードチョコ 48g116 円 D 高級チョコレート 21g(2 粒)320 円

(2)自分の班のチョコを試食する。

(3)完成した POP を商品と共に掲示 し各班 30 秒でアピールする。

(4)各班の POP と宣伝を聞き,第一 印象で商品を選び挙手する。理由を簡 単に書く。

3.買う立場になってチョコレートを 選ぶ。

商品選択の際,必要な情報を考え,再 度チョコレートを選ぶ。

(1)A~Dの詳細情報の資料を比 べ,3種(担当以外)のチョコを試食 する。

(2)小遣いの範囲で大切な人へチョ コを贈る想定で選び、その理由をプリ ントに記入し,クラスで共有する。

○作業が滞らないよう机 間指導し、POP をきれいに 描く事だけが目的となら ないよう援助する。

○選んだ理由や,迷った生 徒がいたら迷った理由も 尋ねる。

○選ぶ際もっと知りたい 情報はないか問いかけ,追 加情報(グラムあたりの値 段,班別に配布したA~D の情報をまとめた資料)を 配布し,比較させた上で再 度選ぶよう促す。

●売る立場と買う立 場の両方を体験する 活動を通して、立場の 違いに気付いたか。

学習プリント②

まとめ

10 分

4.まとめ

POP作成とチョコの選択を振り返 り,商品の購入選択に関し,売る立場 と買う立場の違い、消費者として今後 商品選択で気をつけることをプリン トにまとめる。

○売る立場(POP作成)

と買う立場ではどんな違 いがあったか、消費者とし て選んだポイントに着目 させて振り返らせる。

●商品情報を吟味し て消費者としての自 覚をもった商品選択 ができたか。

学習プリント③

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39 2)授業配布資料(抜粋)

2.お客になって、チョコレートを選ぼう。

☆下の資料をよんで

A B C D

箱 の 表 の 写 真

箱 の 裏 の 写 真

製 造 者 ロ ッ テ 明 治 イ オ ン ゴ デ ィ バ 5 0 g ( 板 チ ョ コ

1 枚 分 )あ た り の 価 格 ( 円 )

1 0 0 円 1 6 0 円 1 2 0 円 8 0 0 円

自 分 に と っ て 価 格 は ? ? ?

◎ ・ ○ ・ △ ◎ ・ ○ ・ △ ◎ ・ ○ ・ △ ◎ ・ ○ ・ △

味 ( 感 想 )

☆ の 数 で あ ら わ す と ? ? ?

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

【 商 品 の 情 報 を 読 ん だ 結 果 A~ D の ど れ を 選 び ま す か 。 選 ん だ 理 由 を 書 き ま し ょ う 。

選んだ記号 選んだ理由(試食の結果も含めて書く。)

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3)A~D のチョコレート情報

4)生徒の作った POP

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41 5)生徒のワークシートの記述

まとめ 売る立場(お店)と買う立場(消費者)を両方経験してみて気づいたこと、わかっ たことは、どんなことですか?最初の選択と変わりましたか。これから商品を選ぶ時、ど んなことに気をつけようと思いますか。

1 C.I.

2 A.Z.

3 K.S.

4 K.D.

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42 3.研究授業についての協議・省察の実際

以下は,ワークショップ当日にビデオ およびICレコーダーによって記録した 授業視聴後の協議の模様である。当日の 流れに沿って,班別の協議の様子,班ご とのまとめの全体共有,授業者や海外か らの参加者のコメントを順に示す。

1)班別の協議(3班)

K: この授業は、売る側と消費者側と両方の立場から考えさせるもので、とても興味深く 面白いんですけれども、授業時間が短いため、なかなか思考の水準を深められないところ があったのではないでしょうか。特にこのワークシートについては、『価格と味』という ことしかないので、もっと成分とかフェアトレードに絡めて倫理的な視点というものもワ ークシートに含めて、もっと深く考えさせた方が良かったんじゃないかと思いました。

S: 前の時間にフェアトレードについて授業をやっているのに、それが生かせていないと思 いました。この課題の設定が『小遣いの範囲で大切な人へチョコを贈る』というものでし た。この設定で子どもたちが選んでいたかというと、自分が食べておいしいとか、お菓子 づくりに使えるとかということが判断材料になっており、「この場面だからこのチョコレ ートを選ぶ」という、この設定がちゃんと伝わっていなかったのではないかと私は感じま した。ですから消費者として「なぜこれを選ぶのか」、「どういう場面だからこれ」という 選択理由が弱いんじゃないかと思いました。

M:はい、私はこの授業計画の中で、本時が、今日ビデオで見た授業ですが、最後の 5 時間 目となっています。この単元のまとめの位置になっているんですけれども、これまで1時 間目から 4 時間目までやった中身の総決算が今回の中身になっていないといけないと思う んですけれども、その視点が十分に出ていなかったというところはこの授業の反省点かな と思いました。

F:私は 2 つ意見がありまして、1つ目が K 先生と同じで生産者と消費者と二つの立場を同 じ時間で学習できるという点が今までのフェアトレードを教材としてチョコレートを使

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っている授業と比較して新しいと ころだと思います。そして、2 つ目 が M 先生の付け加えになると思う んですけれども、チョコレートを 買う場面設定が明確でないという ことの要因として、消費者として の立場の時に他の 3 つのチョコレ ートを食べさせたということが一 つ要因だと思います。生産者は自

分たちがチョコレートを食べることは出来ますけれども、消費者は買うまで食べられませ んよね。なので、食べてから何を買うか選んだら、そりゃあ味にフォーカスされてしまう だろう。それが一つ要因ではないかなと考えました。

N:本時の目的が、売る側と買う側の立場の両方を体験することでしたが、売る側の試みが ちょっと弱かったかなと思います。だから前時にフェアトレードを一時間学んでいる中で、

あらかじめフェアトレードの班を決めちゃった方がよかったのかなと思います。そうすれ ば、生産者としておもしろい言及ができたんじゃないかと思います。そうすれば、絵を考 えたりキャッチコピーをうるだけではなく、表現力もできたんじゃないかって思います。

あともう一つ、選び出す最後のまとめのところで、感想が売る側と買う側とがミックスに なっちゃっているので、最後のまとめの時に売る側としてこういうふうに感じたとか、購 入するときにどういうふうに感じたかとかに分けてまとめると、売る側が気を付けている 点と買う側の注意点が子どもの言葉でまとめられるのではないかと思いました。あともう 一つ、いいですか?チョコレ―トの四つの選び方が上手い!

F:それはなぜですか?

N:だって種類が。A は安くてすごく人気でしょ。で B は健康的でしょ。で C はフェアトレ ードで安くておいしいんです。だけど高いフェアトレードを買わなかったのはなんでかな ぁって。で、D はゴディバでしょ。これはうまいと思いました。

F:なるほど。一般的にフェアトレードの板チョコって 300 円ぐらいしますよね。

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N:それでおいしくないんです。この授業 は、3 年生でやる方が授業として面白いか なぁ。

K:また、100g 当たりの値段だけでなく、

本当の買う時の値段も入れておくべきで、

値段、グラム、そして量もいれておくべ きだと思います。

N:フェアトレードは社会科でも学びますので、3 年生で家庭科で扱えばもっと思考が深ま ると思います。それから、私の学校は男女共学ですから男子がもっと男性らしくなってき て、3 年になると男女も結構仲良くなって、思考が深まります。政治的な考えも深まり、

市民性の視点からも議論できます。

F:ちなみに僕がわからないことで皆様にお伺いしたいんですけど、普通、中学 3 年生で家 族と家庭の生活と消費を扱う学校が割合としては多いと思うんですけど、1 年生で消費の フェアトレードを扱った理由として考えられることであれば、教えて頂きたい。

I:神澤先生の学校では総合的な学習の時間でフェアトレードを扱ったことから、この授業 につながったと聞いています。皆さん、カリキュラムは学校によって違いますか?

数人の先生方:はい、違うと思います。上の学年の方で保育とか。

K:今回は 1 時間の授業でしたが、これを二つに分けた方が良いのではないでしょうか。そ れで、生産者の視点や消費者の視点でもっと議論を深めて、分析的にやった方がいいと思 います。例えば、消費者のフィーリングに訴えるにはどういうふうにしたら良いかとか。

あるいは、チョコレートの作られ方を事実として調べ、分析し、まとめる。また、経済的 な側面についてまとめるなど。そういうふうに議論のポイントを絞って話し合っていくこ とをやった方がいいのではないでしょうか。スウェーデンではオーガニックとかエコロジ カルなチョコレートを売っているので、そういうものも入れることになるでしょう。

F:エコロジカルなチョコレートって何か、教えて頂きたい。

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K:原材料、つまりカカオの生産において農薬を使っていないものです。

F:なるほど。

K:チョコレートをほんとに食べなきゃいけないですか?チョコレートは食べなくてもいい んじゃないですか?チョコレートがなくても生きていけますよね。何も買わないっていう 選択肢もあってもいいのではないでしょうか?環境にもいいし、体にも良いから、チョコ レートは買わない、っていう選択肢もあっていいのではないですか。どうでしょう?

F:その通りです。

N:だけど、日本人が2月 14 日のバレンタインにチョコレートを買わないことは無理かも しれませんね。

以上

2)協議の全体共有

司会:では、各班の代表にグループ協議で 出た内容を発表いただきます。

1班代表:この授業が単元の最後に位置付 けられていたので、学習のまとめをどうす るかが、話し合いのポイントになりました。

例えば、消費者としてどんなことを考えな がら商品を選んだらいいかをおさえる場面 があっても良かったのではないでしょうか。

具体的には、皆のPOPの発表が終わっ て、買いたくなったものに手をあげてもら った場面や、生徒にその理由を聞いていた 場面です。

そこで、味や値段が理由として出された ので、もし時間があれば、もう少し掘り下

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げられたらよかったと思います。例えば、「味」についてであれば、ブラインドテストをし て、味だけで評価をしてみることも考えられます。次に値段だけで比較をしてみるという ように、各項目で深めてから、今度は消費者として選びなおしてみるというのもひとつの 方法ではないかなと思いました。

それからプリントを記入していくと、どうしても味と値段の欄に引っ張られてしまいます が、実際はパッケージや宣伝のポップもあるので、そういうところも併せて最後に復習が できたら、単元のまとめとしていいのではないかなという話が出ました。

買うことは、その人の立場によって条件が全部違うので、まとめるのはなかなか難しい と思ったのですが、生徒が全員楽しそうに授業を受けていたことが印象に残りました。

2班代表:意見を自由に出し合う形で話し 合いました。50分間に非常に沢山の内容 が入っているという印象を持ちました。生 徒さんたちは素直で先生の授業の進め方に よくついていっていますが、仮に男の子た ちが多かったら、そんなわけにもいかなか っただろうなと思いました。

色々出た意見の中から、三つほどお話し

したいと思います。まずひとつ目に、ひとりの生徒の意見が、授業を通じてどういう風に 変わったのかということを最後に振り返ることができるようなシートがあると良かったか なという点です。

次に、授業の最初に先生が、バレンタインのチョコレートを買ったのか作ったのかとい う質問をされましたが、全員が作りましたということで、生徒は市販品を買わなかった。

そこから授業が始まっていたのに、実際は買い物の授業だった。多くの生徒が作るという ことを実施していて、ガーナチョコレートを選ぶといった子はポップを作ったときに、こ れは安くて作りやすい、加工しやすいと言っており、やはり作るといったことを大分引き ずっていた。そのあたりの扱いについては、他の持っていき方もあったのかもしれないと いった意見がでました。

三点目に、前の時間にフェアトレードについて学んでいるようだったのですが、そのこ とが活かしきれておらず、フェアトレードの社会的な内容が中学一年生にはちょっと難し くて消化しきれていないのでは、といった意見がありました。とても興味深い授業をあり がとうございました。

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3班代表:フェアトレードのチョコレートを 扱った授業があるのですけれども、そこの中 に生産者と消費者の視点をいれた授業で、と ても興味深かったです。

参観者もおり、思考の部分がちょっと足ら なかったのかなということも感じますが、一 時間の中に生産者と消費者と入っていまして、

消費者の方はグループ2で出ていたので、私は生産者の方で発表をまとめたいと思います。

生産者側をやる場合に、二時間に分けて、一時間目の中に、発表のチームを決めてしま うと、もっと深く生産者側のほうが見えたのではないか。例えば生産者側の事実と、売る 側の消費者のための課題等みたいなものを、もっと学べる内容だといいかなと思います。

やはり最後に、消費者側と売る側として生徒に発表させると、生徒の言葉で全部まとめら れるのかなと思います。

できれば、三年生で実践されると、社会のところでも関わっていますので、もっと深み のある授業になるのではないかなと思います。

最後になりますが、チョコレートの売り方、とても上手だったと思います。四つが全部 別々で、よく選ばれていたと思います。ただ、スウェーデンの方が、何もない、買わない という選択肢があっても良いのではないかとおっしゃっていました。以上です。

4班代表:とても素晴らしい授業でした。指 導も充実し、よく準備されていましたし、生 産者側と消費者側の 2 つの立場を生徒がよく 考えることができたということがとても良 かったという話が出ました。

課題としては、多くの皆さんが指摘したこ とと共通点が多いのですが、中でも、パッケ ージの読み取りをもうちょっと丁寧にやっ

ても良かったのではないかという事です。フェアトレードと味と値段はちょっと出たので すけれども、栄養について等という話題はあまりなかったので、パッケージの読み取りを するにあたって、事前に課題を与えて、子どもたちに入念に読ませておくという準備があ っても良かったのではないかと、アンジェラ・ホさんから意見が出ました。

最後に、評価基準をもう少しはっきりさせても良かったのではないか、また消費をする 目的が、手作りのためなのか、バレンタインデーのためなのか、自分が消費するためなの

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かと、目的が途中でずれてしまったのかなと思います。設定はしてあったのですが、生徒 が理解できていなかったのかなというのは意見として出ました。以上です。

5班代表:まず、売る側、買う側の立場と いうことで、アクティビティを入れた授業 で、非常に良かったと思います。それから、

丁度タイムリーにチョコレートを扱ったこ とも良かったというご意見と逆にチョコレ ートで良かったのかという意見もでました。

すでに出ている意見ですが、売り手と買 い手の視点が本当に明確だったかどうかと

いうことです。例えば、売る側の立場に立って、ポップ作りをしましたけれど、自分のチ ョコレートを一番売るんだという感じでポップ作りができたのかどうかですね。それから 買い手も、ちゃんと商品情報を吟味して買うということでしたけれど、少し中途半端だっ たので、結果として売り手側、買い手側の視点が不明確になってしまったのではないかと いうことです。

授業の中では、最後のワークシートを発表しませんでしたけれど、その中に結果が示さ れているのではないかと思います。この資料の中にもありますが、全体としてみた時にど うだったかということで、授業の中でこの発表までできれば良かったと思います。

この授業はやはり目標と活動が、結果として乖離してしまっていたのではないかと思い ます。目標は最終的には5時間目の授業ですので、消費者としての自覚を持った商品を選 択できるとか、責任ある生活に貢献するという所が、子どもたちに理解できたかです。例 えば、活動と乖離していたという点は、消費情報の吟味というワードがあるので実際に買 い物をする時に、例えば、値段をグラム当たりですでに計算して示したことに気づく。そ れから、商品情報としてフェアトレードであるとかや、成分、ブランド等様々な要素を吟 味する。結果、何を選択するのが良いかという授業の展開に持っていっても良かったので はないか。すると最後に消費者としてどういう視点で物を選んだらいいかということ、前 時のフェアトレードをもう一度思い出しながら、授業が進められたのではないかという意 見です。

6班代表:授業の柱に沿って、どう改善したらいいかを話し合いました。まず一番目の、

主体的に必要なものを選択できるという点で、どうすればよかったかなと考えた時に、シ チュエーションを動かしても良かったのではないか。他の班でもありましたが、目的がぼ

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けてしまっていたので、一人一人がシチュエー ションを持って買い物をするという消費者の視 点があっても良かったのではないかと。値段と 味にあまりにも注意してしまってその二つしか やれていなかったので、資料の改善が必要かと 思います。

販売者と、消費者の視点というところがやは りはっきりすべきかなと思い、改善点としてはポップを発表する前に、消費者として見る んですよということを言うべきではないかなと思いました。売るために考えたことと、消 費者として考えたことをもう少し把握するようにできたかなという点、それから、三の所 で、読み取りという形でパッケージなんかを配って、消費者としてもう少し深めたかった ということがひとつ。それと、この授業は責任ある生活で、倫理的な視点ということで、

フェアトレードがすごく重要と思ったので、選んだあとで、フェアトレードの支持が少な かった、じゃあどうすればみたいなもう一声があると、こういった風におとせるのかなと、

そういった意見が出ました。

3)授業者のコメント

司会:ではここで授業者から今回の省察を述べます。

神澤:授業を参観いただきましてありがとう ございました。今回、授業研究のプロセスを 経験したのは初めてです。ただ今、皆様から たくさんの貴重なご意見をいただき、感謝し ています。例えば、目標と授業の方向性が乖 離しているというご指摘がありましたが、自 分でも授業を行ってみて感じた部分でした。

そのような点をぜひ次の授業実践で改善で きるようにしたいと考えています。

この授業は、8人の研究メンバーの協働で何度も検討を重ね、修正を加え、試行錯誤し てつくりあげたものです。しかし実際に授業を行ってみると、うまく流れず無理のある展 開の部分もありました。このあたりも次回の授業実践にむけての課題です。

研究メンバーは、全国から集まっているため、メールやスカイプ、ビデオ録画なども利

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用して授業研究を行ってきました。研究メンバーのお陰で孤独にならずに授業の改善がで きたことに感謝しております。

4)海外参加者の感想

司会:それでは、海外の参加者から、一言ずつこのワークショップへのコメントをお願い します。

カリン先生:まず、授業を拝見させていただきまして、

本当にありがとうございました。私にとってもいい経 験でした。私たちは、世界の様々な国から来ています が、面白かったのは同じビデオを見て、色々と意見交 換をすることができたということです。この授業をこ のようにして更に向上していける、そういった一端を 垣間見たように思えます。今回、私が持ち帰りたいと

思ったのは、省察の部分がとても大事だということ、さらにその省察に深みを出すことが 大事だということです。実際これはとても難しいことで、兎角話し合いでも表面的なもの になってしまいがちなのですけど、意見交換というものは。ここでさらに、深みを出して いくということが大事だなということを痛感しました。

こういったディスカッションをまた違う形でこのまま続けていければいいなと思いました。

ありがとうございました。

マリリン先生:授業を共有してくださりありがとう ございます。これで得たもの、これが意味するもの は色々あると思うのですけれど、チョコレートとい う題材そのもの、素材そのものがどうだったのかと いうことは色々と意見としてありましたけど、現実 的にクラスとして使うのはどうなのかということも ありましたけれど、実際、消費者の行動を教えると

いうことにおいて、チョコレートでなくともいいし、何でもいいと思います。例えば私の ケースですと、掃除に使う洗剤とか掃除道具とかそういったもので、こういった比較の研 究、消費者行動の研究をしたことがあります。なので、他の素材、題材でもいくらでも応 用可能なので、そういったところもいいと思います。どのような国でもこのように同じ方

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法でできると思うので、そういったところも良かったと思います。最初から完璧にはでき ないと思うんです。今日も色々な改善案が出てきましたけれど、そういったものだと思い ますし、そうやって意見交換をして色んな意見を共有しあうことがまた大事だと思ってお ります。こうして、今インターネットで色んなレッスンプランなども見ることができます し、共有することもできるので、そういった方法も用いてお互いに意見交換したりしなが らベストな方法を見つけていければいいなと思います。そうすることによって先生は教室 の中でひとりぼっちではなくって、世界と繋がっているとそういう感覚を持ちながら、改 善していけたらいいなと思いました。

アンジェラ先生:素晴らしい教室の様子を共 有してくださってありがとうございました。

そして皆さんのフィードバックもありがとう ございました。私が一番共鳴したのは、この 教授法というやり方というのは、他の教育分 野とか他の教科でも応用していけるなという ことでした。また、オンラインでも共有して いくことができますし、色んなやり方、展開

の仕方があると思いました。先ほど神澤先生もおっしゃいましたけれども、今回準備にあ たって、スカイプとか e-mail とかを活用して意見交換して、準備をしたということです けど、とても素晴らしいと思いまして、それを今後さらに世界的なレベルで、国際的にも やっていくことができるのではないかと。色々世界的な協力者が、フィードバックをお互 い出し合いながら高めていくということが、より効率のいい授業研究にもつながっていく のではないかなと思いました。ありがとうございました。

5)コメンテーターによるまとめ:協議の振り返りとレッスン・スタディについて

司会:では最後に、二人のコメンテーターか ら総括をいただきます。

高木先生:皆さんこんにちは。まず、神澤先 生と、神澤先生を支え今日の日を迎えるため に協力してくださった先生方に感謝を申し上

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げたいと思います。午前中のスピーチとか、シンポジウムも含めて、授業研究の狙いは何 なんだろうということを考え続けていました。先生方からいただいたキーワードは、質の 担保ということでした。今日授業を拝見して、私たちは、自分自身は授業を作ってもいな い、そしてしてもいないのだけど、自分自身がまるでしたかのように、更により良くしよ うと思って、一生懸命考えることができました。

そういう時間を使うことで、自分が準備をしていなかった考え方とか、あるいは、提案 していただいたことについて新しく学ぶこととか、自分の授業観であるとか価値観である とかそういったものを広げたり深めたりする時間を作ることになりました。

私たちがこういう時間を作るというのは、目の前にいる子どもたちが今や将来,幸せに なってちゃんと頑張って生きていけるようにすることだと思います。そういうところを支 えるために、私たちがそこにエネルギーを捧げるという、こういう仲間がいるということ がすごく幸せです。きっと神澤先生は、今日の時間、針の筵の上に乗っているような時間 になっていたのではないかと正直思いますが、次は他の人が筵に乗って、お互いにたたき 台になりながら,のびていけたらいいなと思いました。

キャサリン先生:最後のまとめのコメントをした いと思います。今日全体を見ておりまして、授業 研究においては、省察がとにかく大事だというこ とを痛感しました。今回色々、先生からフィード バックとか、ビデオの中でも生徒からのフィード バックなどもありましたけれど、それもすごく大 事で、そうすることによってさらにこの授業研究

の質を高めていけると思います。また、先生と生徒がメソッドにお互いに関わることによ って、高めていくということがとても大事であり、そこがまた難しさでもあるんですよね。

難しさもいっぱいあるんですが、これまでもお伝えしてきていますけれど、特に時間が限 られているからこそ、大変なわけであって、現実の世界で色々と意見がでてきましたけれ ど、先生に対する評価もプレッシャーになっていたりとか、色々と実験的な授業をしたく てもできないといった状況も実際はあると思います。そういったところを私たちはプロと して改善していかなければならないと思っている側面です。それから、私の国の文化とし てもそうですけれど、中々先生方が旧来の考え方に捉えられてしまうとか、やり方を変え たくないとか抵抗する気持ちがあったりして、それによって、上手に新しい指導法が浸透 しない難しさがあると思うので、そこを解決していければと思いました。

なので、先生方が持っている固定観念に挑むことがとても大事だと思います。これはプ

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ロとプロの対話によって実現していける、乗り越えていけることだと思っています。

今日はとてもいい経験をさせていただきました。お互いに意見を交換したりとか学んだり、

そして共有する、本当に素晴らしい体験をさせていただきました。この一員となれて、皆 さんと一緒にこのような意見交換の場にいられたこと大変嬉しく思います。

話し合いによって、授業法というのも、教授法というのももっと改善していけると思い ます。今日も何度か出てきましたけれど、私たちひとりひとりで悩む必要はなくて、チー ムとしてこれを改善していければと思いました。このレッスンの次のサイクルがどのよう になるかとても楽しみです。ぜひ見たいと思います。すぐにでも来日したいと思います。

今年中は難しいかもしれません。ぜひ次のサイクルということが実現して、またコミュニ ティでの連携を深めていければと思っております。

それは今後どうなるかという仮説の質問として置いておいて、一つ紹介したい事例があ ります。私、アイルランドでの授業研究の内容を紹介するために Twitter のアカウントを 持っています。それは、@lessonstudyeire です。ちなみにこれ、アイルランド語で、アイ ルランドという意味です。母国語でいうとそうなんです。実は今日のこの会議についても、

Twitter でツイートしていました。今,現在ではないです(会場笑)。でも、またこの後でど のような内容だったかということを Twitter で紹介したいと思います。いずれにしても、

始まる前にツイートしている段階で、授業研究というテーマに対して色んな人が関心を示 してくれました。ひとつの Twitter でもこうやって世界で広がっているので、これからも っと広げていけると思います。まず初めは、Twitter で共有することから始めてもいいかな と思います。皆さまに感謝申し上げます。

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54 4.班別の協議で出された内容の整理

より良い生活者育成という目的に向けた授業改善をめざすために,以下の 2 点を協議の 柱として、このグループ討議は開始された。

1 授業目標である「売る立場と買う立場の両方を体験する活動を通して、違いに気付く」、

「商品情報を吟味して消費者としての自覚をもった商品選択ができる」の達成に対して、

本時の学習活動は有効であったか?

2 「責任ある生活」に貢献する生徒育成のために,どのような改善が必要か?

この 2 点について、整理を試みた。

1 について

(1)授業内容に関して

①生産者と消費者の視点を入れた授業の指導案は珍しいが、生徒のそれらに対する意 見がより明確になるとよかった。そのためには、販売者と消費者の視点、倫理的な視 点を POP 制作の前に指示するべきだったのではないか

②消費者としてのポイントをおさえる場面があってもよかった。

ワークシート自体が味と値段の比較になっているので、授業の中で、その復習があっ てもよいのではないか。また、味で選択してみたらどうかということでブラインドテ ストを行なったり、値段だけで選択したら、という条件でやってみるのもよいのでは ないか。

③バレンタインチョコレートについて、最初の導入においては、多くの生徒が手づくり と答えていたのだから、手づくりに偏っていた状態ではあった。授業の展開として選択 購入するならどうするかというところで、手づくりが多かったことをふまえて別の進め 方があったら、よかったのではないか。

④題材がチョコレートでよかったか。

⑤一時間の中での授業内容が多くありすぎて、考えさせる時間、思考の時間が足りなか った。目標の中に「生産・販売者の視点から自覚ある消費行動をすることができる」が あるのだから、1時間目に発表する班等を決めてしまい、誇大広告のことなどにもふれ ておく。2時間目に発表させる。そのときに消費者側と生産者側に分けて発表させれば、

生徒のことばでの振り返りもできたし、よかったのではないか。

⑥対象学年が3年生位だとよかった。社会科等での学習にもつながり、深まりがみられ たのではないか。

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⑦フェアトレードは中学1年生には難しかったのではないか。それに関しては、事前学 習(準備)をさせればよかった。

⑧最後のワークシートの内容もプレゼンテーションする時間がとれるとよかった。

⑨商品選択は、条件によって異なるので、一律の意志でまとめるのは苦しいが、生徒た ちは楽しそうであった。

⑩全体として企画や準備は良くなされていた。

(2)授業方法に関して

①一人の生徒が振り返ってみて、自分の意見が変わったとか考えが変わったとか、そう いったことが振り返れるワークシートを配ると面白かったのではないか。

②ワークシートの改善が必要ではないか

③チョコレートのパッケージの表示をもっと詳細に観察させるとよかった。

チョコレートの個別の特徴を理解させるために、表示を見る時間が必要であった。その ために、課題として事前に表示の資料を読ませてくることを検討しても良かったのでは ないか。

④男子生徒がいた場合に、チョコレートの試食の場面などで、教師の指示に従わない生 徒も多くいるのではないかという心配がある。

⑤教員の指示がクリアで的確であった。

(3)授業時間に関して

①1回の授業にたくさんのことを盛り込みすぎていた。時間的には2時間にした方が、

余裕があってよかったのではないか。

(4)目的や評価に関して

①授業目的が達成されていたかに疑問が残った。

目的を達成するための方法がこの授業で良かったのか、やや目的が大きすぎたのではな いか。

②評価基準があいまいだった。もっとはっきりとさせればよかった。

2について

この視点についての議論にまではいかなかったようである。

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56 5.授業者の省察

授業研究(レッスン・スタディ)をふり返って

麹町学園女子中・高等学校 神澤 志乃

消費生活の領域は、生徒たちが授業に関心を持つまでに時間がかかるので、どのような 工夫をすれば生徒たちが身近に、自分の生活と結びつけて捉えてくれるか、生徒の思考に 沿った授業にするにはどうしたらよいのか一人で思い悩みながら考えてきました。

この授業は、50分間の1コマの中で前半にチョコレートを売る立場を経験し、それを 生かして後半、消費者としての賢い商品選択をするという展開になっています。この展開 の工夫は、8名のメンバーで授業研究を重ね、指導案を何回も書き直し、メンバーととも に練り上げたものです。もし、自分一人でこの授業を考えていたら、途中で行き詰まって しまい、広がりのない単調な授業になっていたと思います。今回初めて協働による授業研 究のプロセスを経験したのですが、メンバーの方たちの存在と授業研究の力はとても大き かったと感じました。

たとえば、メンバーとの協議の中で、この授業における POP 制作の意味を問われました。

もともと初版の指導計画では、この授業内容に2コマ充てており POP 制作の時間も20分 確保していました。この制作時間では間延びするのではないか、また POP 制作そのものが 目的になってしまい、本来の目的と離れてしまうのではないかという意見がでました。メ ンバーとの協議のおかげで、私自身の思考が整理され、授業構成のイメージが具体的にな りました。

また、この授業にチョコレートの試食を取り入れたのは、メンバーからの提案でした。

最初、チョコの空き箱の提示のみでよいと私は考えていました。しかしながら、授業研究 の協議の中で、メンバーから、試食を取り入れることはこの授業の中でとても意味がある のではないかという指摘があり、ひとかけらのチョコを試食することを授業に盛り込みま した。その結果、生徒たちはチョコを食べた瞬間から盛り上がりをみせ、授業へひきこま れる絶好のタイミングとなりました。

この授業は、3クラスあるため、全部で3回実施しましたが、その都度、提出されたワ ークシートの記述やメンバーによる参与観察のコメントを生かした改良を加え、次のクラ スの授業を実施しました。最終的に生徒たちが消費者としての自覚をもったチョコの選択 ができたか、味の比較にとどまらずに様々な視点をとりいれたチョコレートの選択ができ るようになったか、目標を振り返りながら各授業を行いました。それでもまだ課題は残っ

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ているので、指導案の再検討、ワークシートや配付資料の改善等、来年度の授業にむけて 授業研究を重ね、さらによい授業になるよう改善していきたいと考えています。

メンバーは全国からの集まりなので、研究会のたびに1か所に集まる事はとても労力が 必要だったと思いますが、今回スカイプやメール、ビデオ録画などを通じての協議もとり いれ、時間や場所にとらわれることなく協議できたことは、大変有意義でした。家庭科教 員は一校に一人という現状で、なかなか授業研究をおこなう仲間と出会えない状況があり ます。しかし、今回のような形で ICT 活用をした授業研究が可能になれば、様々な視点か ら協働で指導案を検討、実践、省察し、より充実した授業研究ができるのではないか、と 確信しました。

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58 国際会議に関するアンケート 集計結果

1 . 本 日 の 国 際 会 議 は ( n = 2 9 )

2 . 内 容 に つ い て の 感 想 ( 抜 粋 ) 1 ) シ ン ポ ジ ウ ム に つ い て

・充実したシンポであった。内容も理論から実践と全てを含んでおり、体系的によくわか った。

・日本語訳された資料があり、大変わかりやすかった。

・各国の報告を聞いてすごく勉強になりました。情報の共有もできました。

・外国のレッスンを知るという事は非常に有益でした。各国毎にポジションの違いがあり、

興味深かった。

・他国での取り組みがとても興味あった。日本では普通である Lesson Study をあらためて 見直す機会となった。

- It was wonderful to learn about lesson study practice in how different contents.

It was informative and enriching. I will reflect on the applications of L.S. Further now and see how I can modify our own practices & make it more effective.

- It was good with different perspectives, different countries.

・海外の教育現場でも授業研究について、日本と同じような課題を抱えていることがわか った。

・様々な国の状況がわかってよかった。各国のプレゼンもよかったが、最後の質問にあっ たような1つのサブジェクトに各国の状況を1言ずつ語るといった単純比較ができると、

より日本の状況が客観的にみられたようにも思う。

- ①international collaboration through sharing.

②very neat and well organized workshop and conference

③Guest speaker(s) were inspiring in sharing ideas about pedagogy.

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2 ) ワ ー ク シ ョ ッ プ に つ い て

・実際の授業を見ることは、とても勉強になった。また、家庭科教員だけでこのような話 し合いができ、話し合いの深まりを強く感じた。

- A fantastic experience. I had the experience of seeing the lesson and it felt very real owing to the quality of the video recording. The workshop was well planned and questions carefully planned to enable discussion. Many similar comments were made. It would be good to analyze the responses further.

・ビデオ録画を見る授業研究も大変有効だと思いました。(授業の流れ全体をみることがで きるので)個々の生徒がそこで何を学んでいたのか、まで録画の中にもみられるとよい のではないでしょうか。(個別の話し合いの場面をもっとみられるとよいのでは)

・授業実践について、DVD で拝見した事で指導案とは違う臨場感のあるレッスンスタディを 経験できました。

- Lesson study video was well organized and provided great clavity on the steps of lesson study.

・授業研究の実際を共有できて勉強になりました。授業研究についての意欲が高まりまし た。

- Group discussion(s) was exciting.

・様々な立場から意見を伺うことができ、1つの授業について、深く考えることができて 面白かった。また学校内で研究授業を行う際、他教科の先生がいない場合が多く、今回 のような家庭科教育に携わる方々とディスカッションする機会に参加できてよかった。

・いろいろ意見交換できたことが楽しかった。たくさんの意見1つ1つに納得できた。元 気や刺激をもらえるところが Lesson Study の魅力だと思う。

・レッスンスタディを皆で体験でき、楽しく授業改善の意義、海外の様子等わかり、充実 していました。

・スウェーデンの方とのグループディスカッションでしたが、思慮深い方で大変興味深く 話を聞けました。

- I think it was no little time for the group discussion maybe 5-10 minutes more.

But I really like the way the workshop was arranged.

・研究者の視点以外に神澤先生(授業者)の授業説明をはじめにききたかった。

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3 . 今 回 の 企 画 に 対 す る 感 想 や 気 づ き ( 抜 粋 )

・2日間にわたって行ってもいい中身の濃い国際会議でした。ありがとうございました。

・多くの資料をわかりやすく準備していただき感謝申し上げます。大変貴重な機会に参加 させていただいたことにもあわせて感謝申し上げます。

・内容もすすめ方もとてもよかったです。資料もうれしかったです。シンポジウム資料は 英文のものも示していただけるとよかったと感じました。

・神澤先生に感謝申し上げます。国の比較が直接できたことはとても有意義でした。レッ スン・スタディの HP があればよいですネ。ありがとうございました。

- It was a wonderful experience. We ought to corroborate further, develop networks and disseminate best practice using online platforms.

- Possibility of creation an online platform for sharing and international collaboration on lesson study.

・素晴しい充実した研修となりました。改めてこれからの家庭科教育、家政教育を再考す ることが出来ました。これからの万全の準備でした。

・こんな交流会はなかなかないので、これからもこの研究の連携を続けていけばいいかと 思います。

・国際会議としてこのような企画があり、家政学の発展につながると思う。

・家庭科でももっとこのような国際会議があればよいなと思いました。30 名程度というこ とで、自分自身の参加意識も高まり、自分の実になったことが多くありました。インタ ーネットを活用し、もっと交流ができればよいと思いました。よい機会をありがとうご ざいました。

- I think it would have been good with a little break in the keynote speakers speech.

It was a little too long. Thank you so much for this wonderful day♡"

4 . 参 加 者 の 所 属 に つ い て ( n = 2 9 )

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おわりに -会議の成果と課題-

会議を振り返るにあたり、家庭科のレッスン・スタディをテーマとした世界初めての国 際会議を開催することができたこと、このこと自体が、まず、何よりも大きな成果であっ たと思う。海外からの講演者、授業者、参加者に心より感謝するとともに、準備を進めた 全ての関係者と改めてこの認識を共有したい。

会議は、まず第1部においてヨーロッパ、アジア、計4か国のレッスン・スタディの現 状と課題について報告と議論を行った。次いで第2部で、レッスン・スタディを通して計 画・実践された授業を VTR で視聴し、参加者全員で授業の省察を行った。以下、順次振り 返ってみたい。

第1部の「授業研究シンポジウム」では、キャサリン・マクスウィニィ氏(アイルラン ド)、カリン・ヤルメスコヴ氏(スウェーデン)、アンジェラ・ホ氏(シンガポール)、荒井 紀子氏(日本)により、それぞれの国のレッスン・スタディについて報告がなされた。

アイルランドでは、2012 年に報告者のマクスウィニィ氏の勤務校であるセイント・アン ジェラ大学やクウィーン大学をはじめ各地から授業研究の専門家が集まり、2校の中等学 校をモデル校として、レッスン・スタディのプロジェクトが実施された。家庭科を含む各 教科の教師が協力して授業の計画や研究がなされた。教師はやりがいと達成感をもって授 業研究にとりくみ、仲間と連携して専門知識を開発することの有効性が認められた。また、

教師だけでなく生徒を授業評価に参加させることが授業向上に資することが報告された。

スウェーデンについては、家庭科目「家庭と消費」の目標や学習内容、評価基準などの 概要の説明とともに、学習内容に対する生徒の科学的理解や深い認識を導くための授業研 究の方法について、食の調理実習の事例研究を基に具体的に解説がなされた。

シンガポールについては、家庭科の概要とともに、アンジェラ・ホ氏の勤務する中等学 校での実践が紹介された。家庭科目「栄養と食品科学」において、地域の人々に健康なラ イフスタイルを浸透させることが目標とされ、外部パートナーとの連携で、生徒が意欲的 に学習に取り組む様子が詳しく報告された。また、学校内で、教科ごとに教師間で活発な レッスン・スタディが実践されていることが紹介された。

最後に、日本については、1947 年に家庭科が誕生して以来、国や行政機関をはじめ、民 間の団体や個人サークルなどにより様々な授業研究が実施されてきたこと、および、それ ぞれの授業研究の特徴が体系的に報告された。また、授業研究の質を高める要素として「協 働性」「対等性」「継続性」の3点が重要であり、この視点から改めて授業研究を捉え返す 必要性が提起された。全体を通して、レッスン・スタディにこれから取り組もうとする国

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から、すでに多様な実践がなされている国まで、進度や特徴は様々であった。レッスン・

スタディという切り口から、各国の家庭科を横断的に捉え、比較検討することができたの は、本会議の二つ目の大きな成果といえるだろう。

第2部の「授業研究ワークショップ」では、レッスン・スタディのステップの内、「実施・

参観」と「省察」の部分を参加者全員で体験する試みを行った。授業は、中学1年生が対 象の「チョコレート購入」をテーマとした消費者学習で、授業者は神澤志乃教諭である。

授業の単元計画と本授業の概要が紹介された後、実際の授業の様子を VTR で参観し、その 後4~5人のグループに分かれ、授業の省察を行った。記録にあるように、グループ討論 では、実に様々な視点から授業への意見や、改善への提案が出された。全体会で各グルー プからの報告がなされ、それに対して授業者からのコメントが出された。この授業は、レ ッスン・スタディグループの議論を経て計画、実践されたものであったが、実際に授業を 行うことで見えてきた課題があり、さらに参加者の協働の議論の中で、改善のヒントが豊 富に出された。以下は、終了後のアンケートの参加者の言葉である―「それぞれの立場か ら改善策を出し合えて視野が広がった」「ひとつの授業について深く考えることができた」

「ひとつひとつの意見に納得できた」「元気と刺激をもらえた」。コメンテーターの高木氏 の「レッスン・スタディの狙いは、授業の質の担保」の言葉のように、子どもたちに質の 良い学習を届けることを目標として授業者と支援者が力やアイデアを忌憚なく出し合い、

授業の質を上げていくことがレッスン・スタディの醍醐味である。参加者は体験を通して そのことを実感したことが推察される。

この活動のさらなる特徴は、各グループに、アイルランド、スウェーデン、アメリカ、

シンガポールからのゲストも加わって議論したことである。彼らからのコメントは興味深 い。スウェーデンのヤルメスコヴ氏は、「いろいろな国から来た仲間で同じビデオを見て意 見交換することに違和感がなかった」「授業の省察の部分が重要であり、とりわけ省察に深 みを出すことが大事であることがわかった」と語った。またアメリカから参加のスウィー ク氏は「チョコレートに限らず他の素材でもこの授業は展開が可能である」「皆で意見交換 し、共有しあうことが大事」「教師は独りぼっちではなく世界とつながっている感覚を持ち ながら授業を改善していけたらいい」と話した。アイルランドのマクスウィニィ氏は、「教 師が自分の殻を破り、固定観念を乗り越えることが大事」「意見を出し合い、共有し、授業 を改善していくプロセスを体験できた」と語った。家庭科教育の専門家同士、国を超えて 共通に深く議論しあえることを確認できた。おそらく、このことがベースとなり、もう一 つの視点が出された。それは、シンガポールのホ氏の「今後、スカイプやオンライン等を 活用してこのようなレッスン・スタディを国際的にもやっていけるのでは」との視点であ り、これからの世界レベルでの連携の可能性が語られた。マクスウィニィ氏もご自身が解

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説しているレッスン・スタディのツイッターについて紹介し、各国の連携を呼びかけた。

以上から本会議の成果をまとめると以下のようになろう。

〇家庭科のレッスン・スタディの国際会議を世界で初めて開催した。

〇ヨーロッパ、アジア4か国のレッスン・スタディの現状と課題を理解し、横断的に比 較することができた。

〇授業の参観を共有した参加者が、国を超えて深く議論することの可能性と意義につい て体験を通して確信できた。

〇全体を通してレッスン・スタディを行うことの意義、とりわけ授業後の省察を深める ことの大切さを共通理解できた。

最後にこれからの課題についてまとめたい。

まず、このようなレッスン・スタディの試みを、国内だけでなく、海外のグループとも 連携してすすめる可能性を広げていくことである。また、今回は4か国のみの情報交換で あったが、家庭科のより良い授業づくりという共通の目標のもと、今後はさらに多くの国 と情報交換をし、家庭科の教科の充実につなげていくことである。これらは国際会議なら ではの実感から生まれた課題であり、出席者が共通の認識をもてたことは大きな収穫であ った。今回は、ささやかな試みであったが、この課題に向けての確かな第一歩を踏み出す ことができたのではと考えている。

本会議の開催にかかわってくださった講演者、参加者の皆さま、そして会議を準備し、

支えてくださった全ての方々に心よりお礼申し上げます。

2018年3月

家庭科レッスン・スタディ研究会一同 荒井紀子 貴志倫子 一色玲子

井元りえ 亀井佑子 神澤志乃 鈴木真由子 羽根裕子

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64 謝辞

本報告書は JSPS 科研費基盤研究(B)15H035 の助成を受け作成されたものです。

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